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銀河機動旋風~真紅の緋音~  作者: 恥骨又造Mark.2
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第20話 対峙

「……! 前方から物音が聞こえる。みんな、ここで待機して。戦闘になる恐れがある。

まずはあたしが確かめる」

「姉御ッ! くっ……」


「アン様! お気を付け下さい。万が一はこの身を持って貴女様の盾になります」


緋音や参謀達が命を懸けて救出してくれた手前、早々に敵に捕らわれていては元もこうもない。

船員達は彼女の指示に従うしかない。

念のため、通路の左右に分かれ待機した。


「波動弾の装填はよし。波動エネルギーも良好な気がする。銃撃戦や接近戦にも対応できる。

こんなところで躓いてはいられない。油断大敵」


マルコや参謀から約五十メートル離れた通路で緋音は対象が接近するのを待った。

数十秒後、足音は止まった。


その刹那、緋音は小宇宙銃剣《コスモガンソード》を握り締め通路から飛び出た。

同じく対面した状態で通路の陰からも人影が飛び出た。


「……相打ちってところかな?」

「……まぁ、そういうことにしてやるぜッ!」


対峙した二人。

互いに銃口を頭に付けている。

緋音とバミューダは笑っていた。


「その様子だと、仲間を解放できたようだな、緋音?」

「もちろんさ。バミューダも成功したか?」


互いに仲間を解放し二人は再会できた。

多くを語らない彼だったが、雰囲気から緋音はそう確信できていた。


「よかった、バミューダ。ドジャーさんらと再会できて安心だ」

「お前もよかった。少しばかりか緊張が解けたようだな。参謀も無事だろう」


はたから見ていると気心知れた仲間というか、いい感じの男女。

思わず参謀とマルコは彼らに近寄っていた。


「あ、姉御。この人がバミューダさんで?」

「バミューダ、無事じゃったな。これで、当初の計画通り。後は伯爵を討つのみじゃな」


緋音に悪い虫が近寄らないように参謀とマルコは二人の間に割って入った。

距離を取るようにしてみせた。

参謀は意味深なウインクをマルコに送っていた。


王女を守りたい? 

もしくは年の離れた娘のような緋音を傍において置きたい。

そんな嫉妬にも似た感情を参謀とマルコは抱いていた。


そんな子供じみた干渉を緋音とバミューダは意識すらしていない。


「うん。これで最終フェイズへといけるな。みんな、準備はいいか?」


宇宙海賊とその一行は移動を再開した。

伯爵がいるであろう部屋へ通じる道中、レジスタンスの戦士を解放しつつも小規模な戦いが続いた。

今の緋音やバミューダによって脅威にはならなかった。


「ふぅ。ここに来て初めての戦闘だったが、負傷者はなし」

「へへ。俺達のおかげで仲間も増えたな。ざっと、五十人はいるぜ」


先ほどまで数十人しかいなかったが、みるみる緋音一行は力を付けてきた。

ただ、人数は増えても子供や女性が多く見られた。


この決戦において、星の未来を担う人材を戦いへと誘うことにバミューダは気がかりだった。


「緋音、参謀。少しいいか?」

「うん、大丈夫」


先頭を駆ける彼らが突如、停止した。

自ずと後方の列も停止するしかなった。


「な、なんじゃバミューダ? いきなり止まりおって?」

「姉御、大丈夫っすか!?」


神妙な面立ちに参謀はやや困惑が隠せなかった。

流石のマルコも把握できないでいる。

緋音は何かを感じ取って、彼の意を汲んで口を開いた。


「参謀。女性と子供はマルコ達に任せて私とバミューダだけで伯爵の元へ行こうと思う」

「あ、緋音……」


緋音一行は数こそ多いが、その分非戦闘員が締める割合が多くなっていた。

宇宙機械伯爵との激戦が予想される中で、

彼らを守りながら戦うことが、難しいと緋音とバミューダは察していた。


「そ、それならばせめてワシだけでも……」

「ありがとう、参謀。でもまだ、全ての人を解放できた訳ではない。

ドジャーさん達と合流し、一人でも多く解放して欲しい」


緋音からの覚悟の言葉であった。

彼女の目的は果たされつつある。


それでも、これまで一緒に死線をくぐり抜けてきたバミューダの願いを叶え、

伯爵の野望を打ち砕く使命を果たすことだった。


「姉御にバミューダさん、わかりやした。確かに戦闘となれば、正直犠牲は付き物です。

今はその選択が最善かと思います。ご武運をっ!」

「うん、行ってくるよ。みんなを頼んだよ! 行こうバミューダ!」


緋音は一瞥しバミューダと共に翔け出した。

参謀やマルコを含めて、その場の仲間達は緋音達の勝利を祈っていた。


「ここが奴の根城だ。ドジャーのおっさんが言っていた通り趣味が悪いぜ」

「いよいよだな、バミューダ。そしたら、打ち合わせ通りに行こう」


バミューダはドジャーと別れる前に伯爵の根城を聞いていた。

機械の体を手にしつつも、高貴な服で身を包んでいる伯爵から

想像できる部屋で貴族のように華々しい装飾がいたるところに見られた。


およそ、基地の中では場違いで権力を誇示している。

緋音とバミューダはその異形な雰囲気に飲まれることなく、

部屋到達前に計画した段取りを実行する。


まずは緋音が先に突入し伯爵へ中距離を位置取る。

バミューダが援護し連携して討ち取る算段。


「伯爵ッ! リベンジしに来た。覚悟はいいか?」


緋音は勢いよく部屋に突入した――。

一拍置いてバミューダも彼女に続いた。


しかし、二人は思いがけない事態へ直面するのだった。


「な、なんだと……」

「い、いない。てっきり待ち伏せでもされていると思っていた」


人っこ一人いないもぬけの殻だった。二人は動揺が隠せない。


「連合軍の勢いを感じ取り負けを予想して自分だけ逃げた?」

「奴の事だから、そういった可能性はゼロではない。ただ、外の戦況と基地内部はこのモニター越しに注視していたはずだ……。ま、まさか」


バミューダの脳裏には宇宙機械伯爵が薄ら笑う光景が映し出されている。

負けもしくは劣勢を悟り伯爵は行動に出た。


「緋音、こうしゃいらねぇ。行くぞっ」

「えっ、あっえ!?」


バミューダは緋音の手を引いて部屋を後にした。


彼の予感が当たっていれば、純粋な戦いよりも人間の尊厳を陥れる非情な心理戦を強いられる。

二人は懸命に走り続けた。


そして、グランドアース号が鹵獲され、保管されている出口がある大広場から人の声が聞こえ、

木霊している。


「人の声が聞こえる。行こう緋音!」

「うん、バミューダ」


ドジャーやマルコ達がレジスタンスの戦士を解放し歓声を上げていると、信じたいバミューダ。

不安な気持ちを胸に声の主の元へと到着した。

人だかりができていた。


その中にはドジャーや参謀、マルコ達もいた。


「アン様にバミューダ……」

「すまん、バミューダ。伯爵にしてやられた」


意気消沈……。

申し訳ない表情で参謀とドジャーは緋音とバミューダを見た。


たまらずバミュだーは人ごみを掻き分けた。緋音も彼に続いた。

人の壁がなくなった瞬間、宿敵と再会を果たした。


「ご機嫌よう。緋音にバミューダ。まさか、あなた方から直接、私に会いに来てくれるとは。

光栄極まりない」


「誰が好き好んでお前に会いに来るか」


数メートル離れて彼らは相対する。バミューダは実に数十年振りの再会。

未だに苦い思い出が思い起こされる。


緋音は数週間振りだったが、かつてと違う感覚だった。

本当の意味で伯爵の思惑を知っている今、彼女は成長した。


参謀やドジャーがなす術もなく停滞している理由を見抜いた。


「お得意の心理戦ってとこか?」

「流石はエンペリオンの継承者さん。お察しがよくて助かります。

老人共では話にならなくて困っていたところです。」


バミューダの悪い予感は的中してしまった。

伯爵は此度のレジスタンスの攻撃を目の当たりにし劣勢と判断した。


一瞬のスキを突いて非戦闘員らを拉致した。

緋音とバミューダの行動が裏目に出てしまった。


人質を捕られた今、伯爵の交渉とは……。

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