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33 ジョウロを作ろう! マンドラゴラのカンポーチャ

 オレたちはカラカラの枝を収集して村に帰った。

 おまけに解体したレアレクサスの尻尾肉、それとマンドラゴラも持ち帰った。

 カラカラの枝は、いったん大工の作業場に保管しておく。


「さあってと。キムランお望みのジョーロとやらの制作着手する前に、肉とマンドラゴラを分けないとな」

「肉は俺が切り分けてやるよ」


 レイが刃のぶ厚いナイフを刺し、器用に骨を除いて小分けにしていく。

 レクサスはデカイからいいとして、問題はマンドラゴラだ。


「持ってきたはいいけど、マンドラゴラって料理できる人間が少ないんだよなー。毒抜きしないとだから」

「毒抜き!?」


 やはりというかなんというか、この世界でもこいつは毒持ちのモンスターなんだ。毒抜きすれば食えるって、まあフグみたいなもんか?


 村長の奥方、ネリスさんが笑顔でガラス鍋を取り出す。


「なら、マンドラゴラはうちで調理してから、各家に分けるってことでいいかしら?」

「おお、頼むゼ。ネリス」

「じゃあ集会所の火魔法台を使うわよ」


 ネリスさんがさっそくマンドラゴラを持っていく。

 そわそわと所在なさげにしていたコトリさんが、その背中に声をかける。


「ネ、ネリス殿。その、ええと、料理を……手伝っていいだろうか。生家にいたときやっていたから、マンドラゴラ処理の心得がある」

「ありがとう。助かるわ、コトリさん」


 ネリスさんに笑顔で言われて、コトリさんはホッと安堵の息をついた。二人が集会所の方に行き、レイと村長が肉の分配に行く。


 オレとビリーは作業場にこもって、さっそくジョウロ作りをはじめた。

 ビリーが手桶にカラカラの枝の切り口を当てて、墨をつけた筆で印をつけていく。


「へぇ~! ものを作るときは設計図を書いてからするのかと思ってた」

「ったりまえだろ。この枝は1本1本太さが違うんだから、枝を使う時点で固定された数値なんてねーんだよ」

「それもそうか」


 手桶も手作りだから、固定サイズじゃない。工場の量産品とはわけが違うんだ。


「ほれ、見惚れてねーで印つけたとこ、これで穴を開けてくれ」

「はいよ!」


 ミノとトンカチで、印の位置を大まかに削り取る。

そこから補正していくビリー。接着剤だという樹液を接合部に塗ると、枝がピッタリはまり込む。


「おお、すげぇ!」

「そうだろスゲーだろ、キムラン! もっと俺を褒めていいんだぞ。オリビアさんに俺の良さを売り込んでくれ」

「う~ん、そのブレないところ、ある意味すげぇ。オリビアさんに直接言えよ」

「ビリーさん素敵。とても助かりました、結婚してください、なーんて、なーんて! ふへへへへ!」


 ビリーが妄想あっちの世界に旅立った。これがなけりゃイイ男なのにな……。夢見る乙女の表情をするビリーは、手元がお留守になっている。


「おー、キムランかえったか」


 ドゴ! と勢い良く作業場の扉が開かれた。ドアノブが妄想中のビリーの後頭部に直撃する。


「ミミ。ただいまー。ミミもジョウロ作りを手伝ってくれ。ほら、いいとこまでできてきてんだよ」

「よかろう」


 ミミが腕まくりしてオレの隣に座る。


「ところでビリーはどうした。おけをもったまんまヨダレたらしてる」

「どうしたんだろうねー。それよりちゃっちゃと削って接着剤塗ろう」

「おー」


 数分後にビリーが復活して、三人でジョウロの筒部分接着までやった。この接着剤は乾くまで半日かかるらしいから、今日できるのはここまでだ。


 気づけばだいぶ集中していたみたいで、もう夕方だ。コトリさんがポットを持って作業場に入ってくる。


「キムラン殿、ミミもここにいたか。君たちの家の分だ」

「おお、なんか芳ばしい匂い。何作ったんです?」

「このにおい、そんちょのオクサンが、まえにもつくってくれた。カンポーチャという」

「へー」


 カンポーってなんか保険の名前みたいだ。

 受け取って、ミミと顔を見合わせる。


「今飲んでみてもいいです?」

「ああ。熱いから気をつけてくれよ」

「はーい」


 作業場にあったカップを借りて、ミミとオレ、ビリーとコトリさんの分を注ぐ。なぜかミミは自分のコップをオレの方に押して寄こす。


「のめ、わたしのぶんものめ。キムラン」

「よくわかんないけど、そこまで言うならもらうわ~。ズズッ。おおお……黒豆茶よりなお芳しく、独特な風味の残る飲み口。って、にっがーーーー!!」


 むせた。のどにくる苦味。なにこれマズ……いや、うん、うま……ま………。


「まずい」


 ビリーが言っちまった。


「すまない。マンドラゴラ茶とはそういうものだからな……。これは、魔封じをくらった魔法使いが飲むための薬膳茶なんだ。煎って水分を完全に飛ばし、香草とともに煮だす」


 コトリさんは申し訳なさそうに、自分の分のお茶に口をつける。ミミがオレにお茶を押し付けた理由がよくわかったよ。


「そっか、カンポー茶って漢方茶か! うん、良薬は口に苦しって言うもんな。道理で苦い」

「このお茶は疲労回復の効果もあるから、濃いめに淹れたんだ。キムラン殿は一番重たいものを運んだから、疲れていただろう」

「うん。ありがとな。気を遣ってくれて。めっちゃ元気出た」


 お茶だけでなく、余ったマンドラゴラで作ったという、マンドラゴラの蜜漬けもくれた。良い人。めっちゃ良い人……!

 これは喉の風邪に効くらしい。


「うむ。キムランはまいにち、よくさけぶからな。おちゃも、みつづけも、ちゃんと飲め」


 ミミのトドメが疲れたハートに刺さった。 

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