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32 コトリさん参戦! 気弱な戦士さんは最強剣士!

 コトリさんが村に来て2日後。

 本日は晴天なり。ビリーにしつこく頼み、カラカラ木の枝を調達しに行けることになった。村の全戸分作るのをオレも手伝うという約束をしたんだ。

 フッフッフ。英語は赤点常連様だったが、図画工作の成績は良かったんだぜ。



 朝食後。集合場所に向かうと、なぜかコトリさんもいた。


「あれ? コトリさんもカラカラ木採取に参加するの? 他の女性たちと糸紡ぎの仕事をするのかと思ってたよ」

「ああ。昨日、糸紡ぎに少しだけ参加させてもらったんだが……その、恥ずかしながら、紡ぎ車や道具をいくつか壊してしまって。ドロシー殿から糸紡所への出入り禁止を言い渡されてしまったんだ」

「あー、人それぞれ得意不得意ってありますものね。オレあんまり剣術得意じゃないもん」

「そう言ってもらえると助かる」


 コトリさんは居心地悪そうに視線をそらす。

 糸紡ぎ車を壊すってどんだけ不器用なんだろう。しかも出禁を言い渡されるレベルって。


「おっすキムラン、コトリさん! あとレイが来たら出発だぞ」


 装備を整えたビリーと村長がやってきた。レイもそう時間を置かず現れる。


「それじゃ出発するぞ! 今回は食料調達じゃないから、行く手を邪魔してくるモンスター以外は狩らなくていい。キムランわかったな」

「りょーかい!」


 食料調達ならそんなに森の奥地までは行かない。村からだいたい2kmくらいの範囲内で済ませている。

 カラカラ木の群生地はもっともっと奥にあるという。


「奥に行くにつれて村付近よりもモンスターが強くなるから、キムランはまず逃げろヨ」

「おおぅ。りょ、了解です」


 レクサスよりも強いやつがゴロゴロ。村長の言うように、オレは足手まといにならないよう下がっているしかない。今回の役目は荷物持ちだ。

 この世界には、ゲームでよくある四次元ポケット的な無限収納アイテムは存在しない。現実はかくもきびしい。


 奥にはほぼ人が立ち入らないからか、まともな道なんてない。ぶっとい木の根が足元を走り、オレの背よりも高い茂みがそこかしこにある。

 前を塞ぐ蔓を村長が鉈でぶった切り、道を開拓していく。村長の数歩後ろを歩くレイがモンスター避けの香木を焚いていてくれなければ、段差を登っている間にやられちまいそうだ。


 歩きにくい森の中を、どんどん進んだ。

 いくつも段差を飛び越え、何回か蔦に引っかかって転び、2時間もしないうちに息が上がってきた。ふくらはぎがパンパンだお~。

 かっこ悪く座り込むオレの肩にレイが水筒を差し出す。ありがたく受け取って、水を飲んだ。


「大丈夫かキムラン。すげぇ顔してんぞ」

「アハハ。明日になったら絶対筋肉痛だぜ。レイは元気そうだな」

「当たり前だ。狩人だから、普段からこういう場所を歩いている。これくらいは散歩にもならん」


 レイがモテる理由がわかった気がする。ビリーはタオルで汗を拭きながら熱意を燃やしている。


「お、俺だってレイに負けねーぞ! これくらい軽くこなして素敵なジョウロを作ってオリビアさんに『プレゼントありがとう。ビリーさんと結婚したいわ!』って言ってもらうんだ!」


 ……ビリーの脳内で、オリビアさんが都合よく美化されているように見えてならない。村に来てそんなに経っていないオレでも、物で釣られて結婚するような軽い女性ではないと感じるんだが。

 ビリーと村長も可哀想なものを見る目で、妄想に浸るビリーを見守っている。


「ちょっとここいらで休憩するか。コトリは大丈夫カ?」

「問題ない」


 コトリさんは汗の一つもかかず涼しい顔。本当に問題ないみたいだ。

 休憩するオレたちに向かって、何かが高速で近づいてきた。

 二足歩行のダイコン? いや、ゲームで見たことある。マンドラゴラってやつだ。人間の小学生くらいのサイズがある。

 奇妙な叫び声を上げるマンドラゴラ。


〈ギギィーーーー!〉

「テヤァーーー!!」


 バキゴキャベキゴキ!

 コトリさんの一閃をくらったマンドラゴラが、高速スピンして真っ二つになった。

 ……何が起きた。

 コトリさん以外の四人が固まる。


「あぁしまった、余計なことをしてすまない。モンスターには極力手を出さない約束だったな。こいつはどうしたらいい」

「持って帰って食オウ」


 一番先に復活した村長が、はんぶんこになったマンドラゴラを袋に詰める。もしかしてさっきのがスキル必殺と豪力の効果。剣筋が全く見えなかった。いつ抜いたかすらもわからない。


 その後、カラカラの木が生えている場所に着くまでにレクサスやスライムの上位種が襲ってきたが、コトリさんが一撃で終わらせた。

 こんな、RPGの裏ボスじみた強さの人がいたらオレら出る幕ないべ。

 次からは敬意を持ってコトリ様と呼ぶべきか。


 そんなこんなで、岩がゴロゴロしたところを抜けた先、目的のカラカラ木群生地にたどり着いた。

 ビリーと村長がノコギリで枝を落としていき、オレとレイが数本まとめて縛って担ぐ。ジョウロを作る分プラスアルファで採った。他のものを作るのにも使えるからな。


 帰り道、コトリさんの今後の身の振り方について話し合った。ビリーは鬼神の如き強さを見せたコトリさんを超リスペクトしている。


「ハッハッハ。コトリがこんだけ強いなら、これからも討伐組の方に参加してもらえると助かるな!」

「そ、そんな。私は貴方たちの足手まといではなかったか?」

「この村にコトリさんより強い人いないと思う」

「お世辞がうまいな、キムラン殿は。私程度の剣士なんて世界にごまんといる。これくらいで驕っていては世界一の剣士にはなれない」


 レクサスを一撃で仕留めたのに、あまりに謙虚だ。

 もっと自分の強さに自信を持ってくれていいのにな。オレが言いたいのを、レイも察したようだ。

 オレの肩をぽんと叩いて小さく言う。


「実家は魔法使いばかりのとこだったって話だし、武術を軽んじるような家にいたんなら仕方ないのかもな。他人に褒められても上っ面のお世辞としか思えない。ちゃんと自覚して、ちっとでと自分を褒められるようにならないと意味がねぇよ」

「う~ん。本当にすごく強いのに」


 私なんてって卑下するより、私はやったぞ! って喜ぶ方がきっと楽しい。

 コトリさんが自分のこと認められるようになる方法ってないのかな。余計なお世話かもしれないけど、そう思った。


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