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僕と不良少女の関係  作者: 東京 澪音
22/43

免許取得の前祝い

金髪ちゃんが唐揚げを作ってくれた日から2日後、何故かまた佐々木輪業の事務所に彼女はいた。


「なぁ、なんでまたいる訳?今日は谷田さん休みだよ?…はぁ~。暇なの金髪ちゃん?」


事務所の応接用ソファーに寝そべって、自宅から持ってきた時代劇DVD、3匹が斬るを何故かマッタリと観ている。


「あ?はぁーひら友達らへ?」

煎餅を喰いながら答える金髪ちゃん。


「喰いながら答えるなって!何言ってるかわからないじゃないか。ほら、喋るんなら口の中のお煎餅飲み込んでからにしなきゃ!って、煎餅が口からこぼれてるって!」


僕は飛び散った煎餅を片付けながら金髪ちゃんを諭す。


「あーしら友達だべ?ならあーしがここにいてもおかしくねーべよ。あ、コジコジ茶~ある?煎餅食べたら喉乾いちゃったよ。濃い~の煎れてね!」


いやいやいやいや、ここウチの事務所だし。しかもウチは、バイク屋だよ?しかもここ商談にも使う部屋だから!それをまるで自分の部屋の様にくつろぎつつ、なんだろう?この図々しさ。


"はいはい"とか言いながら茶を煎れてしまう自分もどうかしてると思うのだが、取り敢えず金髪ちゃんの希望通り濃いめの渋いお茶を出してあげる。


「お!心愛ちゃん3匹が斬るじゃねーか!なかなかいいセンスしてるね。因みにオジサンは千石派なんだがね。殿様も嫌いじゃないんだが、千石が使う刀、"同田貫"が好きでね。装飾を施さないその様は、正に人を斬る為だけに生まれた剛刀。オジサンもね、言葉や生き方を飾らずに真っ直ぐにいたいと常々思ってる。そんな理由でね、オジサンは3匹が斬るが好きなんだよ。おーぃ小次郎、茶一杯追加だ。」


タイヤ交換が終わって暇になったであろう父が事務所に戻ってきて時代劇話に花を咲かす。


いやいやいやいや、なに急に来て語り始めちゃてるの?


っか父さん、取り敢えず勝手に事務所で煎餅撒き散らしながら寝そべってDVD鑑賞始めちゃった金髪ちゃんを注意するでしょ普通!?


最初は鬼畜米英とか罵ったかと思えば、たかだか2日でこの有様だ。父さんもとうさんだか、金髪ちゃんも金髪ちゃんだ。


しかしアレだね。


ある意味この子は人の心を掴むのが上手いのかもしれない。


「あーしは断然殿様派ですよ。あの温かい人柄や、さる大名の次男坊と噂されているけど、結局正体不明なところなんかはミステリアスでいいし、何より神道無念流の使い手ってところがいい!あーしは新撰組の中では永倉新八が好きなんで、惹かれるものがありますね!あ、あと殿様イケメンだってのも理由の1つかも!」


金髪ちゃんも語り始めちゃったよ。

同じ趣味同士だし、仕方ないのかな?


お茶を持って戻ると、そんな話をしているのが聞こえた。


「ところで心愛、僕があげた参考書ちゃんと読んだ?しっかり勉強しないと免許とれないよ?」


僕は少し気になったので聞いてみた。

だけどこんな所でDVD観てる時点で勉強してる風には到底みえない。


「あ、忘れてた!そう言やぁ~コジコジに用があったんだわ!あーし明日学校サボって原付の試験受け行くからさ、わりーんだけどメット貸してくんね?試験費用やら交通費に金がかかってさ、メット買う金がなくって。」


そりゃそーだよな。

試験費用・交通費合わせて、最低諭吉さん1人は欲しいとこだ。余裕があるのならあと樋口さんが1人いると心強い。


ヘルメットもそこそこ値段するからね。

安いヘルメットもあるけれど、安全面を考えれば値は張るがそれなりに名の通った実績のあるメーカーのヘルメットが好ましい。


僕はAraiのメットを棚から出すと、心愛に手渡した。


「サンキュー!借りてくぜ。おっとそうだ!おじさん、3匹が斬る全巻置いてくね。それ観終わったら言ってね!続・3匹が斬る持ってくるからさ。」


続編も持ってんのかい!?

どんだけ時代劇好きなんだよ!


「おっ!コイツはありがてーな!今日は早目に閉めてオールで3匹が斬る祭りだな。小次郎、今日はバイトもういいから明るい内に心愛ちゃん送ってやんな。どうせ今日はお客なんて冷やかし客くらいしか来んだろう。」


え!そんな理由で店早閉めするの!?

しかも3匹が斬る祭りって…。

しかもオールとか!間違いなくぶっ通しで観るつもりだ。


心愛は明日免許センターか。

確かに明日試験行くなら今日は早目に帰って、試験勉強に追い込みをかけた方がいいよな。


父さんの言う通り、心愛を家に送る事にする。


「了解、父さん。じゃ、ちょっと行ってきちゃうよ。心愛、家まで送っていくよ。」


心愛は父さんに手を振るとメットを抱えて外に出る。僕はバイクのエンジンをかけると、心愛を後ろに乗せる。


「なぁ、コジコジちょっと寄って貰いたい所があるんだけどいいか?」


まぁ、バイトも終わった訳だし、特に用事もない。


「構わないよ。で、何処へ向かえばいい?」


心愛は、"よし!"と一言言うと行き先を僕に告げる。


「二宮駅!」


僕は言われた通り二宮駅へとバイクを走らせる。


246を走り、途中で下落合を右折して71号線をひたすら南に向かう。左側にラディアン花の丘公園入り口が見えてきたら、二宮駅はもう少し。


信号待ちで問いかける。


「なぁ、二宮まで来たけど、どこへ行けばいい?」


心愛は答える。


「北口。ちょっと入った所にラーメン屋があるんだけど、そこあーしのバイト先だから。」


ラーメン屋なんか、あったかな?

まぁ、あまり二宮駅には来ないからよく分からないけど、僕が知らないだけでラーメン屋があっても不思議ではない。


僕は言われた通りバイクを走らせると、そこには確かにラーメン屋があった。


…あったんだけどね、ビックリする位ボロい。

今は平成だよ?なのにこの建物から立ちこめてくる昭和臭はなんだ!?


でもラーメン屋はボロい方が美味いって言うしね。

しかし店の名前が食欲を減退させるのは何故だろう?


「も、もうこはんてん!?」


「って、無理に平仮名読みするな馬鹿!蒙古飯店であって蒙古斑点じゃねーし!あーしのバイト先馬鹿にすんなよ!店の見た目とネーミングセンスはアレだけど、めっちゃ旨いんだからな!チョーシ乗ってんとお前のケツにケリ入れまくって青アザで蒙古斑点作るぞ!」


あ、金髪ちゃんも実は店の見た目とネーミングセンスはどうかと思うってるんだね。


口の悪さは相変わらずだが、先日食べた唐揚げが美味かったからその言葉に嘘はないだろう。


「…アレだ、メットとか参考書とか、さ。世話になっちゃてるからな。それとあーしの免許取得前祝いって事も含めての事だから、好きなモン食ってくれ。金ないけど、バイトしてるしツケもきくからさ。」


「?」

僕は首を傾げる。


「だ~か~ら、奢るから好きなもん食ってくれって事!鈍いんだよコジコジは!んなんだからモテねーの。ほら、バイク隅に停めて店入るよ。」


彼女なりの気づかいなんだろう。

しかし免許取得前祝いとか。まだ取得してないのにね。実は照れ隠しってのは分かったけど、あえて突っ込まない様にしておく。


なんかちょっと照れくさそうな金髪ちゃん。


「そっかぁー金髪ちゃんの奢りなんだ~。よーし普段食べれない様な高いもの食べちゃおっかな!取り敢えず高い順に上から5品いってみようかな!」


「あん?テメー、あん?あんまチョーシのんなよ?こう見えてバイト代死ぬ程安いんだかんな!?精々1000円以内で納めろよ!アレか?アレだな?あーしを破産させる気か?させる気満々か?ぶっ殺だぞ?ぶっ殺だかんな!」


僕はこの舌っ足らずで頑張って凄む金髪ちゃんが実はかなり気に入っている。

正直ちょっと癖になりつつある。


「はいはい。1000円以内で納める様にするからお店に入ろ?」


激おこな金髪ちゃんを諭すと、彼女の背中を押して、僕らはお店に入った。


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