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「俺が中学卒業して1年会わなくて。高校入学して3か月、だっけ? お前が俺見つけるのにかかったの」
「それくらい、だけど」
「友香が卒業するまで、あと1年。中学の時と同じだろ」
「だから、大学は無理なん」「違っても、別にいいんじゃねーの」
俺の一言に、友香は目をぱちくりさせる。その顔がおかしくて、俺は噴出した。
あーもー。ほんとに腹が立つ。
友香は追いかけることばっかり考えていたみたいだけどな、俺は――
「月1くらい、こっち戻ってくるし」
「え?」
「お前も、遊びにくらい、来れるだろ」
「それは、先輩の」
「家。今までも、来たことあるだろうが」
えーと、えと、あれ? そう呟いて困惑する友香。
なぜそんなことが分からない。ここまで追いかけて来たくせに、家くらい押しかけて来いよ。そのくらい、やれるだろう? 電車くらい、乗ってこいよ。
石ころいっぱい蹴りながら、あほみたいに荷物持って、来いよ。俺のところまで。
「一人暮らしするのに、いいんですか?」
「よくなかったら呼ばねえよ」
「でも、私、先輩の彼女でも、ないのに……ただの後輩でも、遊びに行っても、いいものですか?」
その問いかけに、一にも二にもなく心の中でずっこける。
俺が『遠距離』と言った前振りは、届くことはないらしい。
それが友香らしくて、でもいよいよ言うしかない。そう腹を括って天を見上げる。柄にもなく、恥ずかしい想いが込み上げてきて、自分に苦笑する。
友香ですら言ったことが、自分から言わなければと思えば、予想以上のハードルだと初めて知った。
思い返せば、友香と過ごす日々は初めてのことばかりだ。
こうやって俺は振り回されて、そのままぶんぶんあちこち連れまわされるのだろう。でもそれが嫌ではないし、仕方がないと言いながら、付き合ってやる自分の未来が見える気がする。
もう逃げられないのだろう、俺も――友香も。
袖を掴む友香の指先を離すと、俺は友香の肩を掴んでくるりと回れ右をさせた。そのままずんずん肩を押して、友香を壁と向かわせる。
俺には残念ながら壁ドンなんて芸当はできない。
顔を見るなんて絶対無理だし、見られるのもごめんだ。だから後ろから壁に手を付いて、友香の動きを封じた。
それに友香も緊張して、ピクリと震えて固まる。なんだ、どうするんだって思っている気持ちが全身から伝わってきて、今すぐ解放してやりたいけれど、見られたくないから黙ったままゴクリと唾を飲む。
一息吸って、吐きだして。友香の耳元に、そっと顔を近づける。
そうして俺は、2年間黙って見送ってきた、出たばかりの答えを口にした。
「友香。―――好きだ」
(fin)
H27.4.16
【あとがき】
本当に遅くなりました。晴れ息子さん、改めて。ありがたくも続編を希望さして下さり、ありがとうございました。
友香と尚人先輩は、ちぃことの2人との対比を出したくて、そこに気を配りつつ2人の世界観が出たらいいな。そう思って書いていたような気がします。
同じ高校生となれば、それなりに気を配ったりするのです←出来ているかは謎。甘さはあまりないはずだけど……な、きゅんと感が最後に残ったら。
それが私の目指すところの作品でした。
さて、後日談的なものが読みたいって言われそうな終わり方です(笑)
私としては、晴れ息子さんがつけて下さったタイトルになぞり、良い終わり方ができたんじゃないかなぁって思っているのですが、いかがでしたでしょうか?
これから、2人に相変わらずな日々が続けばいいなぁと、作者ながらに願っております。それではこれにて、3部作も終了と言うことで。
本当にありがとうございました。