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好きと言えるその日まで  作者: 桜倉ちひろ
鈍感力の行方
19/19

 「俺が中学卒業して1年会わなくて。高校入学して3か月、だっけ? お前が俺見つけるのにかかったの」

 「それくらい、だけど」

 「友香が卒業するまで、あと1年。中学の時と同じだろ」

 「だから、大学は無理なん」「違っても、別にいいんじゃねーの」

 俺の一言に、友香は目をぱちくりさせる。その顔がおかしくて、俺は噴出した。

 あーもー。ほんとに腹が立つ。

 友香は追いかけることばっかり考えていたみたいだけどな、俺は――

 「月1くらい、こっち戻ってくるし」

 「え?」

 「お前も、遊びにくらい、来れるだろ」

 「それは、先輩の」

 「家。今までも、来たことあるだろうが」

 えーと、えと、あれ? そう呟いて困惑する友香。

 なぜそんなことが分からない。ここまで追いかけて来たくせに、家くらい押しかけて来いよ。そのくらい、やれるだろう? 電車くらい、乗ってこいよ。

 石ころいっぱい蹴りながら、あほみたいに荷物持って、来いよ。俺のところまで。

 「一人暮らしするのに、いいんですか?」

 「よくなかったら呼ばねえよ」

 「でも、私、先輩の彼女でも、ないのに……ただの後輩でも、遊びに行っても、いいものですか?」

 その問いかけに、一にも二にもなく心の中でずっこける。

 俺が『遠距離』と言った前振りは、届くことはないらしい。

 それが友香らしくて、でもいよいよ言うしかない。そう腹を括って天を見上げる。柄にもなく、恥ずかしい想いが込み上げてきて、自分に苦笑する。

 友香ですら言ったことが、自分から言わなければと思えば、予想以上のハードルだと初めて知った。

 思い返せば、友香と過ごす日々は初めてのことばかりだ。

 こうやって俺は振り回されて、そのままぶんぶんあちこち連れまわされるのだろう。でもそれが嫌ではないし、仕方がないと言いながら、付き合ってやる自分の未来が見える気がする。

 もう逃げられないのだろう、俺も――友香も。

 袖を掴む友香の指先を離すと、俺は友香の肩を掴んでくるりと回れ右をさせた。そのままずんずん肩を押して、友香を壁と向かわせる。

 俺には残念ながら壁ドンなんて芸当はできない。

 顔を見るなんて絶対無理だし、見られるのもごめんだ。だから後ろから壁に手を付いて、友香の動きを封じた。

 それに友香も緊張して、ピクリと震えて固まる。なんだ、どうするんだって思っている気持ちが全身から伝わってきて、今すぐ解放してやりたいけれど、見られたくないから黙ったままゴクリと唾を飲む。

 一息吸って、吐きだして。友香の耳元に、そっと顔を近づける。

 そうして俺は、2年間黙って見送ってきた、出たばかりの答えを口にした。




 「友香。―――好きだ」




 (fin)


 H27.4.16


 【あとがき】

 本当に遅くなりました。晴れ息子さん、改めて。ありがたくも続編を希望さして下さり、ありがとうございました。

 友香と尚人先輩は、ちぃことの2人との対比を出したくて、そこに気を配りつつ2人の世界観が出たらいいな。そう思って書いていたような気がします。

 同じ高校生となれば、それなりに気を配ったりするのです←出来ているかは謎。甘さはあまりないはずだけど……な、きゅんと感が最後に残ったら。

 それが私の目指すところの作品でした。

 さて、後日談的なものが読みたいって言われそうな終わり方です(笑)

 私としては、晴れ息子さんがつけて下さったタイトルになぞり、良い終わり方ができたんじゃないかなぁって思っているのですが、いかがでしたでしょうか?

 これから、2人に相変わらずな日々が続けばいいなぁと、作者ながらに願っております。それではこれにて、3部作も終了と言うことで。

 本当にありがとうございました。

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