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召喚しちゃいました

巨大要塞時雨の中枢にある学校『時雨第一学園』、通称『アメガク』。

その大きさは普通の学校のおよそ10倍。

膨大な大きさを誇る学園には4000人の魔道士たちが切磋琢磨しながら魔法の使い方を中心に教育を受けている。

そしてその学園の図書館。

そこでは授業を終えた二人の魔道士が一休みの休息をしていた。

二人以外誰もいない図書館はいつも以上の静けさを漂わせており、窓から差し込む光は宙に旋回するホコリをくっきりと写し出している。


図書館の奥で机に頭を沈めていた魔道士、壇五は深くため息をつく。

顔はとても暗く、生気がほとんど無い。


「ふゆぅーーー」壇五は再びため息をつき、横で禁術図鑑を読んでいる椎岳をごろりと机の上で顔を転がし、暗い目でじーっと見た。

「どうしよシーちゃん。補習授業受ける羽目になっちゃったんだけど……」とだらんと下に下げていた腕を持ち上げる。その手には一枚のチケットが握られている。


隣で図鑑を黙々と読んでいた椎岳は壇五の言葉にページにしおりを挟み本を閉じた。

壇五の手からチケットのような紙を受け取ると、苦々しい顔で紙に書かれている事を読む。

「今日の午後6時より学校裏の雨降りの森へ集合……ね」

紙には補習授業への招待状だった。地図が付いている丁寧ぶりだが、壇五自身は今すぐこれをチーズの様に裂きたかった事だろう。 

「嫌だよーーー!めんどくさそう……」壇五は顔を上げ、涙をためた顔で椎岳の腕を取る。

「どうしたらいいかな!?」

「何が?」

「これをサボる方法。何か無い?」壇五は補習授業をなんとかサボろうと親友の知恵を借りる。


が、「無理ね。諦めて逝って来なさい」と即答する椎岳。

「いや、早すぎでしょ。一秒すら考える気なかったよね。ていうか、逝って来いじゃ無くて行ってこいだよね。不謹慎だからやめて」壇五は椎岳をにらむが、読書を再開している椎岳の目には入らなかったようだ。陽気に口笛まで吹いている。


「しょうがない事よ。小テストしくじったのはダンゴ、アンタ自身なんだから」図鑑をペラペラとめくりながら椎岳は冷静な返答を返す。

「うぅ……。情の無い一言ね」

「情なんて切り離し出来る便利物にすぎないわ」椎岳はさらに追撃を重ね、壇五の心を撃沈させようとする。

「ひどっ!まさに外道だわ!」壇五は急に体に力が抜け、再び机に頭を勢い良く沈める。

「……なんで私、こんなダメなんだろう」しばらくの沈黙の後、壇五は何百回目となる言葉をつぶやく。


「魔力が無いのは生まれつきなんだからしょうがないわよ。そんな事つぶやいている暇があったら、魔法の知識を増やしたらどう?」椎岳が図鑑で壇五の頭をたたく。

「だから、魔力が無かったら念は練れないのよ。念が練れなきゃ魔法だって発動しないわ」壇五はほほを膨らませ、机に全体重を乗せる。


「……ったく、しょうがない子ね。やけくそで釣り糸たらしていたら靴下やら長靴やら引っかかるもんよ。あきらめるのとがんばる事じゃ質は低くても獲物の数も違ってくるはずよ」

「簡単に言わないでよ……じゃあ、一体何をするというのよ?」

「そうね……」椎岳は図鑑をぺらぺらとめくる。この時壇五は椎岳が読んでいるのが魔法の図鑑という事だとわかった。

『達人の達人による初心者のための魔法本』と本の表紙に題名がでかでかと載っており、魔法の初歩とも呼べる事柄が多く書かれていた。


「シーちゃん……私の為に……」壇五は椎岳の優しいツンデレに思わず泣きそうになるが、何とかこらえ椎岳と共に図鑑を読む事にした。

相変わらず文字だらけの紙にはジンマシンが出そうになる壇五だったが、椎岳の真剣な顔に体に力をこめ踏ん張る。

唯一の友達として椎岳は壇五に多くのことを教えてくれた。

壇五に魔法が使えるようになってほしという椎岳の願いを崩すのは壇五自信が我慢ができなかったのだろう。

自分がしっかりしなければと壇五は無理にでも思う事にした。


マッチ大の火を出す魔法『火粉魔法(ポムマジック)』、少量の水を出す『雫雨魔法(ウィルマジック)』、静電気ほどの電流を生み出す『放雷魔法(ピリマジック)』など色々な初心者用の魔法が乗っている図鑑を片っ端から読んでいくが、壇五が使えそうな魔法は余り無いようだ。


ただでさえ才能が無いというのに、魔力が無いとなっては踏んだり蹴ったりな状況の壇五は使えそうな魔法を一つも残さず試しては見るがどれも無発に終わっていく。


火粉魔法(ポムマジック)は机に焦げ臭い煙を出すだけに終わり、雫雨魔法(ウィルマジック)は机を湿らす事は出来たものの攻撃用にはまだ使えない状態だった。


ほかにも多くの魔法の術式を唱えては見たが、やはり何も起こらない。


魔力が無いというのに魔法を唱えようなどとカレー粉無しでカレーを作るのと同じ、サッカーボールが無いのにサッカーをやるのと同じ事だ。


壇五と椎岳の体力が減る一方、魔法はまったく発動しない。

まさか術式が間違えているのでは?と考え椎岳にやらせてみるが無残にもあっさりとこなして発動させてしまう椎岳の姿を見て壇五は顔を暗くする。


あれこれやっているうちにすでに夕方、補習授業までもう時間が無い。

壇五と椎岳は半分あきらめたように仲良く机に顔を沈めた。


「ふゆぅー」「ほえぇー」二人は締りの無い声を上げ、図鑑を机に静かに置いた。

ページに色々と印をつけたりクシャクシャにしてしまったせいで図鑑は無残な姿であったが、その事で図書館の先生に怒られるより補習授業のことで二人は頭を悩ましていた。


おそらく授業は魔法を使って、野外で行うものだろう。

情報によると死者が出た事もあるらしく壇五が嫌がるのも無理は無い。

しかし、ただの授業ではない事は確かであろう。

魔法が使えない壇五には死にに行って来る様なものだ。


「どぅーしよ」顔を沈めたまま壇五が隣にいる椎岳に話しかける。

「ほ、他は?ほかに何か無いの?」椎岳は図鑑をめくっては見るがやはり使えるような魔法は少ししかない。しかも、それらの魔法は壇五自身が使えないので話にならない。


交換魔法(トレードマジック)氷結魔法(ブリザードマジック)硬化魔法(ブロックマジック)防御魔法(バリアーマジック)、ずいぶん試したけど全部ダメ。どうしようもないわ」壇五は立ち上がり右手をおでこに当てる。まるで特攻前の兵士のようなしぐさだ。


「壇五、逝って参ります」壇五は生気の無い顔でふらふらと出口へと歩き出す。

「だぁーーー!待って待って!」椎岳は壇五の腕をつかみ暗い壇五の顔に平手打ちを何回も食らわせる。


「しっかりしなさい!あきらめるなっての!まだ手はあるわよ!」椎岳が壇五をゆすり意識を取り戻させようとする。


「何?ここまでダメな私に何が出来ると?フフフフフフ……」すっかり壊れた壇五はうつろな目で薄ら笑いを浮かべる。


「かくなる上は上級魔法よ!爆発魔法(バムマジック)とか強力な技が使えたら相手なんていちころよ!」椎岳は何とか壇五を席に座らせ、本をいくつか探してくると机にならべる。

どれもこれもむずかしすぎる魔法が載っている本だ。

大半が莫大な魔力と経験が必要なもので、壇五が出来るとはとても言いにくい。


「無理だって……スライムも倒せないのにバラモスに挑むようなものだよシーちゃん」壇五は椎岳の肩をたたく。

「はぁーーー……そうよね」椎岳はあきらめのため息をつき、本を片付けようと本を順々に重ね始める。

と、一冊の本で椎岳の手が止まる。

「あ、あれ?確か……これは……」椎岳が一冊の本をとる。

「なに?宝の地図でも見つけたの?」壇五は不機嫌そうに本でドミノを作っている。


「……ダンゴォ。ならば……これならどうっ!?」と椎岳は目を光らせ、その本を壇五に見せた。

古びた緑色の本、ホコリをかぶったその本の表紙には『召喚魔法の書』とだけ書かれている。


召喚魔法(グリモマジック)?上級者でも使えない『超上級危険魔法』じゃないの。それがどうしたのよ……」

「ここよ!ここ!」椎岳は息を荒げながら表紙の下側を指でトントンとたたく。

下側には小さく金箔を名前の形に貼る事で作者の名前を表しており、古びてはいるがそこだけは読み取る事ができた。

「護摩……千米(せんべい)……」壇五は作者名を読み上げ、目を見開く。

「えっ……これって……」壇五は椎岳から本をひったくるように受け取るとまじまじとその名前を見つめる。


「お……お父さんの名前?」壇五の脳内に過去の出来事がフラッシュバックされる。

余り覚えの無い両親の顔、おさない自分が父と母の二人に抱かれている光景、少なくても懐かしくて涙が出そうになる思い出の数々。壇五の頭ではそれらがぐるぐると渦を巻いていた。

魔道士の選別でそれっきり会っていないのだが、壇五は親との思い出を今まで一つたりとも忘れてはいない。


「うそ……なんで?」父の名前が書いている本を壇五は信じられない様子で眺める。

と、壇五は記憶の中からある事を思い出す。父親の仕事だ。

小さい頃に父親から教えてもらった覚えがあり、その仕事の可笑しさに笑ったことがある。

すっかり忘れていたが、今になって急に思い出した。

「お父さん……の仕事は……召喚士(マスター)

「たしか……ダンゴのお父さんって昔有名な陰陽師をしていたんでしょう!?」椎岳が興奮して壇五の体を再度揺らす。

「有名ってより、無名だったけどね。お母さんとの結婚前はそういうお祓いの仕事をしていたって聞いた事があるわ」壇五が本の表紙をなでるように指を伝わせる。ホコリが指につき、壇五は服のすそではたくき落とした。


「お父さん……本出してたんだ」壇五はずっしり重い本を見つめ、笑みを浮かべる。

「でも、召喚魔法(グリモマジック)の本だなんて中二臭いわね」

「しかしよ、よく考えてダンゴ」椎岳が人差し指を立てる。

「親がお祓いの魔法をしているってことは子供もそれくらいのことはできるんじゃない?」

「へ?」壇五はその言葉に顔をしかめ、本と椎岳を見比べ、言葉をつづける。

「私が……召喚魔法(グリモマジック)を?」

「ご名答」椎岳はふっと息を吐くと、人差し指をぐるぐると宙で回す。

壇五の父親、護摩千米は召喚獣を呼び出し悪い脅威を追い払うという仕事をしている。

あやしいという事であまり客は寄り付かなかったのだが、うわさによると本当に召喚獣を呼び出す事ができたとか(壇五が聞いた話いわく)


壇五はえぇーと信じられない様なしぐさをするが、一応本を開く。

小難しい言葉が並んでいる所は頑固な父親の性格を現しており、それもあってか壇五は苦手な活字もがんばって読み進める。

本の目次には多種多様な召喚獣(クリーチャー)の名前が書かれており、恐らくそれぞれのページには召喚獣(クリーチャー)の説明と召喚方法でも書いてあるのだろう。

壇五はペラペラとページをめくっていくと、あるページで手を止めた。

そのページには主に悪魔などを呼び出す『悪魔召喚(デビルグリモワ)』と書かれている。


「ここらへんが強い召喚獣(クリーチャー)が多くいるらしいわ」壇五が椎岳にそのページを見せた。

右半分に呪文の並び、左半分は召喚獣(クリーチャー)についての説明が書かれていた。

中には絵まで書かれている召喚獣(クリーチャー)もいた。

どれも目を真っ赤に光らせた不気味な化け物がこっちに襲い掛かってくるような姿勢で載っている。


「『悪魔』か……召喚魔法(グリモマジック)が今のところ魔道士でも誰一人使えない今じゃ、いるかどうかもわからない存在だけど……」椎岳がそうつぶやき笑みを浮かべる。

「もし、もしいたらすごい戦力になるわね」

「えぇ」壇五も同じく笑みを浮かべるが、すぐに顔を暗く元に戻す。

「でも……さすがに私なんかが出来るものじゃないわよ。いるかどうかもわからないのに」

「物は試しよ。補習授業まで時間ないから一つしか出来ないだろうけど」椎岳は壇五の肩をたたき励ますと本を閉じた。


「さ、開いた所の召喚獣(クリーチャー)を召喚してみましょう」

「そんなうまくいくかな……」壇五は不満な顔をするが、しょうがないという様に本を適当なページで開く。


開いたページはさきほどの悪魔召喚(デビルグリモワ)の欄だ。

一匹の召喚獣(クリーチャー)が載っている。

名前はルシファー。堕天使として有名な悪魔だ。


「ル、ルシファー……ねぇー……」壇五はいきなりの大物に額から汗を流す。

「かっこいいじゃん!堕天使って何かロマンチックじゃない!?」椎岳は謎の興奮をしており、壇五の頭をたたく。

「でかした!ダンゴ!」

「召喚してないわよまだ!―――ったく……」壇五は椎岳の興奮を鎮め、ルシファーの説明書を見る。


ルシファー 堕天使として魔界に生きる悪魔。

天使時代は神の次に偉大な階級に立っていたが、ある事がきっかけで神に反発し戦争を起こしたため魔界へと堕とされる。

その力は魔界最強とも言われ、仲間としてベルゼブブ、アザゼルなどがいる。


「……なるほどね。召喚していい者じゃないわね」壇五はこりゃだめだと頭を振る。

「でも、魔界最強ってどれくらい強いんだろうね?」椎岳は説明書を真剣に最後まで読み、いすにもたれる。

「まぁたしかに召喚できたらいいかもね。補習授業なんて目じゃないわ」壇五はうやめしそうな目でそのページを見つめる。


「ええと……召喚方法は魔方陣を書いて呪文を唱えると」椎岳は説明文を読み上げると壇五に本を押し付ける。

「さ、レッツトライよ!」

「え、まじでやんの?」

「もちのろんよ」椎岳は魔方陣を書くためのチョークを探しに席を立つ。


「呪文の練習くらいしときなさいよ」

「はいはい……」壇五は本に並んでいる呪文の羅列を見て吐き気を覚えるが、椎岳が許してくれなさそうなのでここは耐える。

椎岳が奥の受付カウンターに向かい、席には壇五一人が残される。

パタパタと椎岳のスリッパの音が二人意外誰もいない図書館に響く。


壇五は補習授業までの時間がもう無い事を確認すると、呪文の練習を急ぐ。


「えぇと……もう、呪文ながいわね。朗読し終わるの10分くらいかかりそう……」

カタカナで書かれている文字はなんとも読みにくい。

しかも日ごろからあまり呪文を唱える魔法に関わってこなかった壇五にはかなり難しいものに見えた。


―――が、

「ダテナ、ポロミネアレスグレモラカス、サズレナレバイアバレツヤゴノム……」壇五は自分でも驚くスピードで呼んでいく。

読み方がまるで頭の中に浮かんでくるような、そういう感覚で次々と長い呪文を読み進める壇五の姿はすくなからず不気味に見えた。


「おーいダンゴ。チョークの色に何か指定とかあるぅ?」遠くからかけて来た椎岳は壇五に話しかける。

しかし壇五は本から目を離さない。

まるで本に意識を吸いこまれていくように壇五は淡々と呪文を読み上げていく。


「ダンゴ?」椎岳は様子がおかしいと察知し、駆け寄り壇五の体を揺らす。

しかし壇五はそれでも呪文を読み進める。すでに半分を読み終わっていた。

「ベル、サハジャネテイコペナコメティ、グラメニアサチナモナン……」

うつろな目で本にかじりつくように読む壇五。さすがの椎岳もこれはおかしいと目を見開く。

「壇五!?どうしたの?」と、ここで椎岳はあたりの異変に気づく。


―――揺れている!?


図書館の棚が揺れ、並んでいる本がバサバサと音を立てて床に落ちる。

天井にぶら下がっている照明もがたがたと音を立て、ひびが入った。

机も椅子も同じく激しい音を立てて揺れている。


「ちょっ!?何これ?」椎岳はあわあわとチョークを床に落とす。

「サバノエビィンレバナコレアスベラコレノ……」壇五の声が高くなる。呪文ももうすぐで終わってしまう。

「えぇ!嘘!?」椎岳がまさかと壇五を見る。

「本当に……召喚しようとしているの!?」


親が出来るならなら子供もできる。その言葉が椎岳の頭の中で踊り狂う。

もし、もしだが本当に壇五の父護摩千米が召喚魔法を使えたのなら……。

そしてその子供である壇五が父の血を受け継いでいるというのなら……。


「だめぇ!!!ダンゴォ!」椎岳が急いで壇五から本と取り上げようとするが、壇五は離そうとしない。

ボンドで貼りついている様に本は壇五から離れないのだ。

まるで読んでほしいような。本のそういう願いが伝わってくるようだった。


壇五が座る机の真ん中から煙が出てくる。

煙はどんどん上へと上昇し、だんだん人の形へと変化していく。


「なっ……」あまりの出来事に動きが止まる椎岳。

「アバノグレタレリルロリエグランマ!」壇五が呪文を唱え終わると同時に煙から光がほとばしる。

強い光に二人の少女は目をつぶる。


「わわ!」

「きゃっ!」二人は突如起こる風に吹き飛ばされ、壁に激突する。


「いたた……」意識の戻った壇五が起き上がり、辺りを見渡す。

「あれ?何これ?」

「何これじゃないわよ!」落ちてきた本に埋まれていた椎岳が中からはいでる。


「なんて事してくれるのよ!?」椎岳は壇五の頭をたたく。

「へ?どしたのシーちゃん?」しかし壇五はのん気にポカーンと口をあけていた。

「まさか覚えてないの!?あんたはルシファー召喚しようとして……ってぇ!」説明の途中で椎岳は机の上の煙をにらむ。

「や、ばい……」と声を震わせる椎岳。


「え」一声上げてから、壇五も机を見る。

机の煙はすでに白くなっており、かすかに中から人の姿が見える。


『……貴様は何者だ?』突如煙の中の影が低い声で二人に話しかけるてきた。

悪魔の声にぴったりな怖気の走る声に二人の全身に鳥肌が立つ。


「……へ?」壇五は煙の中の影の存在に驚きながらおそるおそる話しかける。「あの……あなたは……」


『我輩の質問に答えろ。人間よ』影は一層声を低くし問いを続ける。


「は、はい!壇五です!護摩壇五……」壇五はあせって立ち上がり、服装を整え、影の質問に答えた。


『壇五か……貴様が我輩を召喚したのだな』影は二人に歩みを進める。

コツコツと乾いた靴が音を出しながら、二人に近づく。


「あなたはいったい誰なの!?」壇五は影が近づいてくる事にあせり、声を荒げながら影に指を差した。


『貴様が我輩を召喚したというのに我輩を知らないとは……かなりの下等生物のようだな』影はクククと笑うと煙から姿を現した。


その男、いや『少年』は壇五とさほど身長が変わらない位小さかった。

まだあどけないその少年は全身にサイズの全く合っていないスーツを着ており、そのくせ凛とした目で二人を見つめる。その青い両目の片方、右目にはなにやら召喚陣のようなマークが刻んである。


少年は机の上から自己紹介を始める。完璧に上目遣いだ。


『わが名はルシファー。魔界最強の堕天使だ』










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