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平民でも王子様と結婚します!~転生公爵令嬢は手段を選ばない~   作者: 蒼黒せい


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23話

作戦の準備が終わるまで、私はいつも通り侍女として勤めた。

ちょっとだけ違うのは、休憩時間が設けられ、しかもその時間は殿下とのお茶会だということ。

わざわざ執務室で働いている殿下に私室まで来てもらうのは申し訳ないので、こちらが出向くと言ったら、


「君と二人きりで休みたいんだ。あそこでは気が休まらない」


そう言われたら何も言えないわ。

でも、殿下とのお茶会は楽しいから私もうれしい。

また、ミルドレッド様に怪しまれないようルベア様の演技も続けている。

殿下によると、ルベア様はミルドレッド様の一番のお気に入りらしい。

その理由は、エイベル殿下に似ているからだとか。

似てるというか、本人だしね。

そんなわけで、作戦当日まではたまにルベアとして顔を出すようにしておくらしい。

殿下は心底嫌そうだけど。


「リリーシアを殺したかもしれない犯人に笑い掛けるなど、拷問でしかない」


吐き捨てるように言ってたのが印象的だったわ。

私もただ待つわけにはいかない。

少しでも役立てるよう、リリーシアを殺した毒についての情報が得られないか調べていた。

そんなある日、ある本が大量入荷しているのが目についた。

気になったので、司書に聞いてみたわ。


「これは、何の本なんですか?」

「こちらはですね、ルテェアット国の書物ですよ」


ルテェアット国は、ミルドレッド様のアイクオ家が盛んに貿易を行っている国だ。

その国との貿易が始まったのがおよそ50年前。

鉱石採掘を主要産業としているこの国から大量の金属を輸入できたことで、アイクオ家は一時隆盛を極めた。

しかし、船の劣化により貿易量が激減。

さらに、これまでの貿易で金属が大量に国内に出回ったことと、他国との貿易で別ルートでも輸入できるようになってから、金属の需要は減ってアイクオ家の権威も失墜。

今では公爵家の中では一番権威が弱い。

だからこそ、ミルドレッド様を王妃にしようと躍起になっている…らしい。


とにかく、アイクオ家が交流を深めている国の書物だ。

もしかしたら何かヒントが見つかるかもしれない。

私は数十冊はあろうである本を全部貸してもらい、読み進めることにした。

そうして読み進めること3日目。

私はついに、気になる記述を見かけた。


(鉱石を粉末状にすることで畑に散布し、土壌を改良…ね)


ルテェアット国は土壌が痩せているようで、貿易は主に食料品の輸入が多い。

しかし、他国に食料を頼り続けるのは危険だ。

そこでなんとか生産力を高められないかと苦労しているみたい。

その対策の一つとして、採掘した鉱石を利用しているらしい。

それを読み進めると、驚愕の事実を発見した。


「『この鉱石の粉末を誤って吸入すると、消化器官に異常をきたし、吐血といった症状が発生、最悪死に至る』…これじゃない!」


まさかこんなところに答えがあるとは思わず、つい声を上げてしまった。

司書に睨まれたので、黙って頭を下げた。

とにかく私はその本を持って執務室に向かった。

殿下は常に影武者を置いているわけではなく、ルベア様として振る舞うときだけ影武者を置いているようだ。

今日は本人が執務室で政務に取り掛かっているはず。

たどり着くと、衛兵に取り次いでもらって急ぎの用だと伝えてもらう。

執務室の中には仮面を着けた殿下と、側近だけがいた。


「どうしたアリス。慌てているようだが…」

「殿下、リリーシアを殺した毒が分かりました!」

「なに!?」


殿下の前に先ほどの本を置くと、例の記述部分を読み上げた。

粉末はさらに無味無臭で、水にも溶けやすいらしい。

ルテェアット国内では土壌改良に有効な一方、劇物として厳重管理されているようだ。

聞き終えた殿下は仮面を脱ぎ、神妙そうにうなずいた。


「……なるほど、確かにリリーシアの症状はこの毒にピッタリだな」

「はい。そしてルテェアット国との貿易は、アイクオ家が独占しています。かの家なら、秘密裡に輸入していたとしても、誰にも気付かれません」

「だろうな。なるほど、どうりでどんなに薬物検査しても引っかからないわけだ。植物性ではなく、鉱物性か」


側近の方々も近づき、本を読んで確認している。

これまで一切分からなかった毒物が判明したんだもの。

これで一気に動きやすくなるはずだわ。


「見た目には黒い粉末か。…よし、これで現物確保もしやすくなった。でかしたぞ、アリス」

「ありがとうございます!」


殿下に褒められて、気分は最高潮だわ!

ニヤニヤしてると、不意に殿下に抱きしめられた。


「アリス、君は本当に最高だ。君が戻ってきてくれたことが、本当にうれしい」

「殿下…私も、殿下の元に戻ってこれで本当にうれしいです」


軽く殿下の頬に唇を押し当てる。

すると、殿下からも頬にキスをしてくれた。

うふふ、こうしてキスをするのも久しぶりだわ。


「う~わ、真昼間から…勘弁してよ。見させられるこっちが辛い…」

「君は早く婚約者を見つければいいだろう」

「そう言うなよ…」


側近の方々が何か言ってるみたいだけど、相変わらず小さくしゃべってるから聞こえないわ。

どうしよう、ちゃんと聞いたほうがいいかしら?


「聞かなくていい。あいつらの問題だ」

「そう…なんですか?」

「ああ」


殿下が言うなら、それでいいんでしょう。

とにかく、これで犯人確保に一歩進んだわ。

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