答えのない問い(ジャンル:ショートショート)
答えのない問い
正直な所、よくわからない。訳のわからない数式が美しいのだと力説する彼のことが。
「なんでわからないんだ、この美しさ!完璧さ!見事さ!」
私はそっとため息をつく。文系に理系のよさなど理解できるものか。
「必ず答えがあるんだ。ステキじゃないかぁ。」
うっとりしてよくわからない数やら英語やらを見ている。
「数学はすべてのモノと繋がっているんだ。数字無しでは生きていけないんだよ!」
おそらくそれは、貴方だけだとちょっと言いたい。
「そして、すでにこれだけ完璧なところに完全じゃない、まだわからない世界が溢れているところにロマンがあるんだよ。」
左様ですか。ロマンといえば、恋愛しか思いつきませんが。
「ところで、今日の夕飯は何ですか?味噌汁と魚。と、いうことは和食、と。」
なにやら、手帳に書き込む。
「あなたと暮らしてから、毎日いろんな統計が取れて楽しいですよ。」
味を褒めることもなく、まずいということもなく、もくもくと食べる。
曜日と起きる時間について、仕事と疲労における口数の変化、子供の教育方針の違い、老後の生活などなどメモをたくさんしている。新聞もニュースも見ながら、たくさんのメモが溢れている。
女性の私の方が統計的には長生きなんだから、死んだら一気に捨てよう、そんなことを思っている。
「あなたと結婚して幸せですよ。」
よくわからないことの多い彼だが、彼よりもわからないのはそんな彼と四十年以上連れ添っている自分のことだ。
いつか彼のように言えるだろうか。にっこりとほほ笑んで、貴方と結婚して私も幸せです、と。




