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右腕が疼くので、ちょっと世界救ってきます。 ―黒焔の黙示録(アポカリプス)―  作者: 針々


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第一節 右腕が疼きし運命《フェイト・オブ・ダークネス》

==================================


『中二病』それは男子たるもの誰もが一度は患う心の病。

現実には存在しない設定を楽しみ、ほとんど100%黒歴史になる。

だが、そんなくだらない妄想すら貫き通せば。


世界の救世主にもなり得る





かもしれない。

               ―黒焔の黙示録(アポカリプス)― 第一節


===================================




「はっ!」


眼を覚ますと、そこは飾り気のない白い部屋の中だった。

俺としたことがどうやら気を失っていたらしい。


「ようやく目を覚ましましたね。」


声の方向へ勢いよく振り向く、

すると目の前には、白いドレスを身にまとい、手にはご立派な杖を携えた女が立っていた。

俺としたことが、ここまで接近を許しながら、その気配を一切察知できなかったとは……。


(俺ですら気が付かない気配を消す能力、

…!?こいつ、もしかして終焉ノ黒翼《ダーク・ジ・エンド》の一員か!?)


【説明しよう! 終焉ノ黒翼《ダーク・ジ・エンド》とは――。

世界の裏側で暗躍する秘密結社。世界各国に散らばるエージェントが24時間365日、

俺の行動を監視し、隙あらば命を狙っている極悪非道な組織である。

前世ではこの組織との争いとの最中に命を落とした…という設定にしておこう。】


「初めに言っておきますが、私は終焉ノ黒翼《ダーク・ジ・エンド》の一員ではありません。

私は、女神ソフィアです。」


「我の心を読んだのか!?」


「当然です、女神ですから。

 では、あなたの名前を教えて下さい。」


「フッフ、よかろう、我の名前は宵ノ宮 絶影(よいのみや・ぜつえい)、闇と共に生き、全ての影を振り払う…」


「杉原(すぎはら) 千人(せんと)、20歳の大学生。中学生から発症した厨二病のせいで、現実世界にいた時の友人は無しと。」


女神ソフィアという女は淡々と俺のプロフィールを読み上げる。

だが、それは組織と戦う前に全て捨てた物、今の俺とは何も関係がないのだ。


「汝に問おう、なぜ我は今この状態にある?」


「急に貴族みたいな口調になりましたね。

……気持ち悪い。

まあ、それは置いておいて説明します。

貴方は前世で死亡しました。通常ならそのまま来世へ転生する予定だったのですが、

少々事情がありまして……今回は異世界へ転移していただきます。」



「フッ、やっと我の出番というわけか…

 我の血を湧き立たせてくれる戦いを待ってたんだよ!」



「その変に適応が早いのもムカつきますね。

 まあ、いいでしょう。

 現在、私の管理する世界であるセレスティアでは、人と魔人が争う混沌とした状態となっています。

 貴方には救世の勇者となり、この世界を救っていただきたいのです。」



「なるほど…






 だが断るっ!」



「!?…何故です?」



「我は漆黒の闇そのもの、世界を滅ぼす魔王になることはあっても、世界を救済する勇者などにはならん。」



女神ソフィアは数秒ほど黙り込んだ。

俺は当然、世界の危機について熱く語り始めるものだと思っていた。

しかし――

「そうですか。では、仕方ありません。」


「えっ!?」


「では、この件は無かったことにします。

世界の救済は他の転移者に任せますので、貴方は結構です。

お疲れ様でした。」


ソフィアは手元の紙に何かを書き込み、


「来世……フジツボっと。」



「待てぇぇぇ!

 フ、フジツボって聞こえたんですけど?」



「ええ、貴方の来世はフジツボですよ?」



「な、なんでフジツボ!?せめて脊椎動物にしてくれよ!」



「無理です、前世での徳が足りませんから。」


「本来、来世というものは前世での善行により決定されます。

 しかし、あなたの前世での徳はフジツボレベルということです。

 その運命を回避しようとせっかくのチャンスを与えたのに

 貴方という人は…」

女神ソフィアは頭を押さえながら、言葉を呟く。

頭痛でもするのだろうか?

 



「申し訳ありませんでした! 救世の勇者、やらせてください!」

気付けば俺は、人生最速の土下座を決めていた。



「ハァ~~~~


 最初っからそう言えよ、このキモオタがよぉ!!」


女神とは思えない怒号が、白い部屋に響き渡る。


「………」

急な女神の豹変に、俺としたことが思わずフリーズしてしまう。



……数秒後。


「コホン。」


ソフィアは咳払いを一つすると、何事もなかったかのように微笑んだ。


「失礼しました。

 救世の勇者を引き受けていただけるということですので、

 転移者特典を授けます。

 貴方が必要と思う能力を言いなさい。」


「フン!そんなものは初めから決まっている…

 女神ソフィア、貴様の能力を全て我に差しだせぇ!」



「………フジツボ。」



「すみません、嘘です、冗談です。」



「全く貴方って人は、本当に気持ち悪いですね。

 罰として転移者ボーナスは私が適当に決めます。」



「て、適当に!?」



「はい、あ、勘違いしないでくださいよ?

 適切かつ妥当にではなく、文字通りテキトーの方ですから。」



「な、なんだってぇ!」



「貴方は人格的に問題が大有りなので、

 お目付け役をつけます。あちらの世界のことは彼女に聞きなさい。」



「では、良い異世界ライフを」

笑顔で手を振る女神ソフィアが光となって消えていく…

というより俺の方が部屋から飛ばされているんだ…


「うわあああああああああ!!」


フッ……。


これもまた、運命《さだめ》という名の序章に過ぎぬ。


――こうして我の覇道が幕を開けた。








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