僕が9ボルト(7)
「おー、光輝クーン!! ワタクシは信じておりましたヨー、寧色クンやジロウクンが、光暉クンにツンデレ全開でL.E.D.を使うのを拒んだときカラ、キミがきっと帰ってくるト!」
「なに、変なこと言ってるのよ」
「さすがに今のはボクでも殴るよ」
それぞれがグレイスを殴り、グレイスは思わず頭を抑えて呻く。
光輝は伴たちに連れられ、移動基地へと来ていた。
はじめは逃げ出したことを怒るのではないかと思っていた光輝だったがすんなりと受け入れてくれて嬉しくなる。
それだけじゃない。
「戻ってきたか」だの「宿題がたまってたからって勝手に帰るなよ」など、昨日あったことをまるで知らないような口ぶりで光輝を迎えてくれる桃山たちの姿を見て、光輝は痛感する。
僕はもう、仲間なんだ。
光輝はどことなく一ヶ月で終わったらそれっきりだと思っていたが、彼らからしてみれば何日だろうと一度でも戦えば仲間なのだ。
そして仲間が戻ってくれば嬉しいのは当たり前だ。
「さて、光輝クン。ここで聞くのも野暮なんですが、またヒーローをやってもらえるということでいいのでしょうカ?」
その問いに光輝は間髪入れず、大きく頷く。
「グワハハハ、当然ではないかグレイス。9Vスパークは光輝以外に考えられん!」
「似たようなくだり、さっきやったから」
寧色が伴の言葉にツッコミながらも、やはり顔は妙に嬉しそうだ。
「ではではさっそくサインを!」
光輝はグレイスに出された書類にサインした。バイトのときとは少し違う。正規ヒーロー契約書だ。高校卒業までまだ一年以上あるが、学生ということで色々優遇されるので、ヒーローとして問題なく働けるはずだった。
「それも重要だけどさ、グレイス。9Vスパークの必殺技を使えば、ボクたちは今の機人を倒せるんだ」
「……それは本当ですカ?」
「ああ、この目でしかと見た」
「もっとも、電池切れを途中で起こして、半端なやつだったけど」
「あれが電池切れを起こさなければ確実に倒せていたと思うんだ」
「ということは、それはすなわち今の〈奇機怪械〉をも倒せると……?」
グレイスは信じられないというような表情を見せる。
「だから何度もそう言ってるじゃないか!」
「っていうか、グレイスなんで9Vスパークの必殺技を知らないの? あれ、あんたや白香さんが作ってたんじゃないの?」
「いいえ、カンデンヂャーのスーツはワタクシが作りましたが、9Vスパークは完全に外注デシタ!!」
「それでも、説明書ぐらいは読んだんじゃないの?」
「ノンノン。ワタクシ、説明書は読まない派なのデース」
「駄目だ……だから気づかなかったんだ」
寧色と次郎花はふたりして呆れる。
「グワハハハ、グレイス。オレ様も読まない派だ!」
伴は空気すら読まない。
「……まあいいじゃないですか」
光輝は寧色と次郎花をなだめつつ言い放つ。
「なんにしろ打つ手ができたんだから〈奇機怪械〉を攻めようと思います」
「おいおい、けど昨日の作戦はばれていたんだぞ。今日だってばれないようにと移動基地を使ったのに結局ばれて先手を打たれた。確実にスパイがいるなかでもう一度作戦なんて成功するのか?」
桃山の疑問も分かるが、光輝はその答えをすでに持っている。
「成功しますよ。スパイは縁さんでしたから」
これにはみんなが仰天だった。
「あ、いや正確には縁さんに化けていたコピッペスっていう機人です」
「じゃあ、縁縁を休みにしたのが裏目に出てしまったな」
移動基地に入れない人員は今日は全て休暇という扱いにした、と光暉も言っていた。そのため、基地には誰もいない。緑縁に化けたコピッペスは休みになったのをいいことに今日の作戦と基地の機密情報を流そうとしていたのだ。
もし光輝が基地を訪れなかったらと想像して桃山は身震いする。
「でも、じゃあ本物の縁さんは?」
「光暉さんがどこかに監禁されているだろう、って。場所も特定できたと思うので、救出に……したそうです」
光輝が言葉尻を変えたのはたった今『無事、助けた』というメールがきたからだ。
「グワハハハ、だとしたら、何の憂いもないではないか」
「確かにそうデース! これは忙しくなってきましたネー!!」
「じゃあさっさと行って、とっとと倒しましょ」
「グレイス、予備の電池はあるかな。あ、光輝は二、三個持って行ったほうがいいよ」
それぞれが迅速に準備を始め出した。
光輝も、次郎花に言われるがまま、9ボルト電池を多めに用意して、奥へと向かう。
「スーツの修繕はしておいたよ。補強程度だけど」
途中、目のしたにくまを作っている村崎が光輝たちに告げる。村崎は光輝たちが移動基地へと入った直後にL.E.D.を受け取り、短時間だが修繕に務めていた。昨日から不眠不休で働いているらしい。
「ありがとうございます」
光輝はお礼を言って電気自動車に乗り込む。もちろん、席は定位置の一番後ろだ。
「光輝、こういうときだ。お前にかけ声の権利を譲ってやる。さあ存分に言え!」
伴がそう言うもののそんなことを言われると逆に言いづらい。
それでも光輝は自分のほうを見て期待する四人を裏切ることはできなかった。
「行きましょう!」
それに四人が頷いて電気自動車は動き出した。
二度目の襲撃作戦が始まる。




