養女となること
オレたちは、大統領公邸から出て、裏庭の目立たないところに回されていた2号に乗り込んだ。大統領とクーノはわざわざ送りに来てくれた。
「繰り返しますが、あなた方はドワーフ族の恩人、英雄と称されるべき人々です。銅像でも建てようかと思いましたが、その種のことを好まれる方々ではないのでしょう。ですが、今後も我々はあなた方の味方、どんな協力も惜しみません。もちろん、守秘義務は厳しく守る所存です」
「ドワーフの技術が必要な時は、いつでも言ってください。精一杯、お役に立つよう頑張りますから」
「ありがとうございます! ドワーフ族の高い技術力を見込んで、今後、何かお願いすることがあるかもしれません。その時はよろしくお願いします」
オレは2号をゆっくりと上昇させた、下を見ると、ユーコとクーノが、そろって手を振ってくれている。彼らが見えなくなるくらいの高度に達したら、オレは一気にステラにワープ、サンダ●バード基地に2号を着陸させた。
「あーー、なんか、森の空気、落ち着きますね、我が家に戻ってきたみたい」
「本当にここが我が家になるんだね」
「ああ、そうね。早々、父に許可を得てくるわ」
「くっ、もう無理かっ」
「あの、俺、俺、俺わあぁぁ」
「うるさい、うるさい、うるさい」
「届けを出す日、日がいいとか、悪いとか、ないわけ?」
「何、それ?」
《五つの属性は五行に因んでるよな? なら、六曜とかないわけ? 結婚届は友引を避けるとか?》
《アレは日本独自の占いじゃからのぉ》
《いやいやいや、こんだけ、旧地球のパロディーがある、この世界でさぁ〜 神様の趣味に合わんかったってダケじゃね?》
《うむ、洒落っ気のある神じゃが、好みもあるのだろう》
当夜は、少し遅めの夕食となったが、姫の父、アグスチヌス王も同席ということになった。コレ、「娘さんをください」イベントじゃね? あ、いや、どっちが娘さんだっけ? そいや前世は、いきなり籍入れるとかだったしなぁ〜
「クリティ殿、会った時から貴女こそ娘に相応しいと思っておりました。もちろん、私の相続人としても、です。といいますか、何やら安堵しました、これで心置きなく引退できそうですし」
まぁ、もう前世定義でいうところの「結婚」はOKしているのだから、事務手続きも伴ってよかった、って感じかな?
「って、お父さん、まだ老け込むには早過ぎるでしょ?」
姫の一言をスルーした王は、ドロシーに視線を向け、真剣な顔でこう言った。
「して、ドロシー、この二人の子となるには、相当、覚悟がいるぞ。それだけは伝えておきたい」
「はい! お二人の名誉を傷つけぬよう、精進いたします」
「いやいや、それだけでは足りぬ。この二人の子ということは、すなわち、次々期、エルフの王になるということ、そう心しておいてくれ」
「え!!!」
「わずかな付き合いしかないが、私は人を見る目だけは自信がある。君は、これから研鑽を積めば、王たる資格を得るに十分な資質を持っている」
「そ、それは、買い被りです、第一、私はエルフ族ではありません」
「エルフの元首がエルフ族でなければならない、という決まりなどないぞ? そもそも我ら、少々狭量な道を歩み過ぎた。そのせいだろう、方向性は違えど同等の技術力を持つドワーフ族に、経済では大きく遅れをとっている」
王によれば、エルフ族、孤高を保つと言えば、聞こえはいいいが、随分と排他的な政策を取ってきた。オープン、かつ、民主的で、他種族からの移民も積極的に受け入れて来た、ドワーフ族に学ぶべきだという意味だろう。
ドワーフが共和制を採った百年ほど前から、その傾向は顕著で今では双方のGDP差は1:3らしい。
「エルフ族ではない元首、一種の劇薬ではあるが、皆の価値観を問う意味でもいいのではないか? そう考えると君は適任だ。ああ、そうか、王と言ったが、訂正、君はフルシュ共和国初代大統領になりなさい」
「私にそのようは力があるかどうか分かりませんが、精一杯、努力することを誓います。お二人の養女となること、決して気楽に考えているわけではありません」
「まぁ〜 まぁ〜 お父さん、ちょっとプレッシャーかけすぎよ。それだけドロシーが可愛くて、評価してるってことにしときましょう」
「うむ」
「ああ、でも、そういうお話をされると、私たち、ちょっと残念な気持ちになります。私も、ジャンも、ドロシーが大統領になる頃には、この世にいないのでしょうから」
「そうか……。申し訳ない、配慮に欠ける言い方、だったな」
「いえいえ、そういう意味で申し上げたのでは、ありません」
「エリナ、それは杞憂というもの、私たちの縁は永遠、きっとお二人も、転生してドロシーの傍にいるでしょう」
《なんで、人族だけ寿命が短いんだよ?》
前々から述べているが、この世界、中世的なのは見た目だけ、魔法による医療の進歩で、人族でも、その平均寿命は男女とも百歳、標準偏差0.3歳程度だ。とはいえ、多種族に比べればれば短く、十分の一しかない。
《いや、それのぉ〜 人族以外の種族の方が、身体能力的にも進化しているということなのじゃ》
《ああ、なるほどね。もはや、突然変異と淘汰なんて悠長なものではないと》
《じゃな、この世界は、神の作為に満ちておる》
「そう願っておりますわ」
「だな」
「では、このワインを片付けて、今日は休むとするか? 明日は休暇かな?」
「はい、また、ニルスへ」
「今回は連絡しておきましたわ」




