迎賓館の昼食
オレの表情から推察したのだろう、さすが鋭いな。大統領からフォローがきた。
「お断りしておきますが、クリティさんの能力、妄りに公にしておられない旨は承知しております。ですが、決して政治利用せぬとヤヤル殿に誓った結果、お教えいただいたということです。どうか、ご了解ください」
「大統領、ご配慮、痛み入ります」
ま、こういうことなら、明日の帰りも裏庭から直接離陸できて、便利だけどな。
《うん? 待てよ?》
《何か気付いたのか??》
《あ、直接、口にするから》
「大統領、少々、気になることがありまして」
「なんでしょう?」
「宝珠の窃盗未遂事件、窃盗団はどうやってハッキングしたのでしょう? 私たちのような作戦をとれるとも思えないのですが」
「その点にお気付きになるとは、さすが、クリティさんですね。大変、失礼いたしました、信頼すると言いながら、不祥事を隠したがるのは政治家の常、でございます」
自嘲の笑みを浮かべた大統領は、一呼吸おいて。
「実は……。内通者がいたのです」
ガーディアンをメンテナンスする技師の一人が、窃盗団の手引きをするべく、今回の細工をしたらしい。
「ああ、なるほど。いえ、大統領を責めるつもりなどございません、理屈が通れば私は満足ですから」
「ドロシーさん、気を悪くしないで聞いてくださいね」
うん? なんで、ここでドロシー?
「その内通者、出奔しましたが、実は魔族の血を引く者だったのです」
「お気遣いなく。私、子供に見えますが中身は大人だ、とお伝えしたはずです。大統領が差別に対して堅苦しい言い方をされたのは、そういう背景もあったのですね」
「魔族とすると、もしや魔王の関与が……」
「姫様、お立場もありますから、早計なことは仰らないでください」
《おい! この世界、やっぱ魔王とかいるわけ? なんとなくの雰囲気から、RPGのデフォである悪の権化じゃなさそうだが》
《うむ、単なる魔族の王と解釈しておけばよいかのう。ゲームのように世界に破滅をもたらす、などという存在ではない》
「ああ、私としたことが……。申し訳ありません、偏見を含んだ発言でもありましたね」
「とは言え、ですわ」
うん? エリナ、何か思いついたのか?
「消去法ですよ。エルフ族、人族、ドワーフ族は宝珠盗難の被害者であると確認できました。だとすると、と考えても、邪推とまでは言えないですわ」
「なるほど! ならば、次は、魔族、もしくは、マーメイド族にコンタクトできるよう、冒険者ギルドの方で手配しましょう」
「ヤヤル殿……」
「ああああ! 大統領の前で、このようなお話を」
ヤヤル、つい口が滑って、ギルドの守秘義務に反する発言をしてしまっている。
「みなさんは、各種族で起きた宝珠盗難について、ギルドの密命を帯びてもいらっしゃる、ということですね。私の方は聞かなかった事にしておきましょう」
と話していると、ドアをノックする音がした。
「さ、ドワーフ族から心ばかりのお礼、まずは、昼食の準備が整いましたので、どうぞ迎賓館へ」
ここは大統領府、かなり敷地も広い、渡り廊下でつながっている別棟が迎賓館ということようだ。中央にはシャンデリアが下がる大広間、ペルシャ織風の絨毯が敷き詰められている。
螺旋階段を上がった二階が客室ということのようだ。百人くらいの立食パーティができそうな広間だが、端の方に漆塗りの長テーブルが設えられており、食事の準備が整っていた。
「ひとまず、昼食は軽いもので、済ませましょう」
クーノも戻ってきて、八人でテーブルを囲んだ。昼のメニューは、焼き立てのフランスパンに、チーズ、ハムなどを挟んだサンドイッチ、スープ、サラダ、アイスティーといったメニューだった。いやぁ〜 なんだか、目先が変わって美味しいよ。
で、でね。部屋割りなんだけどね。ツインルームが四室。さってぇ、結局、オレと姫、エリナとドロシー、ジャン、ヤヤルということになったが……。
「今夜は遠慮しておくけど、明日はお姉ちゃんを独占したいな」
という、ドロシーのご褒美権行使発言により、明日の遊園地は、オレとドロシー、その他三名で別々に回ることになりそうだ。シャワーを浴びて部屋でのんびりしていたら、夕食の時間となった。
先ほどの食卓に付く。夕食はウエイター付き、さらにはコック長も出てきて、料理の説明をしてくれた。
「十分な準備はできませんでしたが、こちらの名物を揃えさえていただきました」
迎賓館だしな、各国首脳をもてなすのが役目、急拵えとはいえ、豪華なディナーとなった。
メインは、サルマーレ、ロールキャベツとサワークリームを煮込んだもので、少々酸味がある独特の味だ。ドワーフ族が特別な日に供する料理ということのようだ。
付け合わせは、ママリーガ、トウモロコシの粉に牛乳とバターを練り込んで煮たものが添えられている。スープもこの地方特有のものであるチョルバ、具沢山の田舎風煮込みスープだが、牛の胃袋を煮込んだものが入っている。
《ここって、旧地球だとルーマニア?》
《そうじゃな。料理が似ておるのは、神の悪戯ということかのぉ〜》
サルマーレなんて、日本のロールキャベツ基準で考えるとかなり意外な味、ルーマニア、ああ、トランシルバニアかぁ〜 なんか、ファンタジーっぽいところだよね。
エルフの料理は基本ヘルシー、ドワーフのは、肉ぅぅって感じで、久々堪能できた気もする。って、オレ、食っても食わなくても関係ない体になっちゃってるけどね。




