大結界
翠玉の海と雲一つない蒼穹、妙なる白砂、振り返れば椰子の木が揺れている。沖縄? いや、前世でいうと、ここはニースあたりだと思う。
デッキチェアーに寝転びながら、周りを見渡せば。
《新しいワープポイントになりそうじゃな》
《バカンス用?》
《それだけとも限らぬと思うぞ。よい機会じゃ、飛んでみるかのぉ》
《そうだな、まずは、この間よりも、高度を上げてみるか?》
「クリティも、こっちに来なさいよ」
「ああ、あの、少し気になることがあって、ちょっと飛んで来ます」
「もう! こんな時にも! 貧乏性なんだから」
オレは砂浜から離陸し上を目指す。高度千メートルを超えたあたりから、水平線の上に白い靄のようなものが見えてきた。
《ちょうど、世界地図が「切れる」あたりということか?》
《うむ、何かの結界のようじゃが》
《行ってみよう!》
オレは、水平線を目指した。高度五百では見えず、千でやっと視認できる距離、結構、遠いな。時々ワープを挟みながら百キロほど先に「行き止まり」があった。ディアの予想通り、なにやら結界のような靄が目の前に広がっている。
空に溶け込むような白い靄と表現すればいいだろうか? 遠くから見れば水平線の上が若干、モヤっているように見えるだけだが、近づいて行くと、靄はその高さを増し、見上げてもその果てが見えない、白い壁となった。
《幻影の魔法がかかっているのか?》
《うむ、少し離れれば、水平線上の靄にしか見えんが、ここまで近づくと白い壁、結界と分かる、ということじゃのぉ》
《上はどこまで続いてるんだろう? 確かめるか?》
《じゃな》
オレは上昇を開始した、千メートル、五千メートル、一万メートル……。
《この体、どこまで大丈夫なんだ?》
《代謝はMP変換により行われる故、酸素はいらぬ。重力を操れるくらいじゃから、気圧の影響はない、問題は温度くらいかのぉ〜》
《何度くらいまで、大丈夫なわけ?》
《今は力を制限されておるからのぉ〜 恐らく、プラスマイナス百度くらい?》
成層圏の範囲内なら温度は摂氏マイナス56〜3度。高度五万メートルくらいまでなら上昇可能だろう。ひとまず、五万メートルまでは白い壁が続いていることを確認し、オレは海面近くまで下降した。
《なるほど、気圧で耳がおかしくならないのね》
《そのあたりも、この体、人のようで人ではないのじゃよ》
《では、壁の外にワープしてみるか?》
《よし》
後で考えてみると、もし、この時、このスク水姿で「外」のワープに成功していれば、オレは、多分、あっさり死んでいたと思う。だが、幸いにも、ワープしようとしてできなかった。
《「ここは元地球で外に世界が続いている」という考え、現状では状況証拠による推測に過ぎぬ、ということか? ワープするには発見が必要、外を見たければ世界の謎を解け、というのが神のミッションなのじゃろう》
《ひとまず、これ以上は諦めるしかないかな?》
《うむ、結界に魔法で穴を開けるという選択肢もあるが、今は止めておいた方が無難じゃな》
《ああ、外が魔獣の巣窟とかだったらシャレにならん。でも、この世界の地図がヨーロッパ部分だけ、しかも円形領域しかないのは、結界があってその先に人が行けないから。想定内ではあるけど、客観的事実として確認できた、ということには、なるな》
《うむ、何事も、自分の目で見て確認するのは、大切なことじゃ》
さってぇ、戻ったら、みんなビーチバレーをやっていた。あるんだね、バレーボール。これも転生者? まぁ、単純なルールだから、誰でも考え付くかな。
あ! 忘れてました、ごめんなさい。水着実況だよね?
エリナは黄色が好きなのかな、カナリーイエローのブラジリアン・ビキニだね。水着面積が小さめで、胸がよく目立つ、こうして見ると、オレよりワンサイズ大きいかも。
ま、オレの場合、体が小さいのにDカップ、しかも、今は旧スク着てるし、妙な、とても妙な、エロエロ感があるんだけどね。
ああ、姫、姫ね。彼女は濃紺のビキニ。エルフの肌って異様に白いんだよね。日焼けについては、UV遮断魔法なんてあるから、ヒーラーの彼女は自分もみんなにも早々かけてて問題ないんだけどさ。
白くて磁器のように滑らかで、エリナも綺麗なんだけどさ、まぁ、人外の美だよね、姫は。
で、聞きたい? フリンジ・ビキニってヤツだよ、胸がないのをうまく誤魔化すタイプね。
《誤魔化すじゃと!》
《いや、直接、言ってないから》
「あら、クリティ、いつも裸を見てるくせに、私の水着が気になるわけ?」
《ほら、女は、視線に敏感なのじゃ》
「いえいえ、別にぃ〜」
「このぉ〜 子供みたいな体のくせに、胸だけは立派なんだから」
「や、止めてください。そ、そこわぁぁ❤︎」
続いて、ドロシー、赤のワンピ水着だが、魔法かな? この赤が綺麗だ、紅花色といえばいいだろうか? でも、やっぱ、彼女はまだ子供なんだな。ウエストがなく、お腹ぽっこりの幼児体型、別の意味でヤバイ! 「COMIC LO」の世界じゃん。
こっちは、どーでもいい? ジャンは、無難に黒のサーフパンツタイプ。腹筋割れてるし、鍛えたいい体してるじゃん。
そうこうしている間に、食事を運ぶメイドとともに、エリナの父、ブルーノが海の家にやってきた。
「急なことでしたので、ありあわせですが……」
「そんなぁ、お気遣いありがとうございます」
なぁ〜んて、姫の社交辞令、昼食持ってきてないってことは、ご馳走になると決めてたと思われ。




