ドワーフの国
宝珠の件に話題が戻ったので、ふと、オレは気になっている点を指摘してみた。
「あの、基本的な話で申し訳ないのですが、宝珠というのは、そもそもあるべき場所、地政学的なしかるべき場所、に置かれていないとダメということですか?」
「地政学ですか? クリティさん、貴女、もしかして、事の真相を知りながら、それを話せないのでは?」
「もう少し、前世の事をお話しをすることができれば、皆様の参考になるのだろうと思っていますが、本件について、真相が分かっているのではなく、ただ、何となくです」
「いろいろ、クリティと話してみて、少しは分かったことがあるの、この世界は丸い……」
「待て、ルルメリア、少々、先走りすぎだ、アミーナ殿の指摘は、クリティ殿が言った『地政学』というキーワードについてだと思う」
「ええ、驚きのお話しです」
《驚き? どゆこと? オレ、ンな重要な事を言ったの?》
《うーーん、本件に付いては、神の計略で情報を制限されておるから、アドバイスできる範囲は狭いが、地政学が引っ掛かるというのなら、地図を描いてみてはどうじゃ?》
「あの、皆様は、宝珠は五種族が大切に保管べき物、とはお考えになっておられましたが、その置かれた位置に何らの意味があるとは、お思いになっていなかった、ということですよね? ならば、地図を描いてみましょう」
「やっと、私の出番ですわ。世界地図、持っておりますので」
エリナが出してきた地図を、ちらと見るだけで、一目瞭然じゃん! 今までなんでこんな簡単なことに、誰一人思い至らなかったのか?
やはり神様の情報統制、心理操作なのか? 五種族の首都、これを線で結べば、なんのことはない、五芒星の形になった。
「なんじゃ、こりゃ!」
「ジャン兄ちゃんは、驚きの声を出す係かな? ああ、ドロシーからも一つあるの。あのね、宝珠って魔石みたいな物でしょ? なら、それを動かす魔道具はどこにあるの?」
「待て、待て、待て!!!!! 聞く方の頭が整理できぬ内に、新しい話題を出すのは、控えてくれ」
さすが、王様ってところかな、こういう場面、過去に経験しているのだろう。
「ああ、整理しますので」
オレは、会議室備え付けのホワイトボードに箇条書きで、今出た不規則発言をまとめた。
(1)宝珠は地政学上の位置、五芒星の頂点に置かれなかればならない
(2)この世界、実は球体をしている
(3)たとえば、どんどん西へ行けば、元の位置に戻ることになる
(4)今の世界地図は五芒星を囲む円形だが、その先があるはずだ
(5)五芒星型に位置する宝珠とその先は何らかの関連があるかもしれない
(6)少なくとも、宝珠それだけで、世界のバランスを維持できるはずがない
(7)どこかに宝珠を動かす魔道具があるはずだ
《最終的には、(7)を探すことかのぉ〜》
「いやいや、宝珠盗難事件など些末と思えるようなお話しですね。私の睨んだ通り、クリティ殿はこの世界の救世主だと思います。それに娘が協力できるというのは、とても誇らしいことですが、どうか、みなさん、くれぐれも気を付けて」
「大丈夫です。次期エルフの女王を死なせることなど、神に誓ってありませんから」
「あら! そのお話し、聞いていませんでしたわ。我が卒業生から王とは、名誉なことです」
「それは、冒険者ギルドについても同様です。やはりルルメリア姫のランクアップ正解でしたな。ところで、些末な何かかもしれませんが、ヒントになりそうな事件が起きております」
「クエストですか?」
「ええ、今度はナルシュリア共和国の宝珠関連事件です」
「ドワーフの国ですね」
「さすがわ、エリナさん、よくご存知で」
「いえ、この間の狼退治クエストの際に、たまたま知っただけで」
「謙遜しなくてもいいぜ、俺もそうだった、冒険者をやると決めた時から、世界地図は手放せなくなったもんな」
「あら、妙のところで気が合うわね」
「で、ドワーフの案件とは?」
「どうも不思議な依頼ということで、私のところに回って来たのだと思います。ドワーフの宝珠が盗難未遂にあったそうです。なんでも盗難防止装置により事なきを得たまではいいものの、その装置に不具合が出たそうで」
「盗難にあったエルフ族が、このような事を言うのもなんですが、盗難防止装置、あまりに強い魔法を使ってしまうと、自分達も近寄れなくなるという、愚かな事態になりますからな」
「まさに、そういう事のようです」
「うーーん、宝珠が、地政学的な位置にあればいいとすれば、最悪、自分達が近づけなくなってもいいのでは?」
「クリティさんの仰る通りではあるのですが……」
盗難防止装置というのは傀儡人形、前世の言い方ではAIによる自律型ガードマンロボットのようだ。盗賊はこのAIをハッキングしようとして失敗、結果、ガードマンロボが制御不能となってしまったらしい。
しかも、ドワーフ族、知恵が回るようで、どこか抜けている? このガードマンロボは、宝珠を含む宝物庫全体を守っているらしい。
「大人って賢いようで、どこか抜けてるのかしら? ここは、私の出番ね!」
「そうだね。ドロシー!!」
「任せて! 大きいお姉ちゃん」
《今度は、ドロシー?》
《ま、あまり気にせぬことじゃ、彼女にとって、何かよいことが起こる前兆じゃと考えればよかろう》




