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幼女転生だとぉ!!〜あの日舞い降りたオレの天使へ❤︎返せぬ想いは異世界で  作者: 里井雪
奪われた宝珠

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姫の帰還

 白い建物を見上げながら、オレは姫に問う。ちょうどいい、上を向けば、こぼれ落ちそうな涙を誤魔化せる。


「これが王宮ですか? 姫様」


「人族の王宮のように、立派じゃないと思うわよ。エルフはその伝統により、貴族、平民を分けず、皆、平等、だから、王といっても、種族代表者くらいの位置付け、それほど特権もないってことでもあるわ」


 エルフの王宮、立派な建物ではあるが、宮殿というより三階建の豪邸といった佇まいだ。見ると、玄関先までエルフの王と思しき人を中心に何人かの王族、姫の家族が迎えに出てくれている。


「おおおお! ルルメリア、よくぞ無事で、そのお方は?」


「はい! 宝珠奪還に手を貸していただいた、私、いえ、エルフ族の恩人です」


「そんな大層な……、クリティと申します」


「私は、フルシュ王国の王、アグスチヌス・カムレブノ・ヘリオーティスと申します」


 それぞれ、エルフの王族が挨拶してくれたが、名前、長過ぎ、覚えられねぇ!! 彼らは宝珠の霊力が近づくのを察知し「もしや、ルル姫が戻ったのでは?」と思い、玄関まで迎えに出ていたのだという。


 ってか、アレ? 王妃は?? という、オレの表情を察したのだろうか、王自ら。


「ああ、妻ですか? 実は、去年、亡くなりまして」


「申し訳ございません、思い出させてしまったのでしょうか……」


「クリティ、いろいろ、気にし過ぎよ。さ、入って」


「では、クリティ殿、夕食を準備させますから、お話は中でゆっくりと」


《ひとまず、ご馳走になって、明日、朝かな?》


《そうじゃな、経緯を説明しておく必要もあるじゃろうて》


 玄関を入ってすぐの客間に、ウォールナット材の脚部にグレーの帆布張りクッションを置いたソファーがあった。


「まずは、こちらへ」


 ドアに近い方のソファーが二人掛だったので、どちらが上座かはなんともいえないが、オレと姫が並び、王が奥の一人掛けに座った。


 他の王族は、宝珠奪還の込み入った話を予期し、気を使っただろうか、自室に引き上げたようだ。


「幼き姿をされておりますが、クリティ殿からは、とてつもない魔力のオーラを感じます。我儘娘が、ずいぶんとご迷惑をお掛けしたことでしょう」


「いえいえ、とんでもございません」


「お父様、『我儘』は一言余計ですわ」


 ルル姫、言うところの、エルフの民主性にも通じるかもしれない。フルシュ王はドルトニア王とは真逆、とてもフランクな物言いだ。意識して、尊大な振る舞いを避けているようにも見える。


 ほどなくメイドがクッキーとハーブティを運んできた。


「さ、まずはお茶でも」


 甘い桃の花の香りがするハーブティーは弱発酵タイプ、前世中国の白茶(パイチャ)といったところか。シンプルなバタークッキーも甘さ控えめ、エルフは自然志向なのかもしれない。


 オレと姫は、今回の経緯を詳細に説明した。


「なるほど」


「王様、姫が無断で家を出た件、叱ってやらないでください。確かに無茶をした姫ですが、人の上に立つ者の責務を果たすべく行動されたのだと思います。命を賭した高貴なる責任感に免じ、どうかお願いします」


「アハハ、さすがです。絶対的な力をお持ちの方は、その配慮も超一流ということですな。ルルメリア、早々に準備を整え、学園に戻りなさい、一ヶ月の欠席を埋める猛勉強をすること、それで全てを許しましょう。なにせ、お前は宝珠を奪還した大英雄なのだから」


「え! お父様、ありがとうございます」


 なんだって! アレ? ルル姫って、学生? ああ、なるほど、なるほど、まだまだ若いのね。でもいくつよ?


 そうこうするうちに、夕食の時間となった。勧められるまま、奥の食堂に向かう。ウッディーな調度は、さすがエルフということか?


 巨大な木のテーブル、ブナ材に漆加工したもののようだが、でかい、めっちゃでかい、に王族が全員腰掛け、今日は皆で食事をするということのようだ。


「ああ、エルフは基本、ベジタリアンであります故、クリティ殿には少々物足りないかもしれませんが」


 いやいや、トリュフをふんだんに使ったソテーとか、大豆のハンバーグとか、全然、問題ないですよ! 今まで人族の街で食べた料理に比べ、関西風といえばいいだろうか。味付けが淡白、あっさりしていて美味しい!! で、この白ワイン! とんでもない高級品では?


 夜も更けてきて、三々五々、皆、私室に引き上げていく。オレは、ルル姫の部屋に泊めてもらうことになった。


 ま、さすがですね。三階の奥にある彼女の部屋、メインルームは三十畳くらいの広さがある。天蓋付きのベッド、シャワールーム、例の魔法のやつね、完備、さらに、メインルームと同じくらいの広さがあるサイドルーム付きだ。


 二人でシャワーを浴びて、まぁ、パジャマとかないし、来るべきものが来た。


《最後だし、いいよな?》


《なぜ、妾に確認する? アハハハ、よいぞ、よいぞ、気にせぬから、存分に致すがよい!》


 前世も含め、こんな経験、初めてだ。泣ける、思いっ切り泣ける。どうしても、どうしても涙を抑えることができない。


「どうしたの、クリティ?」


「ミッション達成を喜ぶ、嬉し涙でございます」


「嘘、嘘よ、絶対に嘘、でも、いいわ、そういうことにしておいてあげる」


 なんだろ、ルル姫の体臭と向日葵のそれとは全然違う。だが、十年ぶりに戻った田舎の実家で嗅ぐ畳の匂い? そんな、心落ち着かせる成分が含まれている気がする。オレは、いつしか、深い眠りに落ちていた。

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