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ー 38 ー ポルフィディオ盗賊団12


時は遡り、ベネットが()()()()()()()を発動する少し前ー。


都市スターノ13番区。

クロロ、コン太、リリアンの3人は、ジメイ神宮境内入り口の上空に浮かんでいた。


…眼下には、鬱蒼とした森が広がっている。


都市スターノ13番区は「()()()()()()()()()()()」と称されるスクランブル交差点をはじめ、世界最先端の流行を発信する街として知られるエリアだ。


しかし、その一角に広がるジメイ神宮だけは別世界のようだった。


高層ビルや華やかな商業施設に囲まれながらも、そこだけは何百年もの歴史を湛えた深い森が静寂を守り続けている。

都会の喧騒とのあまりにも大きなギャップが、その森をより神秘的に感じさせていた。




「…この森ん中だな!クリアがいるのは!」クロロが森の奥を睨みつける。


「そうね。クリアちゃんの()()()の反応がより鮮やかになってる…!」

リリアンがそっと目を閉じる。

イマジネット・オーラで生み出したピアスの光は、手に取るようにはっきりと、森の中から立ち昇っている。


「そ、そういえばクロロ!」

コン太が思い出したように口を開く。


「さっき敵を振り切った、あの()()()()みたいな技…!()()()()の時に使ってたよな。あれ、ものにしたのか?」

コン太が先ほどのギブカ・シティでの一幕を思い浮かべる。

クロロがコン太とリリアンの手を取り、一瞬でカシスの射程圏内から抜け出したのだ。


「へへ。カルーアとかいう盗賊団のヤツと戦ってるときにコツを掴んだんだ!()()()()っていう名前の技だせ!」


瞬間移動。

できるようになるまでは大変だったが、一度感覚を掴んでからは、意識をすればいつでも発動できるようになっていた。


「しゅ、瞬間移動って…そのまんまだな」

コン太が苦笑する。


「コン太、そういうお前はどうなんだ?」


「…ふふん。ボクも実は!」

コン太が胸に手を当てる。

白いシャツの内側から、エメラルドのような緑色の光が溢れ出した。


「おおっ!すげえ!なんだそれ!?」


「ボクもあのショッピングモールの戦いの時に、発現したみたいなんだ。その名も()()()()()()()()()()()!超絶すごい防御性能なんだぞ!」

緑色の光が、キンっと輝きを増す。


「へえ〜!かっこいいな!()()()()()()()かあ!」


「マン・オブ・エメラルドだっ!」

コン太がすかさずツッコむ。

「なんだよマンボウランドって!マンボウしかいない水族館か!」


クロロがぷっと吹き出して笑う。


「なんだそれ!逆に行ってみてえ!」

「お前が言ったんだろうが!」

コン太がクロロの肩をバシンと小突いた。



「…さ、おしゃべりはそこまでよ」


リリアンが表情を引き締めながら言う。


視線の先には、深い森。

その奥を静かに見つめながら、小さく息を吸う。


「ジメイ神宮…。何百年もの間、人々が祈りを捧げてきた神聖な場所よ」

その瞳に怒りが宿る。

「そんな場所にクリアちゃんを攫って閉じ込めるなんて…絶対に許せない。」



その時――!


ゴゴゴゴゴ……!!!!!


大気を震わせる、圧倒的な電気のオーラ!!!


地球上を満たしている()()()()()が、巨大な台風に巻き上げられているかのように渦巻いている!


「ベ、ベネットだな!すげえオーラだ!」

「く、空気が震えてる!」

クロロとコン太が思わず腕で顔をかばう。


かなり離れているはずなのに、電気の奔流がピリピリと肌を刺していた。



「…ベネットも本気を出しているわね!」

リリアンが遠くを見据える。


「あっちはベネットに任せて、私たちも行きましょう!」



「おう!オレのイマジネット・オーラで、すぐにやっつけてやるぞ!」

クロロが拳を握りしめる!


「よ、よしっ!」

コン太がごくりと唾を飲む。

(ぼ、ボクだって!マン・オブ・エメラルドというイマジネット・オーラがあるんだ!

どんな攻撃だって耐え抜いて、必殺の正拳突きを叩き込んでやる!)



ヒュヒュヒュン!!!


3人はグンっと高度を下げ、森の中腹にある小さな広場へと降り立った。



住宅街の公園ほどの広さしかないその広場は、焦げ茶色の土がむき出しになり、雑草がまだらに生い茂っている。


クロロたちの後方ー

参道へと続く側には簡易的な工事用フェンスが設置され、「立入禁止」の看板が立てられていた。


そして正面には、真新しい木造の拝殿ー。


高床式の建物で、新鮮な木の肌が剥き出しになっており、色も装飾も一切ない。

屋根はへの字型の茅葺で、風に乗ってうっすらと檜の香りが漂ってくる。


広場の隅には建材や土嚢、三角コーンが置かれていた。

どうやら、建設途中の拝殿のようだ。


広場を囲む木々は空を覆い隠すほど高く、真昼間にもかかわらず辺りは薄暗い。

湿った空気が肌にまとわりつき、不気味な静寂が空間を支配していた。


「…あの建物ん中にクリアがいるんだな…」

クロロが一歩前に出る。


「よし、いくぞっ!!!」


バコン!!!!!


!!!


クロロが右足を踏み出した、その瞬間!


拝殿の引き戸が内側から爆音とともに吹き飛んだ!!!


「ああっ!お、お前は!」


ゴゴゴゴゴ…


「…おうおう!よく来たなあ!」

乱暴に蹴破られた戸の奥から、大柄な人影がゆっくりと浮かび上がった。


「待ちくたびれたぜ!!

水に垂らした墨のように、不穏なオーラが一帯に広がる…!



()()()()()だ!!!



「へへへ!!!」

高床の拝殿からズブロッカがドシンと飛び降りる!

着地と同時に、首から提げた大きな()()()()がぶらりと揺れる。


「て、てめえ!クリアを写真に閉じ込めたやつだな!」

クロロがさらに前に出る。


「てめえ、じゃねえぞ。俺はズブロッカだ!」


「クリアちゃんはどこ!?」

リリアンが鋭く問いかける。


「クリア?ああ、ハウスのボスの娘か。そんなら後ろの建物の中だぜ!」


壊された戸の奥ー

歯科医院で見るようなリクライニングチェアに、クリアが寝かされていた。


その傍らには、痩身の()()姿()()()が静かに立っている。


「クリア!!!」「クリアちゃん!」「クリアさん!」


三人の声に、クリアがはっと顔を上げた。

「え……く、クロロ?」



じわりと目頭が熱くなる。

(た、助けに来てくれたんだ……!)


「無事かっ!?」

「う、うん、大丈夫!み、みんなは?」

クロロの後ろには、リリアンとコン太の姿も見える。


その瞬間、堪えていた涙が頬を伝った。

(みんな……!)


「よーし!ちょっと待ってろよ!すぐ助けてやっからな!」

クロロが腕をぐるぐると回す。


「おまえが盗賊団の親玉か!」

クロロがギンっとズブロッカを睨みつける!


「親玉?違えよ」ズブロッカがニヤリと笑う。

「親玉は、後ろにいる男だ」


拝殿の中では、袈裟姿の男ーーポルフィディオが笑顔で手を振っている。


「な、舐めやがって〜!」

クロロがギリリと歯を食いしばる。


「あ、あの男が盗賊団の頭…!ポルフィディオ!」

コン太がゴクリと唾を飲む。


端正な顔立ちに、野武士のように無造作に束ねた長髪。

サボテン柄が散りばめられた深いターコイズ色の袈裟。


体は引き締まっているようだが、大盗賊団のボスというより、時代劇の衣装を纏った、アイドル出身の俳優のようだ。


「…クロロ、落ち着いて。ポルフィディオの能力は未知数よ」

リリアンがクロロの肩にそっと手を置く。



「おいおいおい!俺を無視すんじゃねえよ!」

ズブロッカが丸太のような脚でズトンと地面を踏み鳴らす。


「あの娘を助けたきゃな、まずはこの俺を倒してからにしろ!」



ギンッ!!!


ズブロッカの鋭い眼光が3人を射抜く!


!!!!!


ズオオオオオ!!!!!


場の空気が、一瞬で真冬に変わった。

ズブロッカの圧力だけで、氷水を背中へ流し込まれたような悪寒が全身を駆け抜ける。


「ううっ!」

コン太の額を生ぬるい汗が伝う。


(こ、このカメラ男!前に会った時とは違う…!?すごいオーラだ…!こ、こんな化け物だったのか!)

クリアが攫われたあの時よりも凶悪なオーラが、コン太の体を射抜いていた。


だが、変わったのはズブロッカではない。

コン太は気づいていなかったが、盗賊団との一連の戦闘を経てコン太自身が成長したことで、敵の本当の恐ろしさを感じ取れるようになったのだ。



「はあっ!!!」

コン太の少し前に立つクロロが、気合いと共に全身からオーラを炸裂させた!


ドドン!!!!!


ズブロッカのオーラを押し返すように、光のオーラが広場を満たしていく…!


「ー! この生意気なガキめ…!」


ゴゴゴゴゴ…!!!


クロロがゆっくりと口を開く。

「お前を倒せばいいんだな…」

ニヤリと笑う。

「そりゃ簡単でよかったぜっ!」


「ああん!?てめえ、何を言ってやがー」


その瞬間ー!

クロロの姿が霞のように掻き消えた。


「なっ?」


バゴン!!!!!


次の瞬間!

ズブロッカの頬に、クロロの拳がめり込んでいた!



「うおっ!?」


ズブロッカの巨体がボールのように吹き飛び、拝殿の階段へ激突した!


ドカン!!!!!


土煙が爆発するように舞い上がり、一帯の視界を覆い尽くす。



「は、速い!」

リリアンとコン太が息を呑む。


「…!」

ポルフィディオも静かに目を見開いた。

(今のスピード…!面白え能力だ…!()()()に加えられりゃ理想だが、まあズブロッカが始末しちまうか)





ガラガラガラ!!!

瓦礫を押しのけ、ズブロッカがゆっくりと立ち上がる。

ポキポキを首を鳴らした。


「出し抜けのいい挨拶だったが、ちょいと物足りねえな」


「!!! き、効いてねえのか!?」

クリーンヒットだったはずだ!なんてタフなやつ!


「挨拶ってもんを教えてやるよ」


!?


ドンっ!!!


ズブロッカが地面を蹴り上げて突進した!!!

巨体からは想像もできないスピードだ!


一瞬でクロロの眼前へ迫ると、丸太のような腕を振り下ろす!!!


「やべえっ!!!」


その瞬間!!!


ズドドドドン!!!


ズブロッカの顔面で爆炎が炸裂した!!!


「なんだっ!」

ズブロッカが爆炎の飛んできた方向へ顔を向ける。

リリアンが、()()()()()()()()を構えていた。


「この、ちょこざいな!ーん?」


ー上空からの威圧感!!!ズブロッカが空を見上げる!!!


「うあー!!!!!」

コン太だ!!!


突き出した手のひらから、マシンガンのようにオーラ弾を乱射する!!!


ズドドドドド…!!!!!


光の雨がズブロッカへ降り注いだ!!!



ドドン!!!

その衝撃で、クリアとポルフィディオのいる拝殿が大きく揺れる!

「きゃあっ!」


「おっとと!まるで嵐だな。今は集中してえんだ。もうちょいで()()()が分かりそうなのによ。しょうがねえ」

ポルフィディオが腕を上げる。

すると背後に巨大な()()が現れた!!!


「ええと、()()は…っと。こいつだな」


ガイドブックのような表紙の、雑誌サイズの一冊を取り出す。

パラパラとページをめくり、そのうちの一枚を破った!


ボンっ!!!


「な、何これ…? ()()()()()?」


板張りの床に、巨大なマンホールが出現した。

車一台が通れそうなほどの大きさだ。


「ここはうるさくて敵わんからな。場所を変えるぜ、お嬢ちゃん」


ポルフィディオが蓋を開ける。

その下には、底知れぬ闇が口を開けていた。


「よっこらせっと」

リクライニングチェアごとクリアを抱え、そのまま穴へ飛び込む!!!


「きゃああっ!!!」


フリーフォールのような浮遊感が、クリアの全身を包んだ!!!

だが…

ふわり。

すぐにその感覚は和らぐ。

(ちゃ、着地した…?)


ボッ………ボッ……ボッ…


暗闇の奥で、天井に埋め込まれたパネル照明が一つ、また一つと点灯していく。

そこは、()()()()()()()()()()()だった。

天井は高く、物音一つしない。

さっきまでの轟音とのギャップに、耳がキーンと鳴る。

無機質で、まるで時間さえ止まってしまっているようだ。


「ここは()()()()()()()()()()()()だ。外界を完全に遮断した。これで集中できるぞ!」


ポルフィディオが首をポキポキを鳴らしながら、リクライニングチェアに手を伸ばした。


「い、いやっ」


またみんなと離れちゃったの…?

そんな…!





「!!!」


リリアンがハッと目を見開く。

(クリアちゃんの気配が消えた…!)


「コン太っ!」

「!!!」

コン太も異変に気付き、マシンガンのように放っていたオーラ弾を止め、地上へ降り立つ。



「り、リリアンさん、もしかして…」

「く、クリアがいなくなった…!?どうなってんだ!?」

風に砂埃が流され、徐々に視界が晴れていく。

拝殿の中ー。奇妙な椅子に寝かされていたクリアも、袈裟姿の男も、姿を消していた。


「…くっ。分からないわ。ピアスの反応も消えた…」

(状況から考えると、移動系の能力を使われたか、レイヤー空間へ逃げ込まれたか…。でも、今の状態では追うことができない…!)


ゴゴゴゴゴ…


ズブロッカが防御の構えを解き、ゆっくりと3人に目を向ける。

「おい。なんで止めたんだ?()()()()()()だったのによ」


砂埃にまみれて姿はボロボロだったが、ダメージを受けた様子はまるでない。


「ううっ!…無傷なのか!?ぼ、ボクは全力でオーラ弾を撃ったのに…!」

コン太の額から冷や汗が流れ落ちる。



ズブロッカも背後の気配が消えたことに気づいたようだ。

「ああ、そうか。社長、場所を変えたんだな!へへへ!こりゃいいぜ!」

大きな拳同士をバツンと打ち合わせる。

「これで気兼ねなく暴れられるじゃねえか!そっちは3人いるんだからよ!存分に楽しませてくれ!」

ズブロッカが顔をゴリゴリと撫でる。



「こ、こいつ!」

コン太が思わず一歩後ずさる。

(な、なんで、余裕なんだ?()()()3()()()()()なんだぞ!?

新入りのボクとクロロがいるとは言え、盗賊団のメンバーを倒したってことくらいは分かってるはずだ!

しかも、後ろ盾のはずの自分のボスまで姿を消したっていうのに…!」


そこまで考えて、コン太がハッと目を見開いた。

「か、()()()か!?」

ズブロッカの首からぶら下がっている()()()()へ目を向ける。

クリアを一瞬で写真へ閉じ込めた、あのカメラ…!


「コン太も気づいたようね」リリアンが静かに頷く。

「…あのカメラ。あいつは、いつでも私たちを写真に閉じ込めて無力化できる…!この余裕はその能力があるからだわ!」


リリアンの頬を冷や汗が伝う。

自分で口にしたことで、今の状況がどれほど危険なのかを改めて理解した。

この瞬間にも3人まとめて撮影されたら、それで終わりだ。


(すぐに散って3方向から攻める?隙を作って、クロロの瞬間移動でカメラを破壊する?

それとも、2人を逃して、私の『()()()()』を発動する?

なんとか、ベネットが来るまでの時間稼ぎをー)



「プッ…ガハハハハハハ!!!!!!」

ズブロッカの大笑いが、リリアンの思考を断ち切った。

「ヒィー、ヒィ。ああ、悪い悪い、写真な!()()()()()()()()!」


!?


「俺はな、お前たちと戦いたいんだよ!うずうずしてんだ!そんでお前らが絶望して悔やみながら死ぬのを見たいんだ!確かに、お前らを写真の中に閉じ込めるのは簡単だがな、そんな()()()()()()()()はしねえよ」


「ーっ!」

コン太が歯を食いしばる。

ーブラフか…?

いや、でも今こんな嘘ついてどうする? 写真はいつでも撮れるはずだ。

こいつ、本当に戦いたいだけなのか?


ーーいや、騙されるな!

写真に閉じ込めるためには何か()()があるんじゃないか?


そうだ!きっと、そうだぞ!

そうするとこの会話も、条件を満たすまでの時間稼ぎだ!


写真に閉じ込める能力が使えなければ、こいつは()()()()()()()()()()()()と見た!


「リリアンさん、きっとあいつはまだ、カメラの能力が使えないんです!強力な能力だからこそ、使うのには条件があるはず!今のうちに攻撃をー」


その時ー

ズブロッカが右手を掲げた。

一枚の()()()()()()()が、ふわりと現れる。



「なんだあれ!?」

クロロが目を細める。


ズブロッカの手元ー

あの写真は…レビオラと戦った時にも見たような…


「ガハハ!」

ズブロッカが歯を剥き出しに笑う。

「お前ら、なんか勘違いしてないか?俺は拉致とか連れ去りとかの担当じゃねえぞ!」


ゴゴゴゴゴ…!!!!!


「俺は()()()()()()()()()だー!!!()()()3()()で勝てると思ってるのか!!!」


ボンッ!!!

その瞬間、ポラロイド写真が爆発した!


入れ替わるように、漆黒の()()()()が飛び出す!!!

「み、ミサイルだ!!!」



「ダッハハハハーーーッ!!!」

ズブロッカの豪快な笑い声とともに、コン太へ向かってミサイルが放たれた!!!


ドンッ!!!


ミサイルが現れたと思った次の瞬間には、コン太を中心に巨大な爆炎が噴き上がっていた!!!


ドドドドドーーー!!!


「うわっ!」「きゃっ!」

至近距離で炸裂した爆発の衝撃波に、クロロとリリアンもガードする間もなく吹き飛ばされる!!!


「コン太っ!」

クロロはすぐさま体勢を立て直し、コン太のもとへ駆け出した!


―その瞬間!

ズブロッカの方角から、複数の閃光が走る!!!


ボボボボボンッ!!!



ミサイル!

それも5発同時!?



5発のミサイルが一瞬でクロロに突き刺さる!!!


ドッーーーーー!


真っ白な閃光が弾け、炎と黒煙が空へと噴き上がる!!!


ドカン!!!!!


「クロロっ!!!コン太!!!」

リリアンが叫ぶ!!!


「だ、大丈夫だ!ふぅー、あぶねえ!」

背後からクロロの声が響く。


「よ、よかった!瞬間移動ね!」

クロロは着弾よりも早くコン太の腕を掴んで瞬間移動を発動し、コン太ごとリリアンのもとへ脱出していたのだ!!!


「むう!」

ズブロッカが眉をひそめる。

「あのガキ…さっき俺を殴った時の高速移動か!」


…ん?

ズブロッカの視線が止まる。


最初のミサイルがヒットした金髪のガキが、腕を押さえながら立ち上がっていた。


「まじか!生きてるとはな!ガハハハ!ガキとは言え、さすがはハウスだ!おもしれえ!」

ズブロッカが顎を撫でる。



「コン太、大丈夫?」リリアンがコン太の肩に手を置く。

「え、ええ…何とか…。」

コン太は左腕を押さえながら息を整える。

「マン・オブ・エメラルドがなかったら、どうなっていたか…!」


あのミサイル…

()()()()()()()()()()()()()()()だ!


オーラ・ドライブで強化された身体には、通常の銃火器や兵器などは通じない。

さっきのミサイルは、レビオラで見たものと同じに見えた…だが、そのスピードも威力も、桁違いだった!


「おい!!!お前ら!!!」


!!!


ズブロッカの声が響く!


「生き残った褒美に教えてやる!今のは元はただのミサイルだ!だが写真に()()がしてある」


「か、加工ですって?」

リリアンが眉をひそめる。


「そうだ」

ズブロッカが首から提げた一眼レフを叩く。

「スマホアプリでもあんだろ?てめらがぶっ倒したヘルメスだって、『加工して顔を盛るのは当たり前』なんて言ってたがな。俺の写真も同じよ!()()()()()()()()()()()()()()を重ねることで、スピードも威力も何倍にも()()()ある!!!」


!!!


「そして俺はな…」

ズブロッカの口角がゆっくりと吊り上がる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「な、なんだって」3人が同時に目を見開く。


「ガハハ!いい顔だな!そうそう、そんな絶望した顔を見るのが最高なんだよ!」


ゴゴゴゴゴ…


「クロロ、コン太…後ろに下がっていなさい」

リリアンが前に出ながら言う。

そして、「これを」と言ってクロロとコン太に()()()を2つ差し出す。

「最後の()()()よ。いざという時に使いなさい」


「え…でもよ、リリアンは?」

クロロが息をのむ。

リリアンはズブロッカから目を離さないまま答えた。


「あいつは危険すぎる。今まで戦った盗賊団が可愛く見えるくらいよ。どれだけの写真ストックがあるのか分からないけど、ベネットが来るまで…私が相手をする!」


ゴオオオオオ…

リリアンの全身から紫色のオーラが噴き上がる!!!


和装に洋式古式銃を携えた『ベット・マン』の()()()()()()()()()が姿を現した!!!

「本気で行くよ!」

パアアアアアッ!

洋式古式銃が光り輝き、巨大な()()()()()()()()に姿を変えた!


黒光りする砲身には、毒々しいネオンピンクの睡蓮の花が妖しく描かれている。


リリアンは巨大なガトリングガンを両手で持ち上げ、ゆっくりとズブロッカへ照準を合わせた―。




「おお!?いきなり主力級が相手か!?まあいいだろう!楽しませてもらうぜ!!!」


ズブロッカが両手を掲げると、トランプをばら撒いたかのように、無数の写真が宙を埋め尽くした!


()()()()()()()

リリアンが目を見張る!


(想像以上だわ!数十枚はあるー!)


ボボボボボボ!!!!!!!


破裂音と共に、フラッシュのような閃光が瞬き、写真が一斉に粉々に弾け散った!!!



ー来る!!!


ズオオオオオ!!!!!


ミサイル、グレネード弾、マシンガン、ショットガン……!

手榴弾のようなものから、ボウガンの矢まで――!!!


目で捉えられたのは、それくらいだ。

速すぎる!!!


リリアンがガトリング・ガンのトリガーを引く!


ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロ…!!!!!


黒紫のオーラ弾が炸裂した!!!


オーラ弾と写真から飛び出した兵器の群れは、リリアンとズブロッカのちょうど中間地点で衝突した!!!


ズドドドドドドドドン…!!!!!


空を覆い尽くすようなドス黒い爆炎が噴き上がる!!!


ヒュヒュン…!!!


その爆炎を突き抜けて、数本のミサイルがリリアンを狙う!!!


「くっ!!!強度まで高いのか!ガトリングじゃ撃ち落としきれない!!!」


リリアンがガトリングを撃ち続けながら、上空へ飛び上がった!


その直後、足元でミサイルが炸裂!!!黒煙がリリアンの全身を飲み込む!


(だめだっ!()()姿()じゃ勝てない!ー奥の手…!『()()()()』になるしかない!)

リリアンが眼下のクロロとコン太に目をやる。


(『鏡の魔女』は仲間の前では変身できない…2人にここから離れてもらわないと…!)


その思考は、頭上に迫る()()()()()()()によってかき消された!!!

内臓をえぐられるような悪寒が突き上げる!!!


リリアンが上空を見上げる!!!


「う、うそっ!!!」


視界を覆い尽くす巨大な白い物体!

オレンジ色の炎を噴き上げながら、リリアンへと迫る!!!


一瞬、ビルが落ちてきたのかと思った。

だが違う。


()()()()だ!!!



カッーーー!!!


ジメイ神宮の上空で白い閃光が膨れ上がり、周囲の色という色を消し去っていく…!!!

次の瞬間――

巨大なキノコ雲が空を埋め尽くした!!!


ドーーーーーーーーーーーーッ!!!!!



………

……


「ぐ、ぐぐっ!!!」

「う、うう…」

クロロとコン太がよろめきながら立ち上がる。


「な、何が起きた…!?」

「ー!!!  そ、そんなあ!!!」


!!!


2人のすぐ目の前には、ボロボロになって横たわるリリアンが!!!

あろうことか、リリアンのオーラが感じられない。


「さ、さっきのでかい爆発のせいか!」

クロロもコン太も、あまりの速さに何が起こったのか把握しきれていなかった。

突如として現れた巨大なオーラの塊。

そして、一瞬で一帯を飲み込んだ爆炎。

それくらいしか分からなかった。



「ガハハハ!なんだ、あっけなかったな。もしかして()()()を使わせる前に殺っちまったか?」

ズブロッカが戦闘前と変わらない様子で豪快に笑う。


クロロとコン太の全身を冷や汗が伝う。


リリアンを失った一方で、ズブロッカは無傷!

しかも、オーラ量すら減っているようには見えない。

おそらく、写真から兵器を取り出すだけなら、オーラを消費しないのだ。


「こ、こんなの…どうやって戦えばいいんだ…!」

コン太の顔に絶望が走る。

「く、クロロ!瞬間移動でリリアンさんも連れて、ベネットさんのところまで退散を…

ーーーえ?」


ーーー!!!


「べ、ベネットさんのオーラが…!う、うそでしょ?」

コン太の顔から、さらに血の気が引いていく…!


「そ、そんな!ベネットのオーラが…消えちまった!」

クロロの拳が震える…!



ゴゴゴゴゴ…!!!


周囲の空気が一気に沈んでいく…!




「ま、マジでやばいな…これは!」

コン太が拳を構える。


「くそっ!!!ありったけの全力で行くしかねぇ!」

クロロが拳を握り締める。

ドンッ!!!

烈火のようなオーラが噴き上がった!!!


コン太が泣きそうな顔で唇を噛む。

(あ、ありったけって言っても…もうベネットさんもリリアンさんも戦闘不能なんだぞ…!あ!そ、そうか、きっとレノンさんが…!ハウスが来てくれるはずだ!)


コン太も腹に力を込めて、バーナーのようなオーラを炸裂させた!


(レノンさんたちが来るまでは…!なんとか!なんとか持ちこたえるんだ!!!)




しかしーーー!!!


バキッ!!!!!


!!!


黒い影が突如現れ、クロロを吹き飛ばした!!!


「うわっ!!!」

その衝撃でクロロはジメイ神宮の森をあっという間に突き抜け、13番区の商業ビルの間を隕石のように貫いて行く!!!


「く、クロロっ!!!」

コン太が反応した時には、すでにクロロの姿は見えなくなっていた。

(一瞬しか見えなかったが…!あ、あれはまさか…!)


ズブロッカも、この出来事は予想外だったらしい。

怒気を含んだ声で叫ぶ。

「あの野郎!()()()だな!遅刻したうえに、俺の獲物を奪いやがったな!!!」



ヒューーーウウウン………

バゴン!!!!!


吹き飛ばされたクロロは、そのまま十数階建てのビルに激突し、アスファルトへ叩きつけられた。

「うう…!」うつ伏せのまま、クロロがゆっくり首を上げる。


(ま、また何が起きた!?)

脇腹に激痛が走り抜ける。

どうやら、強烈な一撃を受け、数キロ先まで吹き飛ばされたようだった。


ざっ…


「!」


這いつくばるクロロの視界に、真っ黒な靴が映った。


「お、おめえは…!!!」

クロロの顔に衝撃が走る!!!


「は、()()!!!」


「ふん…」

白州はクロロを見下ろし、冷え切った瞳を細めた。


絶望に次ぐ絶望!

あまりに強すぎるズブロッカにコン太は1人でどう立ち向かうのか…!?

さらに、ハウスの試験で圧倒的な強さを見せた白州が、盗賊団の新入りとして登場!!!

絶体絶命の展開を打破することはできるのか…!?


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