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38/39

ー 36 ー ポルフィディオ盗賊団編⑩



ジメイ神宮境内ー板敷の間


「マジか。ヘルメスもやられた」

袈裟姿の男、ポルフィディオが、クリアの体を照らしていた()()()()()()()から顔を上げる。


ーー!


板敷の間に、ぴんと張り詰めた緊張が走る。


「リリアンと戦ってたんだろ?

おい、ウィルキンソン!おめえの()()()()に映ってねえのか?」


大ぶりの一眼レフを下げたズブロッカが、テレビモニターの山を指差し、口角泡を飛ばす。


「……ああ、それが」

ネルシャツを羽織った黒縁メガネの男が首を傾げた。


「ヘルメス、()()()()()()()に変身したでしょ。

あんなの聞いてないし。急に上空に飛び上がられたもんだから、避けきれなくてね。壊れたんだ、人工衛星」

ウィルキンソンが両手をひらひらと上げる。


ウィルキンソンの能力(イマジネット・オーラ)「人工衛星」は、大量に放つことが出来る超小型の偵察衛星だ。

だが、その強度は薄ガラス以下である。


「っかーっ!つかえねえなあ!」

ズブロッカが顔に手をやる。


「まあ、よ。

あの怪獣みたいなヘルメスを倒したってことは分かったんだ。敵ながら、すげえじゃねえか。天晴れだ」

ポルフィディオが、パチパチと手を叩く。


「ああん!?おいっ!

何、呑気なこと言ってんだ、社長!こっちもそろそろ手薄だろーが!

ズブロッカが、クリアが横たわっている()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を蹴飛ばした。


「きゃっ!」

クリアが叫び声を上げ、ズブロッカをキッと睨む。


(このカメラ男……ほんっと嫌…!ずっと乱暴なことばかり…!

…もう嫌だ…。

この診療台に寝かされてから、どれだけ経ったんだろう。

ヘルメス…。私を攫ったときにいた制服の子だよね、確か。

やられたって言ってたけど、リリアンがやっつけてくれたってこと?

み、みんな、無事なんだろうか…)



「まあ、そう言うなよ」

袈裟姿の男が診療台をポンポンと叩く。


「こっちも収穫があったんだ」


「収穫?どういっこったよ?」


袈裟男が、にんまりと笑う。

「この娘に仕掛けられてたもんが分かったんだ」


ーー!


「何だと!?マジか!」

ズブロッカがポルフィディオに駆け寄る。


「ああ、いや。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ポルフィディオが腕を組む。


「ああん?どういうことだ?」


ポルフィディオが指を立てる。

「つまりだ。

この娘の体の中に、めちゃくちゃ厳重にカモフラージュされた『()()()』みてえなもんが仕込まれてた。

ここまで辿り着くのにはマジで苦労したぜ。

だがな。この宝石箱には更にご丁寧なほど複雑に張り巡らされた『()』が仕掛けられてる。こいつの開け方が分からねえんだ」


!!!


クリアが目を見開く。

(ほ、宝石箱?鍵?私の体の中に……?何それ?)

自分の体に目をやる。

袈裟男やカメラ男と比べると、あまりに頼りない。

(箱って…?自分じゃ何も感じないけど……本当に?)


「おい、嬢ちゃんよ。ボスの娘ってのはマジみてえだな。

だが、あんたの父親は、最愛の娘だって思っちゃいねえだろうな」

袈裟男が感情を消した瞳でクリアを見下ろす。

()()()()()を体に埋め込むなんてよ。俺には、あんたを都合良く利用してるようにしか見えねえぜ。…道具みたいにな」



(……そ、そんな!)


クリアの中で、

何かが割れる音がした。


父親を信じていたわけではない。

肉親としての絆を感じたこともなかった。

それでも――

ほんの一握りの希望があった。


父と子として。

血の繋がりがもたらす、本能的な愛情。


その小さな希望が今、

ひび割れ――

ガラガラと音を立てて、崩れ落ちていった。



「……その鍵を開ける手立ては…?」

ウィルキンソンが目を細める。


「残念ながら、俺のライブラリ(イマジネット・オーラ)じゃ、そろそろ限界だな」ポルフィディオがふうっと息を吐く。


「そうか。()()()()()()()

ウィルキンソンのメガネがキラリと光る。


「ああ。もうお手上げってやつだな」

ポルフィディオがわざとらしく両手を上げる。


打つ手がないという会話にしては、

まるで危機感が感じられない。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()すぐにここに呼んでくれ」


ポルフィディオが、ウィルキンソンに告げる。


「了解」

一際大きなテレビモニターに、

()()()()()()()()()()()()()()()が映し出された。



都市スターノ 3番区ー


クリアがズブロッカとヘルメスに攫われた、銀杏並木の通りがあるエリアだ。


3番区の中心を横切る国道沿い。

ハイブランドの旗艦店が建ち並ぶその通りに、

最新の建築技術で何度もトレンドになった、有名なビルがあった。


地上から2階部分までが、遠目には透明に見えるよう設計されており、

「フローティング・ビルディング」として、世界的に話題になった建物だ。


その高層フロアには『()()()()()』という()()()3()()()()()()()()()()()()の本社が入っていた。


設立から数年の若い会社であるが、クライアントの悩みや課題を根本から改善に導く力が凄まじく、実力だけで急成長を遂げている。

特に、クライアントがほぼお手上げ状態に陥った「クリティカルな逆境」を180度覆した実績を数多く持つ。

その結果、短期間で世界中の経営者たちから絶大な信頼を勝ち取っていた。


そしてーー


そのビルの最上階フロアに、

オレンジ色の髪をオールバックに整えた長身の男がいた。


超大手コンサルを率いるCEOにして、ポルフィディオ盗賊団の一員ー。


オレンダインだ。



「オレンダインさん。このあと1333会議室で会合です」

隣を歩く、鮮烈な美貌のグラマーな秘書が告げる。


「誰だ」


「スターノ・バンクの副頭取です。来期の金利方針で迷われてると」

秘書がスマートグラスに表示された予定を読み上げる。


「分かった」

オレンダインが、分厚い絨毯が敷かれた廊下の角を曲がる。



「ーー!!!」


曲がった先に、見慣れた()()()()が浮かんでいた。


「…会合の前に執務室に寄る。3分後にノックしろ」


「承知しました」


通路のすぐ先には、世界遺産の島で採れた樹齢700年の木材を使った重厚な扉が聳え立っていた。

オレンダインの執務室だ。


「後ほど伺います」

秘書は一礼すると、廊下の先へ歩いていった。



オレンダインが部屋に入る。

天然木が敷かれた30畳ほどのフローリング。

北欧デザインのヴィンテージ・ソファとテーブル、巨大な多肉植物が植った鉢が置かれ、壁際にはシック色合いのバーカウンターが備わっている。


ドアの正面は一面ガラス張りになっており、大都市スターノの街並みが広がっていた。


窓ガラスの手前には巨大なデスクと重厚な椅子。

シンプルだが、都会的に洗練された空間だった。


オレンダインがゆっくりと窓ガラスに近づき、表面を撫でる様なジャエスチャーをとる。

すると、クリアだった窓ガラスに一瞬でスモークがかかった。

最新鋭の調光ガラスだ。


オレンダインはデスクの椅子に腰掛けると、視線の先に浮いている人工衛星に声を掛けた。

「収穫があったようだな」


『さすがだね。女の子の体内に()()()()()が仕込まれてるところまでは分かったんだけど、厳重にロックされてて開かないみたいなんだ』

人工衛星からウィルキンソンの声が響く。


「そうか。念のため聞くが、ポルの取れる手は取ったんだな?」


『うん。もうお手上げだって』


オレンダイン椅子から立ち上がる。

「よし。では、すぐにそちらへ向かおう」


コンコン。

部屋のドアがノックされた。


「入れ」

オレンダインがドアの外に声を掛ける。


人工衛星が『待ってるよ』と言い残し、スッと姿を消した。

入れ替わるように、グラマーな秘書が部屋に入る。


オレンダインが秘書に告げる。

「この後の会合だがCOOに対応させろ。俺は外出が入った。車を表に回しておけ」

ネクタイを締め直しながら、素早く続ける。

「この後のスケジュールは終日ブロックだ。今日は戻らん」


「かしこまりました」

秘書のスマートグラスに、オレンダインの指示事項が書き込まれていく。

「では、失礼します」

頭を下げると、秘書はスッとドアの向こうへ消えた。


パタ…。

重厚な木製の扉が静かに閉まる。



(ーいよいよだな)


オレンダインがオーラを集中させる。


()()()()()()()


ボッ…!

トーテム・ポールの形をした、2メートルほどの灯台が出現した!


オレンダインのイマジネット・オーラ、「ピア・トーテム」。

()()()()()()()()に特化した能力だ。


あらゆる問題や課題を、解決に導くことができる。

依頼主側が困っていればいるほど、的確な解決方法を光の先に示してくれる。

オレンダインはこの能力で、設立から5年も経たないうちに会社を世界3位まで押し上げたのだ。


(先ほどのウィルキンソンの話通りだと、ポルのイマジネット・オーラをもってしても解決できない案件ということだ。

()()()()としては最上位クラス。

俺のこの能力であれば、おそらく『箱』とやらを開くことができるだろう。


ハウスほどの巨大な組織が、そのトップの実子に仕掛けたものー。

それを今推測しても無駄だろう。

ただ、俺の想像が及ばない大いなる何かが隠されていることは、間違いない。


『箱』の中から何が出ようと、俺の限りある人生に潤いをもたらすものになるはずだ。


くくく。

権力も名声も金も女も、すでに最上を手に入れたんだ。楽しませてくれよ…!)



コンコンー

再び響いたノックの音で、オレンダインは我に返った。


「なんだ、スケジュールはブロックと言っただろう」


カチャ…


!!!


オレンダインが息を飲んだーー!!!


「お、お前は!?」


「アポ無しで悪いな」


ブラック・スーツに、金髪のミディアム・ヘアの男ー!


男がゆっくりとサングラスを外す。


()()()()()()()()


パタっ…


ドアが閉まり、部屋の空気が海の底のように重くなる。


「……誰の助けも呼べない。誰もこの場を見聞きすることもできない。分かるな?」


ーー!


レノンが来客用のソファに腰を下ろす。


「オレンダイン。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それはそれで良いんだ。

だがな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


口調は穏やかだが、その瞳は深海の永久凍土のように冷たく、暗い。


「…貴様、何を言ってる?」

オレンダインが、素早く思考を巡らせる。


(ハウスの大幹部、レノン。

ハウス本部は、これまで動きが無かったはずだ。

なぜ今ここに…?

さっき奴が口にした内容が関係しているのだろうが、

意図がまったく読めない……。

人工衛星も去ったばかりだ。

ポルたちも、この状況には気付いていないだろう……)

オレンダインが、デスク天板の下に備えられたボタンへ指を掛ける。


(これを押せば、このデスク以外の全空間に射撃を放つことができる。

対能力者のものではない。テロリストやクーデター対策だ。

当然レノンには効かない。

たが、一瞬でも奴の気を逸らせればいいんだ。その隙に真後ろのガラスを割って脱出する。

レノンと戦闘で相対するのは、あまりに分が悪いからな…)



「おい、何かしようとしてるんなら、やめとけ」

レノンが気だるそうに、ソファから立ち上がる。


「いや、何かしたいならしてもいいけどな。何をやっても無駄だから」


ポリポリと頭を掻きながら、ゆっくりとオレンダインに歩み寄る。


「無意味なことってさ。お互い疲れるだろ?」


一歩。

また一歩。


距離を詰めながら、淡々と言う。


「……まあ、つまり…死ねってことだ」



「!」「!」「!」


オレンダインのオーラが消えた!


ジメイ神宮にいるポルフィディオ、ズブロッカ、ウィルキンソンの3人は、オレンダインのオーラが無惨に掻き消えた瞬間をはっきりと捉えた。


板敷の間に、重く、どす黒い緊張が走る。


ベネットたちじゃないー。

あいつらは3番区にはいない。

ならば、ハウス本部なのは明らかだ。


それも、オレンダインを一瞬で仕留められるほどの実力者…。

ーそいつがオレンダインを絶命させた。


「おい、ウィルキンソン、何か映ってるか?!」ズブロッカが怒りを露わにして叫ぶ。


「いや……」

ウィルキンソンが首を振る。

「人工衛星を離した瞬間にやられた。

タイミングを図られたんだ」


ポルフィディオがふぅと息を吐く。


(ーハウスめ。今まで沈黙してたのに、急に出てきやがった。

オレンダインだけがなぜ…

ハウス側が()()()()()()()()()を把握していたのは間違いないだろう。

鍵を開けられたくなかった?

いや、それならなぜ、俺のところに攻めてこない?

まあ、考えてもしょうがないか…)



「おい、そろそろ俺たちも、この祭を楽しむぞ!」

ポルフィディオの目の色が変わった。()()()()()()だ。


「ズブロッカ。やっと本部が腰を上げたようだ。本部が出張ったってことは、俺たちが核心に近いってことに他ならねえ。おまえはここで襲撃に備えてもらう」


「ほほっ!いよいよだな。待ちくたびれたぜ!ようやく楽しくなってきたな!」

ズブロッカが大きな拳を胸の前で叩き合わせる。


「ウィルキンソン、()()()にこっちに来させるよう、言っといてくれ」


「オッケー」


「新入り?」ズブロッカが首を傾げる。

「そんなのいたか?」


ウィルキンソンがメガネを拭きながら答える。

「ほら、バガルディとカルーアのところに来てたガキ。ギブカの酒屋にもいたでしょ。存在感が全くなかったけど」


………

……


都市スターノ4番区、ギブカ・シティ。

廃墟のような酒屋に招集されたあの日…

(※「ep.28 ポルフィディオ盗賊団編 ープロローグー」参照)



ズブロッカが雛壇の瓦礫にドスンと腰掛ける。

「俺たちが最後だな」



ブラウン管がチカチカとした光を投げかけ、部屋の全体像を照らす…。


テレビの向かいの雛壇には、入り口側から、ズブロッカ、ラフロイグ、カシスの順番で瓦礫に腰を下ろしている。

そして、カシスの横にも更に複数の人間がいた。


ピンクの髪色をしたツインテールが特徴的な、ロック・ミュージシャンのようなレザーウェアを纏った少女…


まるでフランケンシュタインのようなツギハギだらけの肌で、真っ黒な衣装に身を包んだ大柄の男…


透き通る白い肌に、ぼんやりとした瞳。ミドルヘアの黒髪で、女子高生のような制服を着た少女…


ビシッとした派手なスーツを着こなし、整えた短髪に顎髭を生やした、やり手のベンチャー幹部みたいな出で立ちの男…


その隣にももう1人いるが、ブラウン管の光が届かず、姿を見ることはできない…


………

……


「ああ。あの隅っこにいたガキか。確か、オレンダインの隣だったか。黙ったまんまで気に食わねえヤツだったな」


「だが、実力はある」

ポルフィディオの瞳に力が入る。

「ズブロッカ。おまえと新入りが、うちのメンバーきってのオフェンス班だ。頼むぞ。

そんで、ウィルキンソン」


黒縁メガネが顔を上げる。

「おまえはそろそろ()()()に入る準備だ」


()()()のとこだね。オッケー、任せておいて」

ウィルキンソンが板敷の間の出口に向かう。

「モニターはそのままにしておくから。我闘山に着いたら連絡するよ」

そう言い残し、ウィルキンソンは板敷の間から飛び立った。


板敷の間には、

ポルフィディオ、ズブロッカ、クリアの三人が残った。


「そういやよ、ベネットたちはどうすんだ?今のうちに俺が行こうか?」

ズブロッカが両の拳を打ちつける。


「いや、お前が抜けたらここが手薄になるだろ」ポルフィディオがモニターに歩み寄る。

「あっちには()()()を当ててある」

モニターの一つに手を当てる。そこには都市部の雑踏が映し出されていた。

多くの人が行き交う、少し危険な香りのする街…。


ギブカ・シティだ。



「カシスだぁ?つくづく()()()()()()()()()ばっか、ベネットたちの相手してんな!」

ズブロッカが鼻で笑う。

「まあ、いいか。

こっちは、ようやくおあずけから解放されるんだからよ!」

ベロリ、と舌なめずりをする。

「社長も一緒に戦うのか?」



「いや。俺はこの娘の調査を継続する」

ポルフィディオがクリアを一瞥する。

「この鍵が、何によって解錠される仕組みなのか、俺の()()()()()を駆使しして探り当ててやる」

ポルフィディオが腕を広げた。


すると背後に()()()()()()()()()が出現した!

そして書棚から、一冊の本を抜き出す。



「まずは、()()()()()の能力だ。

だが、こんなので開けられるほど甘くはねえ。ピッキングは1ページしかないからな。慎重に使わないと」

ポルフィディオは、さらにもう一冊の本を取り出す。

「こいつは()()の能力だ。()()()()()を発動して箱の様子を目視しつつ、分解で箱の構造を明らかにする」

本を軽く振る。

「ちょうどいいところでピッキングってとこか。

まあ、()()()()()()()は大量にあるからな。ピッキング作戦がダメなら別の手を使うまでだ」


ポルフィディオが取り出した二冊の本。

そのページをビリッと破る。


すると――

()()()()()()()()()()()()()()()()()と、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が現れた!



(こ、こいつ!)

クリアが目を見開く。

(こいつ、能力が一つじゃない!い、いや、あの本棚が能力ってこと?)

クリアの全身に悪寒が走る。

(そ、そうだとすると…)

背後の巨大な書棚を見る。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()




ーそのころ


バシューン………


クロロ、コン太、ベネット、リリアンの4人は、クリアが捕えられているジメイ神宮へ向かって飛んでいた。


「なあ、リリアン、どうやってあの強力な敵をやっつけたんだ?」

隣を飛ぶリリアンにクロロが尋ねる。

「ふふん。それは秘密よ」

リリアンがウインクをする。

(私が創作したオリキャラの能力だなんて、死んでも言えないわ)


「ちぇ、そうかー。リリアンのオーラがすげえことになったのは感じたんだけどなー」


「おい、おしゃべりはそれまでた。そろそろ4番区に入る。ジメイ神宮はその隣の区だ。襲撃に備えろ」

ベネットが目を細める。


目の前には高層ビルの群れが森のように聳えている。


「い、いよいよですね」

コン太がごくりと唾を飲み込む。

(じ、ジメイ神宮には盗賊団のボスがいる!あ、あのカメラ男もいるかも…。

やるしかないと分かってても、怖いな…)


「ん!?なんだありゃ?」

クロロが額に手を当てる。


視線の先ー。

()()()()()()()()が群れをなしている。


「ま、まさか、またおもちゃのラジコンじゃないよな?」

コン太の脳裏に、ブロック玩具の戦艦からレーザー攻撃を受けたときのトラウマが蘇る。


「いや…ちげえぞ。あれは…()?」


バサバサバサー!!!


ー!!!!!


()()()()()()()()()が、クロロたちに向かって一直線に突っ込んでくる!


「敵の能力か?」

「いや、オーラは感じられないわ!こっちへ!」

ベネットとリリアンが上空へと軌道を変え、クロロとコン太もぐんっと高度を上げる。


しかしー!


バサバサバサバサバサバサ!!!


カラスの群れは、誘導されるようにクロロたちに向かって方向を変えた!


「ちっ!突っ切るぞ!」


視界が翼の黒で染まる!

バサバサと無数の羽音が周囲を包む!


バサバサバサバサ…

……


「よ、よしっ!抜けたぞ!ーって、ええ?」

クロロが急ブレーキをかける!


ボボボボボボ…!


眼前に、()()()()()()が迫っていた!人が操縦している本物のヘリだ!


「クロロ、コン太、リリアン!下に降りろ!」

4人がギュンっと高度を下げる!


その頭上を、ヘリが爆音を上げて通過していく!

「オーラは感知出来なかったが、敵の襲撃だろう!降りるぞ!空中だと狙い撃ちにされかねん!」


ビジュゥーーー

雲を切り、一気に地上へと降下する。


眼下には、洗練された高層ビル群が建ち並んでいる。

都市スターノ4番区は、スターノ都庁や、ギブカの歓楽街を有する、この国有数の大都市部だ。


ーしかし、クリアが囚われている3番区はこの隣ー!



ビシュン!!!


4人は、多くの人で賑わうギブカ・シティの中心部にある広場に着陸した。


噴水が立ち上がるような外観が特徴のランドマーク・タワー。

そのフロントにある、屋外イベントを開催できる広場だ。

周囲を高層ビルに囲まれ、多くの人で賑わっていた。




「うわー!」「きゃっ!な、なに!空から人が!」「なんだなんだ!」「あぶねえ!」


空から降り立った4人に、悲鳴と罵声が浴びせられる。


「少し目立ちすぎたか」

ベネットが嘆息した瞬間…


ドドーーーーーン!!!


ー!!!!!


大きな爆発音が頭上から響く!


見上げると、ランドマーク・タワーの高層階から爆炎が噴き出している!

しかも!

ランドマーク・タワーだけじゃない!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「きゃー!ぎゃー!!!」「て、テロか!?」「逃げろーっ!」


広場は一瞬でパニックに支配されていく!!!


「ああっ!!!」コン太が上空を見上げたまま声を上げる!

「が、ガラスだっ!!!」

爆発により吹き飛ばされたガラスの破片が、星空の様に煌めきながら空を覆い尽くしている!


クロロが周囲を見渡す!

「ひ、人だらけだ!こんなことろにガラスが降ってきてらやべえぞ!」



「ーちいっ!」

ベネットの右腕に青白い電流がビシっと走る。

「つあっ!!!」

無数の電撃がドームの様に膨らみ、一帯を包んでいくー!


ボボッ!ボボボボボッ!!!!!


電撃がガラスの破片を消し去っていく!



「よ、よしっ!そんじゃあ!」

クロロがすうっと大きく息を吸い込む!

「おおーい!ここにいるみんなー!!!!!ここはめちゃんこ危ないからさっさと逃げろーーー!!!」


ビル街を揺るがす大声が響き渡る。

悲鳴や泣き声、そして「うるせえ!」と罵倒する声が混じり合いながら、ギブカの中心街から潮が引くように人々が逃げ去っていく。


ドドドドド…ドタドタドタ…



そんな人の流れに逆行し、ゆっくりと近づく人影があったー


「あらあ。ずいぶん寂しくなっちゃったわね」


スミレ色に輝く髪に七色の瞳、路上に似つかわしくない、ゴージャスな赤いドレスに身を包んだ絶世の美女。

濡れた赤い唇からタバコを離し、紫煙を吐き出す。

()()()だ!


「盗賊団だな!」

クロロがさっと戦闘の構えをとる!


「貴様がこんなところで無茶苦茶しやがるからだろう」

ベネットが怒気を孕んだ低い声を絞り出す。蒼い電気が全身をバチっと駆け巡る。


「ちょっと、貴様って。怖いわよ。私はカシス。よろしくね」

カシスが目を細めて、にっこりと微笑む。


(き、綺麗な人…。めちゃめちゃな大人の色気…。試験であったペンネさんがタイプとしては近いか…?い、いやいや、いかん!こいつは盗賊団の一味だっ!ゆ、油断しちゃダメだ)

コン太が慌てて頭を振る。


「あとね。これはあくまで()()だから。()()はこれからよ」


ベネットの額から冷や汗が流れる。

(これ以上、こんなところで足止めを食らうわけにはいかない…!

ヤツは“予兆”だと言ったが、()()()()()()()()という意味か?

であれば、なおさらだ…!)


「リリアン、クロロ、コン太!お前たちはクリアの元へ向かっていってくれ」


「!こいつはどうすんだ?」

クロロが声を上げる。


「俺が何とかする」

ベネットが鋭い眼光でカシスを睨みつける。


「分かった…!頼んだわ!」

「べ、ベネットさん、気をつけてください!」



「ええっ、ちょっと待ってよ」

カシスが両手を広げる。

()()()()()()()だから、もう少し一緒にいてよね」

カシスがあざとくウインクをする。


「コン太、リリアン!」

カシスを無視して、クロロが2人の手を掴んだ!

「しっかり掴まっていてくれ!」


ーあのビルの向こう!!!

オレたちがいる場所だ!


ビシューーーッ!


!!!



カシスがまったく反応できないほどのスピードで、3人が姿を消した!!!


振り返ると、広場を囲んでいたビルとビルの間に浮かんでいる。


「ベネット!先に行って待ってるからなー!」

クロロが大声でベネットに告げると、3人は体からオーラを上げ、飛び去っていった。


(一瞬でどうやって…!?そっか、あの能力でカルーアをやったのね。…()()()()()は間に合わなかったか。まあ、しょうがないわね)


「ベネットさん、2人で楽しみましょ。あの3人はどーせ、ズブロッカに殺されるわよ。急ぐ必要なんてないわ」

カシスがタバコの煙をふぅっと吐き出す。


「ふん、バカなことを言うんじゃない。貴様をすぐに倒して、さっさとここを立ち去るつもりだ」


「そう。うまくいくといいわね」


その時ーー

どこから出てきたのか、一匹の()()が広場を横切っていく。


しかし…!


反対方向からもう一匹。

自販機の影からも一匹…。

隣のビルの影から、通りの先から――

次々と黒猫が現れ、みるみるうちに広場を黒く埋め尽くしていく!!!


「ー!!!なんだ!?」


「ふふ。()()()()()よ。これまで、カラスの群れ、ヘリコプター、ビルのガス爆発によるガラスの雨があったでしょ。そして4つ目が黒猫」


「それが…」

ベネットの全身にバヂリと閃光が駆け抜ける!

「どうしたっ!!!!!」


ズドン!!!!!


蒼い電気の奔流がカシスに向かって押し寄せる!!!


しかし!


ググン!!!電撃は、カーブを描くと、カシスの脇を通り抜け、背後の自動販売機を破壊した!


「なにっ!?」

どうなってる!?確実に当たる攻撃だったはずだ…!!!


ゴゴゴゴゴ…


「ふふ。()()()()。でも、ちょっと、急かしすぎよ。もっとムードを楽しませて」


カシスが妖艶な笑みを浮かべ、華奢な指先でタバコを弾き飛ばした。




ついにカシスが登場!!!ベネットの攻撃が無効化!?その能力とは一体!?

そして、謎が残るレノンの言動、クリアの秘密、クロロたちの向かう先で待ち受けるズブロッカと盗賊団の新入り…!

盗賊団編もいよいよクライマックスへ向けて加速していく!!!

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