2人-私達
どれくらいaと歩いて来ただろう
共に何処までもいけたら幸せだっただろうか
初めから果たせなかった約束に後悔する
進まなければよかったのかもしれない
何もかもなくなっていく
自身の名前すらもう分からない
使い果たされた思い出は黒く塗りつぶされていく
貴方との記憶だけは残したかった
それすらも出来ないのだろうか
ああ
貴方と共に死ねるなら、それでも悪くないかもしれない
有限とした永遠が終わる
本来の姿に戻るだけだ
もっと話しておけばよかったな
思うことを全て言葉に出来たら
寂しいと貴方に助けを求めれたなら
どれだけよかったのだろうか
どれだけ貴方はそれを望んだのだろうか
自身を使い果たしたこの身は既に抜け柄同然
もう過去の記憶はほとんど見えない
だだ約束だけが残っている
「z?」
何処かで聞いた声が尋ねる
とても馴染みのある優しい語り
記憶は無くても覚えているとも
あるかどうかも分からない天国についてしまったのか
そう疑いたくもなるほどに、望んだ声に意識を委ねる
「初めて笑顔を見せた時の貴方の表情は今も鮮明に思い出せる
あんなにも喜んでくれた事が僕の救いになってくれた
どんな形であれいつか終わることが約束された繰り返し
それを忘れさせてくれる
とても幸せになれた表情」
それなら少し安心した
これまでの約束の後悔が掠れていく
「貴方にはハッキリした記憶はすくない
数が多すぎるから仕方がない事
けれど僕は全部覚えているよ」
確かに覚えていない
いや覚えていないのでなくもう消費してしまったのだろうか
「2人で夏の海をずっと浮かんでいた記憶なんてあまりにも地味すぎて思い出せないんだろうな」
そんなありふれた時間をもっと貴方と共に生きたかった
「他にもまだある
僕が初めてお祭りの屋台の料理を作ってって貴方に言った時なんて、貴方は揚げ物全部焦がしちゃったんだ
これも思い出せないんだろうな…」
私が唐揚げが作れた理由にそんな出来事があったのか…
少し笑えてくる
「僕の一人称が僕なのは全部貴方のせいなんだよ
貴方は男性だけど自分の事を私と呼ぶから、違うのにしようとしたら僕になっちゃたんだ
僕と自分の事を呼ぶ僕を見て、今の僕を貴方は不思議がっているのかな
少し寂しい」
いつの間にかaの一人称が僕になっていたのは私のせいだったのか
少し責任を感じる
寂しい思いをさせたことについても
「それでもいい
どんな時も貴方は間違えなく最後は一緒にいてくれた
押しつぶされそうな後悔からずっと守ってくれていた
自身を犠牲にしてでもそうしてくれたのだから」
貴方を幸せにできるなら、自身は何度でも犠牲になれた
「きっと貴方は全て当たり前のことをしたつもりなのかな
それが全て凄いことだと当の本人は気づいてないのだろうな
いつも鈍感だったから」
私はそんなにいい人じゃないんだ
全て貴方だったからこそできたことなんだ
「もしかしたら貴方本人より貴方の事を僕は知っている
貴方自身が数えられないほどの繰り返しで教えてくれたから
記憶が毎回なかったから何回も手探りで調べてきて
色んなことを教えてくれた」
貴方に覚えてもらえただけでも、今はもう満足だ
「何回も何回も繰り返して…
最後には本心も教えてくれた」
ああ
私の知っている私は全て
きっと全て教えてあげた
まだ足りないから
これからも何回も何回もそうしていきたかった
そうしたかった
「でも僕は後1つだけ隠していることがある」
この世界と共に消える事を隠してくれていたんだ
「これは最後まで持っていくのを許して」
ああ
許すも何も全部私の為じゃないか
「僕ができる唯一貴方にしてあげれることだから」
何を言うか
貴方は私に全てをくれた
何も無かった私に大切な記憶をありったけ
「これは貴方への罪滅ぼしではもうない」
全ての荷が降りた
そうだあの時のa
最後の私が見たaはあの時、贖罪の為でも自身が許される為でも無かったんだ
純粋に
共に進むことを望んで
叶わないと知っても尚願ってくれた
愛してくれた
こんな私を
「私ができる最後の贈り物」
空から記憶が形を成して落ちてくる
色の失われた世界に鮮やかな色彩と光を散らし
一切の迷いもなく私の元へ
それは1面1面に彼女と私の思い出を映し出す
彼女の最後の贈り物
たった2人の1つの
記憶
「刀」
「ARIA」とaと私達の思い出の地に突き刺さる
私を迎えに来るように
目の前にいる男は佇む
それに自身が触れる権利がないことを悟ったよう
「そうだ…私の知っているaはもう許せたんだな
共に進むことを
自分自身を許せたんだ」
立ち上がる
崩れ落ちる体を再び動かし始める
「どこまでも共に進む事はもう出来ない
それでも…最後まで一緒に進むことならできる」
柄を掴む
すぐさっきまで失われていた懐かしい感覚
aの手の温もり
忘れるはずがない
何度も何度も握ってくれたの手の貴方の感覚を
「どこまでも一緒にいよう」
世界に記憶が流れ込む
空に投げ出され、今この手に戻ってきた僅かな記憶
そしてaが私にくれた無数の記憶
彼女の見た世界は私と共にいる物しかない
家や砂浜にお祭り、今いるヒマワリ畑もそうだ
全部aと2人でいた
立ち上がる
もう私だけではない
aと私
2人だ
もう1人の私は残光が散る空を見上げた後叫ぶようにして意思を吐き出す
「お前にも約束があるようだ
だが私はそれを壊してでも「彼女」との約束を果たす」
失った「ARIA」を殺す為に自身を使い切る
あの姿は私そのもの
その覚悟を知っている
同じく彼女が全てなのだから
二刀の「刃物」は1つに束ねる
今にも己の呪いで自壊を始めんばかりに蠢きのたうち回る
溢れる後悔の記憶が目の前の私を飲み込もうとする
それを全て
逆に喰らい尽くす
私の目の前にいる私
それは「ARIA」との記憶ただ1つで
数えることなど到底できない無数の記憶ををつなぎ止める
「刃物」は「刀」へ姿を変える
これまであった歪みが消える
1つ目的の為に全てを使い切る
殺すは「ARIA」
道を妨げる者全てを破壊する
向かい合う私と私
残った僅かなヒマワリは、音もなく揺れ
花びらが空を舞う
それを合図に
走り出す
もう言葉を使い果たした
一撃一撃は音を置き去る
記憶を巡らせ消費する
その構造は体に一切傷を残さない
終わりの見えない繰り返し
刃音を彼方まで響かせる
どちらの勝利にせよ訪れる結末は「死」
それでなお目的を譲らない
約束を果たす為
握りしめた「刀」は決して、欠けることが無い
何度体が欠けようとも記憶を繋ぎ合わせて戻し
何度も意識が掠れようとも目的がそれを繋ぎ止め
何度死が訪れようとも死の概念を塞ぎ込む
断固として「刀」を離さない
1人の私達はこの永遠の夏を終わらせる為
彼女の願いを叶える為に得た無数の世界
「ARIA」を殺す約束を果たすため
今、自身を使い捨てる
1人の私とaは後少しでも一緒にいる為
いつか終わる事が決まっていても尚、約束の形を変えこの瞬間を共に戦う
「a」と共に進む約束の為
今、彼女と未来を掴む
地上に映し出された記憶は使い果たされ、今の世界だけを写しだす
既に正面の自身は敵で無い
己自身さえも敵でない
ただ願いを叶えるために握る刀を振るってるだけ
初めから終わりまでただの繰り返しだった
2人はそれに気づいている
それでもこの1回1回は何も変え難い
「彼女」からもらった贈り物
それを今、使い切る
「ARIA」に捧げる為
束ねた世界は目的を果たそうとする
最後に重ね連ね、圧縮された感情は
1つ結果に辿り着く為
目の前の2人の1人に振るわれる
最後の一振
無限の斬撃
「a」と今、共にいる
それ一つで満足だ
私を否定する無数の自身を
目の前にしても後悔はない
使える記憶は1のみ
初めからそれしか持っていない
貴方と私の思い出
ただそれだけをこの手に握る
心の底では訪れるはずのない未来を望み
これから貴方と生きる世界をこの目に見せる
どんなに叶わないとしても願ってしまう
今このあるはずのない
記憶を紡ぎ形とする
貴方との一振
永遠の斬撃
空に1つ打ち上がる「刀」
手に何も持たず立ち尽くす私
そして
「刀」を持つ
「aと私」
荒れたひまわり畑が広がる
そこに佇む私が1人
そして倒れこむ私が1人
「どうして私にとどめをささない」
「刀」から手が離れた私が尋ねる
「私はお前を許さなければならないからだ」
「刀」を握ったまま私は答えへ、尋ねる
「どうして今まで私とaを襲って来た。そしてどうして殺さなかった?」
憑き物が落ちた私は笑う
「理由何てものは無かった。ただ本心で曖昧な望みが捨てられず、私で私を試していたのかもしれない」
望みを目の前の私に問う
「それは何だ?」
すでに見つかっていた答えを私に告げる
「「aとARIA」を救う望みだ」
迷いの無い1言
「まさか最後に望みが希望になるとは思わなかった」
立ち上がる
「私ならわかっているはずだ。私達がなす最後の答えが」
自身の傍に転がった、無数の世界を束ねた「刀」をその手で握る
「記憶を消費する事でしかできない私と、今のお前は既に違う。お前はこれからの記憶を望み、自ら作り出したんだ」
私とaが無数の記憶に勝利した理由
それは記憶を作り出したからだった
それは今あるものでなく
これから先に望んだものだった
「彼女をその力で救え
これまでの
これからの
そして今の」
既にそこには「刀」も1人の私もいなかった
欠けたお面1つだけをその場に残して
「ああ わかった」
最後に残った「お面」を手に取り今するべき事を答える
「終わらせよう
この夏を」
今、迎えに行く




