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例えばこんな恋の始まり  作者: みなみ
2/2

B面

実は彬君の父親は、「拗らせ」の部長さん。

二階堂の男は、幼い雰囲気の女に弱いという事実(笑)

俺、二階堂にかいどう あきらは、2か月の片思いを見事実らせて、たった今恋人をゲットした。


彼女ーーー茅野 文香さんの存在に気付いたのは、四月だった。

たまたま同じ電車の同じ車両に乗っていた、童顔な少女。周囲をキョロキョロと見まわし、何かを探しているようで、その姿は小動物を彷彿させるものだった。

「可愛いなぁ」と思って見ていたら、何かを見つけたように「はっ!」として、次の瞬間ウットリとした貌になった。

その表情は大人の女性を感じさせるもので、さっきまでの小動物顔とのギャップが凄い。

そしてそのギャップに、一瞬で恋に堕とされた。


何を見ているのか気になって視線を辿れば、そこにはサラリーマンが。電車の中が暑いのか、背広を脱いで腕にかけている。なかなか良い体つきをしているそのサラリーマンは、顔もそこそこイケてた。


恋した瞬間に失恋とか、マジ勘弁してほしい。


家に帰りたい気分で電車に揺られる。目的の駅に到着すると、小動物な彼女も同じ駅で降りた。

この辺に会社は無いので、もしかしたら近所の大学生だろうか?

もしそうなら、志望校を変えて俺も横手大学に行こう!いや、待てよ。彼女は何才なんだ?もし4年生なら、俺が入学しても彼女はもう大学にいないって事にならないか?


「おっはよ、彬。どうしたんだ?難しい顔して。電車で何かあった?」


彼女の事を調べるのに、どうするのが一番良いかを真剣に考えていると、友人のたけるが声を掛けてきた。


俺の通う高校は、良家の子女が通う有名私立高校で、小・中・高・大学まである一貫教育の学校だ。

なので、殆どの生徒は登校には車で送り迎えされている。

あと、電車や徒歩で通学している生徒は、特待生ぐらいだ。スポーツでの特待生は、学校の寮に入っているので、電車通学なんてしてるのは、俺位だろう。

徹は、学校の近くにあるマンションで一人暮らしをしているので、登校は徒歩だ。


「ああ、猛…おはよう。」

「彬君ってば、さっきから何を真剣な顔で見てるのかと思ったら……。ふぅん?」


気の無い挨拶を返しながらも、彼女から視線を外さない俺。

そんな俺の態度に、感の良い猛はすぐに気付き、ニヤニヤ笑いで俺の顔を覗きこんでくる。


「調べよっか?3日くれれば、あらかた調べられるぞ?」

「……………………たのむ。」

「了~解。」


気の抜けた返事と、チャラい見かけで誤解されがちだけど、猛はかなり優秀な奴だ。

猛に任せておけば、彼女の情報はあっという間に集まるだろう。

あの片思いの相手らしき男の情報も……。


今まで女になんて特に興味も無かったけど、何故か彼女の事は特別だと思ったんだ。

片思いなら、俺がアプローチしても良いよな?

どうにかして彼女に振りむいて貰いたい。そのためにも、情報は必要だ。

猛、頼んだぞ!






その後の毎日の観察と猛からの情報で、彼女の名前が茅野かやの 文香ふみかと言う事、横手大学の一年生である事、少し変質的な背中フェチである事が解った。

初めてあった時に見た彼女のあの表情は、どうやら好みの背中を見つけた事で浮かんだモノだったらしい。

好きな人がいる訳じゃないと知ってホッとした。

彼女の性癖には若干引いたが、「そんな所も可愛い」とか腐った事を考えてしまう俺は、もう末期なんだろうな。


そういえば、たすくさんの彼女も合法ロリみたいな見た目で、少し……、かなり変わった性格をしてたな……。


父の甥に当たる、男前な祐さんの彼女ーーーすばるさんを思い出し、次にその彼女を、これでもかと言うほどに溺愛している祐さんの姿を思い出す。

どうやら、二階堂のDNAはあの手の女性が好みの様だ。

俺も、もし文香さんを手に入れたら、祐さんみたいに溺愛する自信がある。祐さんの溺愛の方向は、父親臭い所があるけど、俺もあんな風になるんだろうか?


そんなどうでも良い事を考えながら、今後どうやって文香さんとの距離を縮めるかを考える。

思い切って声をかけてみるか?

いや、彼女の目に止まろうと思えば、彼女好みの背中が必要だと言う事だ。

俺は子供のころからピアノをやらされていたので、「指がきれい」と言われる事は多かったんだけど…。背中はどうなんだろうか?

今は弓道をやっているから、それなりに筋肉は付いてる。見苦しくは無い筈だが、彼女の好みがどんな背中なのか、今一解らないからな……。


猛にその辺りの事を相談したら、「お前の背中なら大丈夫!」と根拠が良く解らないお墨付きを貰ってしまった。

6月の衣替えを目標に、文香さんがどういうシチュエーションの背中が好きなのかをじっくり観察し、対策を立てていく。

Yシャツの下には、色物のピッタリしたTシャツが良いみたいだと言う事が解ったので、赤やオレンジといった目立つ色のシャツを何枚か用意した。

どうやら腐女子の気もあるらしいので、文香さんの気を引く為に猛にも協力してもらう事にした。


色々と計画を立てて臨んだ運命の日(6月1日)。文香さんは、それはもう見事な程に、俺の背中に転んでくれた。

気付いてないふりで、こっそり彼女の様子を窺うと、ポヤーっとした表情で俺の背中を見つめている。


嬉しい…。

可愛い…。


電車を降りてからも、俺の背中には熱視線が突き刺さっている。


「おっはよー!彬!!」

「ああ…、おはよう。猛たける。」

「どうした彬、なんか顔、赤いぞ?」

「うっせぇ!」


ニヤケそうになる顔を必死で抑えていると、猛が声を掛けてきた。その表情は勿論ニヤケ顔。必要以上にベタベタとくっ付いてくるが、離れろとは言わない。

俺の後ろで、プチストーカーになっている文香さんの存在にも、勿論気付いている。

猛が俺に必要以上にスキンシップをはかってくるのも、文香さんへのサービスの一環。思惑どおりに、俺の背後で文香さんが悶えている。

俺の計画は成功した!……と、思っていた…。



行き詰っているのに気付いたのは、すぐだった。


文香さんは、俺の背中を見ているだけで満足できる人だ。

俺に声を掛けてくることもないし、近付いてくる事も無い。

常に一定の距離をおいて、背中を熱っぽい瞳で見つめているだけ。


俺の背中がとても好みだったらしく、あの日以来他の背中を探す様子はなくなった。だから、彼女の注意を自分だけに向けておきたい俺は、常に彼女に背中を向け続ける。


この先どうしたら良いのか、解らなくなってしまった。

距離を縮めたいけど、どうやって声を掛ける?今まで視線すら合わせた事も無いのに……。

彼女の気を引き続ける為には、背中を見せるしかない。そうしたら、目を合わせるチャンスなんて作れない。

どうする?どうする??どうすればいい!?


俺は、焦れてイライラし始めた。

このままじゃ、文香さんを攫いそうだ。


そんな事を考えていたら、電車が急停止した。

視界の隅で、文香さんが倒れそうになっているのに、気付く。思わず片手で彼女を引き寄せて、胸の中に抱き込んだ。

俺達の周りでは、阿鼻叫喚の様相を呈しているが、俺は吊革につかまり2人分の体重を支える。文香さんに怪我なんかさせてたまるか!!


少し周囲の様子が落ち着いて来た頃、車内アナウンスがあった。どうやら人身事故みたいだ。


これは、しばらく電車動かないな。


そんな事を考えてたら、文香さんが俺の胸に額をすりつけている事に気付いた。まるで猫が甘えて擦り寄ってくるような彼女の仕草に、一発でノックダウンしてしまう。

思わず目の前にある髪に、鼻を埋めてしまう。

やべ。めっちゃ良い匂いする…。


「はぁ、可愛い……。しかも、すげぇ良い匂いするし…。反則だよな、この可愛さ…。」


思わず呟いてしまったら、聞こえてたみたいで文香さんが俺の顔を見上げてきた。

小首を傾げて「あの、ありがとう、ございます?」なんて言われて、思わず腰を引いた。

やっべ。気付かれてないよな?

可愛すぎるでしょ!凶器だよ、この可愛さ!!

まさしく「可愛いは正義」だ。

もう、ダメ。もう、無理。


「好きです!茅野 文香さん、俺と付き合って下さい!!」


思わず告白してしまった。この状況でこんなこと言う俺って、かなり空気読めてないのは解ってる。

周囲からの「は?今、この状況で!?」みたいな視線が痛い。「空気読めよ」って幻聴が聞こえてくる。

でも、文香さんが可愛すぎて無理。抑えられない。

拒否られたら、何するか解らない。この場で押し倒す位、平気でやれる!

だから、拒まないで!

強い力で抱きしめながら、Yes以外は許さないと思っている。自分の中にこんな狂気が眠ってたとか、かなり驚きだ。


「私は、背中が大好きな変質者ですけど、それでも良いんですか?」


文香さんの口からこぼれた言葉は、何とも今更な事だった。

そんな事は、勿論!


「知ってます!俺の背中が好きなのも!!」

「え!?(なんで、ばれてるんですか!!??)」


文香さんの心の声が聞こえてくる。

そう言えば、良く祐さんも昴さんの性癖を逆手に取って、丸めこんでたよな。

なら、昴さんに何だか似ている文香さんにも、同じ手が通じるかも?


「俺と付き合ったら、俺の背中、文香さんの好きにできますよ?毎日でも、抱きついても良いんですよ!?」

「!!付き合います!!!」


やっぱりこの手は有効らしい。

これからもこの方法は、有効に活用できそうだ。


可愛い、可愛い文香さんに、「俺の全部が好きで好きでたまらなくなる」呪いを掛ける為に、額に口づけた。







因みに、呪いは無事に掛ったようで、今では文香は、俺の顔も声も胸も手も腕も足も、キスもムニャムニャも全部好きらしい。


3年後にその事を聞きだした時は、嬉しすぎて発狂するかと思った。

我慢なんて出来る訳も無く、直ぐにベッドに引きずり込んで、若さにまかせて抱き潰した。

避妊?なにそれ、美味しいの?


「赤ちゃん出来ちゃったらどうするんですか!?」


なんて、文香が半泣きで言ってたけど、何も問題ないよ。

だって、逃がす気ないし?むしろ、大歓迎。

友人が大学に入ってから起業した事業に参加してるから、収入も問題ない。


だから、文香。

もし、子供が出来てたら直ぐに結婚しようね?

最後、彬がちょっとヤンデレに……。


「拗らせ」と「海堂家シリーズ」にちょっとリンクしてます。

彬と隆文は同級生で友人。猛は、「婚約破棄」で情報集めて、隆文の代りに制裁してくれた悪友です。

文香と光も同級生。

祐さんと昴の話は、この話の1年前。

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