坂口という男
秋も深まり、空気は澄んで朝夕には少し冷え込みを感じる
校庭の木々は赤や黄色に色づき、風が吹くたびにひらひらと落ち葉が舞う
そんな季節の中、運動会が近づいてきた
今年のリレーで、私はクラス代表に選ばれたのだ
勉強はそこそこに、運動に力を入れてきたおかげだと思う
今日はそのリレー代表者の合同練習日
いやー、リレー代表なんて初だよー
緊張するわー
「そしたら、3年生は朝礼台の前に集まってー」
先生の声が校庭に響き渡る
朝礼台前に行くと、ひときわ存在感を放つ男の子がいた
細みで高身長。彫りの深い顔立ちから、どこか西洋的な雰囲気を漂わせる
いったい彼の身長は何センチなんだろ?
そんな事を考えながら眺めていると、ふいに目があった
彼は気付くなり、鼻でフッと笑っているように見えた
な、な、なんなのよ!!こっちが背が低めだからって、小馬鹿にしてるの!?ムキーッ!!
「魔王ー!おまたせー!」
少し遅れて、詩音が笑顔で、手を振りながらやってきた
詩音もクラス代表の1人
詩音に手を振り返し話しかけようとしたところ、ふと先程の男子に詩音が目をやり
「あれー!坂口だ!魔王、あれが坂口だよ。前に話したでしょ?」
と、詩音が坂口に手を振った
あれが坂口なのかー
1つ咳払いをし、
「貴様が坂口か。詩音からその名を聞いておる。我が名は真央。よろしく頼む。運命に導かれし同胞よ」
と坂口に手を差し伸べた
坂口は
「存じておる」
とたった一言だけ言い、反対方向に歩いて行った。
ちょちょちょーーおーい!!
それだけ?ねえねえ。こんなに頑張って自己紹介したのに、それだけなの?
しかも、私の握手の手は?ねえ、これどうしたら良いのよ?
めっちゃ恥ずかしいんだけどぉ?
詩音は、そんな私の気持ちを察したのか
「坂口ってば、人見知りなのよね。悪い奴じゃないから、許してやって」
と、私の肩をポンと叩いた
いんや、もう決めた!アイツは敵じゃ!敵!!
もう仲良くなんてしてやらないっ!!
そして、始まったリレーの予行練習
うちの学校は、低学年(1年生から3年生)は男女混合形式のリレーだ
ワタクシ、アンカーに選ばれましたよ!
それと…あの憎き坂口も同じくアンカー
これを運命と言わず何と言おう!
こうなりゃ、コテンパンに負かせてやるっ!!
ピーッという笛の合図でリレーが始まった
練習はピストル音じゃないから、なんか迫力にかけるよねー
そんな事を思いながら、様子を見ていた
私達、紅組はなかなかの好スタート
これは、なかなか良いんじゃない
それに、私の前は運動神経抜群の詩音!
アンカーが詩音じゃないのが不思議なぐらい
よっしゃ!詩音いいね!頑張れ!頑張れー!!
ーーーーーー
そして、今日のリレー練習の結果は…
坂口に負けた…くー!悔しいっ!!
人前じゃなきゃ、地団駄踏んでたわ
本当悔しいなぁ。やっぱりこれはリーチの差かな?
なんとか背を伸ばさないと駄目か?
1人モヤモヤしていると
「魔王、超おしかったねー。あと一歩のところだったもんね」
と詩音が慰めてくれた
「すまぬ、我の力が及ばぬばかりに…」
「何言ってるのよ。充分頑張ったって。まだ本番まて日があるから、頑張ろ!」
良いやつだなー、詩音
感激しながら帰宅準備をしていたところ、校門の辺りから
「あきらー!」
どこか懐かしい声が響いた
目を向けると【帝徳松蔭学園】の制服を着た女の子が手を振っている
お嬢様学校として名高い学校の生徒だ
ほえー、どこぞのお嬢様だろ?
そう思い目を凝らしていると、その呼びかける声に坂口が近付いて行った
「なんだ、由佳。家で待ってろって言ったろ?」
坂口よ…全然、中二病語じゃないじゃんか
よくよく見てみると、あの女子、どこか見覚えが…
って、あれ?
あれって…もしかして……
……西園寺さん!?




