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小悪党シーパック

砂漠に横たわる巨体――サンドワームとクイーンサンドアントの死骸。

 その前で、ラクダ車の幌から転がり出てきた男が、情けない声を上げた。


「ひぃっ……! ま、参りました! どうか命だけは……!」


 砂に額を擦りつけるその姿に、ジラが鼻を鳴らす。

「てめぇ、隊商の主だな? 仲間置いて真っ先に逃げやがって」


「い、いやいや! 逃げたんじゃない、撤退の判断ってやつで……!」

 男は愛想笑いを張りつけながら、必死に両手を振った。


 カリムが槍を突き立て、冷ややかに言い放つ。

「我らが討伐した証を持ち帰る必要がある。……手伝え。そうすれば、罪の処分も考慮しよう」


「へ、へぇっ!? わ、分かりました! 運ぶのは得意でして!」


 男は慌てて胸を叩いた。

「荷運びと隠し積みなら任せてくだせぇ! ……いえ、もちろん真っ当な隊商仕事として、ですよ?」


 ジラがじろりと睨む。

「今“隠し”って言ったよな?」


「し、習慣で口が滑っただけで! 本業はこっちの方で!」

 必死に取り繕う姿に、ジラは呆れて肩をすくめた。


 ルーサーはそんなやり取りを無視し、死骸を見やりながら淡々と告げる。

「サンドワームも、クイーンサンドアントも……運べば証明になる。国庫にとっても、リュシエルにとっても有用だ」


「そ、それなら任せてくださいまし! 部位ごとに分けて積めば、目立たず安全に運べやす!」


カリムは目を細め、低く呟いた。

「……荷運びだけは確かに慣れているようだな」


 男は頭を下げながら、名乗った。

「し、シーパックと申します! 海を渡るような大商いを夢見てたんですが、今はちょっと、寄り道続きでしてね……」


 ジラは鼻で笑い、槍を肩に担いだ。

「夢見るには程遠い面だがな。まぁ使えるなら使うさ」

 その時、ジラがラクダ車を指で弾いた。

「おい、こっちは何だ?」


 幌をめくれば、中には禁制の魔道具がごろごろと積まれていた。黒光りする短剣、呪印の刻まれた仮面、正体不明の水晶。


「こっ、これは……装飾品! ただの飾りで!」

「呪符の模造品はどう説明する?」とルーサーが冷ややかに尋ねると、シーパックは脂汗を流しながら口を滑らせた。

「ほ、ほら子供のお守り的な……?」


 さらに荷を漁ると、違法に持ち込まれた魔物の幼生が瓶に詰められているのが出てきた。

「げぇっ……! こいつ、売買禁止の類だぞ!」ジラが顔をしかめる。


「ち、違う! 観賞用! 観賞用なんですってば!」

「誰が信じるか、そんな話」カリムは溜息を吐いた。


 そして最後に、シーパックは自慢げに木箱を差し出した。

「へへっ……でも、これ見てくだせぇ! 俺の宝物っすよ!」


 箱を開けると、中には山ほどのコモンステッカーとマジックステッカーが整然と並んでいた。

「ほら、この輝き! これだけあれば、ちょっとした工房より価値ありますぜ!」


 ルーサーが一枚を摘み上げて眉をひそめる。

「……偽造だな。魔力の流れが死んでいる」


「えっ……う、嘘……!? だって商人から“本物だ”って……!」

シーパックの顔はみるみる青ざめる。


 ジラは大笑いして肩を叩いた。

「アホだな、お前! 騙されてガラクタ抱えて、それを自慢げに持ち歩くとか!」


 カリムも苦笑しつつ言う。

「……懲りない奴だ。だが荷運び要員としては使える。罪を減じる代わりに働いてもらおう」


 シーパックは頭を下げながら、なおも箱を抱えていた。

「で、でもコレクションなんで……! 偽物でも……俺にとっては本物なんで!」


 三人は同時にため息を吐き、それぞれ視線を交わした。


こうしてシーパックは、討伐の「荷運び要員」として半ば強制的に一行へ加わることになった。

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