20 夜の闇
「はぁ...はぁ...」
夜。漆黒の下で少女は、抑えられない。
「ぐ、あぁあぁ...」
『自分』という、理性を。
「がぁっ!かはっ!」
満月の夜で、光がとても綺麗だ。
「だ、だめぇ!」
自分は否定の感情を出す。肯定の感情に、飲まれないように。
「う、ぐるぅ...」
ーー夜、少女は、立った。
「ぐ、がぁぁあ!」
その鋭き四本足で、立った。
「がぁぁあぁあぁぁあ!」
欲望を、曝け出し。
「起きろおおおおおお!」
「ぐー、ぐー」
夜である。あの『ウルフ』襲ってくる、夜である。だがしかし、駄菓子菓子、何故か赤髪の少女は、熟睡していた。
頭を振りまくっているのに起きないのだ。
「何で起きないんだよおおおおおお!」
「すぴー、すぴー」
どうしてこんなに気持ちいい顔で寝れるのだろうか。分からない。
だが、起こさなければいけない、こいつは作戦の要なのだ。
「むぅ...むにゃ...」
「起きたか!おい!」
「......すぴー」
またこいつ寝やがった!駄目だこいつ、早く何とかしないと。
「おいおい......どうするよ」
「どうするって...」
事の発端はこいつである。「寝ていい?」とか可愛く言われたら、首を縦に振らざるを得ないのが男だ。この時の俺は、アーリエがこんなに眠りが深いとは微塵にも思わなかったのだ。
「......皆様、来ました」
「マジかよ!」
戦力のこいつは起きない。だが、「ここで中止でーす、てへぺろ!」何て言った日には、「こいつ、期待ハズレだな」「救世主(笑)」「弱っ(笑)」「死ねばいいのに」なんて言われるに決まっている。
「こうなったら二人で行くぞ!ナバル!」
「お、おう...」
アーリエを起こすのを諦めた俺は、二人で行く事を決心し、窓の外を睨みつけた。
(確かに来てるな)
外は真っ暗で、目を凝らさないと殆ど見えないが、ある。
暗闇の中で二つ、黄色い点が浮かんでいるのだ。恐らく、ウルフの目が月の光で反射しているのだろう。
その二つの点は昼に見た畑の辺りにあり、どうやら襲っている様子。あそこには、ニンジン、ではなく、ニンヅソがあるらしい。訳が分からないよ。
「取り敢えず、外に出てみるか」
「バレないように、静かにな......」
村長宅の入り口のドアをそっと開け、外に出る。少し涼しい感覚から、夏の蒸れた様な温い気温になる。
そこから、ウルフがいる畑へ匍匐前進で近づく。
「な、ナバルが先に、どうぞ」
「......」
「は、ははは」
正直に言おう。めっちゃ怖い。
相手はよく分からないがウルフだ。聞いた話だと、ウルフに挑んだ若者が、怪我だらけで発見されたとか何とか。
というわけで、やっぱり怖い。「難易度最低だから簡単じゃね?」とか思ってた自分をぶん殴りたい。過去の自分をぶん殴り隊を結成したいくらいだ。
「まあ、任せとけ」
ナバルが頼もしそうにそう言った。惚れました。
いや、俺にはそっちの毛は微塵にも無いが、今だけそんな風に思えたのだ。
「......」
バレない様に、こそこそと、ゆっくり近付いていく。
意外にも匍匐前進はキツイ、腕が擦れて痛くなるし、体力を使う。さらに地面は土なので、服に泥が沢山付いているだろう。
「......」
暫く匍匐前進していると、ようやく相手の姿が見えて来た。黒い、黒い狼である。森の中を歩いて来たのにも関わらず、かなり毛並みがしっかりしている印象がとれた。
やはり、ニンジソを食べている。あれは美味しいのだろうか、見た目が人の顔をしていてグロテスーー
ガサッ
「......っ!」
音を立ててしまった。変な事を考えていたから罰が当たったのだろうか。
「ぐあああぁぁああ!」
その瞬間、黒いウルフは、雄叫びを上げるのだった。
このウルフは絶滅したニホンオオカミをモチーフにしています。




