全国クラス
四回戦をフルセットで勝利し次は準々決勝だ。他の皆はというと徹と花も勝ち残ってて、明は三回戦、源は二回戦で負けてしまった。次はいよいよあの赤沢さんだ。全国クラスの実力者。まだ徹の本気も引き出せない俺に敵う相手なのか?でも強い人と戦うのは楽しみだ。当たって砕けろだやってやる!
会場には三十台の卓球台が用意されているが、勝ち残ってる人数は男子8人、女子8人のため、ほとんどの台が空いていてなんか静かになってきた。この雰囲気の中で試合をするのもなんかいいな。
「やあ、徹と一緒に居た・・・山本くんだね。よろしく。」
赤沢さんが手を差し出してきたので、握手をする。
「負けないよ。」
「こっちだって負ける気はないですよ。」
全国クラスの赤沢さんに対して啖呵切っちゃった、ははっ。コートに移動して荷物を置く。さ~て、やっちゃいますか!
赤沢さんとの練習は徹とやってるときと同じくらい力強い打球が来る。それだけで相当強いってのが伝わってくる。練習が終わりラケット交換、シェークの裏裏だ。じゃんけんをして勝ったのは赤沢さん。選んだのはサーブ、俺はレシーブからだ。
「「先一本!」」
明と源だ。二人の前だ、下手な試合はしないぞ。
サーブは何が来るかな?試合観れてないから情報が無い。何にでも対応ができるように台と近すぎず、遠すぎずちょうどいい位置で構えた。赤沢のサーブ。モーション、インパクト的に回転は横下回転。短い、チキータだ。コン、パサッ。
「よーーよーよー!」
赤沢さんが声を上げる。なんだ今の!?くそキレてる!俺の未熟なチキータじゃ上手く擦らないと持ち上げられないぞ。
次も同じサーブが来る。ここはストップで取り敢えず入れる。ネット際に上手く返る。赤沢さんもストップをする。でもコースがネット際のフォアサイドを切るような厳しい所に来た。踏み込んで追い付き、またストップで返す。しかし甘い。赤沢さんはチキータでバックを突く。戻り7割くらいの安定する力でバック強打。それを回り込んでドライブ。バックサイドとまたコースが厳しい。ブロックでしのぐ。回転量が多いのか少し重たいけど、返せなくはない。また角度をつけてバックサイドにドライブが来る。くそバックに寄せられるな。フォアを突かれたら届かないかも。ブロックで返しつつフォアに戻る。赤沢さんはこっちがフォアに動いたのを見てかまたバックサイドにドライブを放つ。俺は反応が遅れて抜かれてしまった。
「よーーよーよー!」
いけねーな、相手が打つ前に動いちゃ逆を突かれる。切り替えよう。赤沢さんにはどのサーブがいいのかな?回転をかける技術が高いし、短いサーブは全部チキータされそうだな。長いのはもっての外だし、やっぱり短いサーブだな。チキータされるにしても横下回転とかだと持ち上げやすいから下回転にするか。コースは?フォアだとチキータで返すとき赤沢さんを大きくフォアに寄せられるな。よし、フォアだ。短い下回転サーブをフォアに出す。予想通り赤沢さんはフォアに動きチキータをしてきた。それをバックコーナーに強打。しかし赤沢さんは難なく返す。今度はフォアだ。それも追い付きドライブで返される。負けるか!俺もドライブで返し、引き合いになる。徐々に角度がついてフォアサイドを切る打球になる。厳しい。と思っていたらバックに返された。追い付けない。
「よーーよーよー!」
強いな、さすが全国クラス。ちょっと無理しないといけないかな。赤沢さんと球は合う感じがするしカウンター狙ってみるか。スピードのあるロングサーブを出して、ドライブで返された所をカウンター・・・。いや、そんな簡単にはいかないかな。う~ん、どうするかな。ラリーになったらこっちの分が悪いし。やっぱり速攻だ。バックにスピードのあるロングサーブを出した。赤沢さんはバックハンドドライブをストレートに打ってきた。今だ、カウンター!素早くフォアに動きドライブをクロスにカウンターする。赤沢も反応するがとらえきれない。
「「よーーよーよー!」」
よっしゃ一本!今のはハマったぞ。次はレシーブだ。赤沢さんのキレてるサーブをどうするか、やっぱりストップだな。コースを厳しくついて行けばなんとかなるかな。
赤沢さんのサーブはさっきと同じモーションだが、インパクトが少し弱い。これならチキータで行けるか?いや、遅れた分溜めができない、ストップだ。回転量が思ったより少なかったのかストップが浮いてしまう。バシン。台上で強く払われる。
「よーーよーよー!」
く~回転量を変えてくるのか、こっちも調整が必要だな。よし、集中!
次のサーブ、インパクトが強い、キレてるサーブだ。フォアサイドを切るストップで返す。しかし、上手くフリックされる。
「よーーよーよー!」
1-5、離されたな。ここからどうするか、さっきと同じパターンで得点できるとは限らないし、打たれるロングサーブは状況を見て出そう。う~ん、まとまらねー。あんまり長いこと考えてちゃ違反になっちまうし、取り敢えず短いサーブだ。フォアに下回転サーブを出す。さっきと同じようにチキータで返される。続けてフォアにドライブだ。そのまま引き合いになり、俺が先に打ち損じてしまった。
「よーーよーよー!」
ダメだ、引き合いになったら厳しい。引き合いになっても後ろに下がらず、前で打つようにした方がいいな。リスクは高いけど赤沢さんの球には合ってるんだ、今のところこれしかないかな。赤沢さんの回転をかける技術が高いから下回転も横下回転もあんまり関係ないかもしれないな。むしろ下回転だけより横下回転も混ぜて少しでも揺さぶった方がいいかもしれない。次のサーブ、横下回転をフォアへ短く出した。チキータでこっちのフォアに返ってくる。それをストレートにドライブすると赤沢さんはバックにブロックした。攻めろ、攻めるんだ。球の正面に動きバックハンドドライブをストレートへ。しかし、オーバーしてしまう。
「よーーよーよー!」
くそ。でも今の入ってたら赤沢さん反応できてないぞ。下がらず攻めたらいけそうな気がしてきた。さあレシーブだ。赤沢さんはさっきと同じでキレてる横下回転で来る。ストップ、ストップ、チキータ。よし、先手を取った。赤沢さんはバックハンドで強打をしてくる。そこからバック対バックの打ち合いに。6球続いた後、フォアへ動かす。赤沢さんはドライブをかけようとするがラケットの角に当たり、オーバーした。
「「よーーよーよー!」」
よっしゃ、二本目!2-7、まだ5点差あるな。正直厳しいな。よし、レシーブ集中!
赤沢さんの次のサーブは回転量を抑えた横下回転が来た。今度はチキータだ。フォアへ返すと待っていたという感じでスマッシュされた。
「よーーよーよー!」
確かにちょっと打球が高かったけどあんなにスパーンって打たれちまうと手がつけらんね~。低めに返さないとな。く~神経使うな。
サーブは短い横下回転をフォアに出す。今度は少し横回転を強めだ。ちょっと台をはみ出してしまったのでドライブをかけられる。下がるな、前で捉えるんだ。ブロックでバックコーナーを突く。バックハンドドライブでクロスに返されるが回り込んでカウンター。ラケットの角に当たりオーバーする。
「よーーよーよー!」
またミスしちまった。どうなんだ?攻めてるけどミスが多い。これじゃ追い付けない。やっぱりラリーに持っていってもいいから耐えて耐えてやった方がいいんかな?あー揺らぎすぎだ!取り敢えずこのゲームは前で攻めるんだ!
下回転をフォアに出す。チキータがクロスに来る。ストレートにドライブだ。ブロックがミドルに。続けてバックにドライブ。赤沢さんは少し下がってバックハンドドライブをかけた。カウンター!
「よーーよーよー!」
打球はまたオーバーしてしまった。いけん、いけん!2-10。なんとかしないと。
赤沢さんは次のサーブフォアにスピードのあるロングサーブを出して来た。バックに横下回転が来ると思い込んでいた俺はノータッチで抜かれてしまった。
「よーーよーよー!」
ラケットを台に置いて、ベンチに下がる。そしてスポーツドリンクを飲んで一息ついた。あーあーダメだダメだ。冷静に考えたら無理し過ぎなんだ。攻めるのはいいけど、行けるタイミングじゃないのにカウンターしちまってたし、焦り過ぎだ。下がらないようにするのはそのままで、カウンターじゃなくてブロックでコースを厳しく突くとか、カウンターは準備ができてるときに打つようにしないとな。2ゲーム目はヘマしないぞ!




