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お祭りからしばらくしたある時、バフォメット様と庭で訓練していると電灯の明かりに影がさし、背後に人の気配を感じた。背後をとられたことに慌ててしまい、振り向きざまに侵入者の首にかじりついた。
「いてててて! サッちゃん、俺だよ。かじらないでくれ」
「あら、ルシファ様だったの。背後から近付いたらびっくりするじゃない」
「怪しい奴だったらバフォメットが放っておくわけないだろ? 慌てんぼさんだな」
「ごめんなさい。痛かった?」
「そりゃ痛いさ。痛みを増幅させる夢魔の牙なんだから。それにしても、よく俺に噛みついたね。俺より素早い人なんてそうはいないのに」
首にオーラを当てて治療すると、ルシファ様は気持ちよさそうに目を細めた。
「そういえば、ルシファ様が飛んでいるところって初めてみるわ。翼も出さずにどうやって飛んでいるの?」
ルシファ様は腰に手を当て、胸を張った。
「俺様ほどのつえー男になると、オーラを直接使って浮き上がることだってできるんだぜ。惚れ直しただろ? まあ、サタンも同じだがな」
「ちょっとだけ似てるわ。バフォメット様も昔はそんなだったのかしらね。でも、惚れ直したっていうのは一度惚れた人に使う言葉よ?」
「手厳しいな~。ママ達と取り合いをしてくれたくせに……。やっぱり夢魔はガードがかたいな。俺のこと嫌いかい?」
「さあ、どうかしら?」
抱きついてきてわたしの唇を吸うルシファ様を拒むことはなかった。わたし達は時折キスの合間に話しをした。
「……ところで、お城を抜けだしても大丈夫なの? サタン様に怒られない?」
「……実はサタンと喧嘩して家出してきたんだ。……あいつがアーリマンを悪く言うからさ」
「アーリマン?」
「俺の有能な宰相なんだ。天界攻略を一緒に計画する同志なんだよ。でも、サタンは戦争に反対だからね。俺だってできれば戦争なんてするべきじゃないと思うけど、やっぱりカラッとした青空のエンジェルタウンでサッちゃんとデートしたいじゃないか。だから天界をいただこうと思ってさ」
ルシファ様とのキスをやめて押し戻した。
「陛下の政治に口出しなどしてはいけないんでしょうけど、わたしとデートしたいから戦争なんて二度と言わないでちょうだい。さもないと絶交よ?」
「サッちゃんまで反対するのか? 強い男は嫌いかい? アーリマンだって魔族繁栄のためを思って言っているんだよ? みんなあいつの深い考えをわかってないだけなんだ」
「そんなことを言うルシファ様なんて嫌いよ」
「じゃあ、戦争を仕掛けなかったら、俺のフィアンセになってくれるかい?」
「さあ、どうしましょう?」
「それは、オーケーの顔だよね? わかった、サタンに謝ってくる。じゃあまた電話するよ」
ルシファ様は素早くわたしに口付けると、目にも止まらぬスピードで飛び去った。
「……政治に口出しまでして。これでは若い王様を誑かす(たぶらかす)悪女だわ」
バフォメット様がニヤニヤしながら近付いてきた。
「ルシファ様をたらしこむとは、さすがはサキュバスサッちゃんだな」
「いやな言いかたをしないでよ」
「なにを話してたんだ?」
「戦争をするとかしないとか。アーリマンという宰相がルシファ様をそそのかしているみたいなの」
バフォメット様は急に真顔になった。
「ああ、奴か。あいつは貴族の間でもあまり評判が良くないな。だいたい、あの緑トカゲがいつのまに宰相の座に潜りこんだのか、よくわからねえんだ」




