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目を覚ますと、バフォメット様がベッドに伏して泣いていた。青白い顔の姉様の口からは血が流れていた。
「起きたか……。サッちゃんが……死んじまった。俺がもっと早く気付いてやれば……」
「わたしが悪いのよ……。眠ってしまうなんて……」
「サッちゃんがどれだけ夢魔をやってきたと思ってんだ。嬢ちゃんがいくら頑張っても眠らされてたさ」
「……姉様。……どうしてこんなことをしたのよ! わたしだけ強い女になれなんて、ずるいじゃない! 起きてよ! もっとわたしにいろんなことを……教えてよ……」」
――テーブルの上に婚約者さんとバフォメット様、そしてわたし宛の手紙があった。わたし宛の手紙には、こう書かれていた。
最後に君みたいな妹ができて本当によかった。あたしもずっと家族がほしかったんだ。今思えば、バフォメットも兄貴みたいなものだったけどね。純粋な乙女に出会えてあたしの心もいくらか洗われた気がしたよ。
君はこんな目にあわないように、バフォメットから戦闘技術も習うんだ。強い女になってほしい。あたしがなりきれなかった強い女に。
夢魔術を後の世代に伝えようなんて考えなくていい。最愛の人に出会えたら、いつでも捨ててしまいなさい。でも、その時まで、あたしの最高の教え子の君には夢魔術を大切にしてもらいたい。
言ったとおり夢魔の称号サキュバスは君にあげる。是非もらってほしい。この家にあるものも、ほしいものはすべて持っていって。君はあたしの大事な妹だから。馬鹿な姉様からのせめてもの形見だ。
鏡台の引き出しに書類を用意してあるから、城に提出すれば正式に君がサキュバスということになる。
あたしのためになど、泣かないでね。
さようなら。
姉様より可愛い妹へ
――バフォメット様が婚約者さんを呼び出し、すすり泣く声と入れ違いにわたし達は帰宅した。




