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第156章 ナイルの慟哭と奇蹟の処方箋

第156章 ナイルの慟哭と奇蹟の処方箋


春。

新形県南部に広がる越後盆地。南大沼の山々に抱かれた、六日町。


時価総額130兆円を突破し、国連における三重新法規の制定、専属オーケストラ『六日町・フィルハーモニック』の創設、完全全固体バッテリーの実用化、そしてトラック不足を打ち破る軌陸トランスライナーと寝台カートレインによるJR貨物の黒字化に至るまで、人類の社会基盤を足元から支え続ける「南越急行ホールディングス」。


その巨大なコンツェルンの最高経営責任者(CEO)室に、アフリカ大陸の北東部——紅海とナイル川を抱く大国「スーダン共和国」の暫定経済再建委員会および国連人道支援機構(OCHA)から、極秘の緊急特使が到着していた。


応接室の重厚なソファーに座っていたのは、スーダン暫定政府の財務大臣兼経済復興担当特使と、国連スーダン担当特使の二人であった。


彼らの顔には、極度の疲労と絶望が濃く刻まれていた。


「篠原CEO、大石専務、古賀副社長……! 恥を忍んで、地球上で唯一、この地獄を救える力を持つお三方に泣きつきにまいりました」


特使は震える手で、スーダンの現状を示す分厚い経済白書を差し出した。


篠原賢人CEOは、温かいジャスミン茶(南越ビバレッジ特選一級品)を特使たちに勧めながら、静かにその書類を開いた。


そこに記されていたのは、文字通りの「国家崩壊の現実」であった。


数年にわたる激しい軍事衝突と内戦により、首都ハルツームをはじめとする主要都市のインフラは徹底的に破壊されていた。農業の心臓部であったゲジラ州の灌漑農地は放棄されて作付け不能となり、国内の食糧生産は壊滅。さらに、紅海沿岸の主要港ポートスーダンから内陸部を結ぶ鉄道や道路網が武装勢力によって寸断されたことで、海外からの救援物資や燃料が一切内陸へ届かない状態に陥っていたのである。


大石専務が、手元のタブレットから冷徹にマクロ経済データを読み上げた。


「……現在のスーダンの年率インフレ率、約70%〜80%。主食であるパンや小麦の価格は過去一年で四倍に跳ね上がり、ガソリンや軽油などの燃料価格は五倍。現地通貨スーダン・ポンドは紙屑同然に暴落し、中央銀行の外貨準備高は完全な底を突いております」


大石は静かにメガネのブリッジを押し上げた。


「典型的な『物資枯渇・供給網断絶型コストプッシュの超狂乱インフレ』です。物がなく、運ぶ手段がなく、農地が死んでいるため、いくら紙幣を刷っても物価が垂直上昇する悪循環に陥っています。このまま放置すれば、国民の半数以上にあたる二千五百万人以上が壊滅的な飢餓に直面します」


古賀副社長が、ガタッと椅子を叩いて立ち上がった。


「パン一つ買うのに札束の山が必要で、農地が砂漠になって、物が運べねえだと!? 冗談じゃねえぞ! 生きてるだけで地獄じゃねえか!」


古賀の目は、怒りと義憤に燃え上がっていた。


「篠原! 俺たちがアラル海を蘇らせて、ベネズエラのインフレを止めた時の技術と金があるだろ! すぐにナイル川へ飛んで、あいつらの胃袋と財布を救ってやろうじゃないか!」


篠原賢人CEOは静かに立ち上がり、窓の外の青空を見つめた。


「特使。我が南越急行グループは、かつて国連で『グローバル・ベーシック・インフラ享受権条約』を提案し、採択させました。人が飢え、インフラが断絶して苦しんでいるのを見過ごすことは、我々のポリシーが許しません」


篠原の瞳に、澄み切った覚悟の光が宿る。


「スーダンのインフレを根底から沈静化させ、国民に平和と温かいご飯を取り戻す……。この依頼、我が南越急行グループが総力を挙げて引き受けます」


特使たちが退出した後、CEO室において、篠原、古賀、大石の三名による緊急作戦会議が開かれた。


ホワイトボードに浮かび上がったのは、スーダンの巨大な国土と、ナイル川、紅海を結ぶ地図であった。


古賀副社長が腕を組みながら尋ねた。

「大石、インフレ率80%なんていうイカれた物価を止めるには、一体どこから手を付けりゃいいんだ? 単に金をばら撒いても、物がないんじゃ意味がねえんだろ?」


大石専務は、温かいジャスミン茶を一口含み、ポーカーフェイスのままタブレットをタップした。


「その通りです。教科書通りの金融引き締めや利上げを行っても、物が物理的に存在しないスーダンではインフレは止まりません。我々が実行すべきは、『現物供給の物理的爆撃』と『通貨信認の強制再構築』を同時に叩き込む三段構えのオペレーションです」


大石が提示したスキームは、まさに「実体経済の神髄」を突いた完璧な青写真であった。


【第一段階:『現物供給の物理爆撃による価格崩壊(コストプッシュ粉砕)』】

物価高騰の元凶である「燃料」「食糧」「医薬品」を、南越急行グループの圧倒的物量で市場へ一気に流し込む。

南越化学の合成石油をポートスーダンへタンカーで直送し、ガソリン価格を従来の「五分の一」へ強制引き下げ。同時に、南越アグリの奇蹟の新米『新形黄金』や武沢製薬の基礎医薬品を大量投入し、闇市場の物資価格を物理的に暴落させる。


【第二段階:『紅海〜ナイル鉄路動脈サハラ・トランスライナーの超速復旧』】

寸断されたポートスーダン〜ハルツーム〜ゲジラ間の鉄道網(約800キロメートル)を、南越建設の全自動AIシールドマシンと軌陸トラック『ラビット・トランスライナー』(第155章)で一挙に再建。

港から内陸への輸送コストを90%削減し、物資が国中へ翌日届く物流バイパスを確立する。


【第三段階:『南越アグリ・ナイル農業再生&新通貨アンカー制度』】

死に絶えたゲジラ州の灌漑農地を、サロナエアコンの海水淡水化・地底滴下パイプラインと本産自動車の無人AIトラクターで復活させ、食糧自給率を100%超へ引き上げる。

さらに、暴落したスーダン・ポンドを救うため、南越フィナンシャル・グループ(NFG)が保有する金・宇宙レアメタル、および南越アグリの穀物を裏付けとする『新通貨スーダン・ナイル(SN)』を発行。通貨の増刷を完全停止させ、インフレを「一桁台(3%)」へ完全鎮火させる。


古賀副社長が豪快に机を叩いた。


「ガハハハ! 物をドカンと運び込んで値段を下げ、線路を直して、田んぼを耕して、新しい金を作るってわけか! これ以上ねえ、理屈抜きのド直球勝負だな!」


篠原賢人CEOも力強く頷いた。


「よし。プロジェクト・『ナイル・リバース・ラビット』、直ちに始動しよう!」


作戦発動からわずか四十八時間後。


紅海に面したスーダン最大の港・ポートスーダンに、南越通商の超巨大コンテナ船団と、南越海運の大型合成燃料タンカーが次々と接岸した。


船倉から陸揚げされたのは、南越化学が製造した純度100%の「合成軽油・ガソリン」五十万トン、南越アグリが備蓄していた新米『新形黄金』および小麦粉百万トン、そして武沢製薬の緊急医療パック五百万セットであった。


「南越化学のガソリンを、公定価格(従来の1/5)で全ガソリンスタンドへ一斉供給開始!」

「南越アグリの穀物を、国連配給所を通じて全国民へ無償配布スタート!」


港に山積みされた物資の山を見た現地の商人や市民たちから、割れんばかりの歓声が上がった。

物資の買い占めを行っていた悪徳ブローカーや闇両替商たちは、南越急行の圧倒的な物量爆撃の前に一瞬で青ざめ、隠し持っていた燃料や小麦を投げ売りせざるを得なくなったのである。


しかし、港に物資があるだけでは内陸の飢えは救えない。


そこで動き出したのが、南越建設の井上社長、そして作業着を着て現地へ乗り込んだ古賀副社長率いる「鉄路再建部隊」であった。


ポートスーダンから首都ハルツームへと続く、灼熱の砂漠地帯八百キロメートル。


内戦で爆破され、レールが引きちぎられていた過酷な荒野へ、南越建設の全自動AIレール敷設重機『サハラ・ラビット・レール型』二十機と、本産自動車の軌陸大型トラック『ラビット・トランスライナー』五百台が一斉に投入された。


「全自動溶接アーム、起動! 日速五十キロメートルでレールを繋ぎ直せ!!」


古賀副社長が、照りつける五十度の猛暑の中、ヘルメットを被ってメガホンで怒鳴り声を上げた。


レール敷設重機が、地盤をナノコンクリートで固めながら、狂いのないスピードで耐熱ナノチタンレールを敷き詰めていく。

破壊されていた橋梁やトンネルも、南越建設の3Dナノプリンター重機によってわずか数時間で復旧。


さらに、警備を担当したのは、第153章で設立された『南越ガーディアン・セキュリティ(NGS)』であった。

武装勢力や盗賊団が鉄道を襲撃しようと近づいた瞬間、上空を哨戒していたAI警備ドローン『ガーディアン・アイ』が先回り検知し、非殺傷ネットランチャー『サイレント・テイザー』で全員を一瞬で完全無力化・武装解除。工事現場への被害は完全ゼロを達成した。


着工からわずか「十四日」。


ポートスーダンと首都ハルツームを結ぶ大動脈『ナイル・サハラ・トランスライン(全長800km)』が、完璧な姿で息を吹き返したのである!


鉄道の開通とともに、ハルツームの南に広がるかつての大穀倉地帯「ゲジラ州」において、南越アグリと武沢製薬による「農業再生オペレーション」が開始された。


内戦によって干上がり、ひび割れていた二百万ヘクタールの農地に対し、サロナエアコンが開発した「ナイル川超高効率マイクロ灌漑パイプライン」が張り巡らされた。


武沢製薬の有機土壌活性バクテリアが砂漠化した大地をわずか三日で肥沃な黒土へと変貌させ、本産自動車の全自動AI無人トラクター群が縦横無尽に大地を耕起。


そこに植え付けられたのは、以前開発を行った、40度超の酷暑や干ばつにビクともしない奇蹟の新新品種——『新形黄金しんけいこがね』と、耐乾性超多収小麦であった。


サロナの気候制御ドームによる育苗と超速バイオ栽培により、通常なら半年かかる穀物が、わずか四十日で黄金色の豊かな穂をたわわに実らせたのである!


「実った……! 砂漠になっちまった俺たちの田んぼに、見渡す限りの黄金の稲穂が実ったぞ!!」


故郷を追われていた現地の農民たちが、涙を流しながら田んぼに駆け込み、黄金の稲穂を抱きしめて号泣した。


収穫された数百億トンもの米と小麦は、そのまま『ラビット・トランスライナー』に積み込まれ、鉄道を通じて全国の市場へと怒濤のごとく運ばれていった。


食糧自給率は一気に「150%」を突破。

市場から食糧不足の恐怖が完全に消滅したのである。


そして、総仕上げとなったのが、大石専務による「金融・通貨改革」であった。


ハルツームの中央銀行ビルにおいて、大石専務は暫定政府高官たちを前に、冷徹かつ完璧な新通貨プログラムを発表した。


「本日をもって、価値を失った旧スーダン・ポンドを廃止し、新通貨『スーダン・ナイル(SN)』を発行いたします」


大石が提示した新通貨の裏付けは、世界中を驚嘆させた。


裏付け資産一:南越フィナンシャル・グループが保証する、純金五百トンおよび宇宙ゴミ再生プラチナ(第140章)


裏付け資産二:南越アグリがゲジラ州で生産・備蓄する穀物三百万トン


裏付け資産三:南越化学が供給する合成燃料備蓄


「新通貨ナイルは、ただの紙切れではありません。いつでも金、米、燃料と等価交換できる『絶対の現物裏付け』を持った通貨です。同時に、中央銀行による無秩序な通貨増刷を法律で永久に禁止いたします」


この発表が行われた瞬間、世界中の為替市場でスーダン通貨への信頼が劇的に回復。

闇市場でのドル買いはピタリと止まり、国民はこぞって新通貨『ナイル』を求めて銀行へ列を作ったのである!


結果——。


プロジェクト開始からわずか三ヶ月。


年率80%に達していたスーダンのインフレ率は、驚異の「3.2%」へと急降下・完全沈静化!

街のパン屋には焼きたてのパンが並び、ガソリンスタンドには適正価格の燃料が溢れ、子供たちの笑顔がハルツームの街中に戻ってきたのである!


第五節 新形テレビ20の中継と、ナイル川の至高の宴

新形テレビ20のベテラン記者・高橋とカメラマン・井上も、復興を遂げたハルツームの中心街から全世界へ向けて生中継を行っていた。

井上の担ぐ最新鋭8Kカメラの側面には、あのガムテープの切れ端が、アフリカの眩しい太陽の下で誇らしく輝いていた。


「こちら新形テレビ20です!」

高橋記者が感涙に声を詰まらせながらマイクを握る。

「内戦と80%のインフレによって崩壊寸前だったスーダンが、南越急行グループの圧倒的な技術と情熱により、奇蹟の復活を遂げました! ごらんください、市場には南越アグリの米や新鮮な野菜が山のように並び、物価は完全に安定いたしました! いま、スーダンの人々が日本の雪国・大沼へ向かって、心からの感謝を叫んでいます!」


中継画面には、新通貨ナイルを手に買い物を楽しむ家族連れの笑顔と、ナイル川沿いを汽笛を鳴らして駆け抜ける『ラビット・トランスライナー』の力強い姿が映し出された。


国連事務総長、アフリカ連合(AU)議長、そして世界銀行総裁から篠原賢人CEOへ、最高峰の『国際人道復興栄誉賞』が満場一致で授与されたのである。


その夜。


ハルツームのナイル川河畔に特別設営された、南越急行のゲストハウス。

青ナイルと白ナイルが合流する雄大な川面を見下ろすテラスにおいて、暫定政府の大臣たち、国連特使、そして篠原、古賀、大石が集まり、至高の祝宴が開かれていた。


付け場に立っていたのは、この日のために六日町から駆けつけた『佐渡武蔵』の武藤大将と吉村大将であった。


「大石専務、篠原CEO、古賀副社長……本当に、とんでもない人助けをしちまったな」


武藤大将が、美しい包丁さばきで魚を切り出しながら言った。


「飢えてた国に飯を食わせて、お金の信用を取り戻してやったんだ。今夜は、ナイルの豊かな水と、大沼の米が合体した、世界で一番美味い寿司を握るぜ」


吉村大将が握り、つけ台に置いたのは、ナイル川の清流で特別養殖された極上の淡水魚『ナイル・パーチ(極上白身)』をサロナのナノ昆布締めで熟成させ、ゲジラ州で獲れたばかりの『新形黄金』の温かい酢飯に乗せた特製握りであった。


大石専務は静かにメガネのブリッジを押し上げ、指先でその一貫を持ち上げた。


「……いただきます」


大石はその一貫を口の中へ運んだ。


その瞬間——大石専務の口内で、雄大なナイル川の生命力と、大沼の稲作技術が織りなす「感動の味覚ビッグバン」が巻き起こった!


(ん……ッ!!!? な、なんという清らかな弾力と、豊かな大地の甘み……!!)


口に含んだ瞬間、淡白でありながら奥深い旨みを持つ白身が、新形黄金のふくよかな甘みと完璧に融合。昆布のミネラルが魚の滋味を極限まで引き立て、喉の奥へと心地よい余韻を残して消えていった。


大石専務は思わず両手をテーブルにつき、静かに目を閉じた。


ポーカーフェイスで知られるあの「財務の鬼」の頬を、またしても一すじの熱い感動の涙が伝ってこぼれ落ちた。


「……素晴らしい。お金の価値とは、紙の印刷量ではなく、人々の誠実な労働と、こうして生み出される命の恵みそのものなのだと……改めて確信いたしました……!」


隣で同じ一貫を口に放り込んだ古賀副社長も、目を丸くして机を叩いた。

「う、うめぇぇぇ!! 大石、最高だ! 飢えてた人たちが腹いっぱい食えるようになって、自分たちもこんな美味い寿司が食える……! これ以上の経営がどこにあるってんだ!」


篠原賢人CEOも穏やかに微笑み、温かいジャスミン茶のグラスを掲げた。

「大石、古賀。我々が届けてきたのは、ただの物資やお金ではない。人が人を信じて生きるための『尊厳のレール』だよ」


大石専務が手元のタブレットを滑らかに操作し、ポーカーフェイスのまま数字を提示した。


「……篠原CEO、古賀副社長。今回の『スーダン経済再建・インフレ鎮静オペレーション』」


大石の口元に、極めて晴れやかで温かい財務の笑みが浮かぶ。


「サハラ鉄道の運行権コンセッション益、ゲジラ農業メガファームからの農産物輸出益、南越化学の合成燃料長期供給契約、ならびに新通貨ナイル決済システムの運用手数料を含め、向こう五年間で我がグループにもたらされる当期純利益は『三兆五千億円』を記録する見込みです。投下資金三千億円は、わずか一年で完全回収完了です」


「ガハハハ!」古賀副社長が豪快に大石の背中を叩いた。「見たか篠原! 一国のインフレをぶっ潰して、何千万人もの命を救って、美味い寿司を食って、なおかつ3兆5000億円の儲けだ! 大石の財務と俺たちの現場力に不可能はねえぞ!」


「はい。今回は人道危機の完全救済、国家経済の再生、そして不滅のストック利益を完璧に両立させた、歴史上最高峰のオペレーションです」


深夜。


祝宴を終えた篠原賢人、古賀副社長、大石専務の三人は、ナイル川を見下ろすテラスに佇んでいた。


砂漠を渡る夜風が、川面の清らかな香りを運んでくる。


対岸のハルツームの街を見渡すと、かつて暗闇に沈んでいた街並みには温かい電灯の明かりが灯り、遠くのサハラ鉄道からは、食糧を満載した貨物列車が力強い長笛を響かせながら、夜の砂漠を切り裂いて走り抜けていくのが見えた。


空を見上げると、アフリカの果てしない夜空に、満天の星々と天の川が美しく輝いていた。


古賀副社長が、感無量といった面持ちで夜空を見上げた。


「なあ篠原。越後の小さな田舎町から始まった俺たちのレールが、ついにアフリカの砂漠を越えて、こんな遠くの人たちの命まで繋いだんだな……」


大石専務も静かに頷いた。

「はい。経済とは、数字の奪い合いではありません。互いを助け合い、価値を創造し、誰もが豊かに生きるための『生命の循環』です」


篠原賢人は温かいジャスミン茶を一口含み、二人の肩に優しく手を置いた。


「大石、古賀。我々が敷いてきたレールは、国境も、人種も、砂漠も越えていく」

篠原の静かな言葉に、二人が深く耳を傾ける。


「苦しんでいる人がいる限り、我々はどこへでも駆けつけ、希望のレールを敷き続ける。どんなに過酷な試練が立ちはだかろうと、我々が現場への愛と誠実さを失わない限り、南越急行グループの走らせるレールは、世界中へ、そして宇宙の彼方へと、どこまでも、どこまでも光り輝きながら伸び続けていく」


渡辺前社長が遺した不滅の言葉——「会社は人より長く生き続けるべきもの。稼いだ金は未来を信じる魂だ」。


ナイルの夜空に、新しい時代の夜明けを告げる貨物列車の汽笛が、どこまでも力強く、温かく響き渡っていった。

全人類の命と暮らし、そして不滅の平和を足元から完璧に支えながら、南越急行ホールディングスの走らせる無限のレールは、地上を、地底を、海を、空を、そして宇宙の彼方へと、どこまでも、どこまでも力強く伸ばされ続けていくのだった。

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