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第142章 希望の埋立地と未来の人工島

第142章 希望の埋立地と未来の人工島


春。新形県南部に広がる越後盆地。南大沼の山々に抱かれた「、六日町。


時価総額130兆円を突破し、月面リニア、軌道造船都市『グランド・ラビット・メガロ・ドック』の運用、火星移民船『アルカディア号』の航行、気候変動に打ち勝つ新新新新品種『新形黄金』による農業革命、そして宇宙ゴミ(スペースデブリ)を100%リサイクルする全自動ギガファクトリーの稼働に至るまで、世界の産業と未来を文字通り牽引し続ける超巨大コンツェルン「南越急行ホールディングス」。


南越急行グループの爆発的な成長と、それに伴う世界中からの企業本社機能の移転、高層スマートマンション群の建設、そして『南越重工業大学校』や『浦佐交通博物館』といった巨大施設の誕生により、新形県全域の人口は過去数年間で文字通り「急増」をたどっていた。


世界中から優秀な技術者、投資家、若い労働者、そしてその家族が雪崩を打って移住してきたことで、県内の経済は空前の繁栄を謳歌していた。


しかし——急激すぎる人口増加と都市の巨大化は、ついに自治体の許容量キャパシティを超えた「ある深刻な悲鳴」をあげさせ始めていた。


行政による「生活ゴミ・産業廃棄物の回収限界」である。


新形市、南大沼市をはじめとする県内各市町村の従来の清掃工場や焼却炉は、連日連夜フル稼働を続けていたものの、日々持ち込まれる膨大なゴミの山に追いつかず、回収ルートの遅延やゴミステーションの溢れ出しが散見されるようになっていた。


さらに、焼却後に排出される残渣(スラグ・灰)や不可燃ゴミの埋め立て処分場も、あとわずかで満容量に達するという絶望的な窮地に追い込まれていたのである。


この危機に対し、県内全自治体を代表して、新形県知事および主要市長らが束になって六日町の本社へと駆け込んできた。


「篠原CEO……! 恥を忍んでお願いに上がりました!」


知事は顔を蒼白にし、切実な手擦りで懇願した。


「現在の新形県のゴミ排出量は行政の処理能力を完全にオーバーしております! このままでは数ヶ月で街中にゴミが溢れ返り、衛生環境が壊滅してしまいます! どうか……行政のゴミ回収ルートの全面サポート、最新鋭の環境配慮型清掃工場の建設、そして焼却後の灰や不可燃ゴミの最終埋め立て処理のサポートを引き受けていただけないでしょうか!」


本社タワー最上階の最高経営責任者(CEO)室。


篠原賢人CEOは、温かいジャスミン茶(南越ビバレッジ特選一級品)を一口含み、ホログラムモニターに映し出された県内のゴミ排出量データと埋め立て地の限界数値を静かに見つめた。


向かい側には、ポーカーフェイスの最高財務責任者(CFO)大石専務。そして、腕を組んで不敵な笑みを浮かべる南越重工業社長の古賀副社長が座っていた。


「知事、ご安心ください」篠原が穏やかに、しかし力強く応じた。「街の衛生と人々の快適な暮らしを守ることも、我々南越急行グループの当然の責務です。この要請、全面的なサポートとして受領いたします」


篠原の受諾の言葉に、知事や市長たちは崩れ落ちるように感謝の涙を流した。


知事たちが退出した直後、副社長室に戻る間すら惜しむように、古賀副社長がガタッと椅子を蹴って立ち上がった。


「篠原! 大石! 今の県からの依頼……埋め立て処理のサポートの件だがな、俺に任せてくれねえか!」


古賀の目は、まるで少年のようにギラギラと輝いていた。


篠原賢人は微笑み、お茶を差し出した。「古賀、何か素晴らしいアイデアがあるんだね?」


「ああ! 大アリだ!」古賀はドカンとデスクを叩き、日本海のホログラム海図を呼び出した。


画面に映し出されたのは、新形臨海地区の沖合に浮かぶ巨大な海上都市で完工させた『新新形宇宙港』『新新形国際空港』、そして南越重工業・南越車輌の航空宇宙ギガファクトリーが集中する、あの巨大人工島であった。


「篠原、見ろよ! おかげさまでうちの宇宙港と国際空港は、連日世界中からの超音速機『B7237』や宇宙貨物機『ラビット・カーゴ』の離発着でパンク寸前だ! おまけに隣の工場じゃ、飛行艇『B959』シリーズや、デブリ再生ロケットの製造ラインがギッチギチで、敷地が手狭になって困ってたんだよ!」


古賀は画面の人工島の外縁部を大きく丸で囲んだ。


「県内から出る膨大なゴミを、サロナと武沢製薬の技術で『100%完全無害・高強度ナノセラミック建築ブロック』へと変えちまうんだ! そして、その超高強度ブロックを使って、この人工島を沖合に向かって今の二倍の広さにドカンと埋め立て拡張する! ゴミ処理問題を一瞬で解決しながら、世界一の『新・臨海宇宙航空メガロポリス』を創り出そうじゃないか!」


ポーカーフェイスの大石専務が、静かにメガネのブリッジを押し上げた。


「……なるほど。行政からのゴミ処理委託費および埋め立て処分引き取り手数料を獲得しつつ、通常なら数兆円規模の巨額な土砂購入・埋め立てコストがかかる人工島拡張事業を、実質『タダ同然の原料費ゼロ・コスト』で完工させるわけですね」


大石のポーカーフェイスの口元に、冷徹かつ完璧な財務の笑みが浮かぶ。


「県内のゴミ問題は完全解消し、行政からは絶大な感謝と税制優遇を獲得。拡張された人工島には南越重工の追加ギガファクトリーと、南越不動産のタワーホテル、南越エアラインズの第二滑走路を建設し、莫大なストック利益を確定させます。……計算するまでもない、完璧な『環境&インフラ一石二鳥オペレーション』です」


篠原賢人は温かいジャスミン茶を口に含み、相棒たちの顔を見つめて深く頷いた。


「素晴らしいね、古賀、大石。県民の困りごとを解決し、それがそのまま未来の宇宙と航空の道へと繋がっていく。……プロジェクト・『メガロ・アイランド・ラビット』、直ちに始動しよう!」


プロジェクト発足の翌日、南越急行グループの全生態系が、新形県の「ゴミ問題解決」に向けて怒濤のごとく雪崩れ込んだ。


【第一の矢:本産自動車&南越車輌『全自動AIゴミ回収フリート』】

県内全市町村のゴミ収集ルートに、本産自動車が開発した完全自動運転・密閉パッカー車『キャブオール・クリーン』五千台を投入。

車体に搭載された量子AIと超音速真空吸引アームにより、早朝から深夜まで騒音ゼロ・排気ガスゼロで県内の家庭ゴミや事業所ゴミをミリ単位の効率ルートで回収。ゴミステーションの溢れ出しはわずか三日で完全に姿を消した。


【第二の矢:南越建設&サロナエアコン『超環境配慮型・無煙無臭清掃工場』】

県内3箇所(新形、上越、南大沼)に、南越建設の全自動AI施工により、世界最先端の清掃工場『南越クリーン・ギガプラント』を突貫で建設。

工場内部にはサロナエアコンの多層ナノ触媒フィルターと、武沢製薬のダイオキシン・悪臭完全分解バイオ触媒が導入され、焼却炉から出る煙や匂い、有害物質は「100%完全無害化・無臭化ゼロ・エミッション」を達成。近隣住民からの苦情すら一切出ない夢の清掃工場が完成した。


【第三の矢:南越重工業『高温プラズマ・スラグ・ナノブロック化ライン』】

清掃工場で焼却されたゴミの灰や、回収された不可燃ゴミ、金属くずは、一万度の超高温プラズマ溶融炉によって一瞬で液状ガラス質スラグへと変換。

そこに武沢製薬のナノ高分子固化剤を混入し、南越重工業の全自動プレス機で圧縮することで、海水や塩分に永久に侵食されない超高耐圧構造ブロック『ラビット・マリン・ロック』が秒単位で量産された。


「すごい……! あの嫌なゴミの匂いが一切しない! おまけに焼却灰が、ダイヤモンドみたいに頑丈で綺麗な埋め立てブロックに変わっている!」


清掃工場を視察した県内の自治体職員たちが、工場から次々と運び出される『ラビット・マリン・ロック』の山を見上げて歓喜の声を上げた。


集められた膨大な『ラビット・マリン・ロック』は、南越急行のAI貨物電車および本産自動車の大型自動トラック隊によって、即座に新潟臨海地区の港へとピストン輸送されていったのである。


新形臨海地区の沖合三キロメートル。


日本海の深い青に包まれた『新新形宇宙港・国際空港人工島』の周辺海域において、人類の土木史上最大規模の「海洋埋め立てオペレーション」が開始された。


埋め立て工事の陣頭指揮を執ったのは、南越建設の井上社長、そして作業着を着て現場の指揮船『シー・ラビット号』に乗り込んだ古賀副社長であった。


「全自動海洋シールドマシン『サハラ・ラビット・マリン型』10機、潜航開始! 海底地盤の補強と外郭防波堤の沈設スタート!」


海底深くへ潜航した無人AI重機群が、日本海の強い海流や高波を100%シャットアウトする「ナノセラミック防爆・耐震二重護岸」を海底にドッキング。


その護岸の内側へ向けて、南越海運の全自動自航式ガット船群が、県内から運ばれてきた数百万トンの『ラビット・マリン・ロック』を寸分狂わず投入していった。


さらに、サロナエアコンの超高圧海水脱塩・地盤急速固化プラントが投入され、投入されたブロックの隙間にナノ液体コンクリートを充填。海水を含んだ泥をわずか数時間でガチガチの岩盤へと化学硬化させていったのである。


「埋め立て層、日速五十メートルで推進中!」

「第1工区(宇宙港追加滑走路エリア)、完全陸地化完了!」


地上ではゴミ問題が解消され、そのゴミから生まれた『ラビット・マリン・ロック』が、日本海の沖合に新しい「国土」を1日ごとに広げていく。


着工からわずか九十日。


かつて周囲二キロメートルだった人工島は、沖合に向かって完璧に拡張され、「元の二倍(約一千ヘクタール)」におよぶ超巨大海洋メガロポリスへと足場を広げたのである!


「できた……! できたぞ!! 敷地が二倍になった!! これで新しい宇宙ロケットも、巨大飛行艇も、いくらでも作れるぞ!!」


完成した新しい陸地の上に立ち、海風を受けながら古賀副社長が豪快に叫んだ。


埋め立てが完工した新しい人工島の上には、すぐさま南越建設の全自動AI施工部隊によって、世界最新鋭のインフラ群が立ち並んでいった。


一、超音速機&巨大飛行艇専用『第二滑走路(長さ4,000メートル)』

南越エアラインズの超音速機『B7237』や、大型水陸両用飛行艇『B979』が24時間体制で同時に無段階着陸できる、全天候型ナノ舗装滑走路。


二、南越重工業・第5ギガファクトリー『宇宙船・飛行艇統合工場』

第140章で実用化した宇宙ゴミ(デブリ)再生チタンを100%使用し、新しい宇宙ロケットや大型宇宙ステーションモジュール、飛行艇を一括組み立て・出荷できる世界最大の全自動工場。


三、南越不動産&サロナ『リゾート&コンベンション・シーポート』

人工島の南側に、世界中の宇宙関係者や観光客が滞在できる超高層タワーホテル『グランド・ラビット・シーサイド』や、サロナの気候制御による春のような人工ビーチ、免税ショッピングモール『アンダー・シー』が開業。


夏。新しく完成した第二滑走路において、人工島拡張と県ゴミ処理完了を祝う歴史的な式典が執り行われた。


第一番機として、南越エアラインズの改造された超大型飛行艇『B979』が、車輪を出し、新しい第二滑走路へと軽やかに滑り込んできた。


式典の壇上には、篠原賢人CEO、古賀副社長、大石専務、そして感涙を流す新潟県知事と各市長たちが並んでいた。


新形テレビ20のベテラン記者・高橋とカメラマン・井上も、式典の最前線から全世界へ向けて生中継を行っていた。井上の担ぐ最新鋭8Kカメラの側面には、あの破産寸前のローカル局時代から変わらない「古びたガムテープ」の切れ端が、誇り高く貼られている。


「こちら新形テレビ20です!」

高橋記者が感涙に声を震わせながらマイクを握る。

「人口急増により限界を迎えていた新形県のゴミ問題が、南越急行グループの圧巻のテクノロジーにより完全解消されました! そして、そのゴミから生まれた無害な超高強度ブロックにより、この『新新形宇宙港人工島』が二倍の大きさに拡張され、いま、新しい未来の滑走路が開港いたしました!」


新潟県知事が、マイクへ向かって涙ながらに叫んだ。


「篠原CEO、古賀副社長……! 我々のゴミ問題を救っていただいたばかりか、我が県に世界一の宇宙・航空メガロポリスを贈ってくださった! 南越急行グループは、我が県の、そして地球の誇りです!」


拍手と歓声が、日本海の青い海と空に力強く響き渡った。


一方、六日町の本社CEO室。


大石専務がタブレットの財務データを手際よく操作し、ポーカーフェイスのまま数字を提示した。


「……篠原CEO、古賀副社長。今回の『新形県ゴミ処理&人工島二倍拡張』プロジェクト。県からのゴミ処理委託費および処分受託益、拡張された新人工島の土地資産計上、南越重工第5工場の稼働益を含め、初年度の当期純利益は『二兆二千億円』を記録いたしました。投下資金は完全回収完了です」


「ガハハハ!」古賀副社長が豪快に大石の背中を叩いた。「見たか篠原! 県のゴミ問題を一瞬で片付けて、人工島を二倍にして、なおかつ二兆円超えの儲けだ! やっぱり俺たちのインフラビジネスに不可能はねえぞ!」


「はい。今回は地域の危機回避、産業敷地の確保、そして莫大な資産形成を完璧に両立させた、文句のつけようがない満点のオペレーションです」


ポーカーフェイスの大石の口元にも、極めて晴れやかで温かい笑みが浮かんでいた。


式典が終わり、夕暮れを迎えた新新形宇宙港人工島。


かつて海だった新しい埋め立て地の上には、綺麗な芝生と洗練された街灯が広がり、夕日に映える日本海の波が優しく打ち寄せていた。


新しい第二滑走路からは、成層圏へ向かう超音速機『B7237』が青いプラズマの光を引いて力強く飛び立ち、隣の宇宙港からは小型ロケットが星々の海へ向かって上がっていく。


人工島の防波堤の先端に、篠原賢人、古賀副社長、大石専務の三人が佇んでいた。


日本海からの爽やかな海風が、三人の髪を撫でていく。


古賀副社長が、感無量といった面持ちで広大な新しい陸地を見渡した。


「なあ篠原。街から出たゴミが、こうして新しい陸地になって、そこからロケットや飛行艇が世界や宇宙へ飛び立っていくんだな……」


大石専務も静かに頷いた。

「はい。捨てるものなど何一つありません。人の営みから生まれるすべてを循環させ、未来の糧に変える。これこそが、我がグループの目指す絶対の循環経営です」


篠原賢人は温かいジャスミン茶(南越ビバレッジ特選一級品)を一口含み、沈みゆく美しい夕日と、どこまでも広がる日本海を見つめた。


「大石、古賀。我々が敷いてきたレールは、陸の上だけではない」

篠原の静かな言葉に、二人が深く耳を傾ける。


「人々の暮らしを守り、街の困りごとを解決し、海を越えて未来へ繋いでいく『不滅のレール』だ。どんなに街が大きくなろうと、どんな試練が訪れようと、我々が地域と人を想う情熱を忘れない限り、そのレールはどこまでも力強く、どこまでも遠くへ伸び続けていく」


渡辺前社長が遺した不滅の言葉——「会社は人より長く生き続けるべきもの。稼いだ金は未来を信じる魂だ」。


日本海の水平線に、美しい金色の光が広がっていく。

地域の暮らしと人類の輝かしい未来を足元から完璧に支えながら、南越急行ホールディングスの走らせる無限のレールは、地上を、地底を、海を、空を、そして宇宙の彼方へと、どこまでも、どこまでも力強く伸び続けていくのだった。

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