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第21-4話:実り実った日常

「えっ」


 本田……つまりはルイのこと。なんで若菜がそれを知って。

 助けを求めるように香蓮の方へと目を向けると、苦笑いしながら衝撃の言葉を口にした。

 

「……黙ってたんだけどね。ここ最近、ルイくんとめぐちゃんって付き合ってるんじゃないかって噂になってるよ」


「ええっ!? なにそれっ!?」


 いやまあ確かに?

 最近週四ぐらいで一緒に帰ったり訓練向かったりしてるし?

 放課後に一緒にクレープ食べたり映画付き合ってもらったりしてるし?

 そりゃあ付き合ってるって()()()されちゃったりしてもしょうがないっていうか。


「まあー気持ちは分かるよお。私はハンナくんがおるから思わんけど、本田くんってよう女子からおっこい(かわいい)ってよう言われて——」


「なにその話!?」


 その話、私だけが知ってる秘密じゃないの!?

 机に手を突きながら立ち上がると、勢いのあまり箸まで一緒に飛び上がる。


「え、ええと……まあ要は人気者ってこった。優良物件は空いとるうちに抑えといた方が——」


 そ、そうか……ルイが優良物件……。

 まあ良い人だし? スタイル良いし? あとあんまり気にしてなかったけどお金持ちだし。

 けどお金目的で付き合った子、ルイが想像以上に節制家なの見て苦労しそうだな。

 そんな碌でもない妄想をしていたところで、若菜が次の質問を飛ばしてくる。


「けど今、あの子ん中でレースの一番ぶっちぎってんのはめぐみちゃんやよ」


「れ、レースってそんな……失礼だよ」


「うーん、これはぶっちぎってんのめぐみちゃんだわ。お金の話が口から出ないだけ偉い偉い」


 マジか、ルイってそんなに金持ち全面に出てるのか。

 でも前に香蓮が「ルイくんちでクラス会を」なんて話もしてたし、第一印象が同世代の異能者だった私が異常なだけか。


「そんでそんで? デートは何回ぐらいしたん?」

 

「えっ……ちょっと数えらんないかも……香蓮と一緒だけど一緒に旅行なんかも行ったし。あとデートじゃないから」


「ハハハ、めぐみちゃんやっぱでら面白いじゃん。ならもういっそのことお(うち)デートとか誘ったら?」


「お、お(うち)っ!? いや……でも……そんな……ダメだよ」


 予想外の提案に自分でも取り乱してるのが分かる、手の位置が定まらない。

 なのに横で二人が「けど鈴原ちゃんも一緒に旅行行ったんでしょ? 鈴原ちゃん的にはOKなの?」「私は箱推しだから全然OK」なんていうよく分からない会話を交わしてばっかで私のことを取り合わない。


「けどめぐちゃん……確かめぐちゃん家って」


 回っていたのが一点に収束していく視界、苦笑いを浮かべた香蓮が眉を寄せながらそう聞いてくる。

 

 そうか……ついに聞いてきたか、鈴原香蓮め。

 私は自分でも分かるぐらい得意げ表情を浮かべながら、スマホの写真を香蓮たちへ見せつけた。


「なんと! 私、大和めぐみはお掃除に目覚めたのです!」


 話は二ヶ月ぐらい前に遡る。

 毎週日曜に三時間、絶対掃除する時間を設定して以来私の部屋はメキメキと片付いていった。

 実は額面通りの時間掃除してたわけじゃないけど、それにしたってあの汚部屋からここまで片付いたと思う。


「おお、すごい。前と比べたらちゃんと片付いてる……けど」


「なんかフツーに汚くない? 例えば部屋の隅っこの服の山なに?」


「あーこれ? 洗濯取り込んだ洗濯もの。一週間に一回ぐらいまとめた畳むの。あっ、シャツとかはすぐ干すから大丈夫だよ?」

 

 そうやって自慢げに説明をするも、深い深い溜息を漏らす二人。

 ……あれ、もしかしてだけど私の部屋ってまだまだ汚い?


「まあこのまま来たらレース最下位間違いないわな」


「……私が掃除しに行こうか?」


 自分と世間の認識の差に打ちひしがれていたところで、香蓮が熟考の末に何気なくそう提案してくる。


「でも……そんなの悪いよ、香蓮」


「別にいいよ。ちょうどめぐちゃんの家そろそろ行きたいなって思ってたところだし」


 香蓮と私の家で遊ぶ……思い直してみれば、これも何年ぶりなんだろう。

 結局私が一人暮らしし始めてからただの一度も香蓮を家に招くこともなかったし、この機会に来てもらうのはアリなのかもしれない。


「ちょっと剣道の都合があるからさ、今週の金曜でいい?」


「いいよ。ならルイくん呼ぶのは土曜にした方がいいよ、多分めぐちゃんだけだと部屋維持出来ないから」


 ちょっと待って、私ってそんなに信頼無いの? ってかサラッとルイ呼ぶことになってるし。

 そんな私たちのやり取りを若菜は怪訝そうな表情で見つめた果てに、辿々しく言葉を口にした。


「いやさ……仲良さそうにしてるところ申し訳ないんだけどさ。おみゃーら、ちょびっと重すぎとちごうか?」


 藪から棒に、またもや容赦なくぶった切る若菜。


「まあそうだね、めぐちゃんって結構重たいところあるし」


「いや、鈴原ちゃん。おみゃーのことを言っとんだけど」


 ……確かに、不出来な友達の家を掃除しに行くのは普通じゃないのか。

 新しい風を取り入れると思わぬところで弊害があるもんだなと、ショックそうな顔をする香蓮を見て改めて思い直した。

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