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日記 1

 高校一年生になった白崎ミツという少女は、些細な理由から動画を投稿することに決めた。


 その動画内容は日記である。


 道端に咲いていた花、電柱、路地、青空、自分の歩く足などを撮影し、そこに後付けで今日の出来事を語った。


 実写で飾り気のない映像。この動画が人気になることはないだろうとミツは感じていた。しかし一本目の動画が完成し、サイトに投稿を終えたときミツはやりきったという充足感を得た。


 それは甘く新鮮な感覚だった。ミツは大人しい子供で、これまで自分が主体的に何かを表現したことはなかった。

 それが動画を作って投稿したのだ。読み上げる日記の文章も自分で考えた。


 学校ではまるで透明人間のような彼女の初めての自己主張だった。


 動画にはミツの姿が映っている箇所もあった。母親に撮影の手伝いを頼んだのだ。


 夕暮れ時、近所の小さな石橋を渡りながら笑顔で振り返るワンシーンだ。顔も映っている。それはホームビデオのような素朴さと温かさがあった。


 ミツは一本目のこの動画の中では何も主張や考えを披露しようとは思わなかった。そういうのはこれから毎日動画を積み重ねていく中で少しづつ聞いてもらおうと思っていた。


 しかしこの動画には確かにミツの考え方が色濃く反映されていた。


 それは「あなたも私も頑張って生きています」という、ともすれば無意味なメッセージだった。


~~~~~~~~~~


 おはようございます。

 いつもお疲れ様です。

 今日はこちらはいい天気です。九州の方は雨だと聞きました。私の住む地域も明日は雨になるでしょうか。

 でも今日いい天気だったので私は動画を撮ることに決めました。

 明日雨でも、今日がいい天気だったことを思い出せばきっと大丈夫だと思います。

 今映っているのはお気に入りの路地です。ここには一週間に一度ほど来ます。

 いつ来ても暗くって、記憶の中の路地は青色です。でもこうしてみると案外茶色いんですね。

 明日も動画投稿できるといいな。

 ではまた。


~~~~~~~~~~


 手撮りの景色。映像元の雑音が残っているし、ミツがつぶやく声が入っているところもある。

 日記を読み上げる声だって小さいかもしれない。


 次回は少し音量を調節してみよう、とそう思いながらミツは眠りについた。


 ミツは久しぶりに、心地よい倦怠感の中、ぐっすりと眠ることが出来た。


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