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半年以上空いてすみませんでした。
完結できるかわかりませんが、書いた分ずつ載せたいです。
私とドナが2人で笑って雑談をしているとアンジェラが帰ってきた。
しかも結構量がある。アンジェラだけじゃどうしようも無かったのか、私の屋敷の護衛騎士も運んでる。
そして、クローゼットの空いた部分にアンジェラが掛けていく。
護衛騎士は頭を下げて部屋から出ていった。
「お嬢様、こちらでございます。……あら?可愛い髪型ですね。」
アンジェラは私をクロゼットの前に促してから、髪型に気付き褒めてくれた。
「そうでしょ?ドナにやってもらったのよ。」
私は嬉しくなり笑顔でアンジェラに言う。
アンジェラは私に顔をみてドナの方を見てから優しい顔で笑った。
それから私とアンジェラとドナはドレスを選んでいった。
私に希望はシンプルで可愛い。色は緑系。
今日は明るい緑のフリルがあまり着いてない落ち着いたドレスにした。リボンはそれに合わせて黄緑色だ。
「お嬢様可愛いです!」
「ええ、とてもお似合いですよ。」
ドナとアンジェラがそう言って笑ってくれる。
本当に私の侍女は優秀だ。
「ありがとう!」
それから朝食を食べた。
結婚してから1度も実家に帰ってなかったから、3年ぶりに我が家のコックの料理。
とても美味しくて、全て食べた。
この頃はとても偏食で好き嫌いも多かった私はかなり我儘を言ってたのだろう。
文句言われるだろう覚悟をして傍に控えていたコックから凄い視線を感じる。
ただ、私が色々我儘を言ったからか、量は多めでチキンやケーキが沢山並んでいた。今日は全部食べたけれど、これを続けたらやばいわ。
「明日からは量を減らして、野菜を多くしてケーキじゃなくてフルーツにして欲しいわ。」
小さい頃の私は朝からチキンやケーキを食べていた。今はまだ大丈夫だが、12歳ぐらいには体重は他の令嬢の倍ぐらいあったのを覚えてる。
王妃教育が始まってから、体重を落とさなきゃで大変だったのよね。
でも痩せたら凄く動きやすくて感動した事もしっかり覚えてる。
なので、今から体重維持を目標にしようと思う。
コックは凄く驚いた顔をしていたが、険しい顔をしつつ頭を下げた。また我儘を言って……食べないくせに。みたいに思っているのでしょうね。
私は王妃になるために努力したし、嫌いなものも食べられるようになったわ。精霊の愛され人だからって贔屓された訳じゃなかった。
「でも……今日もとても美味しかったわ。マルコ、いつもありがとう。」
そう言うと、オルトラーニ公爵家専属コック……マルコは一瞬身体が固まったが、ゆっくり無言で頭をさげた。
私はお城の料理よりマルコの料理の方が美味しいと思う。
前の時気づいたんだけど、実家に帰ることもなかったから伝えられなかった。自己満足だけど感謝を伝えられてよかったわ。
それから私は、外で本を読んだり庭でお茶をしたりして過ごしていたが、今日の私は怒ることも怒鳴ることも癇癪起こす事もしないのでアンジェラやドナ以外の使用人は化け物を見るような目で遠巻きに見てきた。
まぁ、そりゃそうよね。嵐の前の静けさかと思うかも。
「……アンジェラ」
私が呼ぶと直ぐに、はい。と言ってくれる。
少し話をしたかった。
ドナは他の侍女と他の仕事をしているので、この場には私とアンジェラと護衛騎士の3人だけだ。
「私ね、長い夢を見ていたわ。とても悲しい夢だったの。」
今思い出しても泣きそうなぐらい。
「そうだったのですね。確かにとても辛そうでしたね。」
昨日アンジェラが居てくれたから、落ち着いたのだ。
「私が我儘を言ってこのまま過ごしていくと、大人になった私はひとりぼっちなの。」
そう、父も母も兄弟も居ない。アンジェラもドナも居ない。友達も居なくて……全てを捧げた愛する人に裏切られ絶望する夢のような未来。全ては話せないけれど……
私の話を静かに聴くアンジェラ。
「だから私は、我儘な自分を変えていきたい。」
「レジーナ様……」
アンジェラは感動したように私の名前を呼んだ。
「だから、アンジェラに前の私が顔を出たら叱ってほしいの。信頼してる貴方に言われたら頑張って治すわ。」
私はアンジェラの顔を見てそう言った。
「レジーナ様は急に大人になられましたね。わかりました。私で良ければ力になりましょう。」
私とアンジェラの2人だけの秘密の約束だ。
私の態度がガラッと変わったことに不信を抱いていた使用人達は、アンジェラが話をして完璧に信じては無さそうだが少しずつ普通に戻っていった。
そして、私は変わらず落ち着いて過ごしていた。
そんな時だった。
彼が家に来たのは。
「お嬢様、エドワルド様がお見えです。」
え?
そう言った執事に私は驚いた。
すっかり忘れていたけど、そう言えばこの頃にはもう婚約者だったっけ?
私の中で既に縁を切ったつもりでいたから、心底驚いたわ。
たしかに小さい頃は、何日かに1回会いに来てくれてたような気がする。
はぁー……会いたくない。
だって裏切った私の元夫よ?会いたいとは微塵も思わないが、王子だし無下にはできない。
仕方なく重い腰を上げる。
「ドナ、すぐお茶を用意して。アンジェラは私と一緒に来てくれる?」
2人とも了承すると、すぐ動き出した。
「御機嫌よう、エドワルド様。遅くなり申し訳ありません。ようこそいらっしゃいました。」
私はエドワルドに1番綺麗に見えるはずのカーテシーをした。
エドワルドは驚いた顔で私を見ている。
前の私だったら嬉しくて走ってオズワルド様の所に行ってた。
そして甘えるようにベッタリくっ付いていたわね。
今はどうやって婚約を無かったことにしてもらえるか考えているのだ。
ロゼッタはエドワルドの幼なじみだし、ジュリオが昔から好きだったもんな。って言ってたから、この頃にはもうロゼッタの事が好きだったかもしれない。
私を裏切った人。憎らしい。黒い感情を押さえつけエドワルドを見る。
…………あら、可愛い。
さすがエドワルドだわ。幼い彼はクリクリな青空の瞳、サラサラな金髪、ほっぺはぷくぷく。
私の黒い感情はすっ飛んだ。
恋愛感情はもう捨て去ったから皆無だけど、裏切られた時のエドワルドじゃなく、純粋で可愛く子供らしいエドワルド。同じ人物でもこれだけ幼い彼には何も思わなかった。
「エドワルド様?」
私が彼に声をかけると、困惑した彼の顔。
どうしたらいいか困っている顔だ。
「君は……だれですか?」
「…………レジーナでございますわ、エドワルド様。」
私は呆れた声が出てしまった。私のこと忘れたの?
は?なに?虐め?
私はさすがにムカッときたが、態度に出さない顔に出さない。
王妃教育で習ったことを復唱する。
すぐ後ろでアンジェラが私に小声で話かけてきた。
「レジーナ様がドレスや髪型を変えられたので、雰囲気が違くて混乱されてます。」
それを聞いて、納得した。
そう言えば、フリフリヒラヒラとツインテールをやめてから初対面か。
そりゃびっくりするよな。ごめんね少年。じゃなかったエドワルド。
「っ……ああ、ごめんね。雰囲気が変わったレジーナ嬢があまりに可愛かったので驚いてしまいました。」
そう言って優しい笑顔を見せた。
はい。これは作った笑顔ですね。そしてそんなこと思ってないですよね。前の私はすっかり騙されたけど、よく見てみると目が笑ってない。子供のする顔じゃないわ。
やっぱり嫌々やってる事なのね。
「あら、素敵なお世辞をありがとうございます。」
そう言って最上級の笑顔で迎え撃った。
相手に悟られるような作った笑顔なんて意味ないですわ。
エドワルドは固まってしまった。
あ、ちょっと虐めすぎたかしら?
私は仕方なく、エドワルドの手を握り優しく引っ張った。
「それより、お庭にお茶を用意してありますの。行きませんか?」
「え、ああ、ありがとうございます。」
手を握った瞬間エドワルドはビクッと反応したので、エドワルドが歩き始めると手を離してあげた。
嫌なら嫌なって言えば良いのに。と思ったが自分が王妃だった頃を思い浮かべて、王族は思ったより肩身狭いのを思い出した。
大変ねエドワルド。初めて元夫に対し同情をしたのだった。
まぁ、同情したからと言って彼に何かするわけでもなく、私は一定の距離を保ちつつ相手をしていく。
しかしこれだけは聞いておきたい。
「エドワルド様は婚約の件はどうお考えですの?」
「どう……とは?」
「私との婚約に納得されているのですか?」
ロゼッタのことが好きなはずでしょ?
嫌がったり抵抗する様子はなく、私が婚約者と言う事を受け止めているようにも見える。
前の時のからそうだった。
ただただ笑顔(仮面のような笑顔)で優しい言葉(きっと本心ではない)を紡ぐ彼は何がしたいんだろう。
「私の婚約者が貴方であることに感謝しています。」
エドワルドの台詞のような答えと硬い笑顔。
前の時は嬉しかった言葉だったが、今では感情の籠らない無機質なものに見えた。
子供と子供の会話らしくないので、そろそろ止めよう。
多分、今は何を言っても同じような言葉しか帰ってこないのだろう。深い話はできなさそうだし。
当たり障りの無い話を淡々と話していき、程々の時間で帰っていただいた。
それからも
エドワルドは必ず何日かに1度会いに来た。
あの頃は聞けなかったような事も平気で聞けるため、王子として学んでいる知識なんかを聞かせてもらったりしている。
最初は警戒していたが、私が媚びを売ったりベタベタしないのが楽なのか、割りと普通に話せるようになった。
でも、変わったのはそれだけじゃ無かった。
現宰相の息子で未来の宰相のジュリオがたまにエドワルドと一緒に来るようになったのだ。
はっきり言って迷惑でしか無い。
私の感情はジュリオもエドワルドと同じだ。子供の頃の彼は可愛いので、黒い感情は出てこない。
だけど、向こうはあまり良い感情を持ってないようだ。
エドワルドが心配で着いてきています的な。
前の時は1度も無かったのに。
エドワルドは私の態度が急に変わった事をジュリオに言って、ジュリオは私が何か企んでるのではないかと警戒して付き添いしてるのだろう。
私の雰囲気がガラッと変わった事に戸惑い、警戒していた彼だったが、私が大人の対応しているとエドワルドと一緒に普通に来て普通にお茶飲んで普通に帰っていくようになった。
何故来るのか理由はまだ知らない。
……あまり関わりたくないのだけど……。
特に何か変わることなく何年も、一緒にお茶をする謎の日は続いていった。
閲覧ありがとうございます。