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MAIN TRAFFIC4  作者: 浜北の「ひかり」
Hikari Episode:1
34/102

395列車 「丹波路快速」

 天井を覆う大きな波のような構造物。大阪ステーションシティー。大阪駅4番線にウチはいた。

亜美(あみ)。来たよ。」

「こんにちは。わざわざありがとうね。遠いところ。」

「別にいいよ。うちもキラもほとんど島本でとってたから、たまには遠くに行きたいと思ってたからね。」

「ふぅん。じゃあ、ちょうどよかったってわけだね。」

そういい、亜美(あみ)は4番線に入っている車両に目をやった。本線では新快速(しんかいそく)運用からは離れ、もっぱら高槻(たかつき)から快速の運用に徹するようになった223系が止まっている。だが、本線の223系とはちょっとだけ違う。

 まず大きな違いは、運転席についている中央の非常扉と、乗務員室扉のライン下についた2本のオレンジラインだ。そして、上に目をやれば動力車についているパンタグラフの数が2つになっている。だが、変わらないところもある。正面についた転落防止幌、オレンジのラインが入っていること以外、何ら変わらない塗装とかね。そう彼は223系6000番台。宮原に所属するMA編成と呼ばれるグループだ。

「MAかぁ・・・。まっ、これがいるってことは今日は宝塚線(たからづかせん)の方に行くんだな。」

「そういうこと。さ、乗ろ。」

「4番乗り場から、「丹波路快速(たんばじかいそく)」、篠山口(ささやまぐち)行きが発車します。ドアが閉まります。ご注意ください。」

 ドアが閉まると、223系6000番台は尼崎(あまがさき)に向かって走り始めた。隣のホームからは225系100番台がこちらに最後尾を見せ、走り去っていった。本線のほうが少々フライングしている。

「それにしても、今日は渋いところに行くねぇ・・・。」

キラがそう言った。

「渋いって。」

「いやさ、J西だったらまず新快速(しんかいそく)に目が行くだろ。」

それにはうちも納得している。確かに通勤電車が130キロ出すっていうのは魅力的だ。しかも、停車駅を特急並みに絞り込み、表定速度80キロオーバーという俊足ぶりを発揮するのであるから、これに魅力を感じない鉄はいないであろう。そして、6000番台を始め、130キロを出すことのない快速列車はなかなか鉄道好きの人たちの注目を集めづらく陰に隠れがちになる。

 でも、「ジェットカー」や「ジェットシルバー」を擁する阪神(はんしん)よりは不遇じゃないか・・・。彼らは各停だから。

「「新快速(しんかいそく)高速通過集」っていうのは長いので25分ぐらいあるやつがあるけど「丹波路快速(たんばじかいそく)高速通過集」っていうのは出してる人いないだろ。」

「・・・そう。ウチは「丹波路快速(たんばじかいそく)」の通過集見たことあるけど。」

「それって宝塚線(たからづかせん)の快速通過集じゃないの。207、321、6000番、225の6000番と「こうのとり」を集めたさ。」

「あっ、うん。それそれ。」

知らないと何を言っているのか全く分からない会話だろう。

「ほら、やっぱり。」

「「丹波路快速(たんばじかいそく)」の動画アップする人少ないのかな。」

「まっ、同じアーバンネットワークでも新快速(しんかいそく)以外知名度は今一つだからね。「関空(かんくう)紀州路(きしゅうじ)」、「大和路(やまとじ)」はまだ有名のうちでしょうけど、「丹波路(たんばじ)」、「みやこ()」は名前知ってるかすら怪しい関西人もいるからね。」

「「みやこ路」ってマイナーかな。」

小声でキラに聞いた。

「マイナーなほうだろ。最近223使い始めて、223使った「みやこ路」の動画や写真がたくさんネットにアップされているとはいえな。」

 話をしながら、列車に揺られ、川西池田(かわにしいけだ)に到着。川西池田(かわにしいけだ)で「丹波路快速(たんばじかいそく)」は普通を追い抜くが、そこではおりずにそのまま新三田(しんさんだ)まで乗車。新三田(しんさんだ)で出発する6000番台を撮影後、普通列車で一度通過した駅へと戻る。

武田尾(たけだお)武田尾(たけだお)です。降り口は左側です。ドアから手を離してお待ちください。」

そのアナウンスはまだトンネルを出きっていないうちから始まった。そして、みるみると321系の速度が下がり、トンネルの中で停車する。

 ドアが開き、ホームに降りた。

「へぇ・・・。」

さっき一度通過した時に見たが、不思議な駅だ。半分はトンネルの中に、もう半分はトンネルの外にある。そして、ほんの数十メートル走るとまたトンネルがあり、その口を開けている。

「ドアが閉まります。」

321系のドアが閉まり、VVVFの音を辺りに響かせながら、前のトンネルへと消えていく。

「ここが宝塚線(たからづかせん)で有名な武田尾(たけだお)よ。秘境駅に分類されているとはいえ、列車の本数は秘境駅では全然ないけどね。」

亜美(あみ)はそう言った。

「秘境駅ねぇ・・・。」

亜美(あみ)の言う通り確かに、列車本数は秘境駅ではないみたいだ。電光掲示板には今から15分ぐらい後に来る普通高槻(たかつき)行きの表示が出ている。

「近くのベンチか、この駅を出て、ハイキングコースでも歩くか。どっちがいい。」

亜美(あみ)がそう聞いてきた。

「ハイキングコース。」

「もともと福知山線(ふくちやません)武田尾(たけだお)周辺は山陰本線(さんいんほんせん)嵯峨嵐山(さがあらしやま)から馬堀(うまほり)の間みたいに入り組んでたの。それが新線、この線路に変わるにあたって廃止されたわけだけど、その線路は嵯峨野(さがの)トロッコみたいには残らずに、道やハイキングコースになってるわけ。この駅の下には旧武田尾(たけだお)駅もあったから、見てみない。それに、たまには自分の足で歩きまわるのもいいじゃない。」

そういい、亜美(あみ)は改札の方へと歩き出す。

「どうする。」

キラがウチに聞いた。

「たまにはいいじゃん、歩こうよ。「丹波路快速(たんばじかいそく)」ってそんなに多くないでしょ。」

(確かに新快と比べたら少ないけどさぁ・・・。)

「あっ、ちょっと待て。二人にとって俺の意見はどうでもいいのか。」

新三田(しんさんだ)方面へ向かって更新された289系が轟音と共に通り過ぎて行った。


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