393列車 頑張りたい
放課後。
私は教室の鍵を締めてから、図書館に行った。図書館の中にはここに勉強を死に来ている人がチラホラといる。ほとんど部活動の終った3年生で占められているだろう。1年生から図書館通いはなかなかいないだろうなぁ・・・。
机に勉強道具を広げて、シャープペンを持って取り掛かった。家でやるよりもはかどるのは他の誘惑がないからかな・・・。問いの答えへとシャープペンを走らせる。
図書館の中は勉強で腕を動かす人たちの音がよく響く。ときに席を立ち本棚の本を探しに行く人の足音。そして、戻ってきて椅子を出す音がするだけだ。私の近くでもそう言う音がする。
「あれ。中百舌鳥さん。」
ふと近くで声が聞こえた。
「えっ。」
顔を上げると、長宗我部君だ。
「長宗我部君・・・。」
「あっ、ここいい。」
長宗我部君は私の座っている机の隅を指差した。その一は私からは席を一つ隔てた位置になる。何でそこに座りたいかは追及しない。私もすぐ隣に男子が座ると何かと気が散りそうな気がしてならないからなぁ・・・。
「いいよ。」
そう言うと長宗我部君はそこに荷物を置いた。
「中百舌鳥さんっていつもここに来るの。」
勉強道具を広げながら、そう聞いてきた。
「そうよ。最近家じゃやらなくなってね。ほとんど学校で済ましてるんだ。」
「そうなんだ。こうやって勉強してるから、最近のテストの成績とか点数あがってきてるんだな。」
納得したように言った。確かに、最近やったテストの結果は上々。順位的には変わらないが、取れた点数は右肩上がりを今のところキープしている。問題のレベルはだんだんを上がっていく中学であるから、この結果はとてもいい流れである。
「俺も頑張らないとなぁ・・・。」
「・・・。」
長宗我部君はそう言うと筆箱からシャープペンを取り出し、問題集に取り掛かった。数学か・・・。長宗我部君数学あんまり得意じゃないもんなぁ・・・。横眼で見てから、自分の問いに集中する。
隣からシャープペンで机をつつく音が響きはじめる。ああ、これは・・・。
(チラッ・・・。)
「あっ。」
目が合った・・・。合っちゃったよ。合せるつもり無かったけど。ああ、でも合っちゃったものは仕方ない。
「長宗我部君、もしかしてやり方分かんない。」
「うん・・・。いきなり数学って飛ばし過ぎたかなぁ・・・。」
「飛ばし過ぎかどうかは知らないけど、漠然とやってるようじゃダメね。今日はここは絶対やるっていう目標がないと。」
「いや、そうじゃなくて苦手教科から入るのは長続きしないかなあと思って。」
「・・・うーん。それは人それぞれだから何とも言えないわね。私は好きな強化から始めて、最後に苦手教科をやるようにしてるけど。もちろん、集中的に1教科終らせるんじゃなくて、ちびちびと5教科こなしていくようにしてるけど。」
「・・・それでやってみるかなぁ・・・。」
「うん、頑張って。」
「あっ、中百舌鳥さん。迷惑じゃないなら、終った後でいいから、俺に数学ちょっと教えてもらっていい。」
「私でよければいいわよ。」
その後、自分のを終わらせ、長宗我部君の勉強も見てから図書館を出た。
「ありがとう。勉強教えてもらって。」
ちょっと頭を下げながら言った。
「別に、このぐらいどうってことないし。それに教えている方も頭に入るから、助かったわ。」
でも、気になることがある。
「でも、何でいきなり勉強したいって思ったの。普通は勉強よりも部活とかじゃないの。」
渡り廊下の窓から外を見た。外周を走っているのは陸上部かな・・・。
「ああ、俺も勉強嫌いだからな。でも、そうも言っていられない気がしてさ。特に、光と俺は違うからな。」
「・・・。」
「光は将来見据えて勉強してるけど、俺は将来とかそんなこと考えないからなぁ・・・。」
そうね。光君はちゃんと将来を見てる。あの崇城さんと一緒に・・・。
「だから、まずは目的決めずに勉強から始めてみようかなと。」
「長宗我部君。」
「あっ。」
「悪いこと言わないからさぁ、目的ないんだったら勉強しないほうがいいと思うよ。」
「えっ。」
「目的がないものほど、力にならないと思うから。先ずは明確に自分が何の目的で勉強するのか決めること。図書館に来るのはいいけど、図書館にいる人だって目的があるから勉強してるんじゃない。」
「・・・だよなぁ・・・。」
「ごめん、言い過ぎたかなぁ・・・。」
「いや、中百舌鳥さんの言う通りだと思うよ。俺もちょっと・・・。」
「・・・将来何になりたいかって言うのは、今はよくわかんないかもね。長宗我部君、まずは何処の航行に行きたいかからでも決めてみれば。それなら目的も見えるし、勉強してる感じ方も違うと思うよ。苦手の克服はそれからでもまだ間に合うわよ。だってまだ私達は中1なんだからさ。」
私に出来るアドバイスはこのぐらいだろうね。




