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第31話

結局何も話が進んでない……。すいません。

次こそは!

 気がつくと真っ白な空間にいた。


「またかよ……」


 もうさすがに慣れたので、口からはため息しかでない。


「久しぶりじゃの、このロリコンが」

「ハッ倒すぞ、爺」


 声のした方を見ると、ニヤニヤ笑みを浮かべた自称神(笑)の爺の姿があった。


「……今度はなんの用だよ」

「そんなに疲れた顔せんでもよかろうに。言ってみればこれは神のお告げじゃぞ?」

「用件を言え」


 ふざけた事に付き合うつもりはないので、とっとと本題に入るように促す。

 爺は「全くこれだから最近の若いモンは……」とか「敬意が足らん」とかブツブツ言いながらも、話始めた。


「お主、いつまでサントラフォードにいるつもりじゃ?」

「は? なんだよいきなり。いつまでも何も、ずっとだけど」


 借家だけどせっかく家も手に入れたし、やっと街にも慣れてきたんだ。引っ越すつもりなんてさらさらない。


「いや、でも……。これはゲームじゃぞ。いつまでも最初の街にいては……」

「お前が好きに生きればいいって言ったじゃねえか」

「そうじゃけど、まさかゲームでいきなり最初の街に定住するとは思わんじゃろ! せっかく色んな国や都市があるのに……」


 こいつ、またアレか。

 せっかく世界ゲームを創ったのだから、隅ずみまで見て欲しいって事か?


「なんだよこの構って爺は……。ウゼェ」

「な、なんじゃ、その口の聞き方は!」


 激昂する爺を無視して話を進める。


「大体、生活基盤がすでに出来上がってるのに、そうホイホイ引っ越せるわけないだろ。ゲームとはいえ実際に生活してるんだから」


 知り合いも多くできたし、あの街にも愛着があるのだ。


「あの街を拠点にして旅をするにしても、この世界は前世と違って飛行機とかあるわけじゃないんだろ? 旅に出たら何ヶ月、へたすりゃ年単位で街を離れることになる。そんなのはゴメンだ」

「むぅ? 確かに飛行機はないがレイルートを利用すればどうじゃ?」

「レイルート?」


 初めて聞く単語に聞き返す。


「地球で言ったら龍脈のことかの。聞いたことくらいはあるのではないか?」

「風水とかでなんとなく……」

「地球とは若干違っているかもしれんがの、要するにレイルートとはこの世界の力の流れみたいなものじゃ」


 爺は教師のような口ぶりで話を続ける。微妙に腹が立つ。


「そして、あの世界ではそのレイルートを利用して、ゲートを繋ぎ、一瞬で移動できる魔法装置があるのじゃよ。レイルートを使用してるから、入り口と出口はルート上にしか作れないがの」

「あ~、つまりド○クエの旅のと○らみたいなものか」

「まぁそんな感じじゃの」


 う~ん。それを利用すれば一瞬でいろんな所に移動できるのか。まぁ確かにせっかくの異世界だし、あちこち旅してみたいが。


「ていうか、オレにもそれ使えるのか?」

「お主、冒険者になったんじゃろう? Dランク以上の冒険者なら許可が下りるハズじゃぞ」

「オレ今Eランクだけど」

「そんな事はわかっておる。故に1つイベントを用意しておいた」

「あ? イベント?」

「ウム。目が覚めたら木精霊の子を連れ、森に行ってみよ」


 まあ、どっちにしろ明日になったらミリナはウルザリーナさんの所に返さなきゃいけないからそれは構わないのだが……。


「碌でもない事考えてんじゃねーだろーな?」

「いやいや、ゲームにはイベントが付き物じゃろう?」


 イヤな予感しかしねえ……。だが、ここで問い詰めてもどうせこの爺は口を割らないのだろう。


「それをクリアすれば恐らくDランクにランクアップできるじゃろ」

「わかったよ。だが、だからといって街を離れるとは限らねーけどな」

「なんでじゃ!」

「お前の言う通りにするのが嫌だから」

「子供か、お主!」

「テメエだけには言われたくねーよ!」


 どんぐりの背比べのような醜い言い争いが繰り広げられる。


「とにかくわかった。Dランクになったらまた考えてやるよ。一応前向きに」

「ま、今の所はそれで納得しておこう。……ちなみに、もし冒険に出なかったらサントラフォードに竜巻や嵐、地震に干ばつといった天変地異を起こすからの。神様権限で」

「全然納得してねえじゃねえか!」

「何を言う。これはただの説得じゃ」

「説得じゃねえよ、それは脅迫って言うんだ」

「どっちでも同じじゃろ」


 全然違うだろ!


「なんにせよ、お主は明日のイベントをクリアするのじゃぞ」

「……危険は?」


 オレはともかく、マイカ達やミリナを危険な事に巻き込みたくはない。だから爺の言うイベントが危険なものならば受けるつもりはない。

 だが、爺はオレのそんな内心を読んだかのようにニヤリと嫌な笑みを浮かべやがった。


「危険かどうかは関係ないぞ。お主はどちらにしてもそのイベントに向き合う事になるからの」

「あ? どういう意味だよ?」

「それは明日のお楽しみじゃ」

「チッ」


 この爺はゲームの内容に関する事はしゃべりたがらない。問い詰めたところでムダだろう。


「ワシからは以上かの。お主の方で聞きたい事はあるか?」


 聞きたい事ね。言いたい事は山ほどあるが……。

 とりあえず以前から気になっていた事を聞いてみることにする。


「聖魔導を覚えるにはどうしたらいい?」

「言ったじゃろう。ゲームに関する事は――」

「覚え方は聞いたよ。神を信じ、敬う事でその力を借りる……、だったか?」

「それを知っておるなら簡単じゃろう。お主はワシを知っておるのだから、神の存在を信じるのは容易じゃろうに。本来ならば教会などで長い修行を積んでその存在を感じ取るものじゃ」

「……お前の存在を知っているからこそ、敬うのは無理だろうが」

「どういう意味じゃ!?」

「まんまだよ。どこの世界に自分を拉致った相手を敬う奴がいるんだよ!」

「………………古い事をネチネチと」


 忌々しそうに呟く爺。全然古くねえよ。1ヶ月くらいしか経ってねえだろ。


「しかし、その心持のままでは聖魔導のスキルを身に付ける事はできないぞ」

「クソッたれ。じゃあオレは絶対に聖魔導は習得できないという事か……」

「……それは何か? ワシを敬う事は100%ないという事か?」


「全く、ワシを誰だと思っておる」とブツブツ呟いているが、気にしない。事実なのだから。

 しかし、これは困ったな。つまり回復はリビーに頼るしかないという事か? 今のところはそれでも間に合ってはいるが……。


 オレが考えていると、立ち直ったらしい爺が声をかけてきた。


「他にはないのか?」

「ああ、もう1つ。ステータスを誤魔化すことってできねーの?」

「ステータスを?」


 思考から戻ったオレが答えた返事に、爺が怪訝な顔をする。


「お主、ヤバい事でもするつもりか? やはりあのミリナとかいう小娘を――」

「違えよ! 備考欄は見られても構わねえけど、スキルやらステータスが見つかると騒ぎになるかも知れないだろ!」


 というか、実際すでにアナスタシアさんには見られて、驚かれたのだ。あの人がいい人だったからよかったものの、悪目立ちしたり、最悪何かの陰謀とかに巻き込まれるかもしれない。


「ふ~む。ま、それくらいならよかろう」


 少し悩んでいたみたいだが、自分の中で決着がついたらしい爺は一つ頷き、さっと右手を振る。するとオレの身体(見えないというか、存在してないので正確にはイメージでの身体の辺り)がボンヤリと光った。


「ステータス偽装のスキルを付けておいた。使えばNAMEと備考欄以外を変更した偽装ステータス欄を設定できるようになる。鑑定石を使われてもそちらが表示されるはずじゃ。ただし本来のパラメータやLvは本来の数値より高くする偽装する事はできないからの」

「サンキュー。ちなみに偽装すると身体の能力もその通りの数値になるのか?」

「いや、そんなことはない。あくまで偽装するだけじゃ」


 フム。それはありがたい。


「以上じゃな。それでは明日のイベントしっかりこなすのじゃぞ」


 その言葉が終わらないうちにオレの意識は再び暗闇の中に溶けていった。


2月14日に延々爺と会話するだけの話……。


アレ? バレンタインって何だっけ?

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