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第12話

「とりあえずこの辺か?」


 掲示板に貼られていたギルドの依頼書の中で達成できそうな依頼を選んで呟く。


『ミニゴブリン5体の討伐。報酬100ゴルド』


 ミニゴブリンなら倒した事があるし、大丈夫だろ。依頼書を掲示板からはがして受付に持っていく。


「すいません。この依頼を受けたいんですが」

「はい――ミニゴブリン5体の討伐ですか。失礼ですが、スグル様は魔物との戦闘のご経験は?」

「え? 経験って言われても……この街に来る途中でミニゴブリンを2匹倒した事はありますけど」

「そうですか。それならば大丈夫でしょうが、ゴブリンのような人型のモンスターは刃物のような物を持っている場合が多いですから、お気をつけ下さい」

「ああ、はい。わかりました。ご親切にどうも」


 そういやオレが倒したときもダガーを持ってたっけな。オレは大丈夫だったけど、今回はマイカ達がいるしな……。危なそうだったら、最悪オレが1人でやるか。

 討伐したら、記録がギルドカードに自動で残るらしい。スゲーなギルドカード。


 ギルドを出る時、受付のお姉さんが「武具をお忘れなく!」と注意してくれたので、忠告に従い、まず武具店に向かった。


「いらっしゃいませ!」


 店に入るなり商売用の笑顔全開の店員が挨拶してくる。


「武具のお求めですか? なるほど、冒険者の方でしたか。……今日なったばかり? それはおめでとうございます。では初めての武具ですか? 当店を選んでいただきありがとうございます。そうですね、最初ですとやはり防具は皮装備からというのが一般的ですね。値段の方もお安くなっていますので。4人分ですか? ありがとうございます」


 息もつかせぬセールストークに流されるまま、皮装備を購入してしまった。まあ、最初は大体この装備らしいし、いいだろう。オレは鎧と篭手、ブーツを買い、マイカ達には鎧の代わりに胸当てを買う。


「武器の方はいかがいたしましょう」


 武器か……。とりあえず3人に使える武器はあるか聞いてみるが、全員武器等持った事ないと首を振る。ま、そりゃそうだよね。さて、どうするか。

 そういえばステータス欄にマイカは剣術と盾術が、オリヴィエラは槍術がLv0って表示されてたな。店員さんに聞いてみよう。


「Lv0のスキル……ですか?」


 聞かれた店員さんは少しの間首を捻ったりして悩んでいたが、聞いたことが無いと申し訳なさそうに謝ってきた。


「ただ、スキルは本来長い期間修練を積んで取得するものか生まれた時から身に宿しているものです。しかし少数ですが、生まれ持っていたわけではないのにあっという間にスキルを習得する者も中にはいます。もしかしたらそういった人の事を言っているのかもしれません」


 フム、隠れた才能みたいな物だろうか。なんにせよ、店員さんの言う通りならマイカには剣と盾をオリヴィエラには槍を使わせるのがいいか。ただ、リノもLv0のスキルを持ってたけど、自然魔導なんだよな……。魔法ってどこで覚えられるんだろ。

 魔導師(JOBではなく魔法を使える人全般をそう呼ぶらしい)は杖を持つのが一般的らしいので、リノは杖でいいか。


 問題はオレだ。オレの場合、ラーニングがあるからどの武器を選んでもすぐにスキルを習得できるようになると思うが、それゆえに逆に迷う。杖スキルを習得して、御恩と奉公でリノにスキルを譲渡するというのもいいが、やっぱオーソドックスに剣にしよう。


 結局、マイカとオレは銅製のブロンズソードと木の盾を、オリヴィエラはブロンズランス、リノはウッドスタッフを購入することにした。


 次に万が一の事態に備えて薬やポーションを道具屋で幾つか購入した。


「ご主人様。お荷物は私がお持ち致します」


 昼食用の食料や水の入った水筒やらポーションやらを詰め込んだ袋を、代わりに持とうとオリヴィエラが手を差し出してくるが――。


「いや、いいよ」


 そのまま、持っている袋をまとめてアイテム欄へと収納した。


「!」

「「え……!?」」


 突然、つかもうとした袋が目の前から消え、絶句するオリヴィエラ。マイカとリノも何が起こったのかわからず呆然としている。

 しまった、やっちまった! メニューウィンドウのアイテム欄は神の爺さんがオレ用に用意した特別な能力って言ってたっけ。


「ご、ご主人様……」

「あ~、驚かせてすまん。オレはアイテムを自由に出し入れしたりできるんだ」


 3人にバッチリ目撃されてしまった手前、誤魔化すのも無理だと思い、アイテム欄の事を正直に話す。


「ただ、あまり人に知られたくないから黙っててくれ。お前らだから話したんだ」 

「ご主人様……」

「絶対秘密にするの」

「わかりました」


 信頼するようなオレの言葉がうれしかったのか、マイカとリノは嬉しそうに返事をする。本当は単にうっかりしてただけなんだが。ちょっと良心が痛むな……。ちなみにオリヴィエラは特に表情を変えることもなく、淡々と返事を返しただけだった。


 門の所にはオレがこの街に初めて来た時と同じ衛兵のおっちゃんが立っていた。名前は……パウエルさんだっけ? 


「よう、坊主。確かスグルだったか?」


 相変わらずいかつい顔に、人好きする笑顔を浮かべるパウエルさんが手を振ってきた。こっちの事覚えてたんだ。オレも笑顔で言葉を返す。


「坊主は勘弁してくださいよ」

「はっはっは、悪い悪い。……ん? なんだ坊主、連れの美人が1人増えてねーか?」

「ええ、まあ……。色々あって」


 適当に誤魔化そうとするオレを見て、パウエルさんはいやらしい笑みを浮かべる。


「全くガキみたいな顔しながら、手の早いこって。2人でも足りねーってのか」

「そーいうんじゃないですよ。色々あって冒険者になることになったので、聖魔導を使える彼女に仲間になってもらったんです」


 言わなくていい部分は省略して、オリヴィエラの事を説明する。パウエルさんはそれを聞いて驚いた。


「へえ、冒険者になったのか。しかも聖魔導を使える奴隷をいきなり買うたぁ、坊主には色々驚かされることが多いな」

「アハハ……。それでこれから依頼のために街を出ようと思いまして」

「おお、そうか。じゃ、あんま長話で引き止めちゃいかんな。気ぃつけていってこいよ」


 手を振るパウエルさんと別れた後、草原をしばらく歩いた所で足を止めた。眺めもよくて、ピクニックでお弁当を食べるなら絶好の場所だ。


「それじゃまず色々確認事項とかあるから、昼飯食べながら作戦会議な」


 昼飯ように買っておいたサンドイッチを取り出して配る。屋台で売っていた物だが、ベーコンとレタスにピリッとしたソースがマッチしてなかなか美味い。


「とりあえず3人共戦闘経験はないんだよな」


 オレの言葉に全員が頷く。

 フム。それじゃ、最初はオレが1人で前衛をやるのがいいかな。慣れてきたら魔導師じゃないマイカも前衛に入ってもらえば、バランスのいいパーティが組めるだろう。

 そう説明すると、3人はオレ1人が危険の高い前衛をやる事に最初は難色を示したが、慣れるまでだと納得してもらった。

 基本的な戦略としては、マイカとオリヴィエラは中衛からオレが攻撃を引きつけている敵を狙って攻撃、リノは念魔導の視覚阻害による補助という感じだ。


「最後に、もう1つ。オレの命令には絶対従うこと」

「ご主人様、そんなこと言わなくても私達は囮でも壁でも、ご命令とあらばどんな命令にも従いますよ?」

「本当だな、マイカ」

「ええ」

「じゃあどうしようもなくなった時、オレを見捨てて逃げろと言ったら、ちゃんと従うな?」

「ダメです」

 

 即答だった。


 え~…………。

 ソッコで矛盾してるじゃん。


「ご主人様。申し訳ありませんが、その命令に従う事はできかねます」

「そうなの。ご主人様をおいて逃げるなんて絶対ダメなの」


 オリヴィエラとリノまでマイカに同意してしまう。


「ダメだ。どうしようもない時は――」

「助けます」

「だから、それが無理な時は――」

「一緒に逃げます」

「……逃げることできそうに――あ~、わかった。わかったから泣くなよ、頼むから」


 終いには3人共が泣きそうな顔をしだしたので、降参して話を切り上げる。


 自分のためだけじゃない。3人のためにも、危険な目に遇わないように細心の注意を払おう。

 そう決意を新たに、ミニゴブリンがよく出没するといわれる、街の西にあるサントラの森へとオレ達は向かった。

 

今回バトルの予定だったんですが……。

次こそは!

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