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第9話

「これら女性で戦闘向けであると思われる奴隷です」


 やはりチョピンさんの言う通り数が少ないらしく、男性が幾つかのグループに分かれていたのに対して女性は一度で纏めてステージに並べられた。全部で1、2……12人か。見た目から戦闘に向いてそうな人もいるけど、中には本当に戦闘向けなのか、と疑問を持つくらい華奢な見た目の女性もいる。半分くらいは獣人みたいだ。結構可愛い娘もいる。みんなマイカやリノと同じように薄いワンピースシャツを1枚きているだけなので、なんというか、こう、非常に……いいね!


 だが、最後から2番目に入ってきた女性を見るなり、彼女から目を離せなくなった。背はそれなりに高くスラッとした体型。胸は少し控えめだが、思慮深そうな整った顔立ちをしている。そしてなにより目を惹くのは海の色みたいな紺碧の髪だった。頭の横、人間よりも少し高い位置に髪の隙間から後ろに尖った耳が見える。


「それでは一人目から紹介させていただきます」


 チョピンさんが男性の時と同じように端っこから紹介をしてくれる。万能鑑定でステータスをチェックしながら話を聞くが、ふとした時に青い髪の彼女の方に目がいってしまう。


 華奢だと思っていた奴隷は魔法が使えるみたいだ。ステータス欄には自然魔導Lv2と表示されていた。う~ん、魔法ってどうやったら習得できるんだろう。オレにはラーニングのスキルもあるし、条件がわかれば習得は可能だと思うんだけどな。リノも念魔導を持ってるし、後で聞いてみるか。


 そんな事を考えていると、件の青い髪の奴隷に紹介の順番が回ってきた……のだが、何故か彼女を紹介しようとした時、チョピンさんの表情が若干曇った。


「この奴隷は、少し事情がありましてね……。この娘は蜥蜴人族なのですが、スキルに聖魔導を所持しているんです」


 ……それの何が問題なのだろうか? リノからも獣人はあまり良い扱いを受けないってことは聞いているけど、念魔導を持っているから特別ヒドい扱いを受けたなんてことは聞いていないが。


「それが何か問題なのでしょうか? すいません、ここから離れた田舎から出てきたもので、こっちの常識には疎いのです。獣人があまり良い扱いを受けていないということは知っているのですが」

「なるほど。ということは、スグル様はかなり遠くからお出でになられたということですな」


 さっきも遠くの出身だと言ったお陰で、チョピンさんは特に疑問に思わなかったみたいで、すぐに説明をし始めてくれた。


「スグル様もご存じのように、このサントラフォードの属するユミール王国では、基本的に獣人の立場はよくありません。これは友好国である隣国のセインティア聖国の影響によるものがおおきいのです。ちなみに彼女もセインティア出身でした。」

「セインティア聖国ですか」

「あの国は建国した時から人族こそが至上の存在であるという考えが根付いています」

「この国にもその考え方が流れてきたと」

「はい。そして、その人族至上主義の考え方の根本にあるのがセインティアを支配する唯聖教の教えなのです」


 宗教がらみか。そういうのはやっかいと相場が決まっているよな。


「そして聖魔導は本来、唯聖教の信者となり厳しい修行を経た者が身に宿すことができるスキルです」


 マジで? オレも聖魔導を覚えたかったらその宗教入らないとダメなの? う~んリノの事を考えると、別の方法を探したい所だ。


「ただ、まれに生まれながらにして聖魔導のスキルを身に宿している者も中にはおります。それが唯聖教の信者と認められる人族ならばいいのですが……」

「彼女は迫害の対象であるハズの獣人だったというわけか」

「ええ。自分達が厳しい修行に耐えて手に入れるはずのスキルを、よりもよって獣人が生まれながらに所持している。あの娘がセインティアにいた頃、只でさえ迫害を受けている上にそんなことが知られたらどうなるか、おわかりでしょう」


 普通に考えて、良い未来は思い浮かばないな。彼女をきっかけに唯聖教とかいう宗教の信者達が獣人を受け入れるようになった、なんてことが起こっていたなら、奴隷商の店にいるハズがない。


「より一層酷くなる迫害に耐えかねた両親に、あの娘は売られたのです」

「…………」


 思った以上に胸クソ悪くなる話だった。


「――以上で、簡単な紹介を終わります。スグル様、気になった奴隷はいらっしゃいますか?」


 その後、最期の奴隷の紹介を終えたチョピンさんにそう聞かれる。簡単な紹介で全員を見てから、気になった奴隷を何人か選んで詳しい話を聞いて購入する、という流れが基本らしい。


 オレは元冒険者だという奴隷の中から1人、それと魔法を使える奴隷を2人残してもらった。元冒険者の奴隷は22、3歳くらいのショートカットが似合う兎人族の女性だった。抜群のプロポーションとフカフカの兎耳に惹かれたわけでは…………まぁうん、それは置いておこう。

 魔法を使える2人は例の青い髪の蜥蜴人族の女性と、15歳くらいの人族の少女。人族の方は小柄で華奢な体格の可愛らしい少女。持っているのは自然魔導Lv2だ。


「こちらの元冒険者の奴隷は兎人族の戦士で、経験も豊富です。JOBのLvは15、スキルもLv3の剣術と盾術を持っています。ご覧の通り、容姿も優れており、性奴隷としても重用できると思います」


 本人を前にあけっぴろ過ぎる説明じゃないかと思ったが、当の本人は気にしている風もなく、むしろこちらを誘うように豊満な胸元を強調するポーズをとってくれた。薄着1枚でそのポーズは破壊力ありすぎだろ。前に机があってよかったよ。しばらく立ち上がれそうにない。


「お値段は、そうですね。スグル様の将来性に期待する意味を込めて金貨50……いえ45枚でどうでしょう?」


 買えるか! 金貨45枚――45万ゴルドってことは、日本円だと大体450万円くらいか。

 さっきマイカやリノに値段をつけるならって聞いたら、同じくらいの金貨4、50枚だろうって言っていたから、戦闘もこなせるこの奴隷がこの値段というのはチョピンさんの言うとおり相当値段を勉強してくれているんだろうけど、ない袖は振れないのだ。


「すいません、さすがにそんな大金は持ち合わせていないんですが……」

「フム、そうですか」


 予想の範囲内だったのだろう。チョピンさんは特に落胆した様子を見せる事はなかった。


「では、こちらの自然魔導を使う奴隷もお買い上げは無理でしょうね」

「ちなみに彼女のお値段は?」

「魔法の中でも自然魔導のスキルは戦闘で役に立ちやすいので、冒険者の方がお求めになる事も多いです。故に値段の方も高くなりがちです。この奴隷ですと……そうですね、金貨100枚ほどでしょうか」


 ハイ、キマシター。金貨100枚、100万ゴルド。文字通り桁が違うね。当然買えるはずもなし。

 さて、残るは……。


「それじゃあ、蜥蜴人族の彼女は?」

「金貨10枚、ですね」


 おおっ! 盗賊の報奨金やら装備を売った金を合わせれば買えるかも!?


「ですが、スグル様、本気ですか? セインティアほどではありませんがこの国も唯聖教の信者は多いです。そういった方達から理不尽な嫌がらせを受けるかもしれませんよ」


 それがあるから値段が低いのに買い手が中々つかないのです、とチョピンさん。


「構いません。聖魔導というのは傷を治したりすることができるのでしょう?」

「ええ、まぁ……」

「ならばデメリットよりも、回復手段が手に入るメリットの方が大きいですから」

「なるほど、スグル様は冒険者になられるんでしたね。それならば確かに聖魔導を使える仲間というのは大きいメリットになりますでしょう」

「ですよね」

「それに獣人に嫌悪を示す方でなければ、彼女の容姿は充分美しい部類でしょう。性奴隷と使ってもいいのでは?」

「それもいいですね」


 ニヤニヤとした表情のチョピンさんに、ちょっと見栄を張ってなんでもないように返す。それを言うならあの兎人族の彼女も惜しかったけど仕方ない。しかし、蜥蜴人族の女性は目の前でそんな話を聞かされているのに表情一つ変えない。マイカとはまた違ったタイプのクール美人だ。


「そうですか、ご主人さまはああいった女性が好みなんですか」

「ああ、まあね。もちろんマイカとリノも――ってマイカにリノ!!?? いつからそこに!?」


 いつの間にか、背後には無表情のマイカとリノが立っていた。なんだか後ろに吹雪の幻が見える気がする。きっとリノが念魔導でも使っているのだろう。イヤー、凄いな。なんだか本当に寒気まで感じるぜ。


「…………ちなみにいつからそこに?」

「ご主人様が男性の奴隷を断って、女性の奴隷をわざわざ(・・・・)集めてもらった時からです」


 なんでわざわざの部分を強調するの? やましい気持ちはこれっぽっちも……まぁ、うん。

 でもその時からいるならあの奴隷の境遇とか、持っているスキルとか聞いているハズだよね。


「あ~、ゴホン。じゃあ、聞いての通りだ。冒険者をするにあたって回復役が欲しいから、彼女を買う事にしようと思う。後、性奴隷云々は冗談ですよ?」

「「…………」」

「あ、あのマイカさん? リノさんもなぜ無言なのでしょう?」

「ご主人様」

「ハイッ!」

「私達はご主人様の奴隷です。故にご主人様のなす事に異を唱えたりはしません。ですが、一つだけお願いがあります。もしご主人様が性奴隷をお求めで、私やリノの容姿がご主人様のお目に叶うのでしたら、どうか私達にもその務めを果たさせてくださいませ」


 マイカの言葉に合わせてリノがコクコクと同意するように頷いている。その言葉は非常に嬉しい。嬉しいんだけど……。


「いやいや、スグル様はお二人に本当に想われているんですね」

「ッ!?」


 チョピンさんだけでなく、ステージ上の奴隷の女性まで含めた生温かい視線に気が付き、マイカとリノが顔を真っ赤に染めた。

次の第10話は一応1月4日投稿の予定です。

毎日投稿しようと思ってたのに、早くも挫折……。

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