敵地潜入1
現在私たちは3班に分かれて行動している。
父は単独で、黒龍は母と共に、そして子供たちチームだ。
今回の作戦は事前に入念な説明と指示がされている。
まずは相手について。黒龍の話によると、相当な数の魔術師がいたという。その数100人。
隠密を弱めてしまった瞬間に、いっきに集結したそうだ。瞬時に感知し集まれる統率力と魔力感知力。相当優秀な魔術師と言える。100人で鎖の様な魔法をつかい黒龍を抑え込んだそうだ。その魔法は呪いの魔力を含んでおり黒龍は対処に困ったという。
そして呪いを掛けてきた術者は10名。
幸い、抑え込まれていた鎖を闇魔法で抑え込むことはできたがその間に呪いを受けたのだという。しかし相手集団は鎖がとれた瞬間、転移で逃げたそうだ。
転移魔法はそう簡単に出来ない。それほど優秀な魔術師が相手だ。
そして今回の私たちの役目は、ロイド君を探すことだ。注意する点は、敵と遭遇した際は素早く捕縛し母に連絡を入れること。もし強敵だったら逃げること。
ロイド君の生死は問わず見つけ次第報告し、回復魔法を掛けること。以上が注意点だ。
そして魔術師たちは、父と母、黒龍で片づけるとのこと。
そうして今私たちは隠蔽魔法を父に掛けてもらった後、父と分かれて敵アジト周辺で待機する。
体全体に盾の魔法を纏う。これで身体強化も兼ねている。
一石二鳥だ。
…
息を潜めて地下からの合図を待つ。
ッッッッドォォォォォォォンッ!!!!!
爆音が響き渡った。父が攻撃を仕掛けた合図だ。
一気に地下へと進む
地下は思ったより広く開けたつくりをしている。無数の通路があり、アリの巣のようだ。
中へ入ると父が数十名の魔術師と対峙している。
「セイ。浮遊だ、飛んで奥まで行こう。」ヒソっと兄が耳打ちする。
コクリと頷き一気に浮遊で上昇。
最近はスピードは出せないが飛びたい方向へはなんなく進むことが出来るようになった。
モチ、兄、私、リゲル、ピノの順に奥へむ。
たまに流れ弾ならぬ流れ攻撃魔法が飛んでくるので用心する。
奥まで進むと怪しい沢山の書物、実験体に使われた魔物の死体、檻の中で鎖に繋がれて痛々しい姿になっている魔物が沢山いる。
「お兄ちゃん...」
悲しくなってくる。辛い気持ちが喉を詰まらせる。
「セイ。この子たちは後で解放するぞ。
魔物でもこんな扱いは観ていられない。だがまずロイド君だ。
他にも捕まっている人たちがいるかもしれないんだ。頑張れるか?」
「ん。頑張る。早くその人たち助ける。」
そうだ。今すべきことはここに囚われているかもしれないロイド君の捜索だ。
他にも生きている人がいたら救い出さなければいけない。覚悟したはずだ。
…
モチの探査魔法で人間らしき人の魔力反応を見つけたらしいので後について行く。
しばらく飛ぶとデカい扉があり、その前に門番らしき魔術師が3名いる。
「いいか。まず盾の魔法は...よし各自展開してるな。モチ、お母さんに報告しておいてくれ、戦闘になる。
いいか、まずは捕縛だ。攻撃してきたら死なない程度に痛めつけて再起不能にさせよう。」
コクリ。みんな真剣な表情だ。
まとまってモチの結界内に入る。地上へと降りたら...
攻撃開始だ!
相手には私たちの事は見えていない。
だが一点の場所から攻撃すれば場所がどこだか教えてしまうようなものだ。
「植物魔法...アイビー(蔦)キャッチッ」
蔦を地面からにょきにょきとあらゆるところから発生させ、対象3名を巻き付ける。
「「「なんだ!!!」」」3名の魔術師が火魔法で蔦を焼こうとする。
兄に合図。
すると兄は氷魔法で相手の足を氷固める。それでもなお火魔法で焼き溶かそうとしている。
とりあえず...氷を溶かして水にぬれてくれたので...
「雷魔法...スタンガン」兄が気絶程度の電気を彼らに流す。
「簡単だったな。案外。」
どうやら簡単に気絶してくれたようだ。
3名を身体強化で端へ運び土魔法で首から上以外を土魔法で拘束。そして地面に埋める。
はたから見ると生首が三つ。
他の仲間にばれても良くないので、3名の顔を隠すように土の箱を被せる。もちろん制気口は設置して換気は行う。窒息されてはまずい。
気になる事はこの人たちが同じマークの入れ墨を腕にしていた事だ。
仲間の象徴とかか?
気になるけどこのことは後で両親に話しておこう。
「門を開けるぞ。モチ、結界頼んだ。」
『うん!任せて!』
ガチャ 「「!!!」」
ガチャ …閉める
「うッゲホッゲホッ」臭すぎる。刺激臭だ。
モチは顔面蒼白になって鼻を私に押し付けてくる。とりあえず回復魔法を掛けておいてあげる。リゲルもピノも臭すぎたのか飛んで遠くへ避難。
「うう...ここで思わぬ障害がでてきたな。モチ、結界で空気も通さないようにできるか?」
『うん。やる。...結界!出来たよ...』
...意を決して門を開ける。
ガチャ
「に...臭わない!!モチ!やるな!」
なんだか洗濯洗剤のCMを見ているかのようなリアクションをする兄。
「クリーンクリーンクリーン」
とりあえず臭さの原因は汚れから来るものなのでクリーンを連発しておく。
しばらく入口でたったまま門の中へクリーン魔法をかけまくった。
「よし!匂いは...大丈夫だな。臭わない
じゃあ、入るぞ。扉の中は暗いから足元はライトの魔法照らすように。
こんかいは天井が低いから、浮遊はできない。慎重にすすむぞ。」
...「しっかりして!お兄ちゃん!」
どこからかそんな声が聞こえてきた。
『ゴウ君!セイちゃん!奥に沢山の人がいるよ!』
!!!
駆けつける。
先ほど聞こえた声が視界を狭くするように私を不安にさせる。
「セイ!俺達には魔法がある!大丈夫だ!」
ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!
!!!!悲鳴だ!
駆けつけると目の前に先ほどと同じような魔術師?
いや...ちがうな。ちがう...こいつらは
「呪術師...」兄がつぶやく。
目の前には2名の呪術師がいる。感覚で分かる。魔力の練り方が上手い。
私たちの方が魔力量格段に多いが、熟練度が違う...
奥には獣人やエルフ、様々な子供がおびえるように身を寄せ合っている。
2名の呪術師は一人の男の子になにか術を掛けている。暴行も沢山されたであろう、腕の形がおかしな方向へに曲がっている。意識は何とかあるようだ。
「...モチ、お母さんに直ぐ報告。呪術師2名と戦う、捕縛は不可能ってな。」
兄は額に血管を浮かばせるほどその状況に憤怒している。
「セイ。俺は、止まれない。リゲル、行くぞ。」『リュッ』
「私も、お兄ちゃん。私も1人やる...ピノ、モチ、行くよ」
『キュッ』『ウォン』
「いくぞ!!」
「うん!」
…私たちの戦いがはじまった。