エピローグ
エピローグです
よろしくお願いします
あれから悪魔側と天使側でのいざこざは無く束の間の平穏を謳歌していた。
白河曰く襲撃らしい襲撃も無いとのこと。
ちなみに白河といえば普通に回復して普通に学校に登校してきている。
もう白河との関係をユグドラシルに隠す意味も無く今日は何故か一緒に登校していた。
「っていうどうでもいいモノローグはいいのよ。そんなことより」
白河はギラリと睨みつける。
鴇矢ではない。
鴇矢の隣を歩いている人物をだ。
「あら、そんな怖い顔してたらせっかくの美人が台無しよ白河さん」
白河と長瀬に挟まれるように歩く鴇矢の心は心底疲れを増していく。
「言っておくけど私はもう十分に回復できたのだけれど? 真昼間から殺されたいのかしらサリエルの長瀬さん」
「冗談言わないで。単独であなたに勝てるとは思っていないし、私はラグナロク関東支部の管轄から外されちゃって完全に部外者。必要以上に悪魔、それも七大罪相手に事を構える気はないわ。単独であなたを殺すのは難しいものね」
「じゃあ何故そんな余裕な顔でいられるのかしら」
「時期に解るわよ」
それ以上長瀬は答えなかった。
そのことが気に食わないのか、苦虫を噛んだように睨みつけるも戦闘を行う様子は無いようだ。
教室に入りカバンを机にかけ、そして座る。
いつ以来だろうか。隣に黒髪の女子生徒が座っているのは。
白河と長瀬という二大ヒロインと登校した鴇矢のステータスはさらに跳ね上がっており、いろいろと勘違いの幅を広げていき鴇矢の想像を飛び越えていた。
「ほんと疲れるわね」
頭を抱えるように言う白河。
その噂を聞いたのだろう。白河もまたうんざりといった様子だ。
長瀬はというといつも通り。
ユグドラシルの人間はそういうものだと前に白河が言っていたことを思い出し軽くため息を吐く。
谷崎とも挨拶した。どうやら長瀬には正体がばれたようだ。しかし突然口調を変えるのもおかしいということでいつもの口調を続けていた。
赤坂からは恨めしい目を向け続けられて気持ちの方が疲れてしまう。昨日一日で事が多くありすぎた。容量オーバーもいいとこだ。
そんな鴇矢の心情を無視してチャイムが鳴り教師が入ってきた。いつものホームルームが始まる。なんの疑いも無くそう予想して目を細めていると、
「突然だが転校生を紹介しようと思う」
そんなことを言い出した。
転校生だと?
そういえばクラスがやけに騒がしかったような気が今更ながらする。
どこから誰が来るのか。正直興味が無かった。
鴇矢にとって今この瞬間の平穏こそが幸せだったからだ。
「今この時が幸せか……」
退屈にうんざりしていたのは過去の話で今はそのうんざりな退屈こそ幸せに感じている。
恐ろしい心境の変化だ。
今ならどんな状況の変化にもついていける自信がある。
「どっとこいや」
これ以上疲れることは起きないだろうし起きたら困るというか面倒。
そんなことを考えつつ教師に呼ばれ教室に入ってきた女子生徒を見て鴇矢は唾を飲み込んだ。
「嘘だろ……」
忘れもしない。鴇矢に絶対的な力と、そしてその美貌を見せつけた金色の髪の女性。
レヴィアタンである白河もまたその正体に驚き、クラス中の男子だけでなく女子までもがその生徒を見て歓喜の声を上げた。
それほどまでに美しかった。
白河と長瀬の二大美人に割って入るかのような容姿と身体を持ったその女子生徒は微笑みを交えながらこう言った。
「初めまして、ユグド――じゃなくて私はベラルーシから来ましたミカイル・サクイファイスって奴です。趣味は悪魔を狩り殺す……じゃなくてゲームです。日本のことはまだあまり詳しくありませんがよろしくしてくださいって奴ですよ」
などと意味不明な供述を始めた。
というかベラルーシってどこの国だよというクラス中の疑問符を吹き飛ばすかのような天使の笑顔はそれはもう眩しかった。悪魔には害でしかないのかもしれない。おかげで白河のただでさえ鋭い視線がそれはもう研いだ刀のように鋭くなっていた。
「ミカイルってもうちょっと捻りようがあったんじゃないのか」
「何を考えてるのかしらねあの女」
紹介を終えて席を指示されるミカエルではなくミカイルは鴇矢と白河を無視するように悠然と鴇矢の隣に座った。
「待て待てそこは普通にクラスメイトがいただろうが」
とツッコみを入れる矢先だ。そこには誰もいなくなっており、そこにいたモブ野郎を中心に一番後ろの席が廊下側に向けて一つづつずれているのが解った。教師が指示したわけじゃない。特殊な力によってそうされたのだ。
「どいてもらったって奴よん。この程度のことなら、なんてことないもの」
そう楽しげにほほ笑むミカエイル。
もはや鴇矢の因果を操る能力並みのチートを易々とやってのけており、こんなのを相手にいつか戦うのかと思うと頭が痛くなってくる。
教師のつまらないホームルームを終えた鴇矢と白河と谷崎はミカイルと長瀬の二人を呼んで校舎裏に集まることとなった。
「ちょっとぉ、転校生をいきなり校舎裏に呼び出すって酷くないって奴よ、ねえ長瀬さん」
「そうね、非常識だわ」
「非常識の塊みたいな奴に言われたくないわね。一体どういうつもり。戦うってんならやってやるわよ」
「レヴィアタン……じゃなくて白河さんってばほんと怖いわぁ。学校は殺し合う場所じゃないでしょうって奴よ」
「はああああ!?」
白河が声を荒げるのは随分珍しいこともあるものだ。
「言ったでしょう。私は鴇矢を気に入ったってね。それに学校生活って奴も体験してみたいって奴なのよ。何かおかしいことがあるって奴なのよ」
ルシファーとレヴィアタンとミカエルとサリエルが同じ教室で生活。
「おかしいことしかないわよ。イカレてんのは力だけにしときなさいよ」
「褒め言葉として受け取っておくって奴よ」
「とにかくそういうことだから、むやみに私に戦いを挑めばミカエルも混ざることになるから注意しておくことね」
「そういうことって奴よ。サリエル……じゃなくて長瀬さんは私のお気に入りの弟子だから殺そうとしたらお姉さん怒って何しでかすか解んないって奴なのよ」
白河は何も言わない。
意識して理解してるのだろう。
ミカエルと戦って勝つ可能性の低さを。
「ま、そういうわけだから」
「ちょ、なんだ」
突然鴇矢の腕を掴むミカエルではなくミカイル。
「これからよろしくねダーリン」
「誰がダーリンだ殴るぞ」
「いやん、家庭内暴力って奴かしら」
「誰が家庭だあ!!」
こうして奇妙な人間関係を持った学校、もとい教室はこれから今まで以上の混沌に満ちていくことは決定事項となり、鴇矢の嫌いから隙になった平穏はあっさりとバッサリ切り捨てられそこらのごみ箱に捨てられた。
もうどうとでもなれと鴇矢はただ項垂れるしかなかった。
最後までありがとうございました




