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365日のサンタクロース  作者: 鈴木
2008年のサンタクロース
9/17

2008年10月31日



「お菓子くれなきゃいたずらするぞー!」

「……仕事は?」

「はいっ、早退しました!」



10月31日。

世界ではハッピーハロウィン。

ハッピーかどうかは知らないし、イスラム圏内とかではきっと行われていないだろう行事が、仏教圏内の日本、しかも、帰宅した我が家で開催されていた。


……何物のつもりなのかは若干謎な仮装をした、サンタクロースの手によって。



「通りで……早々に帰宅したと思った。合点がいったわ」

「はい!」



決して褒めたつもりではないのに、何故か、うきうきで笑う千尋。

しつこいけど、褒めたつもりはないのに。

そもそも、どうしてわざわざあたしの家でやるのか。

これまたしつこいかもしれないが、うちの墓は寺にあって、土葬ではないし花葬でもなければ、だだっ広い敷地に十字架が立っているようなものでは決してない──決して。


それ以前にこの行事のルーツはキリスト教ではなかったような気がする。

いや、それより何より、自分の家でやって欲しいと思うあたしは、多分、きっと、間違ってない。



「流石はワールドワイドサンタ」

「?何ですか?」

「何でもない」



笑顔で首を傾げたサンタに、脱力して首を振った。



「朱美さん、ほら!」



それよりとばかりに、てっと手を出してうきうきと笑顔を浮かべる千尋に、意味がわからなくて、今度はあたしが玄関先で首を捻った。


何なんだ。



「自分んちで開催してよ」

「だって、こういうイベントはやっぱり一人より二人でやらないと」



まだ上がれてもいない自宅は、ちらと見えた限り、無駄に装飾がされていた。


玄関先には、かぼちゃ。

かぼちゃがいる……かぼちゃのランタンがいる。



「まさか、自作?」

「はい、苦労しました!」



苦労したんだ。


そりゃそうだろう、かぼちゃは綺麗に顔が刳り貫かれ、中には、ご丁寧にキャンドルが灯されている。

踏まなくてよかった。

火事になるところだった。


思考が逸れて足元を見詰めるあたしの視界に、ずいっと侵入してきた、千尋の手。



「ほら、朱美さん。例のものをください」



例のものが何かは嫌というほど理解出来るが、生憎あたしは、この行事にそれほど関心がなかった。


訪れた沈黙に、まさか、とばかりに眉の下がる千尋。



「……まさか、いや、やっぱり……」

「……あーごめん。まさかあんたが、こんなに盛り上がってると思わなくて」



と、いうか。


まさかサンタクロースが、ハロウィンにご執心とは思わなくて。


そう言わなかったあたしは、結構、大人だと思う。

悪かったかなと少しだけ思いながら、恐る恐る顔を上げたなら。



「あれ?」



満面の笑顔な、千尋がいた。



「お菓子くれなきゃ、いたずらするんですよ?」

「いたずらって……っ!?」



近づいてきたのは、思った以上に端正な顔。

金色の柔らかな髪が、あたしの鼻先を擦って。


頬に当たった、少し低めの温度。



「ハッピーハロウィン、朱美さん」



また目の前に戻っていた千尋の笑顔に、息を飲んで、固まった。



「さ、ご飯にしましょうか」

「……また、うちで作ったんだ」

「合鍵ありますもん」

「合鍵!?」



10月31日。

例え一部であろうとも、世界ではハッピーハロウィン。


二度びっくりして、それから、少しだけ、千尋を意識した。

そんなハロウィン。





「日本てあんまり悪魔とかに興味ないんですか?」

「は?」

「だって、案外盛り上がってないなあと思って」

「うーん……まあ、そうなんじゃない」

「仏教圏だからでしょうか。でも、クリスマスとかは盛り上がりますよね?」

「馴染みがないのは確かだと思うけど……妖怪とかだったら盛り上がったんじゃない?」

「豆腐小僧のコスプレとかですね!」

「いや、まあ、豆腐小僧メインてことはないと思うけど」





end?

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