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01 突然の手紙

 本日の業務はいつも通り平和なうちに終わった。


「さようなら~」


「さようなら、ロザリンド。また明日ね」


 私達は手を振ってお別れをするとそれぞれの帰路に着きました。

 道すがら、どこかの家からパンが焼ける良い匂いが漂ってきて、私のお腹が「ぐぅ~」と反応した。

 お腹が空いたな、早く家に帰らないと。

 空腹が自然と私の歩みを早まらせる。

 何を食べようかな、などと様々なメニューが頭に浮かぶけど、結局のところ今日の夕飯も何時もと同じになるだろう。

 自宅に着くと早速台所へと向かう。

 ジャガイモを使って何時ものメニューを作る、そう思っていたけれど……。

 よし、今日は少し奮発してチーズジャガイモにしちゃおう!

 たまにはこのぐらいの贅沢も良いと思うのだ。

 ……良いよね?

 そう自分に言い聞かせながらジャガイモを薄切りにしてバターで炒め始める私でした。

 次にチーズを薄切りにして炒めたジャガイモとまぜ合わせます。

 そしてギュっとジャガイモを平らに押さえつけるように炒めると、表も裏も焼き色が着くまでさらに炒めて後は食べやすい大きさに切り分けたら完成です。

 これは大叔母様の家にいた頃覚えた料理で、本来ならこれに鶏肉のソテーを付け合わせるのですがこれ単体でも十分に美味しいのですよ。

 これに少し硬くなった黒パンを付け合わせて、立派な料理の出来上がりです。

 それに自分が摘んだ雑草――基、カモミールで少し甘い味のお茶を沿えると「頂きます」と言ってアツアツのうちに口へと運ぶ。

 うん、おいしい!

 文句なく御馳走といえる味わいです。

 空腹な事もあって、私は次から次へと口に運んでいく。

 私は最後の一切れを口へと運ぶと、お茶で口の中を洗い流し一息つきました。

 あー、お腹一杯。

 そして、しばしの休憩とばかりにベッドへと横たわると睡魔が徐々に襲ってきます。

 このままだと眠ってしまう!

 私はなけなしの気力を振り絞ってベッドから体を起し、気怠い身体に鞭を撃って寝間着に着替え終わると布団に潜り込んで毛布を被るのでした。


 そして翌日、いつものように朝の準備と朝食を済ませ工房へと向かった。

 今日は半ドン日なので何時もより早く仕事が終わり、そのまま家へと戻る。

 同僚の何人かは集まって一緒にランチを取るような話をしていた。

 私も以前は誘われる事があったのだけれど、何度も断っているうちに誘われなくなってしまいました。

 だって外食するより自炊する方が結果的に安くつくんですよね。

 昨日はちょっと贅沢をしてしまったので、その分切り詰めないと……。

 そう思いながら家に着くと軽めの昼食を済ませます。

 そして空いた時間で掃除をする。

 半ドンの日は掃除をすると決めているのです。

 掃除道具を握りしめ、腕まくりしながら掃除にいそしんでいたその時の事。


「すみませーん」


 と、外から声が響いてきた。


「誰だろう?」


 窓から顔を出すと、その声の主から再び声が掛ります。


「ロザリンド・ウッドヴァインさんですか?手紙の配達にきました」


「分かりました、お待ちください」


 私は掃除道具を置くと、慌てて外に出て手紙を受け取った。


「それでは確かにお渡ししました」


「ご苦労様でした~」


 立ち去る配達人を見送った後、私は手紙をひっくり返すと差出人を確認する。

 差し出し人は『べラ・ロースソーン』とありました。

 ……全く身に覚えのない、知らない名前です。

 不思議に思いながらも部屋に戻るとペーパーナイフで封筒をカットして中身を取り出しました。

 えっと何々……



『拝啓、貴女にはますますの御健勝、御繁栄の趣、申し奉ります。

 さて未だ面識の無き私より突如この手紙を持つて、貴女の御清閑をお妨げする事は甚だ恐縮では御座いますが、是非ともに貴女にお願い申し上げたき事が有りましてこの手紙を認めました。

 お願いと申すのは私の儀に非ず、私の愛すべき亡き友人に関する事では有りますが、是非とも貴女に御渡したい物が有ります。

 然すれば是非ともご来訪を仰ぎたく、無躾ながらもこの手紙を認めました。

 恐らくこの手紙を読まれる貴女は、本手紙を怪しまれ御疑いになられるかもかも知れませんが、決して貴女を騙す意図あらず、貴女の心に届く事を願うばかりです。

 尚、ご来訪の際は事前に御連絡下されば、最優先で御対応致します。

 くれぐれも本手紙を御閑却下さるまじく、幾重にも御願い申し上げます。

                                               敬白

 ロザリンド・ウッドヴァイン殿                        べラ・ロースソーン拝

              玉案下』



 非常に古めかしい言い回しが多く、読み解くのに時間が掛かってしまいました。

 それで読み取った第一印象でいうと、ナニコレ?と?マークが沢山頭に浮かびました。

 ロースソーン家は伯爵の爵位を持っている王国でも有数の名家である。

 しかし、私は十一歳で家を離れた事もあって、社交界とは殆ど縁が無かった。

 当然、べラ・ロースソーンという人物にも心当たりがない。

 最初は人違いなのではないか?

 と、思いました。

 若しくは手紙の配達場所を間違えているとか……。

 そう思って何度も手紙を読み直しましたが、当然のように書いてある内容は同じです。

 つまり詰まることツマレバこの手紙のあて先人は私で間違いがないのだ。

 私宛で間違いが無いとしても、最初は無視してしまおうか、そんな考えが頭に浮かびました。

 手紙には『本手紙を怪しまれ御疑いになられるかもかも知れませんが、決して貴女を騙す意図あらず』と書いてありましたが、無茶苦茶怪しいですよね?

 しかし、それでも――やっぱり気にはなります。

 私は何度となく手紙を読み返しました。

 そしてその度に、怪しさよりも果然興味が湧いてきたのです。


「よし、行ってみるか」


 私はそう一人で宣言すると、手紙を大事に机の引き出しへと仕舞いこみ掃除を再開するのでした。

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