四月馬鹿作品~ノブナ(ガ)の野望~
※女体化&夢オチ注意
拍手お礼画面の再掲ですが、ひじょーにしょーもない内容です
ある日、目が覚めたら腕枕されていた。
たくましい腕にすっぽり覆われる形で、俺は横になっている。
何を言っているのか分からないかもしれないが、目の前にある顔がどう考えても既知のものである。諱は利家、氏は前田、通称は又左衛門。子供時代からの舎弟で、犬と呼ばれる以外は認めない変態……もとい、残念なイケメンである。
小姓の身分から、正式に一家臣として処遇するに至った。
「なんで俺、野郎と同衾しているんだ?」
「うーん、むにゃむにゃ」
寝言らしき何かを呟きながら、利家が動く。
「やわらかい」
筋肉が足りなくて悪かったな。
いや、違う。
馬鹿犬が顔を擦りつけている部分に、ありえないものがある。明らかな矛盾だ。俺の嫁たちに比べればササヤカな大きさだが、どう考えてもアレである。
俺の丸く育った乳房に、利家が埋まっていた。
「おノブ、さま……」
「そうかそうか、そんなに死にたいか」
その時の俺は獰猛な笑みを浮かべていただろう。
知らないうちに、野郎とよろしくやっていたなんて信じたくない。意外に美乳だとか思っていない。そんなものが生えている時点で、色々おかしいとか考えている暇はない。
「今すぐ離れろ、馬鹿犬がー!!」
渾身のアッパーカットが炸裂した。
改めて俺、ノブナガ。
女体化現象は二次元だけにしてほしかったが、性転換したのは俺だけだった。名前はそのまま織田(三郎)上総介信長なのに、前世から運命共同体であったはずのアレがなくなっていた。
やや高めの声、化粧映えする地味顔。
一向に筋肉がつかない細身の体も「女」になってしまえば、違和感などない。少しばかり背が高いのも、舎弟たちに囲まれると全く気にならない。奴らはどいつもこいつもニョキニョキ伸びて、ムキムキ鍛えて、日焼けした肌も健康的な戦国武将である。
はげればいいのに。
もげればいいのに(俺だけじゃ不公平)。
「ああもう、イライラする!!」
「アノ日ですか? 女人は大変ですね」
さらっとセクハラ発言をかます成政の隣で、信盛が鼻を鳴らす。
「ふむ、しばらく夜の務めは免除されるか。つまらんな」
「一か月オアズケくらうよりマシだろ!」
「又左の場合、いたらぬ技でご不興をかったせいであろう。我らはいかなる時も、おノブ様にご奉仕する立場を忘れてはならぬのだ」
技とか言うな、技とか。
利家だけでなく、俺の側近たちは一人残らず関係を持っているらしい。猿は除外されているが、元服したら弟を差し出す心積もりだとか聞きたくなかった。小姓には手を出さないというのがモットーで、橋介は後数年が待ち遠しいと訴える。
そんな熱く見つめられても、嫌なものは嫌だ。
どうやら「女」の俺はかなり奔放な性格で、面食いで、那古野城に逆ハーレムならぬ逆大奥を作っちゃう勢いで男を集めている。もちろん中身も伴っていなければ、即日放り出す。
平手の爺は、息子に手を出されたショックで倒れてしまった。
「普通は喜ぶもんじゃないのか? 覚えていないから仕方ないが」
「申し訳ありません、おノブ様。父は頭が固いのです」
「五郎、いつの間に現れた」
「いつでも貴女の御傍に」
久秀の爽やかな笑顔に、ゾッとした。
なんかどっかでこんな色ボケした奴を見た気もするのに、思い出せない。才色兼備な男たちに囲まれ、酒池肉林の堕落した日々を送っている俺の代わりに、家督相続したのは信行だ。
俺が女になったせいで、信行が嫡男になったらしい。
そして帰蝶は弟の嫁――つまり俺の義妹――になってしまった。
彼女のいない寂しさに溜息を吐けば、勘違いした馬鹿どもに寝所へ連れていかれそうになる。とっくに処女でなくなったとはいえ、昼夜問わず肉欲に溺れるつもりはない。
いや、うん。
すごく気持ちよくしてもらえるので、快楽に負けつつあるのは否定しない。どういう理屈で女になってしまったのかは分からないが、肉体的には問題ないのである。要は心の在り方だ。
帰蝶は気持ちよかったのかな。
自分ばかり優先していた気がする。
ここで反省してみても、男に戻れるかどうか分からないので時間の無駄だ。そもそも、ここの俺は生まれた時から「女」である。何か怪しい術で皆の記憶がいじられているのでなければ、の話だが。
「むぐむぐ」
この梅、なかなか美味いな。絶妙な塩味と酸っぱさがたまらん。
上機嫌で種ごと噛み砕く。
「お、おノブ様!? 今、すごい音が」
「ん~? 梅干の種は割る主義だし。中身が美味いんだよなあ」
驚く舎弟たちに、のほほんと答える俺。
久秀は「すっぱいものが食べたい」とぼやいた俺のために、梅干を用意してきたようだ。蜂蜜漬けは種無しなので、紫蘇入りの方を摘まんで食う。赤く汚れた指を舐めようとする馬鹿犬は、長谷部国重で殴った。
女になって、愛用している刀の銘を知るとか笑える。
しかも太刀だと思っていたら打刀だった。分類って何それ食えるの。
相当な業物らしいが、戦場で使うよりもツッコミに使っていた件。ハリセンの扱いは帰蝶のが断然上だし、小姓の誰かがすかざすコレを差し出してくるのだ。使わずにいられるか。
「今川義元にも斎藤義龍にもナメられて、岩倉織田家には鼻で笑われ、いらぬ正義感で次代へ据えた義銀には裏切られる寸前とか、馬鹿じゃねえの!? 馬鹿に大うつけ言われたくねえ」
平手の爺が生きているのは嬉しい。
だが、肝心の弾正忠家が虫の息である。
春日井郡の豪族たちは好き放題やっており、美濃国との関係は悪化する一方で国境沿いの小競り合いが絶えない。水野氏救援失敗で、知多半島は今川領になってしまった。
一族の所有している城がいくつか、かろうじて残っているだけである。
「もう我慢ならん! 信行をぶん殴る」
「お待ちください、おノブ様。今、国を二つに分けては他国が付け入るスキを与えるだけでございますぞ」
「このまま大人しくしていても、じりじり削り取られて滅びるだけだ! 俺は嫌だ!!」
もっと早く気付いていれば。
俺は蜂起することなく、堂々と信行だけを殴れば済んだ。話して分からない相手だとは思いたくない。男兄弟だった時も、俺たちの仲はよろしくなかった。どうあっても二人で争わなければならないのか。
帰蝶は、何をしている。
俺を支えてくれたように、信行を支えてはくれないのか。あるいは俺だから、献身的に妻としての務めを果たそうとしてくれたのか。
「具足を持て! 末森城へ、しゅった、つ……」
「おノブ様!?」
あれ、おかしいぞ。
体が言うことを聞かない。ぐにゃりと視界が歪んで、畳に崩れ落ちる。いきなり倒れた俺を皆が囲んでいるが、何を叫んでいるのか分からない。ずぶずぶと意識が沈んでいく。
あがいても、抜け出せない。
とぷんっと泥が跳ねた。
**********
あれから、一年近く経った。
目の前を小さな生き物が這い回っている。
奇妙丸と名付けられたが、もちろん俺が考えたわけではない。いつの間にか、そうなっていた。俺の不用意な一言から我が子の名前が決定してしまうとは、戦国時代おっかない。次の子供は生まれる前に候補を考えておこうと思う。
「おいで、奇妙丸」
「あー」
そう、この赤ん坊は俺が生んだ。
信行の馬鹿さ加減に腹を立て、蜂起まで考えた頃に悪阻が始まったのである。それはもう酷かった。吐くわ、頭痛いわ、寝ても覚めても気持ち悪さが収まらない。必然的に眠りは浅く、食欲もわかない。側近たちが滋養のある食べ物を勧めてくれたが、ほぼ食べられなかった。
どうせ吐くから食べたくない。
そう駄々をこねるようになって、とうとう長秀に無理矢理食べさせられた。口移しや、匙であーんする可愛らしいものではなかった。一人が体を固定し、もう一人が口腔内へ流し込む。
噎せないように少しずつ、少しずつ。
「二人目なんか、いらんな」
「まあ、そのようなことを仰って」
「笑うな、おちよ。れっきとした本心だぞ」
「はいはい」
自分で育てると言い張ったので、乳母のおちよが側仕えに戻ってきた。
乳兄弟の恒興には父親疑惑がかかっているが、側近のほとんどに同じ疑惑がかけられている。あまりにも多くの人間と関わりすぎて、誰の子種か判別つかないのだ。織田家の血が濃くても、父親に似ても、美形になるのは約束されている。
大きくなった乳房にむしゃぶりつく我が子を見ていると、戦が心底嫌になる。
何故、あんなにも戦をやりたがったのか。
もしかしたら帰蝶も争い事を厭うあまりに、慎ましく控えているのかもしれない。それにしたって織田家がこのままでいいとは思えなかった。やはり信行との直接対話は必要だ。
「お前が大きくなった頃、城がなくなっていたら嫌だよな」
「う?」
「城がなくても、雨風しのげる家と田畑があれば食っていけるが……」
「信奈様」
「そんな顔をするなよ、冗談だ。最低限、衣食住に困らない生活がいい。まあ、そうなってくると周囲のうるさい奴らをどうにかしなきゃならんか。やれやれ、仕方がない」
「きゃっきゃっ」
「ふふ、奇妙丸も嬉しいか。さすがは俺の子! 母の背を見て、たくましく育てよ」
おちよはこの会話まで全て冗談だと思っていたらしい。
だが、俺は本気だった。
宣言通りに信行をぶん殴って家督を奪い、同じように家督争いを始めていた岩倉織田家へ割り込んで仲裁し、こっそり逃げようとしていた守護代を傍流の津田氏預かりとした。こうして少し減ったものの尾張国の統一を成し遂げた俺は、これまた内輪揉めに乗じて美濃国へ進出する。
予想外なことに義龍の子、龍興は変態だった。
「今の一撃、素晴らしかったです。一生ついていきます」
「嫌だ!!」
手っ取り早く大将首を狙ったら、ドMに目覚めたとか信じられるか。
もっと殴って蹴ってシバいてくれと嘆願する主君に絶望し、美濃衆が次々と投降してくる。戦が早く終わったのはいいことだが、おそろしいことに龍興は清州城までストーキングしてきた。間違っても従軍とは言わない。
影でこっそり、昼も夜も気配を忍ばせて、周辺に潜んでいる。
滝川一族に始末を命じたら、一益の妹が目をつけられた。標的が変わったので、俺は安心して奇妙丸との日々へ戻った。まあ、たまには大人の営みってやつもあるにはある。
側近たちは第二児の父親になりたくて仕方ないらしい。
うむ、家族愛は世界を救う!
よろしい、大いなる愛(欲)の力で天下統一してみせようではないか。そして我が子供たちには、戦のない平和な未来を託すのだ。
こうしてノブナガ、もとい織田信奈の快進撃が始まる。
敵国の大将、あるいは重鎮クラスの男を片っ端から篭絡しては傘下へ組み込み、あっという間に勢力図を拡大。色香で落ちない奴は徹底的に叩き潰し、一族郎党に至るまで処罰した。
彼女は子に恵まれなかった代わりに多くの子を養子に迎え入れたが、実子である信忠と同じように子供たちを可愛がった。彼らに危機が及ぶと、たちまち鬼の如く変容する。民からも慈愛深き女性として慕われたが、本願寺派のように仏敵同然に嫌われることもあった。
苛烈な戦ぶり、そして冷酷さから「安土の鬼子母神」と呼ばれる。
琵琶湖の畔に先進的な要塞、安土城を構築して子供たちと移り住んだことに拠る。ちなみに逆大奥は存在せず、三十路も後半になってから性欲もすっかり減退した彼女によって「夜の御勤め」は廃止された。
素敵に無敵な信奈の欠点は、快楽に弱いところにある。
当の本人がそういう欲求から無縁になっても、男たちはそうでもない。求められれば、なし崩し的に流されてしまうことも少なくなかった。
妹・お市が嫁ぐ前に一度だけ関係を持った浅井長政は、信奈の次なる狙いが朝倉義景にあると知った途端に反旗を翻した。金ヶ崎の撤退戦は、信奈の人生における三度の危機に数えられる壮絶なものとなった。
松永久秀は彼女の気を引きたいがために暗躍し、最終的に自爆した。
上杉・武田は龍虎の死後に臣従の意を示し、北条氏政は信奈のために貢物を送り続け、安芸の毛利家は包囲網の瓦解によって態度を軟化。土佐の長曾我部家は明智光秀の説得を受けるも、やってきたのが猿だったので徹底抗戦の後に降伏。
そして残すは東国の一端と、九州のみとなった頃――。
とうとう閨に呼ばれなかった明智光秀がキレた。
「信奈様、一度くらいいいでしょう!?」
「もうおばあちゃんだから嫌!」
「まだまだお若いです。じっくり自覚させてさしあげます」
「だが断る!!」
同じく一度も呼ばれなかった男、羽柴秀吉は語る。
「信奈様は、金柑だけはダメなんじゃ……、金柑だけはのう」
それが光秀本人のことなのか、体にいいはずの金柑のことなのかは不明である。
(と、いう夢を見たんだ……)
四月馬鹿だからって、内容がひどすぎて平伏する勢いです。
どっかの三流えろげみたいになってしまった感は否めません。信忠以降の子が生まれなかったのは色々事情があるのですが、その代わりに学校が出来るくらいの子供たちを世話するようになりました。ぶん殴られた信行は織田一門として生き残り、後に信忠の後見役を務めることになります。
本能寺の変? いいえ、本能寺の恋です(下半身直結)




