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第12話


 慌てて目の前の受話器を取ると、小野寺は再度「久しぶり」と力なく笑った。


「……」


 この笑顔に港は見覚えがある。それは最初に小野寺が昼休み、教室から逃げる様に空き教室で昼食をとっている港の前に現れた時に見せた表情にそっくりだったからだ。


 本人はまさか自分がそんな顔をしているなんてまったく思っていないだろう。しかし、港から見たその表情はどこか「諦め」にも似たものを感じていた。


「久しぶり」

「突然呼んでごめん」


「本当にね。いきなり弁護士から連絡が来た時は驚いたわ」

「ハハハ」


 ここで「ニュースで見た」という事はあえて口にしなかった。いや、別に話しても良かったのかも知れないけど、それは小野寺本人がニュースになっている事を分かっていただろうからわざわざ港の方から言う必要もないと感じたからだ。


 それに、わざわざこうして自分を呼んだという事は本当に昔の様にただただ喋りたかっただけなのかも知れない。そう思うとそんな水を差す様な事はしたくはなかった。


「学生以来……か」

「まぁ、うん」


「うん。結局連絡先の交換もせずにお互い別々の進路になったからな。今思えばチャンスはいつでもあったのに」

「まぁ、あんたはいつも教室の中心にいて私はいつも隅っこで読書していたんだし。昼休みの時にちょっと喋ったり班分けの時に一緒になるくらいじゃあね」


「いやいや俺と連絡先を交換した人って教室の連中も結局誰ともしなかったから」

「……じゃあ単純に誰とも連絡先を交換したくなかっただけじゃない」


 小野寺は「確かに」と言って笑っていたけど、これがきっと彼の中の「線引き」というものだったのだろう。そして、彼の中で何かしらのボーダーラインを超えられた人だけが彼の連絡先を知る事が出来る……のかも知れない。


「そもそもあいつらが俺に寄っていたのは女子と仲良くなるための一つの手段みたいなもんだったしな」

「……どういう事?」


「ほら、学生時代。特に港と知り合った頃の俺って先生に注意されても全く気にしていなかっただろ? 服装」

「ああ、あれね。確か学ランの下に女子のスカートを履いていたっけ」


「そうそう。それで毎回先生に注意されていたけど女子がかばってくれてさ」

「あー、そうだった」


 だからこそ余計に「目立っていた」とも言える。そして彼の普段着も女子となんら変わらないギャル系寄りのファッションだったはずだ。それに加えてこの容姿。港が普通に当時の小野寺の私服を着ても浮いてしまいそうなところが、彼はその服装がものすごく似合うのだ。


「そういえば、女子に限らず男子にもモテていたなぁ。あんた」

「ハハハ、今となっては楽しい思い出だよ。それに、女子と仲が良いからあいつらは俺に近づいて来たいた事は俺自身がよく分かったよ」


 そう言いながら笑う小野寺を見て、港は「あ、これはきっと『いつもの事だから』と言う意味だな」と察した。

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