EP95 桔梗VS亜細亜周国の八人 (ぱーれん) そして疑惑
______ワイバーン部隊からフクロウ便で知らせがあった、エスタリカ王国の森までは直線にして50kmはある。
直ちに皆が、森に急行しようと支度を始めたのだが。
「待て待て、俺は相棒に乗って行くが、その桔梗と言うお嬢ちゃんは通訳だろう? なら俺のワイバーンに乗せて行くぜ。その方が早いからな」
状況からして、早急に現場に着くのが望ましい。遅れて行っても私達には、<レイジー通信>があるから心配はないのだ。
「分かりました。ここはバーモン・カットラー将軍に従いましょう。私達は......」
と言いかけたところで、ギルマスのデュウーラが口を挟んだ。
「ギルドには魔法でバフした高速馬車があるんだ。スケコマシィ~の旦那方は、それに乗って向えばいい」
「そうだった。ならアタシも馬車に同乗する。レイジーとアタシは夫婦だからな!」
ムッ
なにをイラッとしたのだろうか、レイラン将軍も馬車に乗ると言い出したのだ。
「おいおいレイランお前なにを? まぁいい。残る三将軍は騎乗して向かってくれ。では直ちに出立するとしよう」
「ふん、勝手にするがいい」
第一軍団将軍メビウス・フォン・ブラッケンの言葉は、有無を言わさない重みがある。
バーモン・カットラー将軍は、合図の通信弾を打ち上げると、バーモン将軍のワイバーンは、単独で15分程で到着した。
それは体長が8mはあろうか、並みのワイバーンより二回りは大きい巨体だった。
ギャ~ス
「ほれ桔梗嬢ちゃん、レイランもついでに乗りな」
「ついでとは酷いじゃないか! バーモン」
しかし桔梗は、初対面の男とワイバーンに乗るのは、はっきり言って論外だった。
「我が主と一緒でなければ、この身は拒否するが?」
「何だよ旦那かぁ、嬢ちゃんはそれほど惚れているのかよ。ほんじゃ旦那も乗ってくれや」
!むう
それを訊いたアデリアは、最高に面白くなかった。
「それならアタシもワイバーンに乗る! アタシは誰よりも乗る権利があるからな。見るがいい! このニッケルと言う貴様等が見た事もない結婚指輪を!」
ぷ
=安物のニッケルボルトナットだよReno=
=バニラ、あなた黙ってなさいよ=
一頭のワイバーンにバーモン、桔梗、レイジー、アデリア、レイランの5人が乗る事になってしまった。流石に定員オーバーなのだが、桔梗とアデリア、レイランが頑固として納得しないのだ。
ギャァァ~(ムリ)
私には、ワイバーンの巨体が抗議しているように思えた。
どう
どう
「我慢してくれよな。なら全員乗りな、俺のワイバーンなら、なんとか? なるか」
ギャァァ~(ムリムリ)
しかし自慢ではないが、私ことレイジーは高所恐怖症なのだ。
ワイバーンの巨体を前にしてブルブルと震えていると。
「お? スケコマシィ~の旦那様は震えているぞ?」
「フッ、なんだなんだ我が夫ながら情けない。怖いならアタシの腰に手を回してしっかり......まぁ胸でも一向に構わんが」
!
「おい糞エルフ、それ以上言うと、我が妖刀ムラムラが黙ってはいない!」
「ふんお団子小娘が! アタシのMDを知らん訳でもなかろう?」
ギラァァァ
アデリアが威嚇のつもりで繰り出したのは。
「下らん! この身にTEなど効かん」
「もし効いたら、小娘は男だな」
「なんと無礼な! この身はアンド......ナッツ」
一瞬、桔梗はアンドロイドと言いかけて、ギリギリで言い留まった。
=レイジー通信ON=
=危なかったぞ桔梗、注意しろ!=
=つい我を忘れてしまいました=
=いやいや、糞エルフに対して桔梗は正しかった=
=父ちゃん、Renoは分かっているよ=
「ちょっとちょっと、アンドーナッツなんてどうでもいいけれど、レイジーさんの後ろはこの私、レイランのテリトリーと決まっています」
そう言ったかと思うと、レイランが私を抱えてフワリとワイバーンの背に乗り込んだのだ。
どうやら得意の浮遊魔法を使ったらしい。
おわぁっ
私が驚くと、既にレイランの両手が私の腰にまわっていて、豊かな双丘をムニュゥと背中に押し付けられていた。
そのレイランはレイジーより年上であり、まだ未婚の身である。
「あら華奢だけど、そこが新鮮。周りの男はごついのばっかりで飽きてたのよ」
「レイラン、それは俺達の事か?」
「さぁ?」
ふにゃぁぁ~
『ここは極楽じゃ~』
「下衆様!」
Renoやバニラ・アイスは走って追うつもりだが、レイランのこの暴挙は許せなかった。
それはアエリアとジョーも同じで、目に見えない程の鋼線が、シュルシュルとレイランに伸びているかと思えば、ジョーが南友千葉拳の呼吸を始めていた。
コ~ホ~
コ~
「あらら? それは何のマネかしらぁ?」
「何やってんだ? あんたら......って事はよ、ギルドの高速馬車は必要なかったって事でいいのか?」
「「「「いらない!!!!」」」」
レイジーの旦那ー人のせいで、こうも美女達が乱れる姿を、ギルドマスターのデュウーラは今まで見た事が無かった。
『この旦那は一体何者なんだ? 俺は本当に羨ましいぜ......俺のアデリアを返してくれよ』
「あの、ジョーとアエリアも乗って行きたいんですけど......」
そんなジョー姐さんとアエリアの呟きは、ギルマスには届いていなかった。
「どうすんの? 50kmだよジョー?」
「流石に無理なのよさ」
この後、ジョーとアエリアは、ギルマスに頭を下げて高速馬車をお願いしたのだった。
『全く、女ってやつは......でも二人共よく見りゃ上玉じゃないか』
ギルマスの本音は、アデリアと馬車に乗りたかったのだ。
はぁ~チクショー
______ワイバーンに震えながら乗って、エスタリカ王国の森に着くまで、私は何度落ちかけた事か。
その原因と言えばワイバーンの背中で、レイラン、アデリア、桔梗がバトルを始めたからだった。
「おい、痴話げんかなら降りてからにして......」
ガゴォン
痛ぇぇ
とばっちりはバーモンも食らった。
「痛ぇぇ 見えたぞ。あそこだ!」
森の木々がなぎ倒され、私には見慣れた形のシャトルが大破していた。
「やはり! あれは亜細亜周国のロケットだろう。異世界のここまで追ってくるとは、それはハメリア合衆国も同じか」
と冷静に言えたのは、アデリアが私に抱き付いて落ちないようにしていたからだ。
「しかしレイジー、亜細亜周国のロケットとはなんだ?」
それを訊いた途端、桔梗がワイバーンが着地する前に飛び降りたのだ。
はぁあ
とぅ!
「おい馬鹿、無茶するな!」
バーモンが止めたが、桔梗がおよそ30mの空中から、チャイナドレスをめくり上げて、見事に着地したのだ。
スタン
「「「おおおお!!!!」」」
と叫んだのはバーモン将軍の配下達だ。
「ぱんつが丸見えだぁ」
おッ 白だ!
実際、アンドロイドのパンツなど見ても仕方がないのだが、桔梗の真っ赤なチャイナドレスはインパクトがある。それにお団子頭の超キュートな美少女なのだ。
「「きゃわいいぃぃ~」」
それに反して、亜細亜周国の八人の隊員達は、目を丸くして驚いていた。
「陳隊長、どうして我が中国王朝のチャイナドレスが、白いパンツを見せながら空から降ってくるんです?」
「それを私に訊くか?」
ギャオォォス(なんとかついた)
遅れてバーモンのワイバーンが、砂塵を巻き上げて兵士達の前に着地した。
桔梗の可愛らしさと真っ赤なチャイナドレス、眼福の白いぱんつの衝撃で、将軍様の事など眼中にないそぶりだった。
「馬鹿者が! 貴様等ぁ!」
はっ
気付けば第三将軍のレイラン、傾国美女のアデリアも軽蔑の眼差しを向けるのだった。
「あのなぁバーモン。言わせてもらうが、私は部下の躾が足りんと思うが?」
「そうそうこれじゃ、全滅しても納得だわバーモンちゃん」
むぐぅ
「特別訓練は後にしてグマゥロ部隊長、この現状を説明してもらおうか」
はッ!それはですね......。
グマゥロ部隊長が、なりゆきを説明しようとすると、ズサンと落ちる音がした。
それはレイジーが、空中酔いでワイバーンからズリ落ちた音だった。
「なんと! これは大変だわ。このレイランがしっぽり介抱してあげよう。気付けにはチュウがよいのです」
「馬鹿なレイラン! それは妻のアタシの役目だ! この世に二つと無いニッケルの結婚指輪が目に入らんのか!」
「そんな物が目に入ったら痛いでしょ! それにどうも安っぽいんですけど!」
馬鹿な!
そんな美女二人の喧嘩を無視して、桔梗は自分の役割を実行に移した。
この八人は間違いなく亜細亜周国の人間なのだ。
「異世界まで追って来て、御屋形様に危害を加える者達なら、この場で妖刀ムラムラで斬り捨てるまでだ」
「你们是谁?」
地球とは違う惑星で、まさか中国亜細亜周国語を訊くとは思わなかった。
「お嬢ちゃんは......中国王朝の民か?」
不
桔梗があれこれ尋問すると、大まかな事が分かった。
八人全員が負傷して抵抗する事など出来はしない現状では、陳隊長は全てを話すしかなかった。
「部下だけは生かして欲しい。私は殺されてもいい」
?
桔梗はこの隊長に武士の心意気を感じ、殺す意思を緩めた。
「バーモン将軍、この八人は我が主を追って来た異国の軍隊だ。事故で戦闘は不可能、命乞いをしている。どうする?」
「ほう、嬢ちゃんはあの妙な言葉が分かるのか。これは大したものだ。それより、こいつ等はどうしたものか」
ふむ
「なぁバーモン。それは、第一将軍メビウスが到着してからでいいんじゃないか?」
「あぁそれがいい。騎馬ならあと一時間もすれば到着するだろうから、もう少しこいつ等を調べておこう」
この間、桔梗は八人を尋問して回ったのだが、美少女チャイナドレスとお団子頭が気に入られたのか、簡単に聞き出す事が出来たのだった。
私と言えば絶賛空中酔いで、アデリアとレイランに密着濃厚介抱されていたのだった。
「どけレイラン、気付けのチュウは妻のアタシの役目だ!」
「これは緊急事態の気付けなのよ、気付け魔法が使える私が適任なの」
「嘘つけ! そんな魔法、訊いた事がないぞ!」
ダダ
タタ
間の悪い事に、そこへバニラ・アイスとRenoが、高速走行(時速80km)で駆けつけてしまったのだ。
「げ、下衆様!」
「父ちゃん!」
「おぉ? お嬢ちゃん達、まさかここまで走って来たのかよ!」
『ちょっと待て。メビウス・フォン・ブラッケン将軍達の騎馬を追い越して来ただと!? それに桔梗という嬢ちゃんも30m上空から飛び降りた! ウサ耳少女にメイド少女、あの3人は本当に人間なのか?』
バーモンの疑問は、アデリアとレイランも感じていた。
『アタシは前から思っていた。糞ウサギは絶対怪しい』
『あの子達......魔法も使わず人間なのかしら? レイジーさんに訊けば......』
そのレイジーは、今やっと目を覚ましたところだった。
この状況、レイジーはどう切り抜けるのだろうか。




