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EP85 北方エスタリカ王国温泉旅行騒動


______北方の寒いエスタリカ王国とは、いったいどんな国なのだろうか。

私は小国デルモンド王国でさへ、一部しか知らないのだ。

「こんな事ではいけない。隣国の状況は知っておかないと」

北方の隣国エスタリカ王国を一番よく知っているのは、バイソン大将とモーリンさん、そしてアデリアの三人とセイミ―の妹アエリアだ。


 アエリアの姉セイミ―の死が、何者かか王国公爵ラーモン・ディ・パッドが絡んでいる事は間違いないだろう。

その為に一端、アデリアと二人でエスタリカ王国を調べてみようと思った私だったが、聖母マリア様村の整備やゴジラ対策など問題が山積で、この件は保留になっていたのだ。 

だが切っ掛けは出来た。


 そう思った私は、ボソリと呟いた。

「このところ事件ばかりだった。たまには観光と息抜きを兼ねて、視察してみるのもいいか。隣国エスタリカ王国を知っておくのは無駄ではないから」

 ピクぅ!


 その時、近くに居た一人と一体の長い耳どころか、Reno、桔梗、kannaまでが、私の吐息にも似た僅かな音声波を捉えた。

どんなに小さな私の呟きでも、耳のいいアデリアや私のアンドロイド達が聞き逃す筈もなく、私の事になると無駄に超高性能を発揮するのである。


「や、やっとその気になったかレイジー、待ち侘びたぞ!」

 えぇと、何のこと?

 私がいくら惚けても、アデリアには無駄だ。

「貴様が今、言った言葉だ! ネタは上がっているんだぞ! エスタリカ王国に慣れていない貴様一人だけで、観光温泉旅行など絶対に許さん! 護衛でアタシが行く! 当然二人だけでな!」

『一応、アデリアと行こうと思っていたんだけど......』


「「なんだってぇ!! そこnいは温泉まであるの!!?」」

実は、北方エスタリカ王国には温泉がいくつかある。アデリア達Sランク冒険者もモンスター討伐の後、疲れを癒す為に何度も利用していたのだ。


「くわっ、主様と温泉!」

アンドロイドの娘達も、言い訳は無用とばかりに私を睨んでいた。

「ちぇ、訊かれてしまっては仕方がない。これはまだ私の案だけれど、じゃぁ同行するとしたら......」

 緊張の瞬間、アデリア、ジョー、アエリア、ルチア、デリーシャの体に尿意が走り、それを内股になって我慢しながら、次の私の言葉を待った。

アンドロイドの娘達は、プラズマ核エネルギーの数値が異常レベルに達していた。

 ゴクリ


「バニラ・アイスとアデリア」

 げぇぇ~そんなぁ~!!

「ふふ、当然でしょ。やっぱり二年の愛と実績のあるバニラ・アイスちゃんれす」

「何を言う糞ウサギ! 同行するのはこの桔梗だ! 御屋形様、御再考を!」

 ゴゴゴゴ

いつも留守番のジョーとkannaなど、怒髪天を突くほど怒っていた。


 これにReno、ジョー、ルチア、デリーシャが参戦して、汚れたパンツや靴下などが混濁した洗濯機の中のようなトルネード状態に陥ってしまった。

「おめぇなレイジー、モテるのはいいが本当に行くつもりか? 武装軍事国家エスタリカ王国だぞ?」

「私も行きたいんだけれど、私達は今更いけないし......ねぇあなた」

 ルルは いきたい~

 「駄目だ」


 エスタリカ王国Sランク冒険者を引退し、いまやナイト・メア亭の経営もあって、バイソン大将とモーリンさん、ルルが同行する事は出来ない。

連日のように聖母様村を訪れる参拝者が、ナイト・メア亭に予約を入れているからだ。

「すまねぇな」


 となると残るのは、エスタリカ王国をよく知るアデリアが選択肢となる訳だ。

「最初はアエリアでもとは思ったけど、アデリアは王国冒険者ギルドの絡みもあるから、同行してもらう必要がある」

「やったぞ。流石はレイジーだ! 貴様はただの抜けたアホではなかったな!」

 あのアデリアが、拳を天に向けて飛びあがって喜んでいるのだ。

「ふ、ふん、アタシの生涯に、一片の悔いも残さないのよ」


「......アデリアおめぇ、本当に分かり易くなったな」

「あらあら、素直になったものねぇ、あの男嫌いのアデリアが」

「何を言っている! レイジーを案内出来るのは、このアタシしかいない。糞ウサギに何が出来る? これは当然の選択だろうが!」

 『むむ、この糞エルフが! わたしだって案内できるのよ!』

 アエリアが、アデリアを暗殺しそうな視線を向けていた。


「アデリアもバイソン大将も気にさわる言い方だが、それともう一人は、さっきも言ったが護衛はバニラ・アイスに頼む」

「父ちゃんとバニラ・アイスちゃんの愛は、不滅なのれすぅ」


 その瞬間、やかんやコップ、皿にフォーク、鍋とオタマが飛んで、まるでインドの国会のような有様となった。

「「不当だぁ!!」」

私の決定に非難轟々雨あられ。いつものように罵声と怒号が飛び交った訳だけれど、そこをなんとか落ち着かせようとした。

そう、無理やり落ち着かせようとしたのだ。しかし、そんな簡単に納得する訳がない。


______kannaのAiは忘れてはいない。Aiが忘れる筈がないのである。

私はダンジョン攻略時に、留守番を頼む代償で「何でも言う事を訊いてあげる」と以前に言った事があったアレだ。

あの時、社長の甘美で蕩けるようなお言葉で、いつお願いをしようかと、それはそれは超楽しみにしていたKannaだったのである。

そのkannaのお願いとは、甘くて熱~い120セカンドのチューだった。

 ポッ

私はまた苦しい言い訳を展開し、見返りは後でとその場を切り抜けたのである。



◇◇

______オランベルク国王と第二王子パトゥリック。

 セイミ―が第二王子パトゥリックの子を身籠った事は、現国王にとって由々しき事態であり許される事ではなかった。

しかし公爵ラーモン・ディ・パッドは、これを好機と考えた。

国民に絶大な人気のある第二王子のパトゥリックが王位を継ぐ事は、公爵ラーモンにとって非常に拙い事態となる。


「ボンクラ第一王子モレータゥラなら儂の傀儡。ゆくゆくは始末してこの儂が国王となるのだ」

______真相はこうだ。


 身籠った冒険者セイミ―一人だけを、簡単なモンスター討伐だと騙し、モンスターの巣窟に向かわせたのだ。

「なぜ私一人だけなのでしょうか?」

そんなセイミ―の疑問など、いくらでも誤魔化せた。

果たして結果は、ラーモンの思い通りとなったのである。


 その勢いでセイミ―が危険だと、第二王子パトゥリックを別の森に誘い出し、護衛共々闇の暗殺集団に襲わせて亡き者にしたのだ。

セイミ―の件は不幸な事故として処理された。それはたかが冒険者の一人が、モンスター討伐で死ぬのはよくある事なのだ。


 反対に第二王子パトゥリックの死は、セイミ―を失った失意の自殺として偽装したのである。

アエリアはその事実を知らなかったが、セイミ―程の冒険者が一人でモンスターに八つ裂きにされた事が、余りにも不自然すぎた。

しかし私達は、セイミ―の死の真相を暴く為に、観光(ちょうさ)を兼ねて赴くつもりなのだ。


◇現場確認と言う名の温泉観光旅行◇

______私達の聖母様村からエスタリカ王国の王都までは北に250km、途中には雪を纏った山脈があり、馬で行けるのは途中までだ。

こんな時にはルルの転移魔法が便利だが、流石に一度も行っていなければ転移は不可能。

私をバニラ・アイスに背負ってもらって走れば簡単だが、それではバニラ・アイスの正体が、機械人間だとアデリアにバレてしまう。


「なんだレイジーさん、そんな事か?」

とオルガ隊長が軽く言う。

「そうか、ローバーがあった!」

山脈越えは出来ないが、往復が随分と楽になる事は間違いない。

そんなこんなで、5人が乗車出来るローバーに、ポッターが加わる事になり4人となった。

「ポッターさん一人では、帰りが不安となりましょう。モンスターも出現するので、5人が乗れるならここは私も同行しましょう」

と声を上げたのはアエリアだった。

どこまでもレイジーに付いて行く気なのだ。


 ところがである。

「あの不思議な鉄の馬は、2つあるのよね」

モーリンさんの一言で、その場が爆発した。

 ウギャァァ~

「ならボクも行けるのよさ! 桔梗も参る! Renoも当然行きます!」

ローバーの運転が出来るのは緑の5人だけだ。無論、私もジョーも運転は出来るが、そこは沈黙しておいた。


「途中まで来るのは構わないが......そうなると聖母様村の守りが

、バイソン大将とモーリンさん、kannaだけになってしまうかなぁ......」

「なんなのよさ! 兄貴、今更ダメなんて言わないよね!」


 と私はある行動に移す事にしたのだ。

「いや、その点は心配ないと思う。途中までの片道なら、来たい者は来ればいいよ」

 よっしゃぁ!!


 ここでKannaが沈黙していたのには理由があった。例の御褒美である。実はこれは私にとって有難かった。

「ではローバー2号車の運転は小官が」

と声を上げたのはトーラス副長だ。


 こうして山脈までの見送り隊は決まった。私は同時に出発を二日後と決めると、場が穏やかな空気に包まれた。

「いつもこうだといいんだけど」


◇レイジーの秘策◇

______人目を避けて、私はKannaと二人だけで密談をしていた。

「いいかいkanna、私が出発するまでに計画を終わらせる。丁度Kannaが残ってくれていて良かった。手伝ってくれるよね」

 バチコーン

 私は軽くウインク。

 勿論ですぅ~♡


「いづれやろうと思っていたんだ」

流石はAi myu-48を搭載したKannaである。私がやろうとしている事をすぐ理解してくれた。

「ではこっそりと。お手伝いします。ゾクゾクしますね社長」

「あぁ、kannaはとってもいい子で助かるよ」

(頭をよしよし)

 はひぃ♡


______私とKannaは夜中、こっそりと店を抜け出して、北の湖に沈めたレティキュラム号へと向かった。

Renoや桔梗、バニラ・アイスを騙すのは一苦労だったが、そこはAiに特殊な電波を出して眠らせたのだ。


 私が別に隠れてコソコソしなくてもいいのだが、そこはサプライズって事で。

「いつも罵倒されてばかりの私だ。何をやっても非難轟々、まるでどこかの某市長のようだったから_____だからさ」

私とKannaは、久しぶりにレティキュラム号へと向かった。


 パ パ パ

 私とkannaが入ると照明が点灯するそこは、あまり来なくなった私のラボだ。

「レイジー社長、いよいよ全ての<保毛坂48>が目覚めるのですね」

「あぁ残り46体を今起動する! kanna準備を」

 はい、お任せ下さい!

「起動したらまず、エントリーナンバー3と4の二体をこっそり連れて戻る。名前はFarz(ファ―ズ)とNiko(ニコ)だ。他の44体の名前も既に考えてあるけどkanna 、残りは待機で頼む」

 はい。


______レイジーは気付いていない。

更にお騒がせな46体が増えてしまった事を。





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