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EP82 鏖殺(おうさつ)だ ルルシア帝国の野望

______私達が巨大モンスター・ゴジラの脅威に怯えている頃の話になる。

ルルシア帝国情報部の隊服であるライト・ブラウンの5人が、寒さの厳しい北方エスタリカ王国の森にシャトルを着陸させてから数か月が経過した頃。


 では彼等はいったい今迄何をしていたのだろうか?

目だった動きがない上に、エスタリカ王国の情報などデルモンド王国ではなかなか耳にする事がなかったのだ。

そして謎の暗殺集団の幹部ブルーアからの情報と、自らの情報収集で着々とエスタリカ王国乗っ取りを画策していたのである。


 ならばその原因とは一体何なのだろう?

特命ルルシア帝国情報部は______次世代AI-myuを手に入れる為、ジョーの発信電波を追ったハメリア合衆国と共に、火星への追跡航行中に異世界に飛ばされてしまった。

と同時に本来の任務を無くせば、それは獣が野に放たれたようなものだ。

エスタリカ王国の運命は、もう縛るもののない欲望の本能に染まった獣と化したライト・ブラウン5人の______まさに恰好の餌になった。


そのエスタリカ王国側の兵力は、屈強な騎馬隊を含む騎士団を合わせて総計80,000以上、それに飼いならしたモンスターが曳く戦車、空中警戒戦闘用のワイバーン隊も存在する。


対してルルシアの獣は5匹。いや、戦闘に反対するロマノフを除けば4人か。

そこに暗殺集団のブルーアは入っていないが、獲物を狩るにも軍人らしく確実な遂行作戦を計画していたのである。

その悪魔の如き鏖殺(おうさつ)計画は、謎の観察者の一人であるあの痩せた紳士風の存在があるのだろうか。

彼等? にとって人間のドス黒い野望を掻き立てる事など実に容易い事なのだ。

しかし問題はあった。


 詳細な調査により、エスタリカ王国4人の将軍はかなりの実力者であり、特殊なスキルを持っている事が分かったのだ。

彼等は王国4将軍と呼ばれ、それぞれの統率力は言うまでもなく、隊を鼓舞し強化するスキルを持つと言う。


 異世界で知られているのは、補助魔法<ライオン・ハート>だが、それと同じものなのか、その正体はSランク冒険者のバイソン達にもわからない秘匿されたものだ。

そのバイソン達は基本Sランク冒険者であって、王国4将軍と行動を共にしたことはなかったのである。


 地球でも戦時に興奮剤として麻薬を使った歴史があった______。

麻薬は死を恐れぬ戦士(バーサーカー)と変えてくれるのだ。

薬か魔法かの違いでしかないが、バーサーカーとなり死を恐怖しなくなるのは、戦場では大変厄介なものだ。

もしかしたら、そんな魔法かスキルなのかもしれない。


______「中世世界の剣と盾、槍、弓程度の騎士なら問題はなかったのだが、これは案外手間がかかりそうだ」

思惑が狂ったケツノ隊長はルルシア帝国のエリート軍人故に、少しばかりプライドに屈辱を感じてしまっていた。


「忌々しい。我がルルシア帝国の科学力で、魔法だろうが全て蹂躙してやろうと思ったが......さて、これからどうしたものか」

その貴重な情報はブルーアから得られ、それを知らずに行動に出ていたら、恐らくライト・ブラウンの5人に勝ち目はなかっただろう。


「我々は、この世界の魔法やスキルと言うものを舐めていたらしい」

ケツノ隊長は成果を焦らない男である。その慎重さでここまでの地位を得て来たのだ。

「もう地球に帰還しなくていい......出来ないのなら......我々を束縛するものはもう何もない。時間だけはたっぷりある」

この言葉にブルーアは、まだ話していなかったある情報を話した。


「ふふ旦那、心配は無用だ。強力な魔法なら我が<暗闇>も使える。それもAクラスが何人かいるんだ」

「ほう、只の暗殺者集団かと思っていたが、そのAクラスとやらは、いったいどの程度のものか?」


 ブルーアは飄々とした態度を崩さず、巨大な火を吹く空飛ぶ機械を持ち光の武器を持つ、魔法とは違う確かな実力があるライト・ブラウンの5人に、とある魔法の威力の説明を試みた。


「それは巨大な広範囲落雷とでも言いましょうか、人間が食らったら消し炭になる程の威力ですよ」

「一瞬で炭化するのか......まさに核だな」

「かく? ですか?」


 幹部ブルーアは言う。

「あなた方は知らない事とは思いますが以前、隣国デルモンド王国で使った<天地爆裂魔法(アマゾン)>とは違うものと言いましょうか」

 ほう。

「Amazonn、地球では世界中でそんな通販が存在していたな」


 アレクサイは同時に、遥か昔にルルシア帝国で起こったという<ツングースカの大爆発>を想い出していた。

歴史上、核爆発ではないかと言われている歴史的大爆発だ。


「魔法とはそれ程の物なのか?」

もちろんAクラスでは、核爆発のような威力はない。アレクサイはいくらなんでも、魔法が核を越える事はないと思っていた。

魔法の威力を理解したと思ったブルーアは、アレクサイに向かって、更に欲望の後押しを試みた。

「それに我々は、王国4将軍の手の内は知っている。行動を起こすなら早い方がいいと思うが、どうですかな?」

「確かに戦争とは、情報を制した者が勝つ」


 ブルーアにとって、エスタリカ王国公爵ラーモンの飼い犬となっている暗殺稼業より、この怪しげなライト・ブラウンの5人に取り入って、エスタリカ王国を乗っ取り、後の報酬を早く手にしたいと本心を語ったのだ。


それに王国4将軍の存在は、排除しておきたい邪魔者でしかなかった。報酬とは、ライト・ブラウンの5人と同じく望む物全てを奪う事であると言う。

「なるほど。お前の言う通り、そろそろ決行するのもいいか」

 飢えた獣達の目的は、ここで一致をみた。


◇ナイト・メア亭◇

______謎ダンジョンから帰還して、取り合えずナイト・メア亭の二階で泊まっていたアエリア。

朝食を食べ終わるとモーリンさんが食後の紅茶を差し入れると、バイソンが無造作に同じテーブルにドカっと座った。

「バイソンさん、何か?」


 窓の外、遠くを見るような目でバイソンは語り出した。

厨房の奥からは、妻のモーリンが二人を眺めていた。

______「アエリア、俺たちゃ昔、セイミ―とチームを組んでいた。エスタリカ王国Sランク冒険者<氷炎のザ・フォース>だ。しかしセイミ―が死んでチームは解散、南のデルモンド王国まで......セイミ―の父親を頼って......そして今はここで、ひっそりと宿屋をやっている。ふん、レイジーのお陰でそこそこ儲かっているがな」

「セイミ―の父親?」


 アエリアにとってセイミ―の父親の話は、今まで訊いた事がなかった。

「バイソンさん、セイミ―の父親がこの地に居ると言うの?」

「ああ、今も立派に生きているさ」

「それなら会ってみたい。その御方に......そして私から話したい事があるの」


 カラコロ 

  カラン

   バタム

 突然ドアが開きカウベルが響く。

「すいませーん、ちょっと寝坊しちゃってぇ~」

 アルバイトのデリーシャだった。


「おうデリーシャ、緑の5人様はもう食べ終わったところだ。後片付けを頼む」

 はぁ~い

「それが終わったら私、レイジー様のお店でバイトですからぁ♪」

「何だよ、レイジーの方がメインかよデリーシャ?」

「当たり前ですぅ~」

 タタ ♪

  タタ ♪


「ホッホッ、バイソンさん、娘が我儘言ってすまんのう。おや? お客様でしたか」

デリーシャの背後から、人の良さそうな老人が現れた。

「珍しい。しかし偶然とは思えない巡り合わせだ。これも聖母様の御導きか」

バイソンとモーリンさんは、奇跡のような偶然の出会いに驚いた。


 あぅっ!

 この時アエリアは直感した。この面影、この老人こそセイミ―の父親なのだと。

しかし娘? 今、老人は確かにそう言った。

謎が次第に明らかになっていこうとしていた______しかし本当の謎は、まだ私の手の届かない所にあった。



◇観察者達◇

______「いよいよ戦わせる。エスタリカ王国騎士団を鏖殺する時が満ちた」

 その声の主は、また遠慮なく突然現れた。

「ゴジラはそれでも良かったが、ルルシア帝国は核を使うかもしれんぞ」

「嫌らしい。あなたねぇ、いつも私を覗き見してるの? まだまだ折り返しでゴールはずっと先なのよ」

 ふむ。

「確かに不確定要素はある。まぁ、それでもどうなるのか楽しみではあるけれどな」

「しかし人間って本当に獣。欲望をちょっと刺激してあげるだけで、面白いように動いてくれるの。奈落に向かってね」

「全くだ」


 まるでゲームを楽しむかのような存在。

レイジー達と異世界は謎の存在に監視され続け、いよいよ大きな戦いに巻き込まれていくのである。





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