EP74 核戦争勃発のカウント___ついに動き出した謎の観察者達
「どうか訊いて下さい。これは私の推理だけれど、ダンジョンはアエリアを待っていたんじゃないかと思うのです!」
丁度私が、そんなとんでもない推理をブチ上げている頃だった。
______そこは明らかに地球の景色とは違っていた。
ここはどこの世界に存在しているのだろうか?______ただ雰囲気で分かるのは、正体不明のアジトか研究室のように見えた。
何故なら、それほど大きくはない空間には、地球とは原理が全く違うスクリーンが、電源コードや配線の類もなくただ浮かんでいるのだ。
他には、傍らにおよそ2mはあろうか、あの時に森に出現させた<ゴジラ>の大型模型? その正体と目的は分からないが、あたかも物言わぬオブジェのようにポツンと立たせてあった。
よく見ると地球人なら見覚えのある姿と、見た事もない異形のモンスターの姿も大小多数、じっと立たせてある。
その空間で、熱心に観察と分析を続ける女のような姿があった。
ポニーテールの髪、地球の科学者のような白衣を纏い、大きな赤渕の眼鏡をかけて空間に浮かぶ大きな画面をじっと見つめていた。
その時、女? の唇が何かを呟こうとしている。
チキ チキ
ツー ツー
ピピ
画面にはスペックだろうか、文字と数字らしきものが映し出され、その女はじっと画面と睨めっこを続けて、やがて遂に呟いた。
「う~ん」
<名無しの軍団リーダー>は。
レイジー・タチキ=28歳 IQ280の超天才=戦闘能力=3
「メインはレイジーなんだけれど______天才でも戦闘力は無いに等しいはね。次いってみよう」
<アンドロイド組>
「取り合えずレイジー軍団の四天王ってとこね」
バニラ・アイス=戦闘能力S 「なんともふざけたバニーガールだけど......糞ウサギのAi-myu-96が要になる。バニーガールはレイジーの趣味だけどねぇ、間が抜けてるのよ」
桔梗=戦闘能力A+ 「武士かぶれの忠実な家臣。あの妖刀、何でも斬るけれど」
Reno=戦闘能力A+ 「嫉妬深いメイド。 武器が不明」
kanna=戦闘能力A+ 「これまた嫉妬深い秘書。武器が不明」
「裏を返せば、嫉妬深いのは忠誠の表れ。でもアンドロイドに搭載しているAi-myuが今回の肝になるのよね。それとG-フィールド・エンジンも重要な核だし、Aiとの相乗効果が脅威となるわ」
「次ぃ」
「ハメリア合衆国情報部ジョー・ドミニク・ルフェーブル=南友千葉拳=戦闘能力B+ 良くも悪くもレイジーとは凸凹コンビ。南友千葉拳の使いどころは微妙ぉ~。でもねぇ~、レイジーとは......」
「ジョー・ドミニク・ルフェーブルかぁ......位置的には準四天王。人間にしては攻撃力はまぁギリギリなんとか......。これに未起動のアンドロイド達<保毛坂48>の残りが46体。いづれも戦闘能力はAクラスに近いと思えるけど。でもまだまだよね、私が手を出すには物足りない。それと異世界の取り巻き連中を見てみましょ」
◇異世界住人達の戦力分析◇
アデリア=冒険者組合ギルドマスター=MDの使い手=戦闘能力S 「レイジーの一方的恋人志願者。ある意味厄介」
アエリア=キーパーソン=戦闘能力A
「レイジーの一方的恋人志願者、そして狂信者でこいつも厄介」
バイソン=剛腕気功闘気戦士=戦闘能力S
モーリン=極冷凍魔法AZDの使い手スペラー=戦闘能力S
ルル=空間転移魔法=C 未熟
「流石に元Sランク冒険者達ね、こっちはまずまず。でもルル、あの子はまだねぇ~」
ルチア・アルデール=聖魔法師ヒーラー=Bランク
デリーシャ=戦闘能力=1 XXX
「封印されたXXX 。それにデリーシャはやっと気づいたみたいだけれど、このままでは全く足りてない。私達が相手にするには時期早々どころか、話にもなりゃしない」
それと......
「ハメリア合衆国の情報部の5人。あいつ等、科学知識と格闘戦能力があっても、私のモンスター相手では使えない。だって弱すぎてすぐ死んじゃうから。当然、あの三馬鹿トリオ(ジャッカル チャーシュー メンマ)なんて鼻くそ以下よ。どうにもならない」
はぁ~
「しかしよ、隊長のオルガとトーラス副長は、レイジー軍団の参謀になり得る素質があるかも。そして純粋な地球科学と異世界魔法で......ふふ面白いわ」
この女? が目標としているのは、恐らくレイジーのような超天才が生み出す<科学技術兵器>と<異世界の禁呪魔法>の融合を模索しているのではないか_____そんな実験を繰り返していると思われた。
では、いったい何の為に?
ところが偶然にも、レイジー自身がソレと似た事を考えていたのだ。
即ち<科学と魔法の発動原理の違い>を解明し利用すれば、それは人類にとって大きな恩恵を齎すだろうと。
◇うざい仲間◇
ヒュゥ~
______冷たい風が吹き込むと、例の煩わしい男が静かに立っていた。
「あらあなた。連絡もなしでまた来たの? 確か私の監視があなたの役目じゃない筈よね?」
ふん、会う度に嫌味を言う奴よ。
男はまたそれかと、つまらなそうな顔をして鼻を鳴らした。
初老? 男はやせ型ではあるが、黒いスーツに身を包み、片手にステッキを持ち、英国紳士のような雰囲気を醸し出している。
「言ってくれるな。我も地球の監視を任されているのだ。あっちはあっちで、ルルシア帝国やブラック・ホーン独裁軍事国家、亜細亜周国に揺さぶりをかけてる。我もやる事はキッチリやっているのだ。しかし決行期限が迫っているのはそっちだろ。いいのか?」
ふーん
「第三次世界大戦、それも核戦争の準備は進んでいると? それにしては私より、随分と暇そうよね?」
この男、地球人類を核戦争で滅ぼす準備をしているらしい。
ならばこの女も_____共犯。
「ふっ、地球人はやる気満々だからな。勝手に核爆弾を量産してくれるから、我が直接手を下さなくてもいいのだよ。本当によく踊ってくれる事よ。しかも反陽子爆弾まで完成させようとしているのだから、我も益々暇になるのだよ」
「反陽子! そんな物まで? 地球そのもまで破壊するつもり?!」
「ふん、知るか!」
地球ではこの男の言う通り、既に地球人類を5回は滅ぼせる核兵器を持ちながらも、更に増産するという愚かな行為を繰り返しているのだ。
______地球は誰の物と問えば、決して人類の物ではない。それを愚かな人類が知る事はなく、一旦滅んでしまえば犯した愚かさを後悔する事は出来ない。_____
「それとルルシア帝国情報部の5人だが、準備運動がてら今はそっちもけし掛けている最中でな。丁度核ミサイルを持っている事だし、お前にはちょうどいいだろう? 核と魔法の融合だったか? 別にそんな事までしなくても人類は自分で自滅する」
「あらそう? でも、こっちはこっちで準備するわ」
◇レイジーVSルルシア帝国情報部◇
______「それはそうと、これからどうするつもりだ?」
今急がなくてはならないのは、レイジー側の戦力増強もある。
その女? はそう考えていた。
「デリーシャとルルの強化に、アンドロイドの<保毛坂48>、残り46体を起動させるよう仕掛けてやるわ。それには、また<ゴジラ>の出番になるかもね。この前は随分手加減したけど」
その女がチラっと視線を移しても、傍らのゴジラは動かない。
「ふっ、そうか。別にそのゴジラでなくてもいいのではないのか? 手駒はそこに沢山持っているだろ。ま、せいぜい頑張ることだ。上には我から報告しておこう」
「......そこは余計な事は言いっこなしで頼むわ。横やりを入れられると、私のモチベーションが下がるの」
「分かっている。全く我儘な奴だ。しかし失敗は許されんぞ」
男がそう言うと、また冷たい風と共に消え去った。
女が嫌味しか言わない男、その気配がない事を確認する。
行ったわね。
「レイジーが異世界に来て早1年。第三次世界大戦のカウント・ダウンが始まり、残された時間はあと僅か。私に与えられた役割は大きく、時間は少なくなった。全く厄介な事ばかりで私、疲れるのよ」
______消えた男は、上に報告すると言った。
それなら男と女は、計画された地球滅亡戦争の仕掛け人なのだろう。二人の上にはまだ何か、得体の知れない存在が居る。




