EP73 変態ダンジョンの秘密 を暴け
______おかしな事に4階層の探索では、アデリア達がダンジョンから敵認定された訳ではなかった。
誰も手を出してはいない事、その上、アデリアの咄嗟の機転で服まで脱いで捨てて来たのだ______結果として全員がスッポンポン。しかしそれが良かった。
「ふぅ酷い目にあったな。しかし4階層の再探索は......まだ可能だぞ」
アデリアはそう言うが、その顔が妙に紅く染まっていた。
「なんてダンジョンなの。きっと皆、心配しているわ」
アエリアもまだ興奮していた。
「帰るんでしょ?」
「相変わらずどうしたんだ。言葉を忘れたのか?」
<かぶら>の言いたい事は、翻訳器が破壊されて使い物にならないが、その雰囲気で分かる。
◇レイジーの深読み◇
______ようやく3階層へ戻る階段を上がると、踊り場手前でルチアとデリーシャが待っていた。
「あっ、無事でしたか ! あの、やっぱりスッポンポンですよ」
「そうそう、レイジー様がね、絶対に大丈夫だって。それも恐らくスッポンポンで帰って来るって言ったの」
しかし、ルチアとデリーシャは、レイジーの深い洞察力に驚くしかなく、益々レイジーは憧れを越えた存在になっていくのだった。________恋は盲目とは言うけれど、もはや信仰にも似た信者に成長していった。
ある者にとって、これは好ましい状況なのである。
デリーシャの話を訊いて、アデリアも感慨深いものが心を震わせた。きっとレイジーの愛だと錯覚したのだ。
「やはりレイジーは、いつでもあたしの事を。これほど愛されて、あたしは嬉しいぞ」
◇帰還◇
______三人は、大事な所は手で隠してはいるが、自分達がどう見られているか、まだ気づいていないが、やっとその事に気が回った。
「おぉ、私の推理通りのスッポンポン!」
「ふん、なにがスッポンポンだ。お屋形様らしい発想が情けない」
「でもさ桔梗、主様が望めば私達、いつでもスッポOK なのにさ」
「メンテナンスはお屋形様だ。我々アンドロイドのスッポなど、見慣れているのだろう......悔しいが、生身には勝てんと言う事か」
ちぇ~
待機中のバニラ・アイスと桔梗のAIなら、レイジーの考える事くらいは計算せずとも予想出来る。
しかし、これ程に主を思っても、アンドロイドは人間ではない。
その想いはバニラ・アイス、Reno、kannaも同じなのだ。
______キャ!
もぞ もじ くねくね。
「レイジー......そこまで。しかしだな......このままでは、合わせる顔どころか服がないぞ。そんなに見ないでくれるか」
ボッキュン美女達のくねくねは、流石のレイジーも眼福の嵐で、思わず目尻が下がった。
「下衆様!!」
Renoだ。
「はいどうぞ」
ルチアとデリーシャが両手を差し出して来たので、よく見るとそれは布のような物だった。
「これはね、バイソンさんがもしや必要になるかもしれないって、モーリンさんのを持って戻って来たんですけど、バイソンさんが慌てていたらしくて......一応こういう物ナンデスけどぉ」
「これは......端切れ?」
更によく見ると、それは布面積の極端に少ない、ビキニが三着というよりハンカチ三枚が相応しかった。
「いやいやそれは有難いが、せめてティーシャツくらいは欲しかったぞ。しかし本当に、これはモーリンの物なのか?」
「らしいですよ」
三人がそれぞれ手に取ったのは、マイクロ・ビキニに毛が生えた位の際どいスケベビキニだった。
「むぅ、ないより......仕方あるまい。ならあたしは赤だ」
「私は黒で」
「ボクは白いのを」
ジョーは言葉が通じていないが、残った白をとった。
それを手にしても、出るのは溜息だけだ。
「デリーシャ、私、流石にアレは着れないわ。絆創膏を貼っているみたいで」
「わ、私だってよルチア。あれ殆ど裸じゃないですかぁ」
大事な所を隠す必要がなくなったとは言え、アデリア達はこれで一端、ナイトメア亭までは戻るには戻れるのだ。
........。
この時デリーシャは、自分にだけ無いある事に気づいた。
『このままでは、私はレイジー様の役にたたない』
それが何なのか、今はデリーシャの胸の奥深くにしまい込んだ。
◇帰還直後のエピ◇
______3階層で私は、三人の帰還を待っていた。必ず戻ると信じながら。
やがて3階層の転移魔法陣が展開、多重五芒星が出現すると、私は声を上げた。
「帰って来たぞ!」
私の大一声は歓喜に溢れていた。
「皆、無事で良かった。よくそこまでになって頑張ってくれた」
言葉ではそう言ったけれど、私の両の目は正直そのものである。
おぉっ これは!
「下衆様ぁ!」
「父ちゃん!」
「お屋形様!」
Renoとバニラ・アイス、桔梗には見抜かれていたけれど、私は三人の無事な帰還に、ほっと安堵したのは一瞬だった。
『ジョーは白が好みなんだな。しかし赤も黒も捨て難い』
ガゴォ~ン
と、いきなり超合金製の金ダライが降って来た。
「バ、バニラ・アイス! 何をするだに!」
AHO
......。
「俺もな、こんなこったろうと思ってよ、帰ってすぐにモーリンの服を引っ掴んで来たんだ。感謝して欲しいもんだぜ」
それにしてもバイソンの大将が、気を利かしてくれたのは嬉しいのだけれど、服を選ぶセンスが悲しい程ゼロで、TPOを良く考えて欲しいものだ。
水着? は服なのかと、今更バイソンの大将を責めても仕方がなく、私達は早速地上に転移して帰路を急いだのだった。
歩くアデリアとアエリア、ジョーの後ろ姿は裸そのものだ。
バシ
バシ
「レイジー、後ろをついて歩くのは、こりゃぁ眼福だなぁ、おい」
「バイソン大将、痛いんですけど。モーリンさんに言いつけますよ」
「兄貴ぃ~、カンバッチが壊れたのよさ」
あぁ。
『ジョーは、翻訳装置をやられたのか。また作らなくては』
◇第二回大反省会◇ 於ナイトメア亭一階食堂
______眼福も大いに結構だけれど、変態ダンジョン攻略の目的を見失ってはいけない。
私は開口一番______
「危険を冒しながらも、アデリア達が帰還出来た事に責任者として安堵しています。ではこれからどうするのか、意見を出し合って欲しいと思います」
私は皆の顔を見渡した。______
ダンジョンのお宝を目指すのか、それともいつ襲ってくるか分からない巨大モンスター<ゴジラ>に怯えて暮らすのか、この場で選択を迫っているからだ。
最初に口を開いてくれたのは、緑の5人隊長のオルガだ。
「私達は4階層で何があったかは知らない。しかし<ガッジィーラ>がまた襲ってくるのか来ないのか、ダンジョンにお宝があるのか無いのか、その両方共に確証が無いのではないか?」
怖ろしい程の正論だった。
『流石にハメリア合衆国情報部のエリート。核心を突いて来たな』
私は心の中で感心していた。
「何もしなくても、このまま平和に暮らせるかもしれません。それで皆さんが納得されるなら、私はそれでも構いませんよ」
私達が被害の出たダンジョンをまた探索して、わざわざ危険を冒さなくてもいいのかもしれない。誰もがそう思っても仕方がない状況なのだ。
成す術が無さそうな雰囲気に傾きそうだと感じたのは、アエリアだった。
「あの皆さん。私がどうして5階層までソロで、しかも何もなく帰還出来た事は、疑問に思わないのですか?」
確かに、その理由は訊いておきたいものだが......。
オルガ隊長の言葉は、私も含めて詳しく訊きたいと思っていた事だ。
◇変態ダンジョンの秘密に迫れるのか?◇
______ではお話しましょう。
アエリアは、全てを隠さずに話そうと決めた。
食堂が沈黙、静まり返ったのが分かる。
私はもしやアエリアが、自分の正体をカミングアウトするのではと感じていた。
『アサシンだった事を、今それを言わなくても』
私の予感は的中した。
「まず私は、裏ギルドAランクのアサシン。二つ名は<サイレント・マーダー>、噂位は訊いていると思います」
食堂に衝撃が走り、一様に顔が歪んでいる者ばかりだ。
「馬鹿な! 貴様があの姿無き暗殺者<サイレント・マーダー>だとぉ!」
ドン
アデリアは真っ赤になってテーブルを叩いた。
さっきまで、お互いがスッポンポンになりながらも、辛くも生還出来た戦友同志が、バイソンの大将とモーリンさんも知っている凶悪と恐れられたアサシンなのだ。
「この話をしないと、ダンジョンのヒントに繋がらないと思ったからです」
鋼線を使うと訊いた時点で、怪しいと思うべきだった。その<サイレント・マーダー>が今の今まで、一緒に暮らしていた事にルチア、デリーシャの体にも戦慄が走った。
「待ってくれ。私達はその<サイレント・マーダー>を知らん。だが今は今後、どうするのかを決める場なのだろう? アエリアの話を最後まで訊くべきだと私は思うが?」
またしてもオルガ隊長の言葉に、私は尊敬の念を覚えた。
『この人を参謀にしたら、とても役に立ちそうだぞ』
と
◇それは吐露か懺悔か◇
______「私は闇ギルドの依頼で、レイジー様を亡き者にしようと深夜に襲ったのです」
「襲っただとぉ!! 貴様があたしのレイジーを殺そうと!」
ゴゥォォ
アデリアの拳に闘気が纏わり付いた。
「止めるんだアデリア!」
「しかしレイジー、お前を殺そうとしたんだぞ!」
私はアデリアの拳を両手で掴むと、胸に抱き寄せて頭をヨシヨシしてやった。
はひぃ~
「いいかアデリア、話は最後まで訊くんだ。いいな」
はひ
はひ
珍しくあのアデリアから、険しさがすっかり消えていたのも驚きなのだ。
「アエリア、続けてくれる?」
私に促されて、アエリアが静かに話を再開してくれた。
「私はレイジー様の暗殺を中断して、北のエスタリカ王国に逃亡しようと、森の中を北へと向かっていたのです」
そこで私も知っていた衝撃の事実を話し、アエリアの負担を軽くしようと考えた。
「実はアエリアがアサシンで、私を襲った事は全部知っていました」
そこで一瞬の間があった。
げぇぇ
「レイジー、お前はそれを承知で?」
あらあらら
バイソンの大将とモーリンさんの驚きは当然だろう。なにしろ今まで、ナイトメア亭の二階に客として泊まっていたのだから。
「逃げる途中、<聖母マリア様>のブローチを拾って歩いていたところ、不思議な声に誘われて、このダンジョンを発見したのです。それはまるで導かれたようでした」
その後、北に向かう気力を失って、ただ5階層まで降りてみただけだったと言うのだ。
「私はダンジョンを攻略しようなどと思ってもいませんでした。ただ一人でする事もなく、ほんの軽い気持ちだったんです」
私、江戸川ナンコの推理はある程度当たっていたのだ。
まずダンジョンを攻略する意思が無い事と武器やアーツを出さない事。
しかし一つ疑問があるのは、アエリアは鋼線を持っていた事である。
「でも5階層には何も......確か何も無かったと思うんですけど、そこの記憶が曖昧なのです」
!
私はそこである推理を展開した。
◇招かれた者◇
______『これはもしかして、アエリアはダンジョンに招かれていたんじゃ!』
それなら鋼線を持っていても、アエリアがソロで無事に帰還出来た理由ではと思えた。
チームで潜った時は武器を持っていたし、実際、アデリアと桔梗が3階層でMDと抜刀術をブチかました結果、私達は招かざる客になってしまったと思う。
「訊いて下さい。これは私の推理だけれど、ダンジョンはアエリアを待っていたんじゃないかと思うのです」
いや、しかし!
ここに居る誰もが、私の迷推理に賛同し兼ねていた。




