EP70 私が選ぶ変態4階層攻略メンバー☆
______これまでまるで出番がなかったが、ジョーには自称<姐さん親衛隊>のジャッカル、チャーシュー、メンマ達<三馬鹿トリオ>がいた。
いや居る。
ボコられて目覚めた忠誠と<姐さん命>を誓って、ジョーの為なら命も賭ける元荒くれD+冒険者達の事だ。
そんなアホ達の事はひとまず保留にしておくとして私、迷探偵江戸川ナンコの推理では、アエリアがソロで潜った事が、重大な謎を解くカギではなかったのかと確信している。
よく考えたつもりでも、私とモーリンさん、三馬鹿トリオに再度バニラ・アイスとRenoを選べば、バニラ・アイスとRenoだけが二度目では、やはり休眠中の火山の如く大爆発しそうである。
ズゴゴゴゴ
選ばれなかった女性陣の目が、強烈な恨めしさを含んだ怨念のように赤く燃えている。
『Aiでもそんな目をするのか?』
視点を変えて、アエリアとモーリンさんの二人だけならどうだろう。思考型変態ダンジョンがどう出るか分らない以上、危険だが試してみる価値はありそうだ。
そうなっても3階層までなら、転移魔法陣で認識されている私や、バイソンの大将を含め、ルチア、デリーシャ、バニラ・アイスとRenoが、3階層からすぐに飛び出せるように待機が出来るのだ。
「と言う事で」
______私がそんな私案を口にしてみると______
ブチン
どこかでパンツのゴムが切れるような音がした。
「ちょっと待つんだ! またあたしに指を加えて待っていろと言うのかレイジー! それに子持ちのモーリンを潜らせるなど、いったいどういう事だ!」
「アデリア、お前のパンツ......落ちないか?」
怒り心頭なのは、アデリアだけではない。
おい!
「アデリアは兎も角、俺を入れる話だっただろうが! なんでモーリンを!」
バイソンの大将にしても、一人娘のルルが残されてしまう以上、妻のモーリンを潜らせるなど、バイソンの選択肢にはないのである。
バッ
「「異議ありぃ!!」」
アデリアの不満が切っ掛けとなり、ジョー、Kanna、桔梗が反旗の狼煙をブチ上げ、Aiが連鎖反応を起こした。
すでに蚊帳の外の緑の5人は見つめ合った。
「......あのぅ ボス、ここは沈黙がいいッスよね?」
「当然だポッター君。非力な我々に何が出来ると言うんだ?」
「しかし隊長、あのエルフ顔の......レイジー薬師に<かぶら>と呼ばれている女性ですが、ちょっと気になるのです」
副長トーラスが、ふとある疑問に今更気付いたのだ。
「<かぶら>さんがどうしたと?」
「隊長は気になりませんか? あれは工事用の黄色いヘルメットではないですか?」
緑の5人はここに来て、やっと黄色いヘルメットの存在に気付いたのだ。
「あ、あれはどう見ても地球の工事現場用ヘルメットですよね? ボス」
「それにバニラ・アイスちゃんですが......あのコスはラスベガスで繁殖している......ですよねぇ」
う~む......
「ポッター君、信じ難い話だが私にもそう見える。異世界に来て、私の目がおかしくなってしまったのか」
______緑の5人の疑惑が、ジョーとバニラ・アイスに向かっているとも知らず、激しい攻略メンバー争いが依然として続いていたのだけれど、バニラ・アイスだけではなく、アンドロイドの娘達は、緑の5人の会話をちゃんと訊き取っていた。
=レイジーチャンネル通信=
=父ちゃん、かぶらの黄色いヘルメットが怪しまれてるけど?=
=しまった! それは本当か? しかしバニラお前、白衣はどうしたんだ? バニーガール状態だぞ=
=主様、糞ウサギの事は兎も角、かぶらに、いろいろと訊かれるのは拙いのでは?=
=下衆様、緑はやはり始末した方が=
=おい、Reno、お前はなんでいつも過激なんだ=
そこで私は異世界へ来て、三度目の腹を括ったのだった。
応急的になってたとしても、ジョーから注意を引き離す事と、アデリアの暴発寸前の欲求不満を諫めなければ、この場に私の血の雨が降りそうな予感がするのだ。
=注意をかぶらとバニラ・アイスから逸らす=
______「でわ最終発表します!」
私は高らかにそう宣言した。
「バニラ、ドラムロール!」
あいなぁ~父ちゃん。
ゴクリ
生唾は、自分が指名されるのではないかと、周りの期待が高まったからで、中でもモーリンさんの期待は想像以上に大きかったとは。
はらはら
わくわく
ドキドキ。
「発表します。4階層攻略メンバーは!」
ゴクリ
「アデリア、アエリア、<かぶら>と私の4人で決行します。意義は認めませんよ!」
レ、レイジーぃぃ! 貴様と言う奴わぁ!♡
レイジー様ぁ~ 私は信じていましたぁ~!♡
しかし
「「「不当判決ぅう!!!」」」
バッ
バニラ・アイスが、白い垂れ幕を広げて抗議の意思を示した。
「あのなバニラ、そんなもんいつ用意した? それにバニコスのままじゃないか!」
「かぶらが用意して持ってますた。それにバニコスの方が機能的なのれす。ピョン」
「あぁ、それなら納得。そんな訳ないだろう!」
言い訳は後回しにして。
「これも江戸川ナンコの迷推理だけれど、アデリアとアエリアは、私にくっ付いていれば、3階層の転移魔法陣まで移動出来るかもしれない。もし出来なければ最初のプランでいきます」
ボゥゥ
アデリアとアエリアの瞳が燃えていたけれど、反対にモーリンさんの瞳から、ハイライトが消えていた。
『そんなに行きたかったんですか? 専業主婦ではストレスが溜まっていたんですかね』
ここでまたアデリアを留守番させると、MDが容赦なく暴発してしまうだろう。
「またしても社長の暴挙! Kannaは一度も行っていないのです!」
確かに______私もいろいろ考えた結果の選択なのだ。ここで私はKannaに秘策を耳打ちをして納得して貰う事にした。
「ひそひそ......だからさ、ねッ、今回も我慢してよね Kannaちゃん」
見る間にKannaの瞳が潤んで、腰からガクっと砕け落ちていった。いったい何を言ったらそうなるのだろう。
ブルブル
「し、社長がそこまで言われるのでしたら、わ、私は我慢するしか......ありませんね ポッ」
我慢と言うより瞳を潤ませて、股をクネクネさせて喜んでいた。
『こいつ、本当にアンドロイドなのか? 私も時々不安になる』
「そう言う事で、明日は4人で潜ります。以上で解散してください」
私がそう宣言すると、頭上から超合金製の金ダライが降って来て、いい音が響いた。
ゴォ~ン
「バ、バニラ、何をするだに!」
プンスコ!
もう白衣は着ないと言うアピールも込めているのだろう。
『いずれアンドロイドだとバレるなら、早くなってもいいか』
緑の5人に全てを話しても、敵にはならないだろう。私はそう思うのだ。
これ以後バニラ・アイスは、異世界にはいない筈のバニーガールの姿で通す事になり、それを真似た桔梗も、白衣を着る事を止めて、チャイナドレスになった。
Renoは元々メイド姿、秘書のKannaは黒いスーツ姿なので、白衣を着ているのは私とジョーだけになった。
◇密談の四者作戦会議◇
______三々五々、不満の余韻を残した後、私の店の一階フロアには、アデリアとアエリア、<かぶら>と私の四人がテーブルについていた。
ルチアとデリーシャなど、またメンバーになれると信じていたらしく、私を睨んで帰って行くのだった。
『般若みたいだ』
その後ろ姿の、お揃いの紅いヘアピンが、歩く度に私に見せつけて来るような気がしてならなかった。
______「ところでレイジー、あたしを4階層攻略メンバーにノミネートしたのは大正解だぞ。だがどう攻略する? あたしはダンジョンに敵認定されているのだがな」
敵認定とは、アデリアだけは3階層で、MDをぶっ放しているからだ。
「私が選んだ理由は無手だからです。鋼線を持っているアエリアさんが、無事10階層まで行けた理由は謎ですが、それを再確認する為にもノミネートしました。場合によっては、私が抜けても大丈夫ではないかと」
ジョーは無手の南友千葉拳、アデリアはMD、私はセラミック・ナイフに変更するので、4人は見掛け上、全員が無手の筈である。
「貴様が抜けてもいいだと? 駄目だレイジー!」
「そうよ駄目よ、そんなの」
「兄貴ぃ、それは無いのよさ」
私はこのダンジョンは、もしや男を嫌うのでは? と推理したからで、万が一でもこの三人は強い。しかも3階層の転移魔法陣には、大勢の助っ人が待機しているのだから、もう心配する必要はないのだ。
______しかし猛反対を食らってしまった。
「じゃ計画通り4人で潜ります?」
「当然だレイジー、なにを今更」
「ですよねぇ~レイジー様」
「ボクも危うくキレるとこだった」
ボソ
「<かぶら>は切れ痔で......太ったし」
「......兄貴ぃ、まさかとは思うけど今、妙な事を言わなかった?」
『こいつ、地獄耳かよ』
「ぷッ、あたしの耳を欺けると思うなよレイジー、あたしも訊いていたぞ」
「アデリア、レイジー様は今、何て言ったの?」
いや、なんでもないぞ。
◇翌日 3階層へ飛ぶ転移多重魔法陣前◇
______私とアデリア、アエリアに<かぶら>の4人が、ダンジョン入口に現れた転移魔法陣の前に立った。
アデリアは機動性を重視した革短パンにニーハイ・ブーツ、いつもの革のノースリーブジャケットで、アエリアはミニスカ・ストキングにローブを纏っていた。
「兄貴ぃ、ボクのファッションは無視するの?」
うむ。
「<かぶら>は、デニムの短パンとへそ出しデニムの半ジャケット。ニーハイ・ソックスにショート・ブーツ。ちなみにパンツは白だろ?」
「見えないとこは、言わなくていいのよさ! この変態!」
......ボス、パンチーは白だそうで。
おまけで付いて来た緑の5人。そのポッター達の目尻が下がった。
この後、ポッターの腹に、トーラス副長の拳がめり込んだのは言うまでもない。
◇攻略◇
______「アデリアとアエリア、<かぶら>、私にしっかりと捕まれ。3階層まで転移出来るかどうかは分からない。なるべくしっかり密着した方がいいだろう」
「「「はいぃ~♡」」」
その時の私は、ローラーで挟まれた小麦粉のように伸びていた。
「じゃぁ くるちぃ 行って来るチぃ」
パァ~
五芒星多重魔法陣の青白い光が、私達4人を包み込んでいった。まるでホログラムの<聖母マリア様>が出現するような錯覚を覚えてしまう。
「これは! 皆いけるぞ」
やがて私達4人は、無事3階層の転移魔法陣まで転移する事が出来た。
むぎゅう
「あの、皆さんいつまでくっ付いているんです?」
「いやそれがだな、離れたくても、これは転移魔法陣の不具合だろう。レイジー、あたしの体が言う事を効かんのだ」
「き、奇遇ですねアデリア、私の体も離れないのはどうして?」
「ボクもだよぉ~これムリポ」
3人の腕に力が入っていて、ウンウン唸って演技しているのが白々しい。
仕方がないので私は、腹をこちょこちょしてやると、見事に一斉に離れていった。
「むぅ、卑怯な。一番いいところだったのに」
「甘美な一時でした」
「ちぃ」
「三人とも遊んでいる場合ではないでしょう。後続が転移して来るんですから」
「遊んでなど......断じてないぞ」
今のアデリアの姿を見られたら、余りのギャップに多くの冒険者達がドン引きする事は間違いないが、これで大丈夫なのかと不安になる。
しかし、その原因がレイジー自身にあるとは、どこまでも女心に鈍感な羨ましい男であった。




