GW閑話<ラバーズ・デイ>
EP52から後章へ
______最初、私は異世界でも一週間が七日だった事に驚いてしまった。
どうもそれは<毎日が労働ばかりではいけない。七日目には休んで恋をせよ>という、地球の旧約聖書をパクったような伝説から来ていた。
テレビもない娯楽の少ない異世界では、休みになってもする事がない。
所帯持ちの男なら、朝から酒を飲んだり賭けをするけれど、女性はいつもと同じ家事や子守をするしかないのが普通だった。
しかし未婚者にとっては、異性に告白するのがこの休日で、いつしか若い男女の間では、七日目の休日を<ラバーズ・デイ>と言う名前で呼ばれるようになっていた。
そして冒険者組合でも、いつになくソワソワする三人の姿があった。
120年のエルフ人生で、初めての恋をした組合長のアデリア、レイジー薬師に一目惚れしたアイドル受付嬢のルチア・アルデール、冒険者組合によく顔をだすオイスター・ケチャップの養女デリーシャが、それぞれ怪しい計画を立てていたのだ。
「あたしにも遂にこの日が来ようとは! デルモンド王国やエスタリカでも無敵を誇る、あたしのナイス・バディでレイジー様をメロメロにしようではないか」
「あぁレイジー様、次の休みに告るの。だから私を受付嬢から卒業させてぇね」
「デブーラ男爵領に来た時からの運命なの。もうダメ、私は告るわ」
奇遇にも、その告白日が重なってしまった事が、嵐を呼んでしまった。
◇緊急アンドロイド条約◇
______「みんな、大事な話があるのよ」
とバニラ・アイスと桔梗、kannaを呼びつけたのはRenoだ。
「なにさぁ~Reno、私は金ダライを磨きたいんだけどぉ~」
「この身は抜刀術の鍛錬で忙しいのだが」
「Kannaは最近暇ぁ~。村の計画は、ドワーフのイーノ・タダーカがやってくれてるからぁ」
「この緊急事態に、あなた達はバカなのでしょうか? とてもレイジー博士のご両親様が作ったとは思えなくなるわ」
Renoが三体を一喝する。
オホン
「異世界に来て、毎週七日目が<ラバーズ・デイ>なのは知っているわね。三日前から私の股間センサーが、異常なメスホルモンの高ぶりを感知したのよ」
感知出来ないのはジョーだけで、Renoに呼ばれていない理由は、アンドロイドではなくて本物の女だからだ。
「そんな事はさ、私も知ってた。金ダライを磨いてから一人で妨害してやろうと思ってたのに。言っとくけれど、バニラちゃんのAIはmyu96で、みんなより優秀なんだよぉ~だ」
ドヤァ~
RenoとKannaはmyu48、桔梗はmyu69で、バニラ・アイスのAIが優秀? らしいのは確かだ。(作者談)
ムカァ
「ちょっと作者ぁ! らしいってどう言うことぉ!」
「ふん、作者の設定では、股間センサーの性能が、myu48の方が優れているのを知らないとは」
「むぐぅ、山路ぃぃ」
ここで争っていても仕方がないと、痺れを切らした桔梗が口を開いた。
「早い話が、主様に発情したメス共の告白を阻止すればいいのだろう?」
「「「その通りです!!!」」」
ここに想いが一致して、Reno、バニラ・アイス、桔梗、Kannaのアンドロイド四体の緊急同盟が結ばれたのであった。
「でも共同戦線は今回だけで、作戦終了後はお互いがまた敵よ」
Renoの言いたい事はそこだ。
「「「もちのろん。御主人様は、絶対誰にも渡さないから!!!」」」
『ふふん、バニラちゃんはご主人様と一年以上、一緒に暮らして来たんだよ。この意味が分かるかなぁ~?』
バニラ・アイスは勝利を確信しているのだ。
「ふん、茶坊主が」
「どうせ迷惑ばかりかけてたんでしょ」
◇ゴミ達の告白を断固妨害せよ◇
______アデリア、ルチア、デリーシャの告白計画は、アンドロイド達にはバレていたけれど、三人の心はレイジーの事で一杯になりながら、それぞれが悶えていた。
=アデリアの場合=執務室
「あぁ~ん、あたしがここまで乱れるなんて。でもスルのよ告白を! でもなんて言ったらいいのかが分からないのよぉ」
=ルチア・アルデールの場合=受付カウンター
「私は冒険者組合のアイドルでなくていいの。レイジー様の私でいたいの。だからスルわ」
=デリーシャの場合=組合に向かう途中
「父オイスター・ケチャップ、デブーラ男爵の縁で強引に迫るの。恋する女は強いのです!」
普段強い事を言っているアデリアが一番弱腰だったとは、分からないものだ。
______さてさて、これまた奇遇にも私は三人とジョーから、森のある場所に呼び出されていた。
「あのさ兄貴ぃ......頼みがあってさ......森の入り口から108歩のあの場所で待って欲しいのよさ」
と言った途端、頬を赤らめて脱兎の如く逃げて行ったのだ。
「ジョー? 毎日会っているのに何だろう?」
レイジー博士は基本、ドスケベではあるけれど、女心には超ドンカンなのである。
______ところで、今の私の独り言は、社長秘書のkannaが盗聴していた。
『なんで年増かぶらまで! では、かぶらは私が始末しましょう。強力な下剤を仕込んで、トイレに缶詰め......ふふ、これがいいわ』
「ふ、それは賛成、しかしかぶらもか」
ドキ
振り向くと、いつの間にかRenoが横に立っていたのだ。
ゲッ、エントリーナンバー1のReno!
「おたわけなの? エントリーナンバー2のkanna。<保毛坂48>の股間センサーは、皆同じ性能だと言う事を忘れているの? 」
チッ
「間抜けかRenoは」
ゲッ、桔梗!
チッ
「みんなはおバカちゃん?」
ゲッ、バニラ・アイス!
結局、下剤を仕込まれたジョーが、自分の言った待ち合わせ場所に行けず、アンドロイド同盟はハイタッチを交わしたのだった。
バチィィン
「「「一匹撃墜!!!」」」
◇108歩目の森の中◇
______120歳のアデリアはいつもより入念なメイクと、長い生足を露出した短パンに、ノースリーブの白いTシャツが、形のよい双丘をアピールしていた。
「これがあたしの脳殺ルックだ。マイクロビキニは最終手段に残しておこう」
108という数字には特別な意味があって、日本で108は煩悩を意味しているけれど、異世界では願いが叶う縁起のいい数字なのである。
ジョーもそれを知っていたのに、アンドロイドの娘達によって見事に下剤で撃墜されてしまった。
ブリィ
スカァ
「なんでよ~、こんな大事な日に下痢だなんてぇ~最悪なのよさ」
17歳のルチア・アルデールは、ピンクの可愛らしいフリフリのワンピース。ピクニックに行くような気分で108歩を歩んでいた。
「レイジー様は、可愛いって言ってくれるかしら♪」
デリーシャは案外しっかりした17歳の美少女である。
自分がオイスター・ケチャップの養女である事に感謝しつつも、早く家庭を持って安心させてあげたいという、三人の中では一番納得する理由を持っていたのである。
さて残念な事に、108歩目には個人差があったのだ。
森に入って<どの方向に108歩>かと、それぞれの歩幅が違うので、実際に会う事が出来たのは、108歩目の場所も伝えてあったジョーだけなのだ。
◇<ラバーズ・デイ>の勝者◇
______「「「レイジー様はどこ? 私は捨てられたの?」」」
捨てるも何も、レイジー博士は誰とも付き合っていないのだ。
結局、誰もレイジー博士と会えなかったのである。
肝心の私はと言うと.....
「し、しまったぁ! 寝すぎてしまったぁ~! もう夕方じゃないか!」
「作戦大成功!」
朝から私は、アンドロイドの娘達に監視されていた。
その理由は、昨晩ある結論が出ていたからだ。
「ねぇみんな、ご主人様に眠り薬を盛れば、一件落着だと思うよ」
「そうか糞ウサギ、それがいい」
「そ、そんな簡単な事に気づけなかったとは、Renoの不覚」
「バニラ茶坊主は一年前から、主様にコーヒーを出していたのよねぇ。それできっと主様は油断したんだ。Kannaは秘書としてまだ未熟でした」
______その夜。
待ちくたびれたアデリア、ルチア・アルデール、デリーシャの三人に、私は地獄の尋問を受けてゲッソリしていた所へ、同じくゲッソリした顔でトイレから、ジョーがフラフラと出て来た。
「そんなにやつれて、どうしたんだジョー?」
「兄貴もやつれてるのよさ」
なんでもないやり取りなのに、バニラ・アイスのAIは感じていた。
AI-myu96がどうして最高傑作なのか。今はレイジー博士とバニラ・アイスも知る事はなかったけれど、地球と異世界の未来が、バニラ・アイス達アンドロイドに掛かっている......AI-myu96は何故かそう感じたのだった。




