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EP41 <サイレント・マーダー>VS聖母マリア様 <人の心を惑わす超極悪詐欺師レイジー立木>


◇観察者◇

______ハメリア合衆国とルルシア帝国、デルモンド王国に巣くう闇ギルドでもない者達がここに集った。



「全くお前と言う奴は懲りないのだな」

「なんだお前か。いきなり背後から忍びよるとは趣味が悪い。それに私のは、好奇心的な楽しみなの」

 へぇ~そんな大層なものかねぇ。


「用が無いなら帰ってくれない? これでも暇じゃないから」

背後の者は暫し考え込んだ振りをした。

 ふっ笑わせてくれる______


「結果が見えているものに拘ってどうする? それを退屈と言うんじゃないのか? まぁいい。今は好きにするがいいさ」

それは、また音もなく闇に消えていった。


◇聖母マリア様の奇跡◇

「デリーシャ、お前もその目で確かめなさい」

 あの後、オイスター・ケチャップとデリーシャ二人が台座に向かうと、やはり奇跡を目の当たりにしたのだ。

3Dホログラムなどは異世界には存在しない。二度目のオイスター・ケチャップでも、それは疑いのない奇跡の存在としてしか映らなかった。


______一方、ナイトメア亭二階管制室では。

「兄貴ぃ、おみくじは出せばいいの?」

「いや、オイスター・ケチャップは二度目だからな。こっちのボロが出ると拙いから静観だ」


 私が書いた文面に矛盾するのは拙い。そこで二度目のお客には出さないように、顔認証をしておこうと決めたのだ。

「兄貴が出鱈目書いた割には、皆が泣く程感動しているのがボクには謎なのよさ」

「私にもよく分らないけれど、結果オーライってとこで」

「よくバレないもんだわさ」


 聖母マリア様を目の当たりにしたデリーシャ。彼女もまた有難い信者となり、土産品作成に異常な情熱を注ぐ事になった。

「聖母マリア様を、この村から世界に発信するのよ!」

『それを伝道者と言うんだけど、すまんデリーシャ。それ偽物なんだ』


◇保毛山出版からCM◇

 キーボードを叩くReno。

<人の心を惑わす超極悪詐欺師レイジー立木。その名は、G(ゲローナ)に魂を売った男として未来永劫、語り継がれるであろう。超話題沸騰の新作小説に刮目せよ>


「おいRenoさんよ、お前はさっきから何を書いているんだ?」

「はい、私はラノベで真っ当な収入を得たいと思いますので、主様をモデルに新作を執筆している所で御座います。タイトルはなんと<異世界下衆様の末路>はどうですか? 増刷間違いなしの大ベストセラーとなるのです。目指せ! 印税生活! by 保毛山出版」


 Renoには、検証の意味が分かっていないのか、ひたすら私を下賤だの下衆と批判するようになった。

確かに生活の為のG(ゲローナ)は最低限必要だけれど、私の科学者としての好奇心も満足させたいのだ。

 <座右の銘>

「好奇心なくして、人類の進歩はない」

と、私はRenoに高々と宣言してやった。



 ナイトメア亭で作成した薬品を売って、宿代の支払いは出来ているし、もう数週間で<レイジー印・ドラッグストア>は開店出来る運びなのだ。

何度も言うが、この墓地一帯を観光地として有名にすれば、沢山の人達にG(ゲローナ)が舞い込む。私は経済にも貢献する事になるのだから、批判は止めて貰いたいのだ。

「ものは言いようですね、下衆様」


______その晩。

 墓地の台座に一人近づく人の姿があった。

「これか? 何やら騒いでいた物とは」

レンガを並べたような、ただの丸い台座の前には、設置したばかりの賽銭箱が置いてあるだけだ。


 二階管制室は、閉店で誰も監視はしていなかったが、接近センサーが感知して3Dホログラム<聖母マリア様>の姿だけが出現した。

 ひぇぇ!

その人物は浮かび上がったホログラムに驚き、腰を抜かしてしまった。

「ひぃぃお、お化けだ!」


 しかし金色に輝くそれを良く見ると、その手に赤子を抱き、瞳には慈愛が溢れていた。

「うっ、なんと神々しい。私の醜い心が清められるようだ」


 そのマリア様は、対象物に合わせて自動追尾で慈愛の視線を変える。そんな効果もあってか、腰を抜かして驚いたのが嘘のように、晴れ晴れとした気持ちになった。


「こんな気持ちになったのは何年ぶりだろうか。あの頃は二人で......よく笑って過ごした事もあったのに」

聖母マリア様は、慈愛に溢れた瞳をじっと向けたままだった。


「この依頼が終わったら、その金を持って北の王国に逃げるのも悪くはないか。そこで身を隠して日々を生きられたら......」

そう呟くと、その人物は何度もマリア様を振り返って消えて行った。


「とんでもない奇跡を見てしまった。あの像には全てを見透かされたような気がした。さて、このままでは眠れんだろうな朝まで」


 それを聖母マリア様の3Dホログラムは全自動で、さも生きているかのように見送ったのだった。

その人物こそ、闇ギルドが放ったAランクアサシン、<サイレント・マーダー>である。


 深夜の一連の出来事は、全てフルオートで私やジョーは知る由もない。

ただ深夜の訪問者の事を、アンドロイド三人娘は気づいてはいたが、害の無い者として放置していたのだった。


______そして運命の午前6時が来てしまった。

「私のスキルはB+のスペラーのような爆炎魔法ではない。気配を完全に消して獲物を刈る。気づかれもせずに死んで逝くのは、せめてもの私の情けだ。青年薬師に恨みは無いが、許しを乞うつもりもない」


<サイレント・マーダー>は、チラリと墓地の最奥に視線を投げたが、そこにあの崇高な御方の姿はない。

『くッ迷いは禁物、今は依頼に集中だ』

 タン

 そう呟くと、姿を消しナイトメア亭へと接近、二階の窓へと跳躍した。

日の出の太陽が、ベッドで眠る青年の顔をうっすらと照らしていた。

その顔は、なんの邪気も感じず幸せそうだった。

「げへへ カモ 毎度ありぃ」


 『......寝言か、思ったよりワルか? だが、幸せな夢を見ながら死ぬがいい』

 シャキィィ シュルシュル

日の出の太陽は、あっと言う間に昇る。より明るい光が<サイレント・マーダー>の両手の指先から出た双条の細い糸を照らし出した。


『永遠に眠れ<ダンシング・デス・ストリングス>』

必殺の技を仕掛けようとした瞬間、私は偶然に目を開けた。本当にそれはただの偶然だった。


 サイレント・マーダーの姿は見えないが、窓は開いていた。それは朝吹き込んだ穏やかな風の仕業だった。

『うっ、似ている! 姉さんの......』


<ダンシング・デス・ストリングス>がもし魔法だったら、モーリンさんが気づいたとしても間に会わなかった。

「貴様、深夜に台座に居た輩だな!」

私の意識がはっきりすると、Renoの右手はサイレント・マーダーの頸動脈に添えられていた。


 アンドロイドの娘達は、魔法の予兆には気づけないが、<ダンシング・デス・ストリングス>は物理攻撃、姿を消していようが近づいて来た時点で、三体の娘達は迎撃態勢を済ませていたのだった。

「殺せ」


 やはり迷いがあった。それは深夜に見てしまったあの御姿にだろう。

「いや殺さん。貴様、<聖母マリア様>を見て、感じるものがあった筈だ。だからギリギリまで放置しておいたのだ」


 私が見た光景は、姿を現したアサシンの首に手刀を突き付けたReno、金ダライを振り上げているバニラ・アイスだった。

桔梗は既に私の前に来ていて、抜刀の構えをとっていた。


「お前は女か! それもまだ少女じゃないか。私を殺すのに一瞬躊躇いがあったな。何か理由が有りそうだが、お前もあの<聖母マリア様>を見たのなら、あの時虚しさを感じた筈だ。違うか?」


 殺されそうになったのに、妙にすらすらと達観したようなセリフが出たのは、きっとおみくじの原稿を書いていたお陰だろう。

 ...... ......。

「あの高貴な御方は<聖母マリア様>と言うのか。そうか、そうだったのか」

観念と言うか、殺気を失ったアサシンを見て、この少女はもうこの稼業を捨てて生きていくのだろうと私は思った。


 ◇饒舌◇

「私はお前の全てを許そう。そしてこれからは人の為に生きよ。それが今まで殺めて来た魂の慰めにするのだ。ならば行け!」


 またとんでもないセリフが出てしまったが、実は私は殺されかけた恐怖で、頭が錯乱していたのだった。

「私の名前は......アエリアよ」

そう名を告げたかと思うと、ふっと姿を消したのだった。


「主様の武士の情け、お見事でした」

「げへへ カモ 毎度ありぃ と言ってましたね下衆様」

 え? それ私の寝言?

今になって改めて震えが襲って来た。

「ひいぃ怖かったよぉ~バニラぁ」

「神経伝達故障。父ちゃんポンコツ」


 偽聖母マリア様の御利益で、血を見ずに済んだのだから、これも奇跡なのかもしれない。

「でもさ、アエリアって何で父ちゃんの顔に驚いたんだろうね」

バニラ・アイスの疑問は確かにその通りだ。

「私は会った事はないけれど?」


 ジィィ ジィィ ジトォ~

「下衆様、私達に内緒で浮気などしてませんよね? よね! よね!」

「バカ、殺されかけてるのにそれは無いだろう」

「下衆様の事ですから。へぇアエリアちゃんねぇ、どうだかね! どうだかね!」


 朝からとんだ濡衣(ウェットクロス)を着せられた私だったが、無事に生き延びる事が出来たのだ。

「ふぅバニラ、朝のコーヒーを一杯頼む。今はそんな気分なんだ」

 へい、コーヒー熱燗大盛一丁!

 鍋で煮るな! 違うだろ!

「いいじゃん、いいじゃん、いっぱいって言ったし、どっちも同じコーヒーでんがな」


  ZZ  ZZ

 こんな状況でもジョーの姐さんは、しっかりとお休み中なのである。

 「むにゃ おかわり」




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