第三十七話 人外の願望
「見事、見事であった、アカリよ!
ふ、ふふ、ふっははは!
確かに、アカラスタの警戒も納得よ!
これほどの…妾が存在してから、これほどの大群は初めての脅威!
それを、数日で片付けてしまうとは思いもよらぬ!
…長年、我らを悩ませてきた金蜂を無傷で討ち滅ぼすとはな。
この五百年余りで随一の戦果と言えよう。
よくぞ、やり遂げたな、アカリ」
目の前に積まれた金の小山を、心を震わせるように見上げながら高笑いをしているノイマン…の中に入っている上機嫌な鶴さん。
ひとしきり笑って満足したのか、私へ振り返って笑みを残したまま褒める。
…今、五百年って言った?
「無傷ではありませんよ。
反撃を受けて瀕死です。
それに、それらは眠っているだけですので、下手な事をしないでくださいね」
私は賛辞を素直に受け取れず冷たく返してしまう。
既に戦隊モノのコスプレを消していつもの服装に着替えている。
こっちに転移してきた鶴さんから何の格好だと聞かれて恥ずかしくてね。
あの肉スライム首輪はビデオ電話に似た機能があったらしく、私の首の高さから真下と真上以外は全方位を見る事ができたようだ。
とは言え、この場所に送られた直後に私は金蜂に喰われて、その後、オレンジスーツを着込んだ為、全く状況が伝わらなかったようだが。
私の呼びかけに応えられなかったのは私が喰われた時点で金蜂を足止めできないと判断して繋がりを切っていたみたいだけど。
確かにいくら不死身の怪物だって、胃袋の中に収まってしまえば足止めは無理だろう。
金蜂を迎え討つ為には、繋がりを保つエネルギーすら惜しかったようだし、そこは納得した。
鶴さん、金蜂の反撃を知っていたのだ。
しかも、既に伝えていたとまで言われたのだ。
いつの事だと問えば、アカラスタが襲来日の予報をしていた時だと返された。
鶴さんの魔法…というか体質、特性で言葉を話さなくてもイメージを相手に伝える事ができるらしい。
今までの襲来日の記憶、金蜂の外見、行動パターン、弱点に注意事項など戦うにおいて必要な情報を音声と映像付きで伝えた。
その上、受け取ったと言わんばかりに私が頷いただろと言われた。
それを聞いてアレかと唖然としたよ。
ナニソレ、キイテ、ナイヨ?
テレパシーじゃん。
聞いてないよ、聞きたかったよ、二重の意味で。
ファンタジー体験と攻略必須情報の意味で。
稀に効かない奴も居ると言われた時に、私の頭の中には一つの言葉が浮かんだ。
状態異常無効。
こ、れ、だ!
嘘だろ、テレパシーは状態異常に含まれますか、神様!?
そりゃあさ、相手にイメージを強引に押し付けれるとか精神攻撃もできるだろうけどさ。
今回は見逃して欲しかった!
私もあの時、黙って頷くんじゃなかった!
意味を、意義を問い質しておけば良かったのに!
…でもテレパシーが聞こえないのは悲しいな。
「くく、そんなに気に食わんか?」
「当たり前でしょう。
こっちはそれを目的に動いていたんですから」
おっと、思わず答えちゃったけど、心の声がダダ漏れてたかな?
「確かに、褒美の一つを前線に持って来られれば、そう感じるのも致し方ないか。
ふふ、許せ、アカリよ。
早速、始めるか」
鶴さんは軽く謝罪すると私の首元に触れ、肉スライムの首輪を外して、軽々と金蜂の小山を降りていく。
私も呼ばれて降りると鶴さんは丸めた肉スライムを金蜂の口の中に放り込んだ。
「何をする気ですか?
眠っているとは言え、攻撃したら放電しますよ?」
「なに、眠っているならば都合が良い。
何年、金蜂に襲われ続けたと思っている?
反撃すらさせずに殺す事など、他愛ない」
それは数秒の出来事だった。
金の輝きがくすんだと思えば、まるで暑さで溶けるアイスのようにデロリと形が崩れた。
色も金色から肉スライムの生々しい肉のモノへと変化していった。
「見よ、妾の呪いである同化。
相手を妾の一部として取り込む。
止めを刺す事は妾の十八番よ」
「私、必要でしたか?」
「ふん、意識があれば相手の同意なしでは使えん。
…それに妾は金蜂の放電が苦手だ。
浴びれば動けずに喰われるだけよ」
だから弱り切った金蜂にしかしないと言いながら鶴さんは金蜂一体分の体積が増えた肉スライムをまるで己の手足のように巧みに操って金蜂の口の中へと入り込んで同化を進める。
…そうだった。
あの肉スライムは鶴さんの一部だった。
「いくつか聞きたい事があるのですが…
いいですか?」
「良いぞ。
褒美の上乗せか?」
「…それもありがたいですけど。
金蜂っていったい、なんですか?
私が箱に閉じ込められる時までは、あんなのが居たなんて知りませんでした」
というか、うん。
私がこの世界に来て半年さえ経たずに箱の中だったから知らない事の方が圧倒的に多いんだけどね。
フランクリン達はあんな化け物と日夜、戦っていたのだろうか?
元気にしてるかな、フランクリン。
…五百年、経ってるんだっけ?
うーん、ファンタジー。
「金蜂についてか。
アカリよ、古代帝国の近衛兵を知っているか。
金色の鎧に雷の魔導具を扱う兵隊らしいのだが…」
「はい、知っていますよ」
十中八九、白い建物から抜け出した私を捕まえた、あの黄色い鎧のやつら。
アレを忘れる事はないだろうな。
「金蜂は、近衛兵が黒い涙を受けて変異した姿。
妾が同化して得た記憶から考えるならばな」
黒い涙に変異、か。
アカラスタも言ってけど、黒い涙ってなんだろう?
話からすると呪いを受けるみたいだから、決して良い物ではないと思うんだけど。
…鶴さん、同化した相手の記憶も読み取れるんだ。
つまり、日本語が分かるのも…ノイマンを同化したから?
…分離できるよね?
「黒い涙とはな。
突然、世界を覆った黒いナニカ。
それに触れた者は…二つの変異があった」
私が聞く前に鶴さんは口を開いた。
聞きたい事を聞く前に教えてくれるなんて、ありがたいな。
いつの間にか両手に手乗りサイズの肉スライムの人形を一体づつ持っていた。
「金蜂のように異形に変わる者。
妾のように形を失った者。
異形に変わる者は比較的に帝国、人間が多かった。
形を失う者は…人間以外だった」
鶴さんは説明をしながら、片方の人形を金蜂に似せた形に、もう片方を横長の楕円形に変形させた。
「妾が妾になる前、人間に強い憧れがあった。
妾の元となった者は人間になりたかったのだろう。
故に、妾は人間を造ろうとした」
…はぁ?
人間になりたいから人間を造る?
なんだそのマッドサイエンティストが考えた結論は。
「幸いにも、妾が変異した場所は人間以外の者を収容し、実験する場でな。
他の者と混ざり、異形を喰らい、知識を集めた。
そして、妾は妾を材料に子を創りあげた」
気付けば、周囲から金の輝きは消えていた。
代わりに肉スライムの壁ができていた。
鶴さんと私を囲むように高い壁ができていた。
「しかし、基準は黒い涙を受けた者。
材料は同じく、黒い涙を受けた妾。
できたのは、成長すれば呪われる異形の子」
壁はじりじりと迫ってきてる。
思わず動こうとしたけれど、気付かない内に足元を肉スライムで固められていた。
「代を重ねればいつか、完全なる人間ができると信じ、育んできた。
産まれた時から異形ではない。
性の成長と共に心が狂う事もなく、性行為をきっかけに異形へと変わる事のない、純然たる人間に」
待って、ホントに待って!
ヤバイ、逃げれない、どうしよ、鶴さんヤバ、逃げないと、動けない、万力なの、壁が迫る、暗い、新しいスキルで…
「アカリよ、不死なる長命種よ。
黒い涙を受けていない其方の子ならば…きっと」
イヤーーーッ!
異世界で犯されるとか望んでないから!!!
0-6
アカリ388 432
Lv6(708/3200)
HP5/80
【ヒールタッチ】
【スリープタッチ】《選択中》
【救済の手】
【 】
【 】
【 】
【 】
【 】
【物理無効】(1/10000)
【無属性耐性】(609/1000)
【火属性耐性】(68/1000)
【水属性耐性】(122/1000)
【風属性耐性】(28/1000)
【雷属性無効】(6983/10000)
【土属性耐性】(16/1000)
【光属性耐性】(100/1000)
【闇属性無効】(3/10000)
【力属性無効】(1/10000)
【状態異常無効】(1/10000)




